声明 - STS forum

永田クラブ
経済団体記者会
2014 年 10 月 7 日(日本時間午後 12 時 30 分解禁)
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科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)
第 11 回年次総会
(2014 年 10 月 7 日、京都)
声明(仮訳)
1.STS フォーラム(特定非営利活動法人、本部:東京都千代田区、理事長:尾身幸次)は、2014 年 10 月 5 日から 7 日にかけ
て第 11 回年次総会を開催した。100 の国・地域・国際機関からおよそ 1,000 名の科学技術、政治、ビジネス、メディア各界
の世界的なリーダーが一堂に会し、いかにして科学技術の「光」を強化し、「影」を克服していくかについて検討した。
2.今回で4回目の出席となる安倍総理大臣がフォーラムの名誉会長に就任するという栄誉に浴した。人類の将来と社会におけ
る科学技術の役割に関する高い識見に基づく彼のリーダーシップは、フォーラムがその目的を達成することを助けることに貢
献するだろう。
3.STS フォーラムは新たな 10 年を迎えた。フォーラムが単なる会議から、世界のリーダーが集まる最も重要な運動の一つで
あると認識されるようになったことを喜ばしく思っている。我々は、人類が直面する問題を検討し、解決策を見出ていく取組
みをさらに進めるため、これまでに我々が培ってきた人的ネットワークをさらに拡大していく予定である。この取組みの一環
として、今回の総会では「STS ヤングリーダー・プログラム」を正式に創設し、より積極的に若手リーダーが STS フォーラム
に参加できるようにした。また、次回の総会までに北京、ベルリン、クアラルンプール等の世界の主要都市でワークショップ
を開催して、フォーラムの活動を発展させる予定である。
4.STS フォーラムは、このように、活動範囲を広げて、そのコミュニティをより大きなものにしていくこととしている。人類
の持続可能な未来を探求していくためには、科学と社会とがこれまで以上に協力して、科学技術に対する人々の信頼を向上さ
せ、個人及び社会の行動に大きな変化をもたらすことが不可欠である。科学者と社会の間の交流の機会を拡大するとともに意
見交換の内容を改善して、人々がリスクと利益を明確に説明されるなど、十分な情報を得た上で判断をすることができるよう
にすべきである。さらに、STEM(科学、技術、工学、数学)教育が重要であり、また、上質な科学関連プログラムを開発して、
科学の社会における役割について一般の人々の関心を高めるとともに情報を提供すべきである。芸術、人文科学、社会科学、
政治学及び社会イノベーションもこの点で重要な役割を果たしている。
5.科学と社会の相互関係の強化からさらに進めて、市民社会はもちろん官民、大学、政府及び産業の「連合」に発展させるこ
とを目指していく。この「連合」の支援を得ることで、世界の全コミュニティを対象とする包括的な枠組み、すなわち、女性
の役割を拡大し、科学・工学・医学の各アカデミーの発言力を高める枠組みが発展していくことになる。企業の最高技術責任
者(CTO)は、ビジネスと大学、民間の研究所及び公的研究所の開発者との間の架け橋となり、イノベーションを涵養するこ
とが期待される。
6.新しい製造技術、ロボット、ナノテクノロジー及び新材料がもたらす産業上のイノベーションは、製品開発、健康、都市生
活を含む様々な分野で不可欠な役割を果たしている。気候変動が世界の多くの地域における作物の収穫時期や栽培できる植物
の種類等に影響を与え、乾燥地域が拡大しているため、農業上のイノベーションも必要とされている。
7.世界の一地域のイノベーションをそのイノベーションを必要とする他の地域に結び付け、これにより、確実に持続可能な解
決策を世界中に普及させ、特に最貧国において、人口を増加させることが必要である。また、世界の各地で乾燥地域が拡大し
ているなかで食料安全保障を実現するためには、資源を上手に活用し、干ばつへの耐性や塩分耐性がある新しい作物を栽培す
ることによって、ふさわしい生活水準を得る方法を見出すことも重要である。
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8.科学技術外交は、国境を越えた関係を強化するものである。教育、研究及び地域における起業家精神の涵養に対する支援は
発展途上国の人材育成に不可欠である。資金配分機関(Funding Agency)は科学分野の国際協力関連プロジェクトに対して財
政支援を行い、特に地球的課題について多国間提携を促進すべきである。今日のグローバル経済における科学技術に焦点を当
てた産業競争と協力の重要性が増大している。
9.世界的に環境問題が危機的な段階に至っている。CO2 排出削減の具体策について合意を作ることが一層重要となっている。
STS フォーラム年次総会にあわせて開催される、地域の気候変動への対応に関するセッション(RACC6)では、これまでのベ
ストプラクティスを評価して、地域社会や機関の対応力を向上させ、世界の他の地域でも今後発生し得る悪天候を予防するイ
ンセンティブを向上させるメカニズムを検討するとともに、例えば沿岸都市・地域が海面上昇に備えるための知識と行動のネ
ットワークを通じた取組みを促した。RACC は 2013 年に取り組みが始まった新しい 10 年間の国際研究イニシャティブである
「フューチャーアース」と密接に協力することが期待される。なお、RACC6では、次回会合の前にエジプト・アレキサンドリ
アでワークショップを開催することを決定した。
10.我々が住む環境や我々は所属する生態系は、我々が居住する陸地や我々を包む大気だけではない。地球の大部分は水、すな
わち海洋と氷河、地球や生命の存在を可能とする水循環の湿度を補充する地表水で覆われている。海洋やその深層水の流れが
気候温室効果ガスの排出管理にとって重要な役割を果たしており、地球の海洋と淡水に関する理解を深めることが、適切なエ
ネルギー供給、健康の維持及び豊かな社会生活から構成される人類の持続可能な未来を効果的に実現するために肝要である。
11.シェールガス革命により世界のエネルギー供給は新しい局面に立っている。将来のエネルギー供給では、安全に関する最高
の基準及び環境と社会の両面からの適合性と合致した幅広い選択肢があるべきである。長期的には、化石燃料の継続的な消費
は、地球環境が受容できない負荷を強いることになる。多様なエネルギー源が必要であり、原子力は重要なオプションの一つ
であり続けるが、原子力では、安全の確保、核セキュリティ及び核不拡散の取組みの強化が非常に重要である。
12.世界的な保健問題については、ゲノム医療と再生医療に関する研究が急速に進展してきた。iPS 細胞は治療において新たな
可能性を切り拓く技術となる高いポテンシャルを有している。オーダーメイド医療と先制医療に関する研究は、栄養に関する
科学的な知見を踏まえてさらに推進されるべきである。脳科学研究の推進は、特に高齢者にとって、生活の質を改善に貢献す
ることが期待される。新しい国際的なシステムを構築して、民間、学会、政府・公的機関及び世界保健機構(WHO)間の協力
をより一層向上させることが今まで以上に必要となっている。国際社会の能力を強化させてエボラ出血熱を含む様々な感染症
に対応できるようにすることも喫緊の課題である。
13.
「ビックデータ」の出現等、情報通信技術(ICT)が、研究から製造、教育からエンターテインメント、議論から発見に至る
まで、すべてのことを変えている。特にセキュリティとプライバシーに焦点を当てた世界共通の ICT に関するルールの構築に
ついて世界規模で合意することが必要である。インターネットと携帯電話の融合は、社会を変えるとともに、先進国及び発展
途上国において、研究開発、教育及び起業により多くの女性が関与することを通じて、女性の社会進出の増大を支援していく
と考えられる。
14.既に世界の人口の半数以上が都市に居住し、都市化が急速に進んでいることにより様々な課題とチャンスが生まれている。
都市、人々、価値及び文化がそれぞれ進化することを支援するためには、科学技術と都市計画の活用による「スマートシティ」
の創出によって、より住みやすく、人にやさしく、より安全な都市環境を整備することが必要である。
15. 地球の資源は有限であり、世界の人口を無限に増加させるべきではない。我々は人類の状況について、今後 100 年又は 500
年のといったより長期的な視点で考える必要がある。この点で、自然と調和して生活することが人類にとって非常に重要であ
り、このため、我々は引き続き、人類と地球の持続可能性について焦点を当てた検討を行っていく。我々は全員で将来の世代
に道を拓くため活動していく。
16.我々は、来年、この場に再び集うこととしている。STS フォーラム第 12 回年次総会は、京都で 2015 年 10 月 4 日(日)か
ら 6 日(火)まで開催することが合意された。
お問合せ先:NPO 法人STS フォーラム本部
事務局⻑:尾身 朝子 / 広報担当: 田代 弘子
Tel.03 3519-3351 / Fax 03 3519-3352
[email protected] / www.stsforum.org
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