APEC会議、北京の最大成果~アジア太平洋自由貿易圏のキックオフと

BTMU(China)経済週報
2014 年 11 月 19 日 第 229 期
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2014 年 11 月 19 日 第 229 期
APEC 会議、北京の最大成果
~アジア太平洋自由貿易圏のキックオフと「一帯一路」戦略
トランザクションバンキング部
中国調査室
メイントピックス...................................................................................................................... 2
APEC会議、北京の最大成果~アジア太平洋自由貿易圏のキックオフと「一帯一路」戦略.................................2
全国情報 ............................................................................................................................. 7
【マクロ経済】 ............................................................................................................................................................. 7
10 月の一定規模以上工業企業付加価値、前年同月比 9%増 ........................................................................ 7
10 月の経済指標は伸び鈍化、不動産投資は最低値に.................................................................................... 7
中韓FTA、交渉段階を終え、来年発効へ .......................................................................................................... 7
10 月のCPIは 1.6%上昇 ..................................................................................................................................... 7
【金融】....................................................................................................................................................................... 8
香港、17 日より人民元両替上限を撤廃 ............................................................................................................ 8
滬港通、取引収益に 3 年間免税 ........................................................................................................................ 8
深セン証取所、「深港通」の実現に積極的 ......................................................................................................... 8
10 月の金融統計、資金需要が落ち込み............................................................................................................ 8
【産業】....................................................................................................................................................................... 9
天猫、「11.11」の成約額は 571 億元、モバイル端末による成約額は全体の 4 割強......................................... 9
一線都市の不動産在庫は減少、在庫販売比率は下落 .................................................................................... 9
三峡集団、ロシア水力発電プロジェクトを合弁展開 ........................................................................................... 9
10 月の新車販売台数は前年同月比 2.8%増.................................................................................................... 9
地方情報 ........................................................................................................................... 11
【北京】大学生の起業促進を支援 ..................................................................................................................... 11
【上海】小規模企業従業員の社会保険一部負担で雇用支援 ......................................................................... 11
【蘇州】地下鉄 3 号線が着工へ......................................................................................................................... 11
【広州】「黄標車」の早期廃棄に補助金............................................................................................................. 11
【深セン】第 8 回国際金融博覧会は閉幕 ......................................................................................................... 11
【天津】APEC期間中のPM2.5 濃度は 28%低下............................................................................................. 11
BTMUの中国調査レポート(2014 年 10~11 月) .................................................................... 12
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メイントピックス
APEC会議、北京の最大成果~アジア太平洋自由貿易圏のキックオフと「一帯一路」戦略
日米中など 21 カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議は 11 日午後、首脳宣
言を採択し閉幕した。「将来に向けたアジア太平洋パートナーシップの共同取り組み」をテーマに、域内全体
で貿易・投資の自由化を目指す「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」構想の実現に向けた工程表「北京ロ
ードマップ」を策定し、議長国・中国が APEC 設立 25 年の記念文書も発表した。
Ⅰ.APEC の合意内容、中国の成果
三大議題である①域内経済の一体化、②経済の革新発展、改革と成長の促進、③全面的なインフラ建設と
相互連結の強化において、それぞれ合意した。中国にとって、北京 APEC における成果は以下のものがある
とみられている。
1. アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現に向けた工程表「北京ロードマップ」を策定。FTAAP 共
同研究を16年末までに完了。習近平主席が「歴史に名を残す決定」だと評価した。
2. アジア太平洋インフラ整備に関する「APEC 互聯互通青図(2015-2025)」を採択。2025 年までに所定の
提案と目標を完成させる。インフラにおけるボトルネックの解決をコミットし、官民連携(PPP)を肯定して推
奨する。
3. 「北京反腐敗宣言」を採択した。腐敗行為を連携して取り締まり、腐敗者の返送、腐敗資産の没収と返還
における協力を強化することを決定。
4. 外交関係における成果について、中米関係の再確認、中ロ関係の親密化、中日関係の修復可能性(安
倍首相と習近平国家出席の会談実現)、中韓自由貿易協定の実質的妥結など、経済力の増強に伴い、
「独立外交から同盟関係を重んじる外交への転換」(中国社会科学院世界経済と政治研究所戦略室主
任薛力)を示した。
図表1 APEC北京宣言の合意内容
議題
項目
合意文書・合意事項
段取り・目標
域内経済の
一体化
自由・開放の貿
易と投資を推進
多角的貿易体制への信頼を確認する。 WTOが
昨年合意した貿易円滑化協定の採択がずれ込ん
でいることに強い懸念を表明。APECは事態打開の
ために指導力を発揮
アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現に
向けた工程表「北京ロードマップ」を採択
デジタル製品の関税撤廃に向
けた情報技術協定(ITA)拡大
交渉の重要性を確認
グローバル・バ
リュチェーン、サ
プライチェーン
の推進
「APECグローバル・バリュチェーンの発展協力戦
略青図」を採択
「APEC貿易付加価値計算戦略枠組み」と同枠組
み行動計画を採択
「アジア太平洋地区モデル電子税関ネットワーク
工作ガイドライン」を採択
FTAAP共同研究を16年末ま
でに完了。既存の経済協力交
渉の成功を礎として、できる限
り早期実現
ワークチームは2015年から新
施策を提出
2018年までに貿易付加価値デ
ータベース構築完了
上海で同ネットワークの運営セ
ンターを設立
APECグリーン・サプライチェーン協力ネットワーク
の構築に同意
天津で初の運営センターを試
行
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サプライチェーン/バリュチェーンにおける製造業
向けのサービスを、次世代の貿易投資議題にする
経済技術協力
の強化
経済の革新
発展、改革と
成長の促進
「APEC貿易投資発展の能力建設戦略計画」を採
択
「APEC経済の革新発展、改革と成長に関する共通認識」を採択
「五つの柱」を確立
①経済改革
「中進国のわな」問題を経済委員会工作計画へ
②新経済
グリーン経済、ブルー経済、インターネット経済等発展見通しのある新経済形態を発
展
「2014年APEC組織エネルギー部長会議北京宣
中国でAPECエネルギー持続
言」を歓迎
可能センターを設立
2030年までに再生可能エネル
ギー発電量がエネルギー構成
における割合は2010年比倍増
「革新駆動発展提唱書」を採択
「中小企業革新発展南京宣言」を歓迎
中小企業革新活動、早期投資
を支持
人材育成、女性の経済活動参加、健康と衛生体系構築、食品安全、大規模の流行
病、テロ、気候変動、反腐敗、災害対策における提携
③革新発展
④包容性支援
⑤都市化
全面的なイ
ンフラ建設と
相互連結の
強化
2015年から同行動プランの策
定を開始
「APEC都市化パートナーシップ協力提唱書」を採
択
「APEC相互連結青図(2015-2025)」を採択
インフラ整備
PPPの役割を評価
エネルギー分野における相互連結
移民政策
一段と便利な移民政策を奨励
人員交流
学生、研究者と教育者の人員流動を拡大
観光
グリーン、効率的、低炭素の都
市化
2025年までに所定の提案と目
標を完成。ハード、ソフト、人員
交流における相互連結を強化
インドネシアでの能力建設試
行を強化、PPPモデルプロジェ
クト、標準契約書の策定を実施
石油と天然ガスパイプと伝送
網、液化天然ガス端末、スマ
ート電網、エネルギー輸送網
2025年までにAPEC域内での
観光者数は8億人に到達
Ⅱ.中国にとって、FTAAPは何を意味しているか
アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)は中国が米国主導の環太平洋連携協定(TPP)をけん制し、アジア太
平洋地区の新たなパートナーシップ構築における主導権を図る有力な手段だとみられている。FTAAP は
APEC 加盟 21 ヵ国・地域をカバーし、世界の人口の 4 割、GDP の 6 割を占めており、中・米・日とも参加する。
一方、米国主導の TPP は日、米、オーストラリアなど 12 ヵ国が参加し、中国が参加していない。TPP は世界の
人口の 1 割、GDP の4割を占めている。TPP 交渉は今年 11 月の大筋合意を目指していたが、越年となるの
が確実となった。TPP と比べて、FTAAP が、①全ての APEC メンバーに開放、②加入基準は TPP より低い、
③既存の APEC 枠組みを利用、実行しやすいことが挙げられる。
経済実力の増強に伴い、世界における中国の影響力が拡大しつつあるが、その影響力は周辺諸国に止ま
った。中国は冷戦後、二国間外交を重んじており、今まで 58 カ国とパートナーシップ関係を構築した。ただ、
二国間関係は多角的な同盟関係より弱いことはいうまでもなく、2008 年以降中国は、アセアン諸国フォーラム
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への積極的参加、BRICS 諸国メカニズムの推進など、多角的な外交関係の構築にも注力する動きがみられ
ている。とりわけ、2008 年世界金融危機以降、米国経済と米ドルに対する信認感が低下し、中国のグローバ
ルプレゼンスの向上にチャンスを提供したとみられている。中国は、APEC という既存の枠組みを生かす経済
貿易圏を構想し、北京で行われる APEC 首脳会議を機にして進めようとしている。
図表2 アジア太平洋地域FTAの関係図
RCEP
FTAAP
ロシア
台湾
インド
中国
カンボジア
ラオス
ミャンマー
日本
ニュージーランド
シンガポール
ベトナム
ブルネイ
マレーシア
オーストラリア
韓国
タイ
インドネシア
フィリピン
カナダ
チリ
メキシコ
ペール
米国
TPP12
TPP16
出所:三菱東京UFJ銀行(中国)中国調査室より作成
過去 30 年間、経済発展を中心としたことから、世界銀行と IMF、WTO や世界決済銀行(BIS)への加入を果
たしたが、こうした既存の国際経済組織における発言権が限られている。地域経済一体化が世界の流れとな
る中、中国は進んで地域経済一体化の交渉に乗り出した。
まず、東南部では、中国はアセアン主導の域内包括的経済連携(RCEP)に参加している。西南部では、
「バングラデッシュ・中国・インド・ミャンマー経済廊下」を推進しており、1999 年に成立されて以来進展が緩慢
であったが、2013 年からスピードアップした。又、「中国~パキスタン経済廊下」はエネルギー協力を目的とし
て推し進められている。西北部では、中東 5 ヵ国との経済提携は上海合作組織の任務となっているが、今まで
は二国間協力が中心であった。東北部では、韓国との経済協力が成功しており、中韓 FTA が 11 月に実質妥
結した。
ただし、上記の経済協力は周辺国にとどまり、中国は周辺国を突破してより広範な地域経済一体化を目指
して FTAAP 構想を打ち出した。
Ⅲ.アジア太平洋のインフラ整備における主導権、「一帯一路」構想が中心
過去の域内経済貿易圏は、貿易障壁の削減、関税撤廃に基づく貿易投資協力が中心であるが、FTAAP は、
アジア太平洋地区の相互連結を拠り所にし、実行性が高いと評価される。その代表的なプロジェクトは、中国
政府が提出した「一帯一路」である。即ち、中国と中央アジアを結ぶ「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、中国
からインド洋へ抜ける「21 世紀の海のシルクロード」(一路)である。「一帯一路」は 21 ヵ国をカバーし、経済総
量が世界 GDP の 29%を占めている。具体的に、陸路は中国から中央アジアのカザフスタン、ウズベクスタン
などを経由してオランダまで、海路はインドネシアからインド、スリランカ、ケニア、ギリシャをへて、オランダまで
のルートである。バングラデッシュ・中国・インド・ミャンマー構想、中国・パキスタン構想、中国・モンゴル・ロシ
ア構想、ニューアジア・ユーラシアブリッジ貿易通路構想が含まれる。関連国家の港湾・鉄道・道路などのイン
フラ整備がこれらの構想を実現するためには不可欠である。「一帯一路」構想は、中国の国内過剰生産の解
消、資源の確保、国家安全の強化にも有益であり、国家戦略であるが、APEC 首脳会議を通じて APEC 諸国
協力の基盤ともなった。この構想下で、BRICS 発展銀行、アジアインフラ投資銀行(AIIB)(1000 億米ドル、中
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国が 50%出資)、シルクロード基金(中国が 400 億米ドル出資)がそれぞれ創設された。
図表3 「一帯一路」構想
陸上シルクロード(一路)
モスコワ
ロッテルダム
デュースブルク
ウルムチ
ヴェニス
アテネ
イスタンブール
西安
上海
コルカタ
北海
広州
ハノイ
コロンボ
ナイロビ
クアラルンブール
ジャガルタ
海上シルクロード(一帯)
出所:中国調査室により作成
過剰生産の解消
IMF の統計によると、中国の製造業の稼働率は 65%未満(85%以上が正常)と深刻な過剰生産状態である。
中国の輸出市場は米国、欧州と日本向けのシェアが大きいが、これら伝統的な市場向けの輸出力の更なる
拡大の余地が限られており、国内過剰生産をもたらした一要因でもある。「一帯一路」を通じて新たな輸出市
場の開拓が期待される。例えば、鉄鋼業をみると、Wind の推測では「一帯一路」沿線インフラ建設に伴う潜
在的な鉄鋼需要は 27.72 億トンに達する見込み。一方、足元の世界の鉄鋼生産能力は 16 億トン。中国にとっ
て、インドが有望な鉄鋼輸出市場となる。中国からインド向けの鉄鋼輸出は今年 4-9 月で 100%拡大した。
2014 年のインド鉄鋼需要は 7620 万トンとなる見込み。
資源の確保
中国の原油と鉱産の対外依存度が高い。現在、資源の運輸は海運がほとんどであり、鉄鉱石はオーストラリ
アとブラジルに、原油は中東に依存している。「一帯一路」が、資源輸入の陸上通路を開通し、輸入通路の多
様化がもたらされる。
国家安全の強化
中国の製造業とインフラ施設は沿海に集中しており、外部打撃があれば、これら核心的な施設が破壊されるリ
スクに晒される。一方、中国の中西部地区においては、製造業とインフラ施設において大きな発展ポテンシャ
ルがあり、「一帯一路」を通じて中西部の開発を加速し、国家安全の強化にも資する。
図表4 「一帯一路」関連インフラ投資計画
原油パイプ
天然ガスパイプ
電力
中国~ミャンマー
中ロ、中国-中央アジア
西南部、中ロ電力通路の建設やグレードアップ
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港湾
鉄道
道路
原発
情報インフラ
北部湾(6年間で建設、5億トン、1000万標準箱)
中国カシュガル~パキスタンガダル(Gwadar)、4625㎞
中国~ラオス
中国~タイ
中国~キルギスタン~ウズベキスタン
広西~シンガポール
北京~モスクワ(意向有り)、7000㎞、高速列車537個
ナイジェリアの沿海鉄道
セルビアのベオグラード~ハンガリーのブダベスト
ベトナム域内鉄道
中国~タジキスタン道路改造
中国~カザフスタン道路改造
チェコ原発増産改造
アルゼンチン、ローマニアと協力意向書締結
イギリスの新規原発に、中・フランス共同建設合意
パキスタン:130億米ドルで原発ユニット3基購入、中国と交渉中
クロアチア:中国の華龍2号ユニットを2基購入の契約
2014~2017年、中国と中央アジアの越境陸上光ケーブル
出所:新聞報道などにより、三菱東京UFJ銀行(中国)中国調査室作成
Ⅳ.むすび
日米は、FTAAP には参加する意向であるが、TPP を優先する方針なので、APEC 首脳会議宣言では、
FTAAP について具体的な時期を示さず、「既存の経済協力交渉の成功を礎として、できる限り早く実現させ
たい」こととし、FTAAP 実現に向けた長い道のりが示唆されている。
一方、世界経済が長期的な不況から脱却させるために、新たな経済発展エンジンを作り出すことが共
同課題となっている。かかる中、中国が APEC 首脳会議で「一帯一路」戦略を打ち出したことは、各
国の利益にもなるし、ウィンウィン関係を実現できる。中国の企業だけでなく、世界の企業にも大き
なビジネスチャンスを意味している。「周辺国家互聯互通インフラ施設建設計画」の発表に注目しよ
う。
三菱東京 UFJ 銀行(中国)トランザクションバンキング部
中国調査室 石洪
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全国情報
【マクロ経済】
10 月の一定規模以上工業企業付加価値、前年同月比 9%増
国家統計局によると、10 月の一定規模以上工業企業付加価値は前年同月比+7.7%となり、伸び率は 9 月の
+8.0%から減速。1~10 月の工業企業付加価値は前年同期比+8.4%と、伸び率は 1~9 月から 0.1 ポイント
鈍化した。
業種別では、鉄道・船舶・その他輸送設備製造(13.2%)、自動車製造(12.6%)、非鉄金属製錬・圧延加工
(10.5%)、化学原料・化学製品製造(9%)など 39 業種が前年同月比で増加した。企業形態別では、国有企
業は 5.5%、株式制企業は 9.1%、外資企業(香港・マカオ・台湾を含む)は 5.7%とそれぞれ増加したが、集体
企業は 1.6%減少した。地域別では、東部地区が 6.8%、中部地区が 8%、西部地区が 10.4%とそれぞれ伸
びを示した。
(11 月 13 日 国家統計局)
10 月の経済指標は伸び鈍化、不動産投資は最低値に
国家統計局は 13 日、10 月の経済指標を発表し、消費、投資、輸出の経済成長の三大エンジンの伸び率が
いずれも 9 月から減速した。10 月の固定資産投資は前年同月比+15.9%と 4 ヶ月連続の低下で、年内では初
めて 16%以下に落ち込んだ。10 月の消費は 9 月の 11.6%から 11.5%に小幅低下、輸出は 9 月の 15%から
11.6%に低下した。
1~10 月の不動産開発投資は前年同期比+12.4%となり、伸び率は 1~9 月から 0.1 ポイント低下。うち住宅投
資は+11.1%と同 0.2 ポイント低下。今年以来、不動産開発投資の伸びは 9 ヶ月連続で低下しており、10 月に
2009 年 8 月以降 63 ヶ月ぶりの最低値を記録した。
(11 月 14 日付「毎日経済新聞」)
中韓 FTA、交渉段階を終え、来年発効へ
習近平国家主席は 11 月 10 日、韓国の朴槿恵大統領と会談し、中韓自由貿易協定(FTA)が交渉段階を終
えたと発表した。FTA が締結すれば、品目基準で商品分野の約 90%の関税が撤廃されることとなる。
中韓両国は、2012 年 5 月に FTA 交渉を正式に開始し、交渉段階を終えるまで 30 ヶ月、14 回の会合を経っ
た。FTA の発効には正式署名、両国当局の認可などの手続きが必要とされている。関係者によれば、早けれ
ば来年の上半期にも発効するという。
(11 月 10 日 新華社)
10 月の CPI は 1.6%上昇
国家統計局によれば、10 月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比 1.6%上昇し、上昇幅は前月と横ばいで
年内で最も低い伸びとなった。そのうち、食品価格が 2.5%の上昇に落ち着いたことが CPI 全体を押し下げた
主因と見られている。項目別では、衣類(2.4%)、居住(1.6%)、医療保健・個人用品(1.3%)などが上昇した
一方、酒・たばこが▲0.5%、交通・通信が▲0.3%、自動車用燃料・部品が▲4.9%とそれぞれ下落した。
1~10 月で見ると、CPI は前年同期比 2.1%上昇し、上昇幅は 1~9 月から横ばい、通年目標である 3.5%以
内は難なく達成できる見込み。
なお、10 月の生産者価格指数(PPI)は 2.2%下落し、3 ヶ月連続の下落幅拡大となり、国内の過剰生産能力
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や国際原油価格の下落などの影響が響いたと見られる。
(11 月 10 日 統計局)
【金融】
香港では 17 日より人民元両替上限を撤廃
香港金融管理局の陳徳霖総裁は 12 日、香港オフショア人民元市場の発展および「滬港通」の開通により、17
日より香港地元住民の 1 日 1 人当たり 2 万元という人民元両替の上限を撤廃する一方、1 日 1 人当たり 8 万
元までの大陸向け送金の上限は依然適用することを明らかにした。今後、人民元送金規制の緩和需要があ
れば、中国人民銀行と検討するという。
香港住民の人民元両替業務取扱いによるポジションは、人民元業務清算銀行経由でオンショア市場ではな
く、オフショア市場で決済することを明確化した。指定機関との人民元両替業務の決済関連規制は適用せず、
17 日よりオフショア人民元市場で決済することになる。
陳氏は、現時点の香港オフショア人民元資金プールは 1 兆元を超えており、一定規模を有することから、関
連規制撤廃後、香港住民の人民元キャッシュ両替および人民元貸出がオフショア市場で決済することに大き
な問題はないと述べ、上述の措置により香港住民の人民元取引への参与のための利便性が向上するととも
に、「滬港通」にも有用な条件を提供するほか、人民元の理財商品の開発を促進するとコメントした。
(11 月 13 日「中国証券報」)
滬港通、取引収益に 3 年間免税
財政部は 14 日、香港、上海両証券取引所による株取引の相互乗入れ制度である「滬港通」について、株取
引で得た収益に対し 3 年間の免税措置を実施することを発表した。対象となるのは、本土個人投資家の香港
株取引(港股通)に対する個人所得税と、香港の個人・企業の上海 A 株取引(滬股通)に対する個人所得税、
企業所得税、営業税である。一方、印紙税、本土企業の香港株取引に対する企業所得税、配当による企業
所得税、個人所得税は免税の対象外となる。
なお、財政部は同日、適格海外機関投資家(QFII)と人民元適格海外機関投資家(RQFII)を通じた本土株
取引などに対する企業所得税も免除することを発表したが、期間については明らかにしていない。
(11 月 14 日 財政部)
深セン証取所、「深港通」の実現に積極的
香港と上海の株取引相互乗入れ制度である「滬港通」が 11 月 17 日より開始した。これを受けて、深セン証取
所は深センと香港の間で株取引を相互に乗入れる「深港通」の実現に向け準備を進め、来年の取引開始を
目指しているという。
「深港通」については、深セン市政府は今年初めに発表した金融関連政策で触れており、すでに長い時間を
かけて計画している。また関係者によれば、証券監督当局においても「滬港通」が実現した今、「深港通」の実
施に技術的な問題はなく、深セン、上海の両証取所の公平な競争のためにも早急な導入を考えているとい
う。
(11 月 13 日「証券時報」)
10 月の金融統計、資金需要が落ち込み
人民銀行によると、10 月の人民元新規貸出額は 5,483 億元で、前年同月比 8.4%増となったが、前月の 8,572
億元からは 36%と大幅に減少した。経済成長の鈍化などによる企業資金需要の低迷が主因とされている。
10 月末時点の貸出残高は 12.9%増の 85 兆 2,100 億元で、うち人民元貸出残高は 13.2%増の 80 兆 1,300
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億元、外貨貸出残高は 7.8%増の 8,267 億ドルであった。
10 月末時点の広義通貨供給量(M2)残高は 12.6%増の 119 兆 9,200 億元で、伸び幅は前月末から 0.3 ポ
イント鈍化した。
10 月の社会融資総額は前月より 4,728 億元減少した 6,627 億元となった。不動産市場の低迷や製造業・中小
企業の資金需要の落ち込みが響いたと見られている。
(11 月 15 日 人民銀行、ほか)
【産業】
天猫、「11.11」の成約額は 571 億元、モバイル端末による成約額は全体の 4 割強
中国の電子商取引最大手・阿里巴巴(アリババ)が 12 日に発表したデータによると、インターネットでバーゲン
セールが行われる 11 月 11 日「光棍節(シングルデー)」の取引額は 571 億元、このうち、モバイル端末を通じ
た取引額は 243 億元と全体の 42.6%を占めた。一方、昨年の取引額は 362 億元、モバイル端末は全体の
23%を占めた。今年は半日だけで昨年一日の取引額を上回った。
売上高トップは昨年と同じく、携帯電話メーカーの小米科技(シャオミ)で、通信機器の華為技術(ファーウェ
イ)と家電のハイアールがそれぞれ 2 位、3 位を占めた。カジュアル衣料のユニクロが前年より順位を 1 つ上げ
て売上高で 5 位に入った。
(11 月 12 日 和迅科技ほか)
一線都市の不動産在庫は減少、在庫販売比率は下落
不動産研究機関の上海易居房地産研究院が 12 日に発表したデータによると、10 月末現在、35 都市の新築
分譲住宅の在庫面積は 28,040 万㎡で、前月比+0.1%、前年同月比+21.3%となり、前月比上昇幅は今年 3
月以来の最小となった。一・二・三線都市の在庫面積はそれぞれ 3,758 万、20,217 万、4,064 万、前月比上昇
幅はそれぞれ▲0.9%、+0.3%、+0.3%、一線都市の在庫消化が一番速いことを示している。一線都市の在
庫面積は 8 ヶ月連続の前月比上昇から、10 月に初めての下落となった。同 4 都市では人民銀行の新しい不
動産政策を受けて、買い換え購入需要が出たとみられる。
10 月、35 都市の新築分譲住宅の販売比率(販売に対する在庫の割合)は 16.7 ヶ月と、9 月の 17.7 ヶ月から
低下した。一・二・三線都市の在庫販売比率はそれぞれ 15.7 ヶ月、16.0 ヶ月、23.9 ヶ月となり、9 月の 17.2 ヶ
月、16.7 ヶ月、25.3 ヶ月からいずれも下落した。
(11 月 13 日付「第一財経日報」)
三峡集団、ロシア水力発電プロジェクトを合弁展開
中国長江三峡集団(三峡集団)はこのほど、ロシアと合弁会社を設立して、ロシア極東地方に水力発電所を
建設・運営することに合意したと発表した。三峡集団が 2010 年にロシア最大のロシア水力発電集団と戦略提
携を締結して以来、双方は水力発電開発でさらに実質な進展を遂げた。
三峡集団は合弁の詳細を明らかにしていないが、ロシアメディアによると、双方の出資比率はロシアが 51%、
三峡集団が 49%。プロジェクトの投資総額は 2,300 億ルーブルとなる見通し。資金は両国の金融機関から調
達するという。
三峡集団は今年、海外進出を強化する方針を明らかにしており、海外での設備規模は三峡ダムの設備規模
に達し、海外投資、建設、運営、コンサルティングという四大国際業務セクターを形成する目標を示した。
(11 月 13 日付「21 世紀経済報道」)
10 月の新車販売台数は前年同月比 2.8%増
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BTMU(China)経済週報
2014 年 11 月 19 日 第 229 期
自動車工業協会によれば、10 月の新車販売台数が前年同月比 2.8%増の 198 万 7,200 台で、伸び幅は前月
の 2.5%から 0.3 ポイント拡大した。そのうち、乗用車は 6.4%増の 170 万 8,900 台、商用車は 14.9%減の 27
万 8,300 台であった。
乗用車販売台数を車種別に見ると、セダンは 0.6%減の 105 万 2,500 台、スポーツタイプ多目的車(SUV)は
36.3%増の 38 万 7,300 台、多目的車(MPV)は 36.3%増の 18 万 4,300 台、クロスオーバー車は 33.4%減の
8 万 4,800 台となった。
1~10 月の新車販売台数は前年同期比 6.6%増の 1,898 万 8,100 台で、伸び率は 1~9 月の 7%から 0.4 ポ
イント鈍化した。そのうち乗用車は 9.8%増の 1,586 万 4,400 台、商用車は 7.1%減の 312 万 3,700 台となって
いる。
乗用車販売のシェアでは、地場系ブランドは 39.54%で、セダンタイプでは 22.76%といずれも 9 月より 1 ポイ
ント以上の拡大を記録した。外国勢はドイツ系が 18.91%、日系が 16.44%、米国系が 12.31%、韓国系が
8.75%、フランス系が 3.69%となっている。
(11 月 16 日 自動車工業協会)
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BTMU(China)経済週報
2014 年 11 月 19 日 第 229 期
地方情報
【北京】大学生の起業促進を支援
【上海】小規模企業従業員の社会保険一部負担
で雇用支援
北京市人力と社会保障局は 11 月 11 日、「北京地区大
学生の起業誘導計画実施プラン」を発表し、2017 年ま
でに少なくとも 2 万 3,000 人の大学生起業家を促す目
標を発表した。目標の実現に向け、起業関連課程を
大学の教育課程に導入、起業に関する研修の強化、
学生の起業に向けた資金調達を利便化すること、大
学生の起業園区を設立するなどのサポート策を展開
する方針である。その他、関連部門や大学に学生の
起業状況を把握することも求めた。
上海市人力資源社会保障局は 10 日、上海市戸
籍の大学卒業生などを対象とした雇用支援策を発
表した。対象となるには、上海市戸籍を持つ大学
新卒生、1 年以上の労働契約締結、初めての就職
であることなどの条件が設定されている。企業側に
対し、社会保険負担を 1 人当たり毎月 500 元軽減
する。期間は 1 年間。当局は社会保険負担を一部
軽減することで、新規卒業生の雇用拡大を促す狙
いとみられている。
(11 月 11 日付「京華時報」)
(11 月 11 日付「東方早報」)
【蘇州】地下鉄 3 号線が着工へ
【広州】「黄標車」の早期廃棄に補助金
蘇州市の地下鉄 3 号線建設計画(修正案)がこのほ
ど、発展改革委員会により承認され、年内の着工、
2019 年中の開通を目指しているという。
広州市政府は、国の排ガス基準を満たさない旧型
自動車「黄標車」の早期廃車を促すため、来年末
までに廃棄を申請すれば、車両の耐用年数や車
種により最低 5,000 元、最高 3 万元の補助金を支
給する方針を発表した。広州市は今回の補助金
政策を通じ、来年末までに黄標車 11 万 1,000 台
を淘汰し、2017 年までに市内全域での黄標車の
走行禁止を目指すという。
地下鉄 3 号線は高新区にある「高鉄蘇州新区駅」を始
発に、高新区を南北に縦断して、市街地の呉中区の
中心部や工業園区内の中央ビジネス区を経由し「陽
澄湖半島」の夷亭路駅までを結ぶ。全長 45.2 キロで、
全部で 37 駅を設置する予定。
(11 月 12 日付「新華ネット」)
(11 月 14 日付「広州日報」)
【深セン】第 8 回国際金融博覧会は閉幕
【天津】APEC 期間中の PM2.5 濃度は 28%低下
深セン市会議展覧センターで開催されていた第8回
中国(深セン)国際金融博覧会が 3 日間の日程を終え
閉幕した。
天津市の 11 月 1~10 日の PM2.5 汚染濃度が前
年同期比 28.2%低下した。アジア太平洋経済協
力会議(APEC)期間中の大気汚染対策が奏功し
たとみられる。天津市では 6~11 日、大気汚染を
改善するための緊急措置を発表し、市内企業
1,953 社に生産や排出の制限を行ったほか、工事
現場作業の取りやめ、重点企業の排出に 24 時間
のモニタリング、自動車の通行制限などを実施し
た。
今回の博覧会の来場者数は延べ 10 万人を超え、国
内外からインターネット金融、銀行、証券、保険、ファ
ンドなど 214 団体・企業が出展し、関連のハイテク、省
エネルギー・環境保護、電子商取引、サプライチェー
ンなどが紹介された。その他、会場では 20 余りの研究
フォーラムも開かれた。
(11 月 10 日付「深セン特区報」)
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(11 月 12 日付「北方ネット」)
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BTMU(China)経済週報
2014 年 11 月 19 日 第 229 期
BTMU の中国調査レポート(2014 年 10~11 月)
„
BTMU 中国月報 第 106 号 (2014 年 11 月)
http://www.bk.mufg.jp/report/inschimonth/114110101.pdf
国際業務部
„
経済レビュー
上海・香港市場の相互開放で新たなステージを迎える中国の株式市場改革
https://Reports.btmuc.com/File/pdf_file/info005/info005_20141031_002.pdf
経済調査室
„
海外経済フラッシュ
中国:2014 年 7-9 月期 GDP は前年比+7.3%へ減速
https://Reports.btmuc.com/File/pdf_file/info005/info005_20141021_001.pdf
経済調査室
„
ニュースフォーカス第 19 号
広東省人力資源社会保障庁、2014 年の賃金ガイドラインを発表
https://Reports.btmuc.com/File/pdf_file/info005/info005_20141031_001.pdf
香港支店・業務開発室
以上
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