イタリア国 投票、憲法改正案否決の影響について

 情報提供資料
2016 年 12 ⽉ 6 ⽇
イタリア国⺠投票、憲法改正案否決の影響について 4 ⽇に⾏われたオーストリア⼤統領選では、難⺠の排斥などを訴えた極右のホーファー⽒が、リベラル系の候補に敗れ、注⽬されていた
EU(欧州連合)初の極右の⼤統領は誕⽣しませんでした。⼀⽅、イタリアでは同⽇、上院の権限の⼤幅縮⼩などの憲法改正の是⾮
を問う国⺠投票が⾏われ、賛成を呼び掛けたレンツィ⾸相は敗北し、辞意を表明しました。国⺠投票は、EU からの離脱を主張している
野党「五つ星運動」が反対を呼び掛けており、「反 EU」や「反難⺠」を掲げる勢⼒の躍進につながる可能性があるため、注⽬されていま
した。
イタリアは憲法改正案を否決
策の⾏き詰まりと成⻑のモメンタムの間のネガティブ・フィードバック・
オーストリアの⼤統領選の結果が、これから続く欧州の選挙の希
ループが強まり、ポピュリストの⼈気がさらに⾼まる可能性がありま
望の光となったことは良いニュースでした。これは少なくとも選挙の
す。また、早期の総選挙以外にも、五つ星運動が下院で過半数
結果が(世論調査と⽐べ)常にポピュリスト側にある訳ではない
を獲得するかもしれないというリスクも存在します。それでも、現⾏
ことを⽰しました。しかし、⼀⽅で、イタリアの国⺠投票は有権者か
のルールでは上院が依然として⻭⽌めとして機能するでしょう。主
ら予想よりもはるかに⼤差で「否決」されるという、驚くべき結果と
な影響はイタリアのユーロ離脱への挑戦というよりは、むしろさらに
なりました。 国⺠投票は上院の権限を⼤幅に縮⼩する憲法改
政策が⾏き詰まることだと考えられます。
正の是⾮を問うものでしたが、 レンツィ⾸相の事実上の信任投票
と受け⽌められており、その点で、ポピュリズムの流れがイタリアでも
イタリアがユーロを離脱する可能性は低い
引き継がれるかどうかが注⽬されていました。
五つ星運動や北部同盟のようなポピュリストやユーロに懐疑的な
政党は、国⺠投票で積極的に「反対」を推進するキャンペーンを
不透明な政治環境が経営難の銀⾏に重くのしかかる
展開し、国⺠投票を、総選挙を強いる機会として利⽤しました。
国⺠投票の結果が判明した直後にレンツィ⾸相が辞意を表明し
レンツィ⾸相の⺠主党と同程度の⽀持率である五つ星運動は、
たことで、2017 年半ばにイタリアも総選挙を⾏うリスクが⾼まりま
「もし党が議会の多数を占めたら、ユーロ加盟を問う国⺠投票を
した。しかしながら、現在の勢⼒をみると、最終的には新⾸相(お
推し進めるだろう」と述べています。しかし、イタリアのユーロ加盟に
そらく経済・財務相のパドアン⽒)のもと、新内閣が議会の信任
対する国⺠投票の可能性はまだ低いと考えています。
を得て発⾜する可能性が⾼いと思われます。新政権の焦点は
五つ星運動は下院の多数を占めるかもしれませんが、たとえそうだ
2017 年の予算を通過させることと、下院の多数政党に与える権
としても、ユーロ離脱についての国⺠投票の実施は確実ではありま
限を減らすかたちで選挙法を変えることにあります。さらには、新政
せん。今回の国⺠投票でレンツィ⾸相が権限の縮⼩をできなかっ
権は、おそらく数週間以内に銀⾏システムの不良債権問題に解
たため、上院は依然として現在と同様に機能し、五つ星運動が上
決策を⾒出す必要に迫られるでしょう。不良債権問題の解決策
院で過半数を得ることは難しいと思われます。五つ星運動は同じ
が⾒出せなければ、市場に対するより⻑期的なダメージが具体化
く反EUの北部同盟と連合を組んで上院で過半数を獲得する
するかもしれません。その様なことが万が⼀起こった場合には、政
可能性も残りますが、五つ星運動と北部同盟は「全く異なる⽻の
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HouseView ⿃」と⾔われていることは無視できません。また、イタリアの憲法は
の場合には、政治は混乱し、改⾰が進まないため、イタリア経済は
国⺠投票による国際条約の廃⽌を認めていませんので、国⺠投
軟調に推移し続ける可能性が⾼いと考えられます。イタリア国債
票の前に憲法改正が必要かもしれません。そしてこの改正案の可
のリスク・プレミアムは魅⼒的な⽔準で、ECB の国債買⼊れプログ
決には、議会の両院で 3 分の 2 の議決を必要とします。万が⼀、
ラムが下⽀えになると予想されますが、今後の政治情勢がはっきり
イタリアがユーロからの離脱に賛成したとしても、その結果は、最⾼
するまでは、イタリア国債に対して慎重な⾒⽅をしています。
裁のひとつである憲法裁判所によって阻⽌される可能性もありま
す。
欧州の政治的不確実性は⾼いまましばらく続く
今回の国⺠投票での反対票は欧州のかなりの⼈々が欧州プロジ
マーケットは「否決」を織り込み済み
現地時間 5 ⽇の午前の時点では、マーケットの反応はそれほど
⼤きくありません。イタリアとドイツの 10 年国債の利回り差は
0.14%ポイントほど拡⼤しましたが、その後は前週末の⽔準まで
ェクトに不満を感じていることを再び表しています。英国の EU から
の離脱を問う国⺠投票の結果は、既に⼀つの兆候でした。ポピュ
リズムという世界的なテーマと有権者のより内向きの考え⽅は、英
戻っています。市場にパニックは⾒られず、安全資産への著しい逃
国の国⺠投票と⽶国の⼤統領選挙の結果からさらに勢いを増し
避も⾒られません。⼀部のイタリアの銀⾏の経営難への懸念から、
ているように思われます。2017 年にはオランダ、フランス、ドイツで
⾦融セクターのスプレッドは広がっていますが、ここでも⼤きな動き
選挙が⾏われますが、すべてにおいて過去数年間でポピュリスト政
は⾒られません。
党への⽀持が⾼まっています。欧州の政治的不確実性は⾼いま
⻑期的には、⾦融市場におけるいくつかの懸念があります。 次の
選挙で、反ユーロを掲げる五つ星運動が躍進し、暫定政権の樹
⽴やその他の短期的な解決策を講じなければならないとうシナリオ
ましばらく続くと予想されるため、今後の政治動向には⼗分注視
する必要があると思われます。 <本資料に関する留意事項>
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