目 次

目
次
第1章 教育心理学の基礎
第1節 心理学の歴史と現代心理学の始まり …………………………………………………… 1
第2節 教育心理学の歴史と現状 ………………………………………………………………… 3
第3節 教育心理学の研究方法 …………………………………………………………………… 6
第2章 学習の心理
第1節 学習の理論 ………………………………………………………………………………… 8
第2節 学習の方法 ……………………………………………………………………………… 15
第3節 動機づけ ………………………………………………………………………………… 18
第3章 発達の心理
第1節 発達の諸概念 …………………………………………………………………………… 20
第2節 発達の諸相 ……………………………………………………………………………… 23
第3節 発達段階 ………………………………………………………………………………… 27
第4節 発達の理論 ……………………………………………………………………………… 31
第4章 人格と適応
第1節 人格と性格の理論 ……………………………………………………………………… 37
第2節 性格検査 ………………………………………………………………………………… 46
第3節 適応の心理 ……………………………………………………………………………… 52
第4節 子どもの心因・発達障害 ……………………………………………………………… 56
第5節 カウンセリング ………………………………………………………………………… 59
第6節 心理療法 ………………………………………………………………………………… 63
第5章 測定と評価
第1節 教育評価 ………………………………………………………………………………… 67
第2節 知能の測定 ……………………………………………………………………………… 72
第3節 学力の評価 ……………………………………………………………………………… 76
第4節 評価の諸問題 …………………………………………………………………………… 83
第6章 学級集団の心理
第1節 学級集団の構成と特徴 ………………………………………………………………… 84
第2節 学級集団の理解と測定 ………………………………………………………………… 87
第3節 学級における集団の心理 ……………………………………………………………… 90
第1章 教育心理学の基礎
心理学が 19 世紀末に「こころ」に関する科学的学問として成立してから,ゲシュタルト心理学,行
動主義,精神分析学を経て,いかにして現代のような体系に確立されていったのかを学習する。
さらに,20 世紀における心理学の発展とともに,科学的な心理学を教育へ応用する領域として成立
した教育心理学の領域と研究方法を理解する。
第1節 心理学の歴史と現代心理学の始まり
心理学(Psychology)ということばは,ギリシャ語の語源では,プシュケー(心)に関するロゴス(理
論または学問)である。つまり,
「心に関する学問」が心理学である。紀元前4世紀頃ギリシャ哲学がお
こるとともに,心に関する理論も学問的に組織されてきた。当時の哲学は,近世の科学を含むものであ
り,宇宙や人間の本質を見極めようとするものであったから,人間についての研究のなかに当然心理学
的なものが含まれていたのである。
哲学者であり,自然科学者でもあったアリストテレス(Aristoteles 384-322B.C.)の著書『デ・アニ
マ(霊魂論)
』は,人類最初の独立した心理学書である。
近世哲学の祖であるデカルト(Decartes,R. 1596-1650)は,プラトンの二元論を復活させて,身体に
対する精神の独立的な存在を述べた。
『方法序説』
『情念論』そのほかの著作によって,物心二元論・経
験主義・身体的機能に対する機械論的な考え方,神経や脳の機能などについて述べ,その後の心理学に
大きな影響を及ぼしたので,近世心理学の父ともいわれている。
この頃までは,心理学はなお哲学的思索に基づく形而上学説であったが,その後,イギリスにおける
経験主義哲学の発展から,経験を基盤とした心理学が主張されるようになった。ロック(Locke,J.
1632-1704)は,
「心は生まれたときは白紙(タブラ・ラサ)であり,すべての観念は感覚器官を通して
与えられる」ということを『人間悟性論』を通して主張した。
18 世紀から 19 世紀にかけて生物学や生理学が発展し,その中に多くの心理学的な問題が含まれてい
た。感覚生理学や神経生理学の発展は,従来の哲学的心理学を科学的心理学に転換する要因となった。
フェヒナー(Fechner,G.T. 1801-1887)は心的世界と物的世界の関係を考察するために精神物理学を創
始している。
19 世紀末に,ドイツのヴント(Wundt,W. 1832-1920)は,心理学を独立した実験科学として確立する
ために大きな役割を果たした。その著書『生理学的心理学』で科学としての体系を示し,その後ライプ
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チヒ大学内に世界で初めて心理学の実験室を設置した(1879)
。この実験室は 20 世紀初めまで,全世界
の心理学研究の中心となった。1879 年を科学的心理学誕生の年,ヴントを「心理学の祖」と呼ぶ。
1 ゲシュタルト心理学
ドイツでは,ヴントの実験的構成主義的な心理学が支配的であったが,1912 年にウェルトハイマー
(Wertheimer,M.1880~1943)が『運動視に関する実験的研究』を著し,ケーラー(K &o& hler,W.1887~1967)
やコフカ(Koffka,K.1886~1941)らとともに,ゲシュタルト心理学を唱えた。心理学現象を1つのま
とまりのあるゲシュタルト-要素に分割することができないまとまり,要素の総和以上のまとまり
-として捉え,主として知覚の領域においてゲシュタルト法則というものが提唱された。ゲシュタル
ト心理学は,レヴィン(Lewin,K.1890~1947)によって大成された。
2 行動主義心理学
アメリカでは,意識の機能を解明しようとする機能主義的心理学が伝統的であったが,ワトソン
(Watson,J.B.1878~1958)によって行動主義に発展した。ワトソンは意識を心理学の対象とすること
に反対し,客観的刺激とそれに対応する有機体の外的反応-すなわち行動-を対象とした。心理学は人
間の行動を取り扱う自然科学の一部門であり,意識や心的生活は対象にならないとしたのである。
行動主義の影響は大きく浸透したが,その基礎となるべき生理学が未発達であったため,その後の自
然科学の発展に伴い新行動主義にとってかわられた。トールマン(Tolman,E.C.1886~1959)の目的論的
行動主義,ハル(Hull,C.L.1884~1952)の動因低減説,スキナー(Skinner,B.F.1904~1990)のオペラ
ント条件づけ理論などが新行動主義といわれるものである。
3 精神分析学
フロイト(Freud,S. 1856-1939)はウィーンの開業医で,精神分析を創始しそれを用いて神経症治療
にあたっていた。これを精神分析療法といい,抑圧されていたものを意識的に受け入れるような患者の
変化を意図した治療法である。彼は,精神現象を意識・前意識・無意識の3層に区分したこと,リビド
ーという性的欲動である精神的エネルギーを仮定しそのあり方による心理的・性的発達の段階を示した
こと,人格の構造について,イド・自我・超自我の概念を立て,それと意識の3層との関連を示したこ
となど,多くの学説を立て,心理学ばかりでなく一般社会に大きな影響を与えた。
フロイト以後の精神分析学は,フロイトの理論を発展させたり,不十分な点を補ったり,離反しなが
ら多くの学派を生み出した。なかでも,個人心理学のアドラー(Adler,A. 1870-1937)や,分析心理学
のユング(Jung,C.G. 1875-1961)
が有名であり,さらに,ネオ・フロイディアンと呼ばれるフロム
(Fromm,E.
1900-1980)らも広い学問領域で業績を残した。
教育心理学や発達心理学,特に青年心理学に大きな影響を与えたのが,エリクソン(Erikson,E.H.
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1902-1994)である。彼の理論は,フロイトがあまり関心を寄せなかった人格形成に対する社会や文化の
影響を積極的に導入したことに大きな意味をもつ。特に,青年期の発達課題である自我同一性(アイデ
ンティティ)の確立は,青年期での進路選択,職業選択,さらには成熟した成人への成長を理解する上
で重要な概念である。
4 近年の心理学の動向
心理学のこれらの分野は,1940 年代から次第に特定の学派としての役割が失われる傾向になってきた。
たとえば,精神分析学はほとんどすべての社会科学の分析に浸透していて,心理学の基本的技術と考え
られている。心理学の知識や技術を他の方面に応用するいわゆる応用心理学は,それぞれ独自の原理や
方法を発展させている。発達心理学・認知心理学・教育心理学・言語心理学・数理心理学・社会心理学・
マスコミュニケーション心理学など,
専門の分野での発展がみられ,
情報科学や生理学の発展に伴って,
さらに専門の分化が進むことが予想される。
第2節 教育心理学の歴史と現状
1 教育心理学の歴史
教育心理学は心理学の知識を教育へ応用しようということに端を発する。心理学が社会的に認められ
るようになったヴント以後に教育心理学も始まったということである。
ヴントの弟子であったホール(Hall,G.S. 1844-1924)は,児童・青年・老年期の研究を進め,アメリ
カで最初の心理学実験室を創設,児童・青年の研究で組織的に質問紙法を用いた大規模な調査を行って
今日の調査法の基礎を作った。
ゴールトン(Galton,F. 1822-1911)は,人間の能力の遺伝的特質に注目し,個人差研究の新しい分野
の基礎を築き,これらの研究に必要な統計的方法を発展させた。
アメリカの心理学者キャッテル(Cattell,J.M. 1860-1944)は,ヴントに学び,ゴールトンの影響を
受け,個人差の測定に取り組み,性格検査や知能検査の開発に寄与した。
キャッテルの弟子であったソーンダイク(Thorndike,E.L. 1874-1949)は,教育的事象測定に力を注
ぎ,教育測定運動の父ともいわれる。
フランスでは,心理学者ビネー(Binet,A. 1857-1911)が,医学者シモン(Simon,T. 1873-1976)と
協力してビネー・シモン知能検査を開発した。
ドイツの心理学者エビングハウス(Ebbinghaus,H. 1850-1909)は,連合の形成過程を考察の中心にお
き,記憶の研究に力を注いだ。
これらを背景に,20 世紀の初めに,ドイツのモイマンが『実験教育学入門講義』
(1907)を著し,ア
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