●再発防止と未然防止 ★応急処置/再発防止/未然防止 項目 不適合の処置 是正処置 予防処置 目的 不適合への対処 再発防止 未然防止 不適合の存在 顕在 顕在 潜在 対策 現象への対処 原因の除去 原因の除去 処置 ・手直し ・不適合の内容確認 ・再格付け・特別採用 ・原因究明 ・廃棄・返却 ・是正処置の決定 ・是正処置の実施 ・是正処置のレビュー ・発生の可能性 ・潜在的原因の究明 ・予防処置の決定 ・予防処置の実施 ・予防処置のレビュー ★応急対策とは “応急対策”とは,「原因究明,あるいは原因は明らかだが,何らかの制約で直接対策のとれない異 常に対してとりあえずそれに伴う損失をこれ以上大きくしないためにとられる処置.すなわち,一時し のぎの処置」をいう.再発防止の処置に先駆けて行う暫定処置である. 「商品の外側にキズがあるというクレームが発生したので,早速お客様のところへ行き,新品と取り 替えた」などは応急対策(応急処置)で,なぜキズが入ったのか,どうしてその商品がお客様のところへ 流れたかなどの原因を考えて,対策をとる必要がある. ★再発防止とは “再発防止(recurrence prevention)”とは,「問題の原因又は原因の影響を除去して,再発しないよ うにする処置.参考:再発防止には是正処置,予防処置が含まれる」(JIS Q 9024:2003)である.すなわ ち,再発防止とは,今後二度と同じ原因で問題が起きないように対策を行うことといえる. 問題が発生したときに,プロセスや仕事の仕組みにおける原因を調査して取り除き,今後二度と同じ 原因で問題が起きないように歯止めを行うこと,原因除去策,恒久対策ともいう.再発防止は,次の 3 段階に分けられる(図 1.6). ① 問題の発見された作業,プロセスに対する再発防止(個別対策). ② 同類作業,プロセスに対する再発防止(水平展開による類似原因の除去). ③ 仕事の仕組み,プロセスに対する再発防止(根本原因の除去). たとえば,材料の投入ミスに対して,その材料の置場や投入指示書を改善するのは①であり,その他 の置場,指示書についても見直して,問題があれば改善するのは②である.また,置場を設置する際の 仕組み,指示書を設計する際の仕組みのミスに対する事前検討・チェックのステップを追加するのは③ である. また,再発防止の内容としては,次の 4 つが主要なものである. ① 作業標準,技術標準,設備標準,管理標準などの標準類の作成および改訂. ② 標準の教育訓練,再教育の実施,教育の仕方に対する反省と改善. ③ 材料,部品,設備,治工具および作業や仕事の方法に関する工夫.改善. ④ 目的や目標の変更. 再発防止を徹底していくためには,上級管理者のリーダーシップが必要であり,その実施には全関係 者が協力して努力しなければならない. -1- 図 1.6 3段階の再発防止 (出典:日本品質管理学会編, 「新版品質保証ガイドブッ列,日科技連出版社,2009 年) ★未然防止とは “未然防止(prevention)”とは, 「実施に伴って発生すると考えられる問題をあらかじめ計画段階で洗 い出し,それに対する修正や対策を講じておくこと」である. 設計などでは、大量生産の製造と異なり、全く同じ作業というものがない。問題が起こってからその 原因を追及し取り除くという是正処置だけでは,どうしても後手になり,大きな損失を被ってしまう. そこで,未然防止の考え方が必要になってくる.しかし,まったく経験したことのない問題を防止する のは困難である.一つひとつの問題を調べると,原因から結果に至る過程はさまざまであるが,その途 中の一断面に限定して見れば,共通する部分も少なくない.未然防止を効果的に行うためには,過去に 発生した問題をその類似性に基づいて整理し,いろいろな状況に汎用的に適用できる共通的なものにま とめること,これを活用する方法を確立することが重要である. ★是正処置と予防処置 「JIS Q 9OO1:2008(ISO 9001:2008)品質マネジメントシステムー要求事項」では、是正処置と予防 処置が要求事項として取り上げられているが,是正処置とは発生した不適合に対してとる処置であり, 「原因」を調査して再発防止対策をとる必要がある.一方,予防処置はまだ発生していない(起こりうる) 不適合に対する処置であり,起こりうる問題の原因を除去する未然防止対策がとられる. 表 1.1 是正処置と予防処置 是正処置 不適合 原因 処置 活動のレビュー 起こった(顕在化) 発生・流出 再発防止 再発しないことの確信 -2- 予防処置 起こりうる(潜在的) 気づいた問題点 未然防止 予防できたことの確信
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