トランジスタ差動ヘッドフォンアンプ v5 製作マニュアル

トランジスタ差動ヘッドフォンアンプ v5 製作マニュアル
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2013.3.31 初版
【はじめに】
このアンプの製作にあたり留意点を記載します。但し、本マニュアルに従い機器を作った場合の機能や性能および
信頼性を保証するものではありません。製作する各自の技術的スキルに従うことが第一です。
・このアンプは、ミュージックプレーヤーなどの出力を入力し、ヘッドフォン出力することを想定して作ったものです。
・携帯性を考慮し単3電池2本の昇圧型、もしくはリチウムイオン電池を用いながら、大型ヘッドホンも駆動できます。
・このアンプの基本回路は拙作v3です。これを電圧アップに対応した最適な回路定数に変更しています。
電圧が電池電圧の約二倍あるので、高インピーダンスのヘッドホンでも駆動できるかもしれません。
【完成イメージ】
【回路図】
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回路図に関しての補足説明
・個に回路図はDC-DCインバータ(IC1)、負電圧コンバータ(IC2)を用いて、単三型電池直列2個の電圧を
±4Vにして使うことを想定して書かれています。
・リチウムイオン電池を使う場合にはIC1,IC2,C3が不用になり、部分的なジャンパーが必要になり、電池は並列
接続になります。図中Li-ion Battと書かれた部分がそのジャンパーや配線です。
配線図だけでは判りにくいので、巻末に写真で説明します。
【部品リスト】
部品番号
部品名
用途
型番、値
個数
・ 基板
いずれかを
選択
専用基板
専用基板
・ トランジスタ
Q101,Q201
Q102,Q202
Q103,Q203
Q104,Q204
Q105,Q205
Q106,Q206
・ コンデンサ
NPNデュアルTr
PNPデュアルTr
NPNデュアルTr
PNPデュアルTr
PNP Tr
NPN Tr
差動増幅
同上
定電流
同上
終段増幅
同上
C1,C2
表面実装コンデンサ
電源
C4,C5
チップコン 2012
電源
C101,C201
表面実装コンデンサ
カップリング
単品
表面実装部品
(Tr,チップR,チップCon)取付済
1
BC846DS
BCM856DS
BC846DS
BCM856DS
2SA1428-Y
2SC3668-Y
2
2
2
2
2
2
1000u
(EEEFK1A102P,or,EEE0JA102UP)
0.1u
1000u
(EEEFK1A102P,or,EEE0JA102UP)
・ チッ プ抵抗
R001
チップ抵抗 2012
青LED用
27k
R101,R201
チップ抵抗 2012
入力保護
220k
R103,R104
チップ抵抗 2012
定電流
5.1k
R203,R204
R105,R106
R107,R108
差動増幅
チップ抵抗 2012
2.2k
R205,R206
負荷
R207,R208
・ 入出力、負帰還 金属皮膜抵抗
R102,R202
金属皮膜抵抗1/4W 入力
1k(RO抵抗)
R109,R112
終段増幅
金属皮膜抵抗1/4W
51(RO抵抗)
R209,R212
エミッタ抵抗
R110,R111
終段増幅
金属皮膜抵抗1/4W
10(RO抵抗)
R210,R211
負荷抵抗
R113,R213
金属皮膜抵抗1/4W 負帰還抵抗 1.8k(RO抵抗)
R114,R214
・ 機構部品
ST_JACK1
φ3.5ステレオジャック 入出力
AJ-1780
ST_JACK2
SW
2系統スイッチ
電源ONOFF LINKMAN,2UD1-T1-A1-M6-R-E
VOL
2連ボリューム
A50k(A20k),LINKMAN、RD925G
ボリュームノブ黒
φ6
LED1
LED
電源インジケータ 青色φ3
電池ケース
単三1本用
収納ケース
タカチ,GHA7-2-9DB(黒)
・ 昇圧部品 ( リチウムイオン電池使用の場合は不用)
IC1
DC_DCコンバータ
電池用昇圧 MCP1640 2.0V~5.5V可変
IC2
負電圧コンバータ
負電圧生成 MAX660_SO8
C3
チップコンデンサ 3225
同上用
100u, (GRM32EB30J107ME)
・ DCアダプタ (オプション)
DC_JACK
DCφ2.1ジャック
外部電源
DCJ0202
1
2
2
2
1
2
4
8
2
4
4
4
2
1
1
1
1
2
1
1
1
1
1
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【部品の定数について】
・初段差動増幅、定電流に用いているトランジスタは、1つのパッケージ内にhFEが揃った2つのトランジスタ素子が
入った、デュアル・トランジスタです。ピン配列、サイズが合えば別のシリーズでも構いません。
参考までに、使用しているトランジスタのhFEや約300程度です。
・終段トランジスタ2SA1428/2SC3668は同系統のものをお好みで使用してください。
hFEは±22%程度以内に選別した方が無難です。
・R103,R1046,R203,R204は差動回路の定電流値を調整し、且つ終段増幅トランジスタのアイドル電流を決める
大事な抵抗です。R105,106,R107,108,R205,206,R207,208の差動増幅負荷抵抗と共にセットになった定数です。
よってこの定数を必ずお使いください。
・R102,202の220kはボリュームが接触不良になっても回路が安定する抵抗です。少々違っても構いません。
100k~1Mが適当です。
・終段負荷抵抗10Ωは少し高めになっています。効率を考えると4.7Ω程度でもOKです。
R109,112,R209,212のエミッタ抵抗は、これも終段アイドル電流を決めるファクターです。電池寿命の観点から
100Ωをお勧めします(アイドル電流は10mA程度)
・ボリュームは50kが推奨ですが、入手性の関係で20k程度でもOKです。
・負帰還抵抗は1.8kと1.8kで構成しています。これで約2倍の増幅です。
増幅率が大きい場合にはR114,214を2.2k程度に上げ、少ない場合には1.5k程度に下げてください。
但し、増幅率を上げると歪が増える可能性があります。
・電源及びカップリングコンデンサはスペースの関係で表面実装1000uFを用いていますが、基板の取り付け部は
通常のピンタイプのコンデンサも使えるようになっています。高さの高い大容量のコンデンサが使えます。
低音の伸びが増えます。
【組立手順】
一般的に背の低い部品から組み立てますが、表面実装コンデンサの端子が狭い部分に位置しているので
以下の手順で組み立ててください。
部品の定数と配置はこの図を参照願います。
100
100
100
100
終段Trの部品番号面はこちら側です
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1.チップ抵抗、チップトランジスタを取り付ける
準備として、チップ抵抗はランドの片方、
チップトランジスタは6ピン側(右上)のランドに
ハンダを余盛したところに付けます。
2.チップ抵抗、チップトランジスタを余盛をした
ランドにハンダ付けします。
写真なし
下図を参照願います
3.チップ抵抗の片側をハンダ付けします
4.チップトランジスタは液体フラックスを塗布し、
ハンダコテの先に少量付けたハンダを流すように
付けます。
写真なし
上図を参照願います
5.負電圧コンバータを取り付けます(液体フラックス要)
6.DC-DCコンバータの下になるチップ部品がしっかりと
DC-DCコンバータの下になるチップ部品がしっかりと
パターンミスがあったので、1ピンと8ピン間をより線電線
ハンダ付けされているかをチェックのこと。
に使っている銅ワイヤ等でジャンパしておきます
この間をジャンパーしておく
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7.表面実装コンデンサをハンダ付けします
8.反対側をハンダ付けします
プラス側ランドにハンダ余盛をしておき、上から付けます
写真省略
*表面実装コンデンササイズが小さい場合(10V->6.3V)
9.金属皮膜1/4w抵抗をハンダ付けします
マイナス側に手作業で付けたランドがあるので
そこに付けてください。
10.終段トランジスタを取り付けます。
こちら側が刻印面です
12.入出力パーツを取り付けます
ボリューム軸の前側が少し上がる(1~
2mm)ようにハンダ付けします。
(基板がケースに対して前下がりになる
可能性があります)
11.DC-DCインバータを取り付けます
ピンは3箇所だけ取り付けます。
必ずインバータ下チップ部品のハンダが付いていることを確認
13.LEDを取り付けます。基板前面にLED段差を合わせます
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10.ケースの加工
下側
上蓋
1.5mm程度残す
赤色部は全て切り取る
奥側の
ボスを1.5mmの高さに
切り残します
(電池ケース蓋との
干渉を防止します)
上蓋は6箇所のボスを
取り除きます
注意:締付け穴は残す
これは取る
前蓋の穴あけ
34
φ3
11
5
φ7
φ5.5
φ5.5
φ5
6
10
13
23
23
11.電池ケースの取り付け
電池ケースは底を抜かないと本体ケースに収納できないので加工が必要です。
両端にある穴を使い切れ目を入れます
周囲にカッターで筋を入れ、そこを何度もカッターで
切り込んで行きます。少しの力で切れます。
結線
DCアダプタを使用しないときは
この2端子にジャンパーします
こちら側の赤+を右+に
黒-を左の-にハンダ
付けします。
電池2個は直列配線
直列配線です
直列配線
こちら側は
赤と黒を結びます
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【調整とチェック】
この端子間電圧を調整します
+端子
-端子
1.DC-DCインバータの出力電圧を4.0Vに調整します。
GND
A4
B1
B4
B3
A5
A3
A2
100
100
A1
100
100
B2
ジャンパー
2.各部の電圧、電流値をチェックします。
1)正電圧:A1-GND間、A2-GND間が約4.0V
約4.0Vであること
約4.0V
約-4.0~-3.8Vであること
2)負電圧:B1-GND間、B2-GND間が約-4.0~-3.8V
約-4.0~-3.8V
3)差動増幅負荷抵抗電圧差:A2-A3、B2-B3、A5-A4、B4-B1間が約1.6~1.7V
約1.6~1.7Vであること
約1.6~1.7V
この値ならば差動増幅の電流値は1.6÷2200=0.7mAとなる。
4)終段Trコレクタ抵抗電圧差:R110,111,R210,211が、100~110mV
100~110mVであること
100~110mV
この値ならば終段増幅のアイドル電流は100÷10=10mAとなる。
(解説)
・このHPAの良いところは、ほとんど調整が無く安定して動作することにあります。
これまで私が作ってきたHPAはアイドル電流調整があったので面倒でしたが、このアンプは定電流値が
抵抗5.1kでぴったりと安定することと、カップリングコンデンサ方式にしたことが最大の要因です。
・上記の電圧が出ていれば確実に作動するものと思います。
カップリングコンデンサが入っているので、出力のDCは発生しません。
動作(音)や電圧がおかしい場合の原因はほとんどがハンダ付け不良にあります。
これぐらいの電圧では素子が壊れることはほとんどありません。
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*リチウムイオン電池を使う場合の配線改造
1.DC-DCインバータは付けずにジャンパーします
2.負電圧コンバータは付けず5-6ピン間をジャンパーします
電池からの配線は+-、+-の組み合わせ順で付けます
【参考資料:基板の配線ライン図】
何かトラブルがあった場合、各部品がどのラインで接続されているかを示す図です。
赤線が表面(部品面)、青線が裏面(ハンダ面)です。