12a-P2-4

12a-P2-4
第62回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集 (2015 東海大学 湘南キャンパス)
第三世代コンピュータ断層撮影に対応する
電流測定・エネルギー分解 X 線検出器の開発
Development of a current measurement and energy-resolved X-ray detector
for the third-generation computed tomography
○叶井絵梨 1、神野郁夫 1、山下良樹 1、小川剛史 1、眞正浄光 2(1 京大院工、2 首都大学東京)
○Eri Kanai 1,Ikuo Kanno 1,Yoshiki Yamashita 1,Tsuyoshi Ogawa 1,
Kiyomitsu Shinsho 2 (1 Kyoto Univ. ,2 Tokyo Metropolitan Univ.)
CT 値(cm-1)
E-mail : [email protected]
錫吸収体
1. 背景 当研究室では X 線を電流として測定し,解析によりエネ
ルギー情報を得る積層型 transXend 検出器を考案した(Fig.1)[1] .
この検出器を用いた測定は,ペンシルビーム X 線をひとつの検出器
で測定する第一世代 CT に対応している.しかし,臨床に応用する
には,コーンビーム X 線を2次元検出器で測定する第三世代 CT で
測定する必要がある.このため昨年度は空間分解能が 2mm
角の平面型 transXend 検出器を作成した[2].本研究では空
Fig.1 transXend 検出器の概略図.
間分解能を 1mm 角とし,また,管電圧を変更して測定を
熱ルミネッセンス板
行い,エネルギー分解 CT 測定を実証した.
2. 2 次元電流検出器を用いたエネルギー分解測定法
1ch 2ch
積層型 transXend 検出器において,ある要素検出器に対
3ch 4ch
してその前方の要素検出器は X 線の吸収体として作用する
これより,2次元 X 線検出器の表面に数種類の吸収体を配
1ch No absorber
置し,入射 X 線のスペクトルを変化させることで,平面型
2ch Sn absorber
transXend 検出器を作製できる.本研究では,熱ルミネッ
3ch Cu absorber
センス板に幅 0.5 mm,厚さ 100 μm の Sn ,Cu の 2 種の
Sn
Cu 4ch Sn + Cu
異なるストリップ吸収体を Fig. 2 のように格子状に配置
した.1~4 ch の吸収体を透過したX線を電流値として測
Fig.2. 熱ルミネッセンス板を
定し,積層型 transXend 検出器の要素検出器出力とみな
用いた transXend 検出器の概略図.
した.
1.4
3.実験
X 線管電圧は 100,120, 150 kV,管電流は 6.0
mA,照射時間は 60 分である.熱ルミネッセンス板の
1.2
サイズは 80 mm×80 mm×1 mm で,読み取りに用いた
1.0
冷却 CCD カメラ(Atik383L+, ATIK)のピクセルサ
イズは 5.4 μm×5.4 μm である.応答関数測定では,ア
0.8
クリル厚さとヨウ素厚さをそれぞれ 12~42 mm および
0~60 μm と変化させて,それらの組み合わせ全てにつ
0.6
いて通過した X 線による熱ルミネッセンス板の発光量
0.4
を測定した.次に円柱アクリルファントムを透過した X
線による発光量を測定した.円柱アクリルファントムの
0.2
直径は 30 mm で,中心に直径 5 mm のヨウ素領域を有
90 100 110 120 130 140 150 160
する.ヨウ素は X 線透過距離 5 mm 当り 30 μm の濃度
加速電圧(kV)
とした.円柱ファントムの測定データを 17 回くり返し,
Fig.3.エネルギー分解 CT (黒)と
10 度ごとの回転測定データとした.エネルギー範囲 E1
電流 CT (白)で得られたヨウ素
(15.0-33.5 keV) , E2 (33.5 – 39.0 keV) , E3 (39.0 – 80.0
(▲,△)とアクリル(■,□)CT 値と
keV), E4 (80.0 –Emax) における CT 画像を作成した.Emax
それらの差(●,○)
は X 線管電圧 100,120,150 kV のとき 96,114,143 keV で
ある.得られた CT 値を Fig. 3 にまとめた.
4. 結論 エネルギー分解 CT では,CT 値は誤差の範囲で一定であった.これは,解析に用いる
エネルギー範囲が一定なので,X 線の平均エネルギーが同じになるためである.以上より,平面
放射線検出器に複数の吸収体を配置することで積層型 transXend 検出器と同様に動作し,加速
電圧を変えても入射スペクトルに依存しない,エネルギー分解 CT 測定が可能であるといえる.
[1] I.Kanno, R.Imamura, et al. J. Nucl. Sci. Technol.,45, 1165-1170 (2008).
[2] 小川剛史,応用物理学会 2014 春,19a-PA1-25.
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