東アフリカのマラソン選手はなぜ強いのか? 所属:国際学ゼミ 1年 8 組 18 番 後藤 豪 第1章 はじめに 第1節 テーマ設定の理由 ケニアやエチオピアなどの、東アフリカ出身の長距離選手が強い理由を知りたいと思っ たから。また、それを知ることによって、自分のレベルアップにつながると思ったから。 第2節 研究のねらい 体の構造や遺伝子ではない部分で、東アフリカの長距離選手の強さの秘密を知る 。 第3節 研究内容と方法 第1項 研究の内容 練習方法・ランニングフォーム・育成システム、これらにおいて東アフリカの選手の特 徴を調べる。 第2項 研究の方法 文献による調査。 第2章 研究の展開 1960 年代以降、東アフリカ出身のマラソン選手が急激に力を伸ばしている。 近年では、 それに対抗しようといった動きが世界中でみられるようになった。 彼らはどのようにして 強くなったのか。 第1節 標高を使い分けたトレーニング 東アフリカの長距離選手の練習の例として、5000m,10000m,ハーフマラソン,フルマラ ソンの元世界記録保持者であるエチオピアのハイレ・ゲブレ シラシエ選手の練習方法をあ げてみる。 練習は朝夕の2回。朝練は、富士山で言うと八合目の高さに相当する、標高 3000mを超 える山の頂上付近で走る。平地よりも空気が 30%も薄い過酷な環境である。また、走るコ ースは木々が鬱蒼と茂った山の中である。起伏が激しく、足元は一歩間違えば怪我を招き かねないでこぼこ道である。そんな山道で、1時間半程度のインターバル走、長距離を3 時間以上かけて走るロングラン、登り坂を使って筋力を強化するストレングスなどを組み 合わせたトレーニングメニューを行っている。これについて本人は「酸素が少 ないため呼 1 吸をするのが大変であるが、体が高地環境に順応しているので、レースで標高が低い平地 に行った時は酸素が容易に体の中を循環するのを感じる。これはマラソンランナーにとっ て非常に有利に働く。また、日本人のように、舗装道路やトラックなどの硬い路面で練習 しすぎるのは問題がある。アスファルトは筋肉への負担が大きすぎる」と言っている。 夕方には、標高 2400mのジムでトレーニングを行う。トレッドミルを使い、1kmを3 分を軽く切る軽いペースで 15kmのランニングを行い、さらにサイクリングマシンを使っ て 13 分以内に 10kmを漕ぐトレーニングを行う。朝の 3000mに比べて夕方は 2400mと標 高は下がるが、より強度の高いトレーニングを行う。これで朝夕合わせて 42km分を走る ように計算しているらしい。 実は、ゲブレシラシエなどの東アフリカの長距離選手 たちの練習には共通点がある。そ れは、標高が高いというだけではなく、トレーニングの強度(ランニング速度)によって、 巧みに標高を変えているということである。実際、元マラソン世界記録保持者パトリック・ マカウ選手も、同様にトレーニングの内容によって 2~3 カ所程度、標高を使い分けてい る。週に 1 度、1kmを 3 分強のペースで 38~40kmを走る長距離走は標高 2200m、ス ピードを重視し 1km2 分 45 秒ペースで 1 分間走を繰り返すスピード・ワークは標高 1800 mで行っている。実は、こうした標高の使い分けが、高地トレーニングの研究理論から非 常に合理的だということが明らかにされてきたのである。 第2節 今までの常識を覆すランニングフォーム ここでは、パトリック・マカウ選手のフォームをみてみる。 トラックを走るマカウ選手の走りを、真横からハイスピードカメラが捉えた。頭から首、 胴体(体幹)が一直線になり、足も腰(重心)の真下からやや前方に着地している。地を這うよ うな走りで、全身が非常に脱力している印象を受ける。しかし、これには違和感を覚える。 なぜなら、一般的に多くみられる東アフリカ勢のランニングフォームと、明らかに違うか らだ。例えば、ゲブレシラシエ選手の場合、前傾気味の姿勢で太ももを高く上げて飛び跳 ねるような走りをしている。いったいどうして、このような違いが生じるのだろうか。 まるで一歩の大きい「忍者走り」のように見えるマカウ選手のフォーム。筑波大学の榎 本准教授によると、これは、非常に上下動が少ない、非常に効率的なフォームであるそう だ。また、飛ぶような走りではなく、足を低く前へ出していく、日本人ランナーに似た「持 久的な走り」であるという。このフォームによって、マカウ選手は、重心移動をスムーズ に行っているようだ。これによって、エネルギーを効率よく使っているのだ。 そして、マカウ選手の走りにはさらに驚くべき特徴があった。それは、着地の仕方であ る。なんと、足の前方、つま先に近い部分で着地していたのだ。つま先からの着地は、通 常、短距離走者などがスピードを出すために行うものであり、足への負担が大きく、マラ ソンには向かないとされてきた。そこで、榎本准教授がハイスピードカメラの映像をより 細かく分析した結果、ほんの一瞬、気になる動きが見つかった。あと数cmで地面につま 先が着くというタイミング。マカウ選手は足底の面を一旦地面にすれすれに平行にしてか ら、つま先をスッと引き戻して着地している。榎本准教授によると、この動きは地面に対 して、足の「速度差」をなくしている動作であるらしい。また、つま先からの着地は「自 由度」が高く地面と接地する際にも足の角度や速度を調節しやすいという利点があるとい 2 う。これによってマカウ選手は、着地の衝撃を少なくしているようだ。では、着地による 衝撃が少ないとどのような利点があるのか。それは、着地の瞬間にブレーキがかからない ということである。逆に、一歩一歩の着地で大きなブレーキがかかれば、その都度、走る スピードは落ちてしまう。当然それを補うためには、より筋力を使って加速 しないと一定 のペースは維持できない。ブレーキが小さく減速しづらいマカウ選手の走りは、その分、 地面を蹴る時も余分な力を使わなくて済むのだ。 つま先からの着地と、上下動の少ないフォーム。この 2 つによって、マカウ選手は無駄 なエネルギーを使わずに、スピードを維持する走りを実現していたのだ。 第3節 最強ランナーを生み出すビジネスモデル adidas や nike などの欧米のスポーツ用品メーカー、レースへの出場を仲介してマネー ジメント料を取るエージェントなどの先行投資によって彼らは育成される。その方法は優 秀なランナーを発掘して育成するための「キャンプ」である。地域のマラソン大会で優勝 するなど、素質があると認められた選手はスカウトされ、キャンプに入れられる。選手た ちはこのキャンプでライバルたちと寝食を共にし、競い合ってトレーニングを行う。そし て、ここで勝ち残った選手にのみ、トップランナーへの道が開かれるのである。そんな彼 らに必要な道具を提供したり、運営費の一部を負担したり、遠征費を負担したり、さまざ まな先行投資を行うのである。それが将来、何倍にもなって返ってくることを期待してい るのだ。こうしたキャンプでは、先輩のランナーが後輩のランナーの面倒を見る伝統があ る。また、毎日のトレーニングには、近所の少年たちなども加わることもある。そうした 中に優秀なランナーが混ざっていることもあるようだ。そう考えると、キャンプは夢を持 つ貧しいランナーたちにとって、ステップアップするための絶好の場であり、必要不可欠 である。 マラソンで成功し、貧困から抜け出すことを夢見る若きランナーたち。そして、彼らを 世界のトップランナーに育て上げることでビッグマネーを稼ごうとするスポーツ用品メー カーやエージェント。強いランナーを生み出す仕組みこそ、 この双方のニーズが合致した 「キャンプ」というビジネスモデルであったのだ。 第3章 感想 まとめ 今や、大学駅伝では東アフリカ出身の留学生の活躍が目立っている。実業団においても、 ニューイヤー駅伝のインターナショナル区間では、東アフリカ出身の選手に日本人選手が 太刀打ちできていない。また、世界陸上や、オリンピックの舞台でも彼らの強さは明らか である。そして、世界ではオレゴンプロジェクトなどの「打倒アフリカ勢」といった動き が見られている。 今回僕は、彼らの強さを知り、自分のレベルアップにつなげたいと思ってこの研究を始 めた。これまで彼らの強さの秘密を述べてきたが、研究を進める中で僕は、彼らが強い一 番の理由は「貧困から抜け出したい」という気持ちではないかと思った。球技などのスポ ーツと違って、走ることは道具をあまり必要とせず、貧しい彼らに とって、走ることは貧 困から抜け出すための近道なのである。そして彼らは仲間たちと競い合って、厳しい環境 3 の中で強くなっていくのである。では、自分が強くなるためにはどうしたらよいのか。そ れはまず、彼らのように危機感を持って日々の練習を行うことだ。部活の仲間と競い合い、 高めあっていくことで、おのずと強くなれると思う。だから僕もこれからは、 「強くなりた い」という強い意志と危機感を持って練習に取り組んでいきたい と思う。 第4章 参考文献 NHK スペシャル取材班「42.195km の科学」- マ ラ ソ ン 「 つま 先 着地 」 VS[か かと着 地 ] ウィキペディア 「ハイレ・ゲブレシラシエ」 4 「パトリック・マカウ」
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