パラグアイ定期報告(6月分) 経済情勢 2012年7月作成 概要 (1)国内経済 22日,ルゴ大統領(当時)が上院において弾劾され,同日フランコ副大統領(当時)が新 大統領に就任したことに対して,経済界等は概ね好意的な反応を示した。また,リバス商 工大臣及びコルバラン中銀総裁等は留任したが,ボルダ大蔵大臣は辞任し,経済学者 であるフェレイラ氏が新大臣に就任した。 弾劾裁判が実施された22日以前は,外国企業によるパラグアイへの投資が増えている 等の報道が見られたが,米の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)社は,ル ゴ大統領(当時)の罷免が,パラグアイの格付けにネガティブな影響を及ぼす可能性が ある旨公表した。 アメリカン航空によるパラグアイ・米国のマイアミ間の新規国際線(直行便)の就航計画 が公表された。 22日,中銀は2012年の第1四半期の GDP 成長率がマイナス2,6%,6月の月間イン フレ率がマイナス0.4%,6月の月間平均対ドル為替相場が4,524グアラニーと公表 した。 (2)対外経済 ルゴ大統領(当時)が上院において弾劾されたことに関し,29日,パラグアイ以外のメル コスール加盟国の首脳は,民主的秩序が回復されるまでパラグアイのメルコスール関連 会合への参加権を一時的に停止する旨決定した。しかし,現段階では,実体経済に影響 は少ない模様である。 アルゼンチンの事前輸入許可制の影響により,引き続きアルゼンチン向けの輸出が滞っ ている。 5月の全輸出額は約5億2,733万米ドル,全輸入額は約8億8,920万米ドルであり, その内,メルコスール加盟国との輸出額は約2億9,579万米ドル,輸入額は約3億9, 793万米ドルとなった。 1 国内経済 (1)フランコ新政権発足による経済情勢への影響 22日にフランコ新政権が発足したことについて,クリスタルド・パラグアイ農業協会 (CAP)代表,フェリポ・パラグアイ工業連盟(UIP)代表,サンチェス・パラグアイ生産者同 盟(UGP)代表及びメレレス大豆生産者協会(APS)代表等の経済界関係者は,同政権 への支持を表明した上で,同政権との良好な対話の実現を期待する旨述べた。 24日,議会によるルゴ大統領(当時)弾劾に抗議して,チャベス・ベネズエラ大統領は, パラグアイへのベネズエラ産石油の輸出を停止する旨表明した(注:2011年の中銀デ ータによれば,ベネズエラ産石油の輸入額は,パラグアイの石油輸入額の約24%を占 める)。これに対して,エスコバル石油公社総裁は,当国には約2カ月分の軽油,約45 日分の LNG 等の備蓄があるため,ベネズエラからの石油の輸入が停止したとしても,当 面は同停止による影響はないであろうと述べた。 1 同日,パラグアイ以外のメルコスール加盟国は,22日に行われた上院におけるルゴ大 統領(当時)の弾劾が民主的な秩序の断絶であると非難し,28日~29日にアルゼンチ ンのメンドーサで開催されるメルコスール首脳会合にフランコ新大統領を招待しない旨決 定した。これに対して,フェリポ UIP 代表は,もともとメルコスール諸国とは,域内の貿易 を巡る諸問題で見解が一致していない上,アルゼンチン政府が2月1日から導入してい る事前輸入許可制の影響を受け,アルゼンチン向けのパラグアイ製品の輸出が滞って いるため,UIP 内では「NOAR(No Argentina)」運動(注:アルゼンチンに依存している貿 易構造を変え,アルゼンチン以外の輸出先を模索する運動)を継続していることもあり, メルコスール諸国との関係悪化が経済に与える影響はそれ程大きなものにはならないで あろうと述べた。他方,パラグアイ船主組合等からは,従来より行われているアルゼンチ ン海事組合(SOMU)のパラグアイ船籍に対する河川輸送の妨害を懸念する声が上がっ ている。 22日,ルゴ大統領弾劾に伴って副大統領から大統領に昇格したフランコ新大統領は,リ バス商工大臣,カルドソ農牧大臣及びコルバラン中銀総裁を留任させる旨発表した。他 方で,23日,ボルダ大蔵大臣が辞意を表明したため,26日,フランコ新大統領によって 任命された,経済学者のフェレイラ氏が新大蔵大臣に就任した。26日に就任式を終えた 同大臣は,ボルダ前大蔵大臣時代からのマクロ経済の安定化政策を継続し,歳入を拡 大するため個人所得税の早期導入を目指す一方,大豆等の穀物に対する輸出税の導 入計画については凍結する考えを示した。 (2)投資関連 6日,ブラジル資本のBlue Design社(繊維業)の代表者等と会談したリバス商工大臣は, 同社によるパラグアイでの生産拡大等につき協議し,同社と合意に至った旨公表した。 ブラジル資本のDass社は,マキラ制度を利用して,イタプア県エンカルナシオン市にお いて工場を設置し,5月21日以降,Nike等の靴の製造を試験的に開始した。正式な工 場の開所式は7月を予定している。同社による投資総額は現段階で500万米ドルであり, 2012年及び2013年に,それぞれ約300名を雇用する予定である。 ブラジル資本のKadesh Calzados社は,マキラ制度を利用して当地において靴を製造し, ブラジルへ輸出する計画を有している。ラミレス商工省マキラ委員会委員長によれば, 同制度を利用した外国直接投資の件数は現在52件に達し,その内の16件はブラジル 資本による投資である。 19日,企業家との会合(Foro Brasil主催)に出席したコルバラン中銀総裁は,8年間連 続して財政黒字を達成したことにより経済情勢は安定しており,2011年8月,S&P社に よるパラグアイの格付けが「B+」から「BB-」と格上げされたことから,パラグアイは投資 家にとって魅力的な市場となる可能性があり,安定した経済成長を遂げるであろうと述べ た。しかし,22日のルゴ大統領(当時)に対する弾劾により同大統領(当時)が罷免され たことを受け,S&P社は,パラグアイの格付けにとってネガティブとなるであろうと述べた (注:パラグアイの格付けは,2002年~2009年まで「B」,2010年「B+」,2011年 「BB-」となり,同弾劾前に,本年は「BB」へ格上げされるという見方があった)。 25日に当国を訪問したトルコ企業18社は,26日,シェラトン・ホテルにおいて,パラグア イ企業40社と会合を持ち,今後の二国間の貿易関係について協議した。Cobanliogglu トルコ企業団代表は,パラグアイはポテンシャルの高い市場であるとの見解を示した。 (3)新規国際線の就航計画 アメリカン航空は,11月16日より,6年振りに,アスンシオン市(シルビオ・ペティロッシ 国際空港はセントラル県ルケ市に所在)・米のフロリダ州マイアミ市間の国際線の直行便 2 を再開する計画を有している旨公表した。 (4)2012年第1四半期の GDP 成長率 22日,中銀は,農業部門のマイナス成長(マイナス6.0%)の影響を受け,2012年の 第1四半期の GDP 成長率が,マイナス2.6%であった旨公表した。 (参考資料) 2011~2012年におけるGDP成長率の推移 (出所:中銀) (5)ディーゼル及びガソリン価格の値下げ 4日,エスコバル石油公社代表は,国際的な原油価格の下落を受け,ディーゼル価格を, 5,860グアラニー/リットルから5,690グアラニー/リットル(170グアラニー/リットル値 下げ)へ値下げする旨明らかにした。 7日,エスコバル石油公社代表は,11日より,ガソリン価格を200グアラニー/リットル値 下げする旨公表した。 (6)インフレ率・為替相場 6月は,乳製品及びアルコール飲料の価格が若干高騰したが,牛肉,穀物,砂糖等一部 食料品及びガソリン等の価格が下落したことにより,同月の月間インフレ率は、マイナス 0.4%であった。 6月の月間平均対ドル為替相場は,中銀が6月に約8,100万米ドルのドル売り介入を 実施したため,4,524グアラニー(前月比18グアラニー安)となった。 2 対外経済 (1)対メルコスール 29日,アルゼンチンのメンドーサ市において第43回メルコスール首脳会合が開催され たが,パラグアイ以外のメルコスール加盟国は,ルゴ大統領弾劾を含むパラグアイ情勢 につき協議し,民主的秩序が回復するまでパラグアイのメルコスール関連会合への参加 権を一時的に停止すること及びベネズエラの正式加盟について決定した。なお,パラグ アイ国民に悪影響を与えないために,メルコスールはパラグアイに対する経済制裁を行 わない旨決定した。また,同日午後に同地で開催された南米諸国連合(UNASUR)臨時 首脳会合において,パラグアイのUNASUR関連会合への参加権も停止が決定された。 3 5月のメルコスール加盟国との輸出額は約2億9,579万米ドルとなり,パラグアイの全 輸出額に占める割合は,約56.1%(ブラジル11.6%,アルゼンチン18.5%,ウルグ アイ26.0%)であった。また,同月におけるメルコスール加盟国からの輸入額は約3億 9,793万米ドルとなり,パラグアイの全輸入額に占める割合は,44.8%(ブラジル24. 5%,アルゼンチン18.9%,ウルグアイ1.4%)であった。 (2)対アルゼンチン関係 アルゼンチン政府が2月1日から導入している事前輸入許可制の影響により,アルゼン チン向けパラグアイ製品の輸出が滞っている問題を受け,在パラグアイ・アルゼンチン大 使館は,最近になり,パラグアイ製品に対する事前輸入許可がいくつか承認されたため, パラグアイとの貿易の正常化に向けて前進しつつある旨明らかにした。これに対して,繊 維業者は,繊維製品の多くは未だ許可されておらず,アルゼンチンへの輸出が滞ったま まであると反論した。 6日付外務省のプレスリリースは,アルゼンチン政府が131件の非自動輸入許可(注: アルゼンチンでは,輸入品目によって,自動的に輸入が許可される品目と,自動的には 輸入が許可されない品目とに分かれ,自動的に輸入が許可されない品目の場合は,同 許可が必要とされている)を新たに承認した旨公表した。しかし,パラグアイ繊維産業連 盟によると,非自動輸入許可は下りたものの,事前輸入許可が下りていないため,依然 としてパラグアイ産の繊維産品をアルゼンチンへ輸出できない状況が続いている(注:2 月1日以前は、非自動輸入許可が必要とされる品物を他国からアルゼンチンへ輸出する 際は,同許可の取得が義務付けられてきたが,2月1日以降,事前輸入許可制が導入さ れた後は,非自動輸入許可及び事前輸入許可の両方が必要とされることとなった)。こ れを受け,フェリポ・パラグアイ工業連盟(UIP)会長は「熱は下がったが,病気は治癒し ていない」と述べ,事前輸入許可制が廃止されない限り,貿易は正常化しない旨主張し た。 アルゼンチン政府による事前輸入許可制の影響により,パラグアイ資本の寝具メーカー 2社(Sueñolar 及び SuperSpuma)が,アルゼンチンにおける販売拠点を売却し,工場を 閉鎖した。 (3)対日関係 12日,アルト・パラナ県エステ市において,日本企業のフジクラ・パラグアイ社の第二 工場が完成し,第三工場の建設が予定されている旨報道された。 (4)貿易 5月の輸出額は約5億2,733万米ドル(前年同期比7.2%減),輸入額は約8億8, 920万米ドル(同9.4%減)となり,貿易収支は約3億6,187万米ドルの貿易赤字で あった。 (5)その他 20日~21日,ララ・カストロ外務大臣(当時)は,リオ+20に出席するため,ブラジル のリオデジャネイロを訪問した。 4 パラグアイの主要な経済指標(2012年6月現在) 年 月 実質GDP IMAEP(1994=10 対ドル為替 インフレ率(19 輸出 成長率 0) レート 80=100) % 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 2012 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 2.1 -0.0 3.8 4.1 2.9 4.3 6.8 5.8 -3.8 15.0 3.7 2011 6.9 4.9 3.3 2.7 -2.6 平均値 110.8 110.0 114.3 119.5 123.6 129.3 138.3 146.1 139.7 120.1 - 平均値 累積 160.6 160.6 161.6 322.2 179.9 502.1 165.3 667.5 174.4 841.8 148.7 990.5 153.0 1,143.5 163.5 1,307.0 163.2 1,470.2 176.2 1,646.4 174.2 1,820.6 198.5 2019.1 156.4 156.4 156.4 312.8 174.3 487.1 156.8 643.9 出所:パラグアイ中央銀行 輸入 貿易収支 経常収支 外貨準備高 対外債務 Gs/US$ FOB(千ドル) % FOB(千ドル) % 千ドル % 百万ドル % 百万ドル 千ドル 平均値 年間 年間 前年比 年間 前年比 年間 年間 年末値 年末値 4,149 8.4 990,205 1,988,820 -998,615 -266 723.1 2,170,595 5,773 - 14.6 950,600 -4.0 1,510,249 -24.1 -559,649 -44 93 -1 641.3 2,283,113 6,436 9.3 1,305,733 37.4 1,766,305 17.0 -460,572 -18 129 0.4 983.4 2,431,696 5,976 2.8 1,553,514 19.0 2,480,287 40.4 -926,773 101 143 0.1 1,168.0 2,390,687 6,178 9.9 1,655,111 6.5 3,072,866 23.9 -1,417,754 53 16 -1 1,293.0 2,271,139 5,636 - 12.5 1,843,244 11.4 4,502,478 46.5 -2,659,233 88 128 7 1,703.1 2,240,448 5,033 6.0 2,817,193 52.8 5,538,555 23.0 -2,721,361 2 165 0.3 2,461.8 2,205,330 4,363 7.5 4,463,309 58.4 8,505,982 53.6 -4,042,673 49 -298 -2.8 2,864.1 2,234,198 4,967 1.9 3,191,331 -28.5 6,496,959 -23.6 -3,305,628 -18 43 -1.1 3,860.7 2,236,853 4,574 7.2 4,533,777 42.1 9,399,843 44.7 -4,866,066 47% -596 -14.9 4,168.5 2,328,138 4,983.9 2,289,685 4,440 4.9 5,519,897 21.8 11,502,185 22.4 -5,982,287 23% -270 -0.5 平均値 月間 累積 月間 前年同月比 月間 前年同月比 月間 前年同月比 月間 累積 月末値 4,640 1.5 1.5 253,574 12.5 816,485 29.5 -562,912 -17.0 4,232.5 2,322,885 -101 -100.7 4,586 1.5 3.1 360,475 -11.4 798,793 25.9 -438,317 -37.3 4,299.9 2,311,086 4,305 1.7 4.8 537,708 12.0 892,685 26.5 -354,976 -14.5 4,376.8 2,288,972 4,052 -0.3 4.4 502,519 20.7 884,133 25.9 4,662.9 2,290,564 -381,614 -5.2 4,000 0.0 4.4 568,327 30.0 981,883 30.0 -13 -114 4,829.3 2,289,099 -413,555 0.0 3,996 -0.6 3.8 487,173 18.3 1,025,918 37.9 4,907.4 2,308,556 -538,744 -19.6 3,927 0.0 3.8 577,748 57.0 960,284 27.2 -382,536 29.7 4,977.6 2,304,368 41 -73 3,889 1.0 4.9 589,724 53.5 1,095,483 28.7 -505,759 24.8 4,985.9 2,289,292 4,018 0.2 5.0 505,766 48.8 1,060,555 27.6 -554,789 21.1 4,881.4 2,283,396 4,176 -0.8 4.2 406,398 25.7 1,041,743 16.5 -635,346 9.2 5,027.1 2,291,679 4,326 -0.1 4.1 410,339 5.6 1,025,744 10.7 -615,405 -5.1 -197 -270 4,979.1 2,277,569 4,440 0.8 4.9 320,146 -9.0 918,479 -5.4 -598,333 -3.6 4,983.9 2,289,685 4,725 1.1 1.1 334,943 32.1 778,390 -4.7 -443,447 36.8 4,933.2 2,277,324 4,250 1.5 2.6 310,389 -13.9 764,538 -4.3 -454,149 -9.6 4,826.8 2,272,807 4,330 0.5 3.1 440,970 -18.0 887,404 -0.6 -446,433 -17.4 4,804.3 2,210,131 4,319 -0.2 2.8 428,807 -14.7 865,024 -2.2 4,897.7 2,216,836 -436,217 -12.5 4,506 0.4 3.2 527,332 -7.2 889,197 -9.4 4,792.2 2,213,751 -361,865 2.2 4,524 -0.4 2.8 5
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