パス・パケット混在光ハイブリッドネットワークにおける波長

パス・パケット混在光ハイブリッドネットワークにおける波長割当方式
RWA for Optical Hybrid Networks combining Path and Packet Switching
今泉英明 2
Hideaki Imaizumi
慶應義塾大学/Keio University1
棄却率
ン評価を行った.経路(1),(2)に関しては,同数の経路があった
場合は最小遅延のパスを優先し,波長割当(c),(d)では短波長の
ものから割り当てた.波長数 64 の NSF ネットワーク上で,波
長パスの要求はポアソン過程とし,波長パスの持続時間は平均
3600 秒の指数分布とした.このネットワーク上で,波長パス要
求の棄却率と,全エッジ間で多波長光パケット交換に利用可能
な最大波長数の平均と分散を調べた.結果を図 2 に示す.
パス要求平均発生間隔[秒]
(A) 最小遅延
パス要求平均発生間隔[秒]
ハイブリット型光ネットワークにおける波長割当問題
パス要求平均発生間隔[秒]
(B) 空き波長数最大
パス要求平均発生間隔[秒]
波長数
図 1 に本ネットワークの概念を示す.本ネットワークでは,
品質保証が必要なトラフィックは波長パス交換で転送され,
必要でないトラフィックは残りの波長を用いて多波長光パケ
ット交換で転送される.なお,波長パス交換におけるシグナリ
ングおよび多波長光パケット交換における経路情報(ラベル)は
独立した特定波長に符号化される.
棄却率
2
東京大学/University of Tokyo2
棄却率
1 はじめに
ネットワークトラフィックの急激な増加,アプリケーション
の多様化によって,将来のネットワークには広帯域性と複数の
品質保証クラスが要求される.
この要求を満たす技術として,筆者らは高い品質保証を提供
可能な波長パス交換と,低装置コストで帯域利用効率を向上さ
せる事のできる多波長光パケット交換を組み合わせたハイブ
リット型光ネットワークを検討している[1].多波長光パケット
交換は,単一のペイロード部分を連続した波長群に符号化し,
一つの光スイッチで一括交換する方式である.このハイブリッ
ト型光ネットワークにおける波長資源は波長パス交換と多波
長光パケット交換で共有されるため,波長パス交換ネットワー
クのために設計された既存の波長割当方式では,波長資源を
有効活用できない可能性がある.
本稿では,ハイブリット型光ネットワークにおける経路制御
及び波長割当方式を検討する.
森川博之 2
村井純 1
Hiroyuki Morikawa Jun Murai
波長数
渡部克弥 2
Katsuya Watabe
波長数
町田啓太 1,2
Keita Machida
パス要求平均発生間隔[秒]
パス要求平均発生間隔[秒]
(C) 共通空き波長数最大
図 2 パス要求棄却率と多波長光パケット用最大波長数
図 1 本ネットワークの概念図
多波長光パケットのペイロードは,End-to-End で使用されて
いない波長群の中で,(1) 短/長波長側一方に偏った,(2)連続し
た空き波長群を用いる.そのため,波長パス交換における波長
割当方式により,多波長光パケット交換で使用可能な波長数が
制限される.例えば,図 1 では R1 から R5,R4 から R5 に波長
パスが設定されている.そのため,多波長光パケット交換で使
用可能な波長数が各リンクにより異なり,波長を効率的に使用
できない.これは,波長パス交換で使用されていない連続波長
群を各リンクでなるべく均一にすることで改善できる.
そこで本稿では,各リンクでの使用可能な波長数をコストと
した経路制御と,First-Fit を用いた波長割当方式を検討する.
経路制御ではリンクステート型のルーチングプロトコルを
用いて使用可能な空き波長数が最大となる経路を選択する.空
き波長数が同数となる経路が 2 つ以上存在する場合は最小遅延
経路を選択する.First-Fit 波長割当方式では,使用される全波
長に対して短波長のものから番号を付加する.波長を割当てる
際,空き波長中で最も若い番号の波長から割当ていく.本方式
により,波長パス交換で使用される波長を短波長側に集約する
とともに,各リンクでの多波長光パケット交換で使用可能な波
長を均一にでき,多波長光パケット交換における波長使用効率
を向上させることができる.
3 シミュレーション実験
本稿では,リンクステート型経路制御により(1)最小遅延,(2)
空き波長数最大,および(3)共通空き波長最大の経路を用い,波
長割当方式として(a) Random,(b)First-Fit,(c)Most-Used, (d)
Least-Used を用いて,それぞれの組み合わせでシミュレーショ
棄却率はランダム方式が最も低いが,波長資源を多く用いる.
そのため,波長パス要求の棄却率を抑えることはできるが,多
波長光パケット交換で使用可能な連続した波長群を確保する
ことは難しい.Most-Used は,図 2(A),(B)では First-Fit とほぼ
同様の挙動を示している.これは使用回数が同一の場合,短波
長側から割り当てるためと考えられる.しかし,(C)では短波長
側の波長を何度も使う可能性が高く,利用可能な波長数は低下
している.一方 Least-Used において,図2(A)では First-Fit と似
た結果を示しているが,(B)では低い棄却率にも関わらず,多波
長パケット交換用波長数は Random より非常に高い.これも使
用回数が同じ場合は短波長側から割り当てるため,(A)のような
同じ経路の場合は波長群全体を利用するため高い棄却率とな
り,(B)のような空き波長数最大の経路の場合は常に異なる経路
を使用するため低い棄却率となっていると考えられる.一方,
First-Fit ではブロック率は高いが,多波長光パケット交換で利
用可能な波長数は常に高く,分散も非常に小さい.First-Fit を
用いた結果では,経路制御の違いで大きな差はでなかった.
4 まとめ
本稿では,波長パス交換と多波長光パケット交換が混在する
ハイブリッド型光ネットワークにおける経路制御および波長
割当について,波長の利用効率向上に着目し,各方式の評価を
行った.
謝辞:本研究は情報通信研究機構(NICT)の支援により行われた.
参考文献
[1] 今泉他,
“多波長光パケット交換と光回線交換を用いたハイ
ブリッドネットワークに関する検討”
,信学技報 PN2006-97,
2007.