○プロジェクト研究 1248-1 研究課題 「車椅子バスケットボールにおける競技力向上と二次的障害予防 に関する研究 」 ○研究代表者 医科学センター 教授 和田野 安良 ○研究分担者 付属病院 准教授 六﨑 裕高 付属病院 講師 清水 如代 理学療法学科 助教 橘 香織 作業療法学科 助教 堀田 和司 (4名) ○研究年度 (研究期間) 平成24年度 平成24年度~平成26年度(3年間) 1.目的 平成23年、スポーツ基本法の制定により、障害者スポーツを含め国家戦略としてのスポーツ施策推進の機 運が高まっている.特に障害者スポーツに関しては大学としてのサポート体制が重要と考えた。本研究の目 的は、パラリンピックを目指す競技参加選手に対し、(1)より長く競技選手として活躍するための傷害や二次 的障害の予防を図るメディカルサポート、(2)競技力向上のための技術的・戦術的サポートを行いトップアス リートの育成・強化を図ることである.そのためにメディカルサポート、バイオメカニクス、コンディショ ニング、トレーニング・戦術の4つの部門を置き、それぞれの専門分野を研究している研究分担者・研究協 力者によって研究チームが構成され、包括的にこれらの課題を解決するチーム形態が特徴である.そこで、 すべてのパラリンピック競技種目での本課題解決を見据え、1つのモデルとして競技人口も多く認知度も高い 車椅子バスケットボール競技に着目し、これを対象に方法論の確立ならびに成果を目指すことを目的として いる. 2.方法(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ) この研究は3カ年計画であり、平成24年度は開始年にあたる。そして、他職種で構成する4つの部門で 行うプロジェクト研究である。 Ⅰ.メディカルサポート部門は医師チームで行うメディカルチェック、障害者スポーツ選手の体力測定、 ドーピングコントロール、二次的障害発生の予防をおこなう部門である。(研究協力者:唐澤幹男、医療大 学大学院前期課程1年) Ⅱ.バイオメカニクス部門は理学療法士中心で行う競技特異的な動作中の上肢・体幹の運動学的解析なら びに筋活動の解析を行い、パフォーマンス向上、傷害、二次的障害予防のための知見を得る。シュートフォ ームや車椅子駆動のための肢位やタイヤ軸の位置なども解析する部門である。(研究協力者:深谷隆史、医 療大学大学院後期課程3年) Ⅲ.コンディショニング部門は栄養・休養・心理状態の調整に関して、アンケートを基に解析し、メンタ ルトレーニングやセルフモニタリングを習得させる。(研究協力者:神原麻由、医療大学作業療法学科4年) Ⅳ.トレーニング・戦術分析部門は競技特有のスキル向上に向けたトレーニング方法の開発や国際競技大 会の戦術分析を行い、競技力を向上させる。(研究協力者:池田英治、医科学センター嘱託助手) 24年度:①パラリンピック日本代表候補対象選手のメディカルチェックと二次的障害の評価を行う。②体幹 及び肩関節の可動性を評価し、肩関節状態をチェックする。③栄養摂取状態の調査を実施する.④国際大会 (アジア車椅子バスケットボール大会)の戦術分析を行う。 3.研究結果 Ⅰ.メディカルチェック部門:ロンドンパラリンピック2012車椅子バスケットボール男子日本代表候 補選手22名と世界選手権女子日本代表候補選手5名のメディカルチェックとドーピングチェックを行った。 男子のメディカルチェックは現症(身長、体重、体温、脈拍、血圧)、理学所見(顔面、口腔、頚部、腹部、 四肢)、臨床検査所見(心電図、胸部X線)、尿検査(蛋白、糖、潜血)、血液検査(赤血球数、ヘモグロビ ン値、ヘマトクリット値、白血球数、血小板数)生化学検査(血清鉄、肝機能(AST、ALT,γ-GTP)、 クレアチニンフォスフォキナーゼ、C反応蛋白、中性脂肪(TG)、コレステロール(HDL,LDL)、 総蛋白、腎機能(BUN,CRE,UA)、血糖(Glu,HgA1c)、原疾患と合併症の状態、呼吸機 能検査、関節可動域、肩関節痛の指標(WUSPI)、頚椎・胸椎・腰椎X線、頚椎MRI撮像を行った。 肩関節(腱板、上腕二頭筋長頭腱)、仙骨・坐骨部の超音波検査を行った。女子は画像検査を除いて行った。 Ⅱ.日本を代表する男女選手各1名のシュートフォームを高速度ビデオカメラで撮影し、動作分析を行っ た。また、バスケットボール用車椅子を漕ぐ動作分析を行った。 Ⅲ.栄養摂取状態、メンタルコンディションの状態をアンケートによりチェックを行った。 Ⅳ.韓国で行なわれたロンドンパラリンピック・アジアオセアニア地区予選大会の車椅子バスケットボー ル競技のビデオを日本車椅子バスケットボール連盟から提供を受け、戦術分析を行い車椅子バスケットボー ル 連盟に結果を報告した。 Ⅴ.その他:車椅子バスケットボール関連:平成24年8月11~13日(日~火)Jキャンプ(車椅子 バスケットボールの入門・強化キャンプ)於:医療大学体育館 平成24年12月2日(日)三大学連携障害者スポーツイベント:車椅子バスケットボール体験会を行った。 参加者約60名、スタッフ20名の総勢80名で車椅子バスケットボールを行った。 4.結論 Ⅰ.メディカルチェックを行ったことにより、選手の障害名、車椅子バスケットボールのクラス分け、健 康状態と二次的障害の評価を行うことができた。選手の健康状態は良好であるが、高血圧、尿路感染症、脂 肪肝、高尿酸血症の選手がいた。また、二次的障害の代表的な褥瘡に関しては、仙骨部の座面とのずれ応力 による深部組織損傷の選手が9名見つかり、褥瘡予防の観点から定期的な検査を勧めた。もう一方の二次的 障害の代表である肩関節痛に関しては、WUSPI(車椅子使用者肩関節疼痛インデックス)を用いた結果、 競技歴が長いと疼痛が強い傾向を示した。レントゲン・MRIの解析は現在行っているところである。 Ⅱ.男女得点王によるシュートフォームの動作分析・バイオメカニクス解析は今後追加実験の上、データ 解析の予定である。 Ⅲ.栄養摂取状況はエネルギー摂取、マグネシウム、ビタミンA,B1,B2,B6、Cの摂取が少ないこと が判明した。今後、車椅子スポーツにおける摂取必要量などを調査研究し、適切な栄養管理を心掛ける必要 がある。 Ⅳ.車椅子バスケットボールにおける戦術的重要度の高いプレイの効果率を、ビデオ映像も用いて分析する ことにより、効率的かつ正確なプレイの遂行のために必要となる要因が抽出された。 5.成果の発表(学会・論文等,予定を含む) 原著論文 1)褥瘡手術後の脊髄損傷患者専用腹臥位マットの製作とその有用性についての検証 六崎裕高、清水如代、和田野安良 リハビリテーション スポーツ 2012 31(1):6-10. 2)車椅子バスケットボール選手の二次的障害の調査 六崎裕高、橘香織、清水如代、堀田和司、和田野安良 リハビリテーション スポーツ 2012 31(2):70-73. 3)車いすバスケットボール初級教室への参加が障がい児・者の身体機能及び競技パフォーマンスに及ぼす影響 橘 香織、石田 菜月、相楽 未由樹、久保田 蒼、金井 欣秀、 青柳 亜希、 齋藤 由香、 六崎 裕高、 和田野 安良、水上 昌文 茨城県立医療大学紀要(17), 2013 (印刷中) 学会発表 第22回日本障害者スポーツ学会(和歌山) H25.1.26-27 1)車椅子バスケットボール男子日本代表選手のメディカルチェック (和田野安良 他) 2)男子車椅子バスケットボール日本代表選手における WUSPI について (唐澤幹男 他) 3)男子車椅子バスケットボール代表候補選手の栄養摂取状況 (堀田和司 他) 4)男子車椅子バスケットボール日本代表選手の deep tissue injury (六﨑裕高 他) の4演題をチームで発表し、現在論文作成中である。
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