DarWin Capital Partners アナリスト再考 2011.4.28 震災後、証券会社で開催されたとある某セミナーでのこと。 震災後の日本の IT 分野の状況について、とあるインド大手の IT ベンダーの会社によるプレゼンがありまし た。セミナー後の質問の時間になって、出席者の一人がこういった次のような質問をしました。「御社の利益率 は 30%程度であるのに、なぜ同業の A 社や B 社のような日系大手 IT ベンダーの会社の利益率はこれほど低 いのでしょうか。」 そうするとプレゼンターのインド人の方は笑いながら一言こう答えました。「それはあなた方が甘すぎるからだ よ。」非常に厳しい皮肉ですが、その場は軽いジョークといった感じで流され、何事もなかったかのようにそのセ ミナーは終了しました。 震災後のまた別のセミナーでの話。このセミナーでは、とある業界新聞社の方がプレゼンターとして、震災後 の半導体業界をテーマに行われました。 震災による直接の被害状況やサプライチェーンの混乱の話からはじまり、話は進んで日本の半導体産業そ のものの話へ。メインの資料とは別の一枚ペラの紙には 2010 年度の日系半導体会社数十社の設備投資計画 が載っていました。そしてプレゼンターが一言。「全部足し合わせても、サムスン一社にも及ばないんですね。」 長年、ハイテク業界を見続けていたプレゼンターにとって、昔は日本企業が過半のシェアを握っていた半導 体業界において、昨今これほどまで日本企業のプレゼンスが落ちているのを目の当たりにするのはなんとも嘆 かわしいと、話は続きます。「デバイス産業は投資が命。投資をやめたら結局負ける。自分は声高に言い続け てきたけれども、後がなかなか続かない。気づけば、結局こんな状況になってしまった。液晶だって、太陽電池 だってリチウムイオン電池だって昔は日系がほとんどシェアを握っていたのに。」 また、こんな話も。「日本の工場が、よくコスト競争力がないと言われるけれども、絶対そんなことはない。た だ、人が多すぎる。1000 人で出来るところに 1500 人の人数をつけている。それだけのことなのに誰も言わな い。」 さて、日本株の世界でアナリストとして働いている身としてこれらの話は全く他人事ではありません。アナリ ストは確かに企業を分析して業績や株価を予想するのが第一義的な仕事だと言えます。しかしながら、一方で 社会からしてみると、アナリストに期待されているのは、もっとガンガン悪いところは追求して、日本企業の競争 力を強化して欲しいということなのでしょう。日本企業の競争力低下を嘆く前に、アナリストがちゃんと仕事しろ と。 証券業界では日常的にアナリストと事業会社が少数で集まったミーティングが開かれます。中には、こうい ったミーティングでは、事業会社側とアナリストは仲が良くなって(なりすぎて)しまっていて、事業会社に明らか にヨイショをするような質問しか出ないこともあります。そんな中で、たまにですが、事業会社に面と向かってつ DarWin Capital Partners っかかる質問が出たりします。こういう場合は、事業会社側が気分を害してしまったりして、場のなごやかな雰 囲気が壊れてしまうことも多いですが、それは人間の性で、誰でも欠点を指摘されるのは一時的には嫌なもの。 しかし一方で、事業会社にとっても欠点を克服しなければ、次の成長もありません。 結局、ダメなものはダメ、欠点をきちんとダメ出しできるアナリストが、日本経済にとっては本当の意味で必 要ということなのでしょう。そうならない限り、本当の意味でアナリストが社会的に認められることはないのだと、 痛感させられた出来事でした。(W) 当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ダーウィンキャピタルパートナーズ株式 会社(以下当 社)が作成したものであり、特定の有価証券の勧誘および投資顧問契約の勧誘等 を目的とするものではありません。また本情報に基づいて行われる判断につい て、当社は一 切の責任を負いませんので、投資にあたっては利用者自身の判断になされるようお願いいたし ます。
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