福祉移送サービス(福祉有償運送) の位置づけと展望

第25回 日本福祉のまちづくり 関西セミナー
「福祉移送サービスの新展開」
地域交通の担い手としての福祉移送サービスへの期待
福祉移送サービス(福祉有償運送)
の位置づけと展望
大阪産業大学 人間環境学部
吉川 耕司
制度の変遷ととりまく環境
•  法整備の流れ
–  指針、ガイドライン、条例
–  ハートビル法(1994)
–  交通バリアフリー法(2000)
•  対象は道路、駅、車両
•  2005改正:STSを付帯決議
–  道路運送法
基盤整備
点(個別施設)→線(特定経路)
(規制誘導)‐面‐(駅間移動)
交通手段
•  2002改正:需給調整の廃止
•  2006改正:自家用自動車による有償旅客運送制度
・アクセス交通手段
・ドア・ツー・ドア
完結性、連続性
介護保険法
•  考え方
–  バリアフリー、ユニバーサルデザイン、ノーマライゼーション
–  「交通権」 フランス交通基本法
–  「交通における機会平等」 ADA(障害を持つアメリカ人に関する法律)
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福祉移送サービスの交通手段としての位置づけ
•  交通の視点からは必然、帰結、段階としてのSTS
移動サービスの枠組み
個別ニーズへの対応
STS
大
コミュニティバス
STS(狭義)
①ドア・ツー・ドア型
STS
④固定路線型
送迎サービス
福祉輸送型タクシー
⑤施設巡回型バス
一般タクシー
②リフト付タクシー
小
③介護付タクシー
易
一般路線バス
⑥地域運行バス
鉄道など
大量輸送機関
LRTなど
新交通システムなど
中量輸送機関
路面交通
難
制約者の使いやすさ
高橋万由美(2000)より転載
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福祉移送サービスの政策としての位置づけ
•  道路運送法の一部改正:
自家用自動車による有償旅客運送制度の創設
–  規制緩和、民間活力の導入、地域への負担押しつけ…否定的見解も可能
–  許可制、登録制/安全確保、管理体制…手間、しばり、参入障壁
–  「お目こぼし」「白タク」「違法状態」→「適法」「認知」
•  福祉移送サービスを法制度に位置づけることの意義
–  「公共の福祉」サービスの中に移動を支援するというカテゴリーを生み出した。
–  移動サービスを提供することの公的責任を明確にした。
•  「準」公共交通機関としての市民権
•  日本もつぎなるステップへ移ったと好意的にとらえよう
•  地域の人的資源、交通資源の有効活用
•  個別輸送を社会システムとして認知
本来的には
「例外許可」
よりも
別体系?
–  大量性、速達性を追求し、効率と採算を重視した交通から、
利用者のニーズをとらえ、立場に立った交通へ。
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モビリティ増進の観点からみた意義
•  選択性のある状態
–  身体レベル、状況に応じて(健常者と同様)
–  重層的な交通手段が提供されることにより、アクセス・イグレスも完備
•  完結性、連続性の確保
–  個別的、局所的 利用者の立場
–  公共交通も整備
•  異なる交通機関の同一ホーム乗り入れ、駅前への端末交通乗り入れ
•  「AかBか」ではなく「AもBも」の発想
–  クルマとひとの道での折り合い
–  自動車と公共交通の使い分け
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福祉移送サービスのこれから
•  市民権、定着のためにも拡大を(住みよいまちへの一歩)
–  手段の拡大
–  範囲の拡大
•  通院 → 買い物、まちブラ、訪問、公園、…、旅行、通勤
–  対象者の拡大
•  広義の移動困難者はたくさんいる
•  需要の喚起、潜在需要のひろい上げ
–  対象拡大、マッチング
配車サービス
もこの発想?
•  個別機関の会員 → 総合的な利用者登録
•  身障者手帳保持者、介護保険認定→広義の移動困難者認定
–  スキマ、ニッチ市場 → 普通の風景
•  安全確保は大事だけど、これを恐れて足踏みしない
•  社会的認識、機運を高めることにつなぎたい
•  社会システム、まちの装置 地域主体(自治体)、公的補助
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交通と福祉 : あるべき「交通」へ
•  認識の転換
–  交通「弱者」にしているのでは?
–  交通困難者はたくさんいる。/通院→まちに出る→旅行(遠慮なし)
•  拡大(見かける、まちの風景)→社会システムとしての認知
•  運輸連合の発想
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連続性の担保、本来の交通費用
タクシーもSTサービスも
公共交通も含めた全体的な取り組み
Step1 穴埋め → Step2 調整 → Step3 総合・統合
•  ユニバーサルな交通へ
–  広義の交通困難者
•  一時的(妊婦、骨折、子育て世代)、旅行者(スーツケース) ・旅行者・訪問者
–  自転車乗り入れ(レール)、動く歩道のようなエスカレータ
•  そもそも論(上下移動、歩車分離)
–  歩道橋にエレベータ → クルマが上下 / ガードレールの功罪
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福祉のまちづくり : あるべき「まち」へ
•  交通→まち→ひと
•  高齢者・身障者をよく見かけるまちへ
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外出時に「ひけ目」を感じない社会 到達側の問題
受け入れ側(一般市民)の意識
△高齢社会の活性化、△交通権
パイを大きくする発想 タクシー業界(選択肢としてのタクシー)
•  地域の交通は地域で責任を持つ
–  自治体が責任を持ち、地域の手に取り戻す → 地域主体
–  路線バスの入札の取り組み 交通事業者に委ねない
–  ニーズへの合致 サービス水準を示す(スタンス)
•  郊外ショッピングセンター
–  費用・経済的抵抗
•  いわゆる「受益者負担」
•  +公的補助 not 施しの思想 but シビルミニマムの確保
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