規格の解説(1):継続的改善

ISO 通信 No.10(080321)
規格の解説(1):継続的改善
ISO 通信も「時には直接勉強になりそうな記事も書かないといけないかな」ということで、規格解
説コーナーを設けました。少し堅苦しい話になるかもしれませんが、読んでみてください(これから
認証を取得される方は参考程度に読んでいただければと思います)。
ISO9001 の要求事項を「shall(・・・すること)」で数えると「136」あります。皆さんは、このう
ち、どれが一番気に入っておられるでしょうか。「1 つ」といわれると、なかなか難しい質問かもし
れません。
今回、「継続的改善」を取り上げてみました。
継続的改善のプロセスは顧客満足の向上を目指そうとした時に重要な位置付けにありますが、要求
事項は、次の通りただ一つの文章からなっています。
8.5.1
継続的改善
組織は、品質方針、品質目標、監査結果、データの分析、是正処置、予防処置及びマネジメン
トレビューを通じて、品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること。
ほとんどの品質マニュアルには、この文章がそのまま書かれていることが多いのですが、経営者及
び管理責任者はこの条項を積極的に活用することが適当と思います。
まず、これを図にしてみると、システムレベルのPDCAを求めていることが分かります(図-1、
又は図-2 を参照ください)。
経営者が設定した品質方針を実現するために、各部門が品質目標を設定し、その進捗管理をし、分
析し、改善すべき点があれば是正又は予防処置が取られ、全体の状況を経営者が見直して、次の高い
レベルへ導いていくことを求めています。
以下、個々の要素について考えてみたいと思います。
(1)品質方針、品質目標
・ 継続的改善の原点は、品質方針と考えてよいでしょう。
・ 「マネジメントシステム」の定義は「方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム」
となっています。これに沿って、規格は 5.3 の品質方針で、「品質目標の設定及びレビューの
ための枠組みを与えることを確実にする」よう求めています。
・ マネジメントレビューでは、品質方針及び品質目標の変更の必要性の評価を求めていますが、こ
れは、自社を取り巻く環境の変化や顧客の要求への対応のために品質方針を変更したり、品質
目標が達成された時はより高い目標を設定することによって、品質マンジメントシステムの継
続的改善を求めているものです。
・ 「品質方針は、一度決めたら変えない」という考えがあれば、規格の意図からは考え直した方が
良いでしょう。
(2) 監査結果
・ ISO9001 での内部監査の目的は、適合性と有効性を監査し、不適合があれば是正することですが、
これは「マイナスをなくす活動」に見えます。
・ 内部監査では、
「不適合を探す」というより、
「より良くする改善点を提案する」視点が良いと思
います。単に「不適合はありません」より、
「不適合はありませんが、より良くする改善点が何
件ありました」の方が経営者は喜ぶでしょう。
・ また、第三社審査では対象としない「効率」を取り上げることも重要です。「その仕事はもっと
このように出来そう」というようなコメントは重要でしょう。
(3) データの分析
・規格は分析の結果、4 項目の情報を提供するように求めていますが、監視及び測定の結果から得
られたデータの収集・分析は要求事項となっています。すなわち、8.2.1 顧客満足、8.2.2 内部
監査、8.2.3 プロセス、8.2.4 製品の、それぞれの監視及び測定の結果は、改善につなげるため
に分析する必要があります。
(4) 是正処置、予防処置
・ いずれも不適合の「原因」を除去することにより、再発又は未然に不適合を防止するものですが、
規格の意図している予防処置の機会を多くすることが望まれます。
(5)マネジメントレビュー
・ 規格ではインプット及びアウトプットが規定されていますが、5.6.1 にマネジメントレビューの
目的が書かれています。すなわち、QMSの改善の機会の評価、品質方針及び品質目標を含むQ
MSの変更の必要性の評価を行なうことです。
・ 審査で時々、アウトプットの 3 項目について「変更なし」というのを見るのですが、こうなると
QMSをより良くする機会を失い、その結果、顧客満足の向上を目指すことが出来なくなるので、
注意が必要です。経営者は積極的にQMSの改善の機会の評価、品質方針及び品質目標を含むQ
MSの変更の必要性の評価を行ないましょう。
チョット長くなりすぎました(次頁に図-1及び図-2があります)。
以上
P
D
品質方針
品質目標
QMS の計画
マネジメントレビュー
A
プロセスの実行
C
図-1
是正処置
予防処置
(顧客満足の監視)
内部監査
(プロセスの監視)
(製品の検査)
データの分析
継続的改善
5.3 品質方針の策定、5.4.1 品質目標の設定
5.4.2 システムの計画
システムの運用
8.2.1:
顧客満足の監視
8.2.3
プロセスの監視
システムの監視
8.2.2
8.2.4
製品の監視
内部監査
8.4 データの分析
8.5.2 是正処置、8.5.3 予防処置
5.6 マネジメントレビュー
図-2
継続的改善
8.5.1
継
続
的
改
善