男子ハンドボール競技におけるゲーム分析 —連続失点が勝敗に及ぼす影響について— 横山克人(東海大学大学院),栗山雅倫(東海大学) 1.目的 に試合のスコアを記録した。 3)調査項目 得点を競い合うハンドボール競技にお Table.1 調査対象としたシュート種別 いて、効率良く得点することは、勝敗を 決するうえで極めて重要な要素である。 同様に、効率良い攻撃活動に対する防御 活動は失点を抑制するうえで欠かせない 要素である。確率の高い攻防活動を展開 するためには、連続して得点すること、 4)分析項目 または連続して得点させないことが現象 (1)上位 4 チームと下位 4 チームの間に として付随されることは明らかと言える。 おける各連続失点 一般的には、連続した失点が勝敗に影響 (2)上位 4 チームと下位 4 チームの 4 することは十分に認知されており、競技 連続失点時のゴール占有率 レベルの高低に拘らず、その傾向は認め られる。しかしながら、ゲーム展開にお 3.結果及び考察 ける連続失点がゲームの勝敗に与える影 1)上位と下位における各連続失点の比較 春季リーグ及び秋季リーグにおいて、 響を考察した先行研究は多く見ない。 上位チームと下位チームの間に 4 連続失 そこで本研究は、連続失点と競技成績 点に有意な差が認められた(Fig.1.2) 。 との関係性を明らかにし、戦術学習指導 4 連続失点に有意な差が認められたこ 計画の資料を得ることを目的とする。 とから、上位チームは 3 連続失点後に得 2.方法 点することにより、連続失点を抑制して 1)調査対象 いると推察される。 2012 年度関東学生男子ハンドボール 1 部リーグにおける春季リーグ(28 試合・ 8 チーム) 、秋季リーグ(28 試合・8 チー ム)を対象とした。 2)調査方法 試合をビデオカメラで撮影し、撮影し た映像を基に、独自に作成した記録用紙 Fig.1 春季リーグの上位と下位における連続失点の比較 55 続失点と競技成績との関係性を明らかに し、戦術学習指導計画の資料を得ること を目的とした。 1) 春季リーグ及び秋季リーグの上位 4 チームと下位 4 チームの間に 4 連続 失点に有意な差が認められた。 2) 春季リーグ及び秋季リーグの上位 4 Fig.2 秋季リーグの上位と下位における連続失点の比較 2)4 連続失点時のゴール占有率 チームと下位 4 チームにおける 4 連 4 連続失点時のゴール占有率は、FB に 続失点時のゴール占有率は、FB が最 よる失点の割合が高く、春季リーグと秋 も高い割合を占めていた。 以上のことから 4 連続失点は試合展開 季リーグにおいて同様の傾向が見られた (Fig.3.4) 。 を左右する一要因であり、競技成績に影 FB による失点を抑制することで、4 連 響を及ぼすことが示唆された。また、FB 続失点が減少することが推察される。 による失点を抑制するために、攻撃終了 直後から DF 形態が整いきるまでの DF のトレーニングが重要であると考えられ る。 5.課題 本研究では、関東学生男子ハンドボー ル 1 部リーグのみを対象としたため、今 Fig.3 春季リーグの上位と下位の 4 連続失点時のゴール占有率 後は競技レベルによって分析する必要が ある。 6.参考文献 ・栗山雅倫(2010).ハンドボールにお けるスコア分析によるゲーム評価の可能 性について—シュート占有率に着目して—. Fig.4 秋季リーグの上位と下位の 4 連続失点時のゴール占有率 東海大学紀要.40.pp77-84 4.まとめ ・八尾泰寛・高野亮(2008).ハンドボ 本研究は、2012 年度関東学生男子ハン ールのゲーム分析—時間帯における攻撃 ドボール 1 部リーグにおける春季リーグ の特徴—.東京女子体育大学・東京女子短 及び秋季リーグのゲーム分析を行い、連 期大学紀要.43.pp7-16 56
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