国有企業改革の指導意見がようやく公布

BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
国有企業改革の指導意見がようやく公布
~企業の管理から資本の管理へ
中国トランザクションバンキング部
中国調査室
メイントピックス...................................................................................................................... 2
国有企業改革の指導意見がようやく公布~企業の管理から資本の管理へ .........................................................2
¾
9 月 13 日、国務院は「国有企業改革の深化に関する指導意見」を公布し、市場に期待されていた国有
企業改革のマスタープランがようやく打ち出されたことで、国有企業改革は新たな段階へと前進した。
¾
「意見」では、国有企業の分類改革、現代的な企業制度の確立、国有資産管理体制、混合所有制経
済など改革における重点を明確化し、改革の重点となる領域において、2020 年までに決定的な成果を
達成するとの目標を示した。これらは国有企業改革のトップデザインとして、市場に大きく注目される一
方、大まかな枠組みを示したものにとどまることから、今後、さらに詳細化された政策の徹底が期待され
ている。
プロフェッショナル解説(税務会計) MAZARS/望月会計士 .......................................................... 8
今月より専門家による解説を隔週で連載致します。今週は望月会計士による解説です。 ...................................8
¾
最近、経済関連の話題の中で BEPS という言葉をよく耳にするようになりました。これは、国際税務分野
における新たな取組みである Base Erosion and Profit Shifting の略称で「税源浸食と利益移転」と日
本語で表現されます。
¾
BEPS とは、ヨーロッパを中心に 100 年以上続いてきた 2 国間の租税条約をその基礎とする国際税務
の枠組みについて転換をもたらすものといえ、今後の国際税務における新しい流れの基礎をなすもの
といえます。
BTMUの中国調査レポート(2015 年 9 月) ............................................................................. 10
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
1
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
メイントピックス
国有企業改革の指導意見がようやく公布~企業の管理から資本の管理へ
2015 年 9 月 13 日、国務院は「国有企業改革の深化に関する指導意見」(以下、「意見」と略称)を公布し、市
場に期待されていた国有企業改革のマスタープランがようやく打ち出されたことで、国有企業改革は新たな
段階へと前進した。
「意見」では、国有企業の分類改革、現代的な企業制度の確立、国有資産管理体制、混合所有制経済など
改革における重点を明確化し、改革の重点となる領域において、2020 年までに決定的な成果を達成するとの
目標を示した。これらは国有企業改革のトップデザインとして、市場に大きく注目される一方、大まかな枠組み
を示したものにとどまることから、今後、さらに詳細化された政策の徹底が期待されている。
Ⅰ.国有企業改革の経緯と現状
【図表1】国有企業規模(2013年末時点)
企業規模と業界・地域分布
中国は世界最大規模の国有資産と国有企業を
有している。財政部の統計によると、2013 年末
時点、中国の各種国有企業は約 16 万社、うち
中央国有企業 1 は約 5.2 万社、地方国有企業1
は約 10.8 万社であった(図表 1)。
中央国有企業のうち、直接的に国有資産管理
委員会(国資委)に管理されるのは 112 社、財
政部が直接出資者となるのは 6,000 社、間接出
資者となるのは 4 万社余りである。中央国有企
業を管理する二つの主体は、それぞれ国資委
と財政部である。このうち、国資委が中国石油、
中国石油化工、中国移動などの特大型実業中
央国有企業を管理し、財政部企業司が中国郵
政、中国煙草、中国鉄路などの寡占、専売的な
特大型国有企業を管理する。そのほか、中央
匯金が国を代表して金融企業の株を所有する
形で、四大銀行、新華保険、国泰君安証券な
ど多数の特大型金融国有企業を管理する。
順位
地域
1
上海
広東
2
3
浙江
北京
4
山東
5
江蘇
6
山西
7
8
福建
天津
9
10
河南
四川
11
12
广西
陜西
13
14
遼寧
雲南
15
16
安徽
地方国有企業合計
中央企業
合計
(出所)財政部
企業数
順位
地域
11,021
7,985
7,520
7,098
5,721
5,617
5,553
4,750
4,078
4,042
3,736
3,636
3,566
3,311
3,266
2,870
107,857
51,327
159,184
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
河北
重慶
黒龍江
湖北
貴州
湖南
江西
甘粛
新疆
内モンゴル
海南
吉林
青海
寧夏
チベット
企業数
2,825
2,765
2,728
2,547
2,413
2,259
1,742
1,569
1,510
901
706
667
585
459
411
業界分布からみると、中央国有企業は石油・石油化工、電信、金融、軍需などの寡占的な業界に集中してい
るほか、不動産、食品などの競争的な業界にも多い。他方、地方国有企業は中核産業や公共インフラ分野に
集中している。例えば、上海市の経営性企業資産の 8 割以上は戦略的新興産業、先端製造業、現代サービ
ス業などに、陜西省、河南省に所属する国有企業の資産はエネルギー・化学工業、設備製造、非鉄金属など
の業界に集中している。また、重慶市に所属する国有企業の 30%の資産は公共インフラ分野に集中しており、
湖北省の交通投資集団 1 社のみの資産で省所属の経営性資産全体の 50%以上を占めている。
地域別でみると、各地の国有企業の発展水準には明暗が分かれている。上海市の国有企業は資産管理から
資本管理へと転換しつつあり、国有企業の全体的な再編および上場を推進している。一方、計画経済からの
1
それぞれ中央政府、地方政府が管理監督する国有企業を指す。
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
2
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
離脱が遅れている東北地域では、当地の経済に対する国有企業の寄与度が大きいため、国有企業改革とい
う任務が重い。
Wind のデータによると、2015 年 7 月現在、中国の国有企業資産は 109 兆 4,000 億元、負債は 71 兆 2,600
億元、負債比率は 65.1%となっている。改革の深化により、百兆元規模の資産を活性化することで、経済に
新たな活力をもたらすことが望まれている。
改革の経緯
国有企業改革におけるこれまでの 30 年余りの歴史を振り返ると、「放権譲利」(譲限委譲と利益留保)、「両権
分離」(所有権と経営権の分離)、現代企業制度、国有資産管理制度などの改革が続けられ、一歩一歩推進
されてきた(図表 2)。2003 年からの国有企業改革第三段階においては、経済の高度成長に伴い、2013 年に
おける国有企業の資産規模と営業収入、利益はいずれも 2003 年当時から 4 倍以上に拡大している(図表
3)。
【図表2】国有企業改革30年間のプロセス
時期
キーワード
目的
措置
効果
1979年、北京、天津、上海で首都鋼鉄公司、天津自転車工場、上海ディー
形式上は現代企業制度への転
国有企業を計画経済下の政府 ゼルエンジン工場など8社を選定し、自主経営権の拡大を試行する
1978~1992 「放権譲利」、「両権分離」 部門から社会主義市場経済下の
換を完成したが、実質的な制度
1984-1986年、北京、上海、広東、四川、遼寧など一部の集体・国有中小企 は確立していなかった
企業へと転換
業は株式制の試行を展開、股份(株式)有限公司を設立。このうち、北京
天橋百貨、上海飛楽音響、上海延中実業などは公開株式を発行
1994年11月、国務院は100社を現代企業制度確立の試行に確定。1997年
の試行完了時、17社のみ投資主体多元化の株式制を実行したが、多数の
企業は国有独資企業の形をとった
国有企業を強大にし、再編統合
国有経済の割合が上昇、国有経
や管理強化により、経営管理水
済は依然その他の所有制経済の
1993~2002 現代企業制度、優勝劣敗 準と競争力を向上させ、国有経 1996年、国有企業の破産件数は過去9年間の合計を超えた
1994-2002年、全国で実施された政策的閉鎖破産案件は3,080件
上に定められた
済への主導的な作用を発揮
1997年、第15期一中全会で、3年間で大多数の国有大中型赤字企業の苦
境脱出を実現すると明確化
2000年、苦境脱出目標をほぼ達成、国有企業の利益は3,786億元となった
2003年4月、国資委が設立。国有企業間の合併再編により企業数を11万
社に削減、うち中央国有企業は113社に削減するも、重要業界・分野の
・国有企業を強化し、株式制改革 80%以上の市場シェアを支配
国資管理体制の制約により、政
により混合所有制を推進、現代
2006年、国務院は「国有資本調整および国有企業再編に関する指導意見
府の経済・行政・社会管理と、国
企業制度を確立し、多くの大型
」を公布
国有資産管理体制改革、
有企業の経営管理とが分離しな
中央国有企業が株式市場に上
2003~2013 株式制改革
新規公開株(IPO)において、すべての株式を市場に流通させる「全流通」を
い(「政企不分」)問題はより深刻
場
実現。中国工商銀行、中国国航、中国建設銀行、中国神華、中国石油など
化した
・公用経済と非公用経済をともに
の大型株はA株市場に上場
揺るぎなく発展
2008年10月、第11期全国人大常務委員会第5次会議で「企業国有資産法」
が可決され、国有資産出資者制度の構築に法律的根拠を提供した
2013~現在 混合所有制
国有企業内部だけではなく、国
有資産管理体制も改革
2014年2月、中国石油化工は独占的国有企業の中で初めて社会・民営資
国有企業の「政企不分」、効率低
本を導入、混合所有制経営を実現
下、巨大債務の問題が深刻化し
2014年7月15日、中央国有企業6社は第一陣の国有資本「四項改革」の試 ており、改革が迫られる。一方、ト
ップデザインの公布により、今後
行に入選
の改革の広範さや深さが期待さ
2015年9月13日、国務院はトップデザインとなる「国有企業改革の深化に関 れる
する指導意見」を公布
(出所)公開資料を基に当行中国調査室作成
過去 3 段階の改革を通じて、国有企業は企業制度、内部経営管理、業績において大きな発展を遂げてきた。
ところが、ここ数年で国有企業の成長が鈍化しており、国有企業の経営効率は民営企業を下回っているうえ、
両者の格差が拡大傾向にある。国有企業の経営管理は粗放的で、活力も民営企業に劣るといった問題が顕
在化しており、改革が迫られている。
【図表3】国有企業の資産収益規模の対比
(単位:兆元)
資産総額
2003年
20.0
2013年
91.1
(注)金融業国有企業を含まない
(出所)財政部
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
純資産
営業収入
7.1
31.8
10.0
46.5
3
利益総額
0.5
2.4
資産収益率 販売利益率
6.7%
7.6%
4.8%
5.2%
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
Ⅱ.改革の主要内容
改革の目的、原則、目標
「意見」は、①市場で主体的な地位となる企業の未確立、現代企業制度の未健全、効率の低下、②管理の混
乱、内部者支配(インサイダー・コントロール)、関連取引、③党の指導力弱化、などの国有企業における問題
を踏まえ、国有企業の活力増強を中心に、優秀且つ強大な企業を目指し、国有経済の活力・支配力・影響力
およびリスク対応力を強化させ、自ら「新常態」に適応し、「新常態」をリードするという目的を明らかにした。
改革の基本原則として、基本経済制度の堅持と完備、社会主義市場経済の改革方向の堅持、活力増強と監
督強化の結合の堅持、共産党指導の堅持、積極的・着実的な推進の堅持の 5 項目が示された。
改革の主要目標として、2020 年までに国有企業改革の重点分野において決定的な成果を達成し、中国の基
本経済制度と社会主義市場経済の発展要求に符合した国有資産管理体制、現代企業制度、市場化された
経営体制を形成し、国有資本の配置構造をより合理的にすることとした。具体的には、国有企業の会社制度
改革がほぼ完成すること、国有資産の監督制度がより成熟化すること、国有資本の配置効率が向上すること、
企業における党の建設が強化されることが示された。
中心点:所有権と経営権の分離
「意見」は基本原則の中で、「政企分離」(政府の経済・行政・社会管理と企業の経営管理との分離)、「政資
分離」(政府の公共事業管理と政府を国有資産の管理者とする権限の分離)、所有権と経営権の分離を明確
にした。
「所有権と経営権の分離」は、第 18 期「三中全会」の「決定」(「改革の全面的な深化に向けての若干の重大
な問題に関する決定」)および「2015 年経済体制改革深化の重点工作意見に関する通知」において言及され
たことはないが、地方の国有企業改革方案ではいくつか言及されたことがある。国有企業の所有者として、国
資委が国有企業の日常経営へ介入することは国有企業経営における問題点であった。「所有権と経営権の
分離」は、資本管理の実現、コーポレート・カバナンスの完備、混合所有制の推進など一連の具体的改革措
置の基礎でもあり、進捗状況はある意味で今回の国有企業改革の成果を決定するともいえる。
四つの方向
¾
国有資産管理体制の整備=「国資委-国有資本運営・投資会社-混合所有制企業」の三重構造へ
「資産管理および人事管理」から「資本管理」への転換は過去の国有企業改革と比べて最大の変化であり、
「所有権と経営権の分離」を最も直接的に体現するものである。「資本管理」は国有企業監督部門が企業経
営に対する過度な関与を防止し、国有企業高級管理職の権利と責任を明確化した。これにより、従来の「国
資委--国有企業」の二重構造から「国資委-国有資本運営・投資会社-混合所有制企業」の三重構造へと
転換することとなる。
資本管理という監督体系を実現する中、国資委に代わって国有企業の株主となる「国有資本投資運営会社」
の設立は、国資委を企業の日常経営から分離させることから、改革の重要な一環となる。国有資本投資運営
会社が設立されると、国資委は国有資本投資運営会社の管理・評価を、国有資本投資運営会社は国有資産
の統合と資本操作を行い、国有企業は自分の意思で経営を行うようになる。
具体的には、経営管理に関して、国資委は「権力と責任リスト」の範囲内における国有資本運営・投資会社を
通じた国有資本の配置、資本操作の規範化、資本収益率の向上、資本の安全性の確保などを行う。企業の
自主経営決定権を企業に復帰させ、公共管理機能を関係政府部門に復帰させることにより、資産から資本の
管理への転換を図る。経営体制においては、国資委は国有資本運営・投資会社に出資者の職責を授権し、
それを受けた国有資本運営・投資会社は出資企業に対して投融資、資本統合、株式操作など実質的に株主
としての権利を履行する。
資本流動の面においては、①国有資本を国家安全や国民経済に係わる重要な業界と分野および戦略的新
興産業に集中する。②「優勝劣敗(競争力の高いものが生き残り、競争力の弱いものは淘汰されること)」の市
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
4
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
場化された退出メカニズムを構築し、低効率資産の処理を加速させ、過剰生産能力を淘汰する。③企業が証
券化の方式により、公正価値(Fair value)によって企業資産を処理し、現金化した資金を必要とされる分野
や業界に投資することを支援する。④国有企業間およびその他所有制企業との間で、資本提携により、国際
的な経営展開を支援する。
また、このほか、経営性国有資産の集中監督管理を推進し、党政機関や公的機関に所属する企業の国有資
本を経営性国有資産に組み入れ、条件を満たす国有資本を国有資本投資運営会社に組み入れる。加えて、
経営予算管理を強化し、すべての国有企業をカバーする国有資本経営予算管理制度を構築する。国有資
本収益の公共財政に対する納付金比率については、現在の 25%、20%、15%、10%、免除の 5 段階制から
2020 年までにすべてを 30%に引き上げ、民生の保障や国民生活の改善に用いる。なお、一部の国有資本を
社会保障基金に引き当てる予定である。
¾
分類管理
「意見」では、図表 4 にあるとおり、国有企業を公益類と商業類に分類し、公益類国有企業は公共製品とサー
ビスを提供し、民生の保障や社会効果を志向するが、製品やサービスに関する価格は政府が策定することで
社会大衆の利益を保障する。例えば、水・電力・ガスなどの市政企業が公益類国有企業に属している。一方、
商業類国有企業は経済収益を志向し、国有経済の活力増強、国有資本機能の拡大、国有資産の価値増加
が目標とされている。
商業類国有企業はさらに商業競争類と特定機能類に分類される。商業競争類国有企業の主力業務は市場
競争が進んでいる業界や分野にあり、例えば、消費や自動車製造業などがある。他方、特定機能類は、主力
業務が国家安全や国民経済の重要なものに係わる業界と分野にあり、国家の安全保障に関して重大な任務
を担う企業はたいてい特定機能類国有企業に属しており、電力、電信、軍需などの産業が含まれている。
この分類は出資者の別により分類されることを原則として、適宜、実際の状況に応じて見直されるほか、それ
ぞれの分類により改革目標、国資持株、評価目標が異なる。分類管理の最大の注目点は商業競争類企業の
株式規制緩和にあり、商業競争類企業に対して、会社制改革を行い、国有資本は絶対持株、相対持株また
は株式参入可能のいずれかになる。一方、特定機能類に対しては、非国有資本を導入し、株主の多元化を
図る。
【図表4】国有企業の分類改革
類別
商業競争類
商業類
公益類
改革目標
持株要求
評価指標
株式制改革を実施、その他国有資本ま
たは各種非国有資本を導入することに 国有資本は絶対持株、相対持株または 経営業績指標、国有資産の価値増幅、
より株式の多元化を図り、グループ会社 株式参入が可能になる
市場競争力
全体的な上場を積極的に推進
・「自然独占業界」に対して、「政企分離
経営業績指標や国有資産の価値増幅
」、「政資分離」、特許経営、政府監督を
を評価するほか、国家戦略サービス、
主要内容とする改革を実施
国有資本による持株を維持、非国有資
特定機能類
国家安全と国民経済運営の保障、戦略
・競争的業務を開放し、公共資源配置 本の株式参入を支援
的新興産業の発展、特殊任務の完了に
の市場化を促進。特殊業務と競争業務
対する評価を強化
を分離させ、独立運営、独立決済を行う
-
国有独資の形式をとるが、条件を備え 業界別に経営業績指標(コストコントロ
たものは株主の多元化を推進するほか ール、製品サービスの質、運営効率、
市場メカニズムを導入し、公共サービス
、サービス購入、特許経営、委託代理な 保障能力を重点)や国有資産の価値増
効率と能力を向上
どの方式により、非国有企業の経営参 幅状況を評価するとともに、社会評価を
与を奨励
導入
(出所)「国有企業改革の深化に関する指導意見」を基に当行中国調査室作成
¾
現代企業制度の整備
① コーポレート・カバナンスの完備:董事会の設置が重点とされており、董事会の形骸化の問題を解決する。
董事会が法に基づいて重大決定、任用を行うことや賃金分配における権利を徹底し、董事会の内部統
制を強化したり、董事に対する評価や管理を強化することで、董事会が経営陣の経営自主権を保障す
る。
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
5
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
② 高級管理職の選抜任用:法に基づく高級管理職の選抜任用の権限を董事会に与える。国有企業の類型
により選任制、委任制、任用制などの方式とする。プロフェッショナルマネージャー制度、高級管理職の
退出(「弱者淘汰」)制度を実行する。
③ 内部採用制度:企業内部の各種管理職の公開招聘、競争任用のメカニズムを徹底し、外部人材市場との
連動制を拡大して、企業内部における人員流通メカニズムを強化する。
④ 賃金制度改革:企業内部の賃金分配権は企業の法定権利であり、高級管理職と職員の賃金は業績志向
とし、合理的な所得分配の格差を認めているが、高級管理職の賃金規制は明確化されていない。
¾
混合所有制の発展
「意見」では国有企業の混合所有制改革を着実に推進し、タイムテーブルを設けずに、条件が整えば推進す
る方針を示した。非国有資本による国有企業改革への参入を奨励し、石油、天然ガス、電力、鉄道、電信、資
源開発、公益事業などの分野で、非国有資本向けの産業政策と符合し、成長モデル転換に有利になるプロ
ジェクトを打ち出す。他方、国有資本による非国有企業への出資も奨励しており、市場化の形式により、公共
事業、先端技術、エコ・環境保護、戦略的新興産業を重点分野として、発展潜在力が高く、成長性が大きい
非国有企業に対して株式投資を行う。これまでの混合所有制改革は国有企業に非国有資本を導入すること
がメインであったが、逆の方向である国有資本の非国有企業への出資が新たに提起された。
また、混合所有制企業の従業員持株制を模索する。人材資本と技術要素の割合が高い科学技術機構、ハイ
テク技術企業、科学技術サービス型企業が従業員持株制の試行を行い、企業の経営業績と持続的発展に
大きな影響を有する科学技術者、経営管理者と中核的な地位にある者による持株を支援する。国有資産の
流失を防ぐため、従業員持株制は増資による持分拡大や出資新設などの方式をとる。
Ⅲ.国有企業改革に期待するもの
国有企業の合併再編が加速
「意見」では、「一部の国有企業を整理・退出、一部の国有企業を再編・統合、一部の国有企業を革新・発展
させる」という方針を打ち出しており、今後、国有企業の改革が加速し、新たな段階に入っていくことが見込ま
れる。具体的には、生産能力の過剰や赤字企業の淘汰、「強強連合」や業界集中度の向上が見込まれる企
業の再編、および新シルクロード「一帯一路」やハイエンド設備製造の海外進出戦略における中央国有企業
の再編、科学技術をリードする企業や国家発展に重要な意義を持つ企業の革新発展が加速するとみられて
いる。業界別には、建材、セメント、鉄鋼、非鉄金属、石炭などの生産能力過剰業界、海上運輸、船舶製造、
軍需など発展段階、国家戦略などの要因により統合対象になる業界が挙げられる。
資本管理は国有企業改革深化の突破口
資産管理や人事管理から資本管理を主とする国有資産管理体制を確立することは、「意見」の最大のポイン
トとみられており、国有企業に本質的な変化をもたらすとみられている。2013 年末からスタートした第 4 段階の
国有資本・国有企業改革は、さらに市場化の方向へ進展しており、国レベルで国有資産を資本化へ転換す
ることが求められており、資本の管理こそ国有企業改革深化の突破口だとみられている。
政府は企業管理から資本管理へ転換すれば、株主権利を行使し、国有資産の投資収益の向上に注力すれ
ばよく、株式により国有企業間における資本の再配置を実現することができる。
また、「意見」で言及された企業経営権の転換、国資委の機能の見直し、国有企業管理職の市場からの選抜、
企業グループレベルの混合所有制改革などは、現状を突破するような革新だとみられる。ただ、混合所有制
改革の実施であれ、国有企業の合併再編の加速であれ、資本市場を通じて国有資本の証券化を推進するこ
とが求められる。
さらなる詳細化が期待される
「意見」の公布は、国有企業改革の「1+N」全体計画の「1」というマスタープランがようやく公布されたことを意
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
6
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
味する。一方、「意見」は依然として大まかなものであるため、さらに詳細化される必要がある。「意見」の公布
に続いて、「N」に相当する部分の施策および第二陣の中央国有企業改革試行や各地の改革の細則も相次
いで打ち出されることが予測され、国有企業改革は着実に徹底されるだろう。なお、「N」に相当する部分の施
策には、国資委が担当する国有企業機能の位置づけと分類、財政部が担当する国有資本投資運営方案、
国家発展改革委が担当する混合所有制改革方案、および人的資源社会保障部が担当する賃金制度改革
方案などが含まれる。
9 月 24 日、マスタープラン公布後の初の関連文書となる「国有企業の混合所有制経済の発展に関する意見」
が打ち出された。政府の権限委譲と業界からの撤退を混合所有制改革の中心として、ネガティブリストを初め
て導入した。国有独資または国有持株が必要となる分野を明らかにし、民間資本の参入を完全に禁止するの
ではなく、民間資本進出可能な分野、資本参入の方法および出資比率を明確にした。とりわけ、電力、石油、
天然ガス、鉄道、民用航空、電信、軍需など七つの分野において、混合所有制改革試行を行い、競争的な
業務を開放し、混合所有制改革を推進する。また、インフラや公共サービス分野で代表的な政府投融資プロ
ジェクトを選定し、多様な政府と社会資本の協力(PPP)モデル試行を行い、他の地域へ複製可能・普及可能
なモデルと経験の形成を加速する方針が示された。
今後は、更なる「N」に相当する部分の施策発表に伴い、国有企業改革が本格的な実施段階に入ることが期
待される。ただし、国有企業改革は短期的に実現できるものではないため、各分野で国有企業改革を急速に
推進するのは困難であり、改革に紆余曲折が生じるであろうものの、市場化という方向性は変わらないだろう。
国有資本管理制度、現代企業制度、分類管理、混合所有制改革という四つの改革に新たな進展を遂げ、
2020 年までに国有企業の効率性向上と活性化、国有資産の価値増加、国有企業と民間企業の共同的発展
の実現が期待される。
三菱東京 UFJ 銀行(中国) 中国トランザクションバンキング部
中国調査室 孫元捷
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
7
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
プロフェッショナル解説(税務会計) MAZARS/望月会計
士
今月より専門家による解説を隔週で連載致します。今週は望月会計士による解説です。
最近、経済関連の話題の中で BEPS という言葉をよく耳にするようになりました。これは、国際税務分野におけ
る新たな取組みである Base Erosion and Profit Shifting の略称で「税源浸食と利益移転」と日本語で表現さ
れます。
近年、多国籍企業からの税収が減少傾向にあることが問題視されています。リーマンショック後の財政悪化や
所得格差の拡大を背景に、一部の欧米多国籍企業が然るべき国で適切な納税をしていないことが英国議会
等において政治問題化したことを契機として、各国が協調し制度調和を図るべく、税制の隙間や抜け穴を利
用した租税回避行為を防止するため、国際的組織である OECD(Organisation for Economic
Co-operation and Development)における BEPS 行動計画として 15 のアクションプランが掲げられ、2015 年
12 月末までに最終報告がまとめられる予定となっています。
その後、日本を含む OECD 加盟国や中国を含む G20 メンバーは、それぞれの国内における制度化に向けた
動きをとることになっています。
これまで、国際税務とは、2 国間条約により自国の課税権を調整し、グローバル経済の発展を阻害する国際
的 2 重課税を排除することをその主要な使命として発展してきました。しかしながら、近年の一層の企業の巨
大化及び多国籍化並びにインターネットの普及によるバーチャルエコノミー及びボーダレス化の急速な発展
に伴い、多くの多国籍企業は従来の租税条約等の枠組みを利用することにより国際的課税負担低減スキー
ムを開発し、特定の国の課税権として捉えられてきたものを著しく侵害するようになりました。
例えば、グーグルは 2006 年から 2011 年の間に英国での売上額 180 億ドルに対して法人税負担は 1,600 万
ドルであり、これについて 2012 年 11 月に実施された英国下院決算委員会の公聴会での質問には、合理的な
制度に従ったものである旨を述べたものの、決算委員会からは道徳的に許しがたいものとの厳しいコメントを
受けるものとなっています。
ここでグーグルが国際的課税負担低減のために採用していたダブルイアイリッシュ・ダッチサンドイッチと呼ば
れるスキームは、各地で得た利益をアイルランド、オランダ、アイルランド、英国領バミューダに送金することに
より、税率の高いイギリスにおいては課税所得を極めて効率的に低減するという複雑なものとでした。
現在、このようなスキームの多くが多国籍企業により採用されていますが、これらの採用自体は現時点におけ
る国際税務の観点からは、合法的なものと考えられています。
しかしながら、同時に、このように国内で活発な経済活動を行う多国籍企業に対して、課税権を行使できない
スキームの利用は、各国の財政に極めて重大な不安定要素をもたらすものであり、これらの企業行動を誘発
する現在の国際課税の枠組みを転換させることの必要性が強く叫ばれるものとなりました。また、このために
は 2 カ国間の条約だけでは不十分であり、より多くの国において同時に採用できるような制度的な担保が必
要とされることになりました。
これらの多国籍間における同時採用という観点から、従来より国際課税について関与を行ってきた国際的機
関である OECD による提言という形をとりつつも、強い拘束力を有しない OECD による提言に対して、各国政
府部門の合議体である G20 における首脳宣言という形で、各国が協力して全面的な支持を与えるという対応
がとられることとなりました。
また、中国については OECD のメンバーではないものの、今年 2015 年に OECD との協力協定に署名すると
ともに、OECD 開発センターのメンバーとなり、さらに、2016 年は G20 においても議長国を務める主要メンバ
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
8
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
ーとして、既に様々な政治宣言の中で BEPS への対応に強い支持を表明しており、中国関連ビジネスに携わ
る上では今後、BEPS に関する理解を深めることが必要不可欠になっていくものと考えられます。
つまり、BEPS とは、ヨーロッパを中心に 100 年以上続いてきた 2 国間の租税条約をその基礎とする国際税務
の枠組みについて転換をもたらすものといえ、今後の国際税務における新しい流れの基礎をなすものといえ
ます。
次回以降では、BEPS に掲げられる以下の 15 項目についてその概要と日本及び中国における取扱いについ
て解説していきたいと思います。
項目
対応問題
1
電子経済の課税上の課題への対応
電子経済(源泉判断)
2
ハイブリッド・ミスマッチに係る取決めの効果の無効化
国際調整(租税条約)
3
CFC 税制(外国子会社合算税制)の強化
国際調整(課税権侵害)
4
利子損金算入や他の金融取引の支払いを通じた税源浸食の制限
国際調整(租税条約)
5
透明性や実体の考慮による有害税制への効果的対抗
国際調整(課税権侵害)
6
条約濫用を防止
国際基準(租税条約)
7
PE 認定の人為的回避防止
国際基準(租税条約)
8
移転価格の結果が価値の創造と一致することの確保:無形資産
国際基準(課税権侵害)
9
移転価格の結果が価値の創造と一致することの確保:リスクと資本
国際基準(課税権侵害)
10
移転価格の結果が価値の創造と一致することの確保:その他リスクの高い取引
国際基準(分配)
11
BEPS のデータを収集・分析する方法とそれに対処する行動の確立
課税権調整効率化
12
納税者のアグレッシブなタックス・プランニングの開示要請
課税権調整効率化
13
移転価格関連の文書化の再検討
課税権調整効率化
14
紛争解決メカニズムを効率化
課税権調整効率化
15
各措置の迅速な実施(多国間協定開発)
迅速化
以上
望月一央(公認会計士)
MAZARS JAPAN/CHINA パートナー
MAZARS は 75 年の歴史を有し、グローバルワンファームとして世界 73 カ国の直営事務所に
15,000 人を擁する欧州系会計事務所です。多くの欧米企業をサポートするとともに海外に展開す
る日本企業のサポートにも注力しており、アジア地域においては、インド、シンガポール、マレーシ
ア、インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマー等に拠点を有し、ワンファームならではの緊密な連携
により複合的なサービスを提供しております。
当資料は情報提供のみを目的として、MAZARS によって作成されたものであり、当行はその正確性を保証するもので
はありません。また当該機関との取引等、何らかの行動を当行が勧誘するものではありません。
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
9
BTMU(China)経済週報
2015 年 9 月 30 日 第 271 期
BTMU の中国調査レポート(2015 年 9 月)
„
BTMU 中国月報(2015 年 9 月号)
http://www.bk.mufg.jp/report/inschimonth/115090101.pdf
国際業務部
„
ニュースフォーカス第 20 号
「深セン市・汕尾市特別協力区管理サービス規定」を発表
https://Reports.btmuc.com/File/pdf_file/info005/info005_20150930_001.pdf
香港支店・業務開発室
„
ニュースフォーカス第 19 号
広東自由貿易試験区の各エリアにおける建設実施方案を発表
https://Reports.btmuc.com/File/pdf_file/info005/info005_20150925_001.pdf
香港支店・業務開発室
以上
当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、何らかの行動を勧誘するものではありません。ご利用に関しては全てお客様御自身でご
判断くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当店はその正確性を保証す
るものではありません。内容は予告なしに変更することがありますので、予めご了承下さい。また当資料は著作物であり、著作権法により保護されてお
ります。全文または一部を転載する場合は出所を明記してください。
三菱東京 UFJ 銀行(中国)有限公司 中国トランザクションバンキング部 中国調査室
北京市朝陽区東三環北路 5 号北京発展大厦 4 階 照会先:石洪 TEL 010-6590-8888ext. 214
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (China)
A member of MUFG, a global financial group
10