図書館コンシェルジュの 本と街の案内所 見聞 調録 VOl.1 Vol.35 私たち図書館コンシェルジュは、神保町にある「本と街の案内所」 (※)でもご案内をしています。 案内所へは全国各地からさまざまな目的をもった方がお越しになるため、日々いろいろなご質問に対応して います。ここでは、私たちがいままでに見たり聞いたり調べたりしたことから、皆さまのお役に立ちそうな 情報をご紹介いたします。案内所でも皆さまのお越しをお待ちしています! ※ 「本と街の案内所」千代田区神田神保町 1-7-1 (月~土曜 11:30~18:00/日祝休み) 管理:神田古書店連盟/運営:NPO 連想出版/協力:千代田図書館コンシェルジュ(対応時間 平日 11:30~15:00) 特集:作家の直筆を味わう 作家の息遣いが感じられる直筆資料は、活字とは違う味わいがあるもの。案内所にも「憧れの作家の直筆資 料を探している」という質問が寄せられます。そこで今回は「作家の直筆資料」をテーマに調べました。 直筆資料に触れる 神保町の書店にはサイン本やサイン色紙、原稿用紙や書簡など、実際に作家が書いた直筆資料が販売されて いるお店があります。また、入札会(オークション)には歴史上の人物や文豪などの直筆資料が出品される こともあります。貴重な直筆資料に自分の手で触れることができるのは、本の街神保町ならではと言えます。 ■神保町の古書店 ・けやき書店(神田神保町 1-9 ハヤオビル 6 階) 日本の近現代文学の初版本、サイン本、作家の色紙や原稿、書簡を豊富に扱う。無頼派のものは特に充実。 ・玉英堂書店(神田神保町 1-1) 2 階の稀覯本(めったに見られない珍しい本)ルームでは自筆草稿や書簡、葉書、色紙、短冊を扱う。 ■神保町の新刊書店 ・東京堂書店(神田神保町 1-17) 1 階のサイン本コーナーには様々な著者の新刊サイン本が豊富に並んでいる。 ・書泉グランデ(神田神保町 1-3-2) 1 階のサイン本コーナーのほか、各階に専門書のサイン本が揃っている。作家だけでなくスポーツ選手や 芸能人のサイン本も。 ■東京古書会館の入札会 入札会には日本全国の古書業者や、収集家、名家から珍しい品が集まります。一般の方は「一般プレビュ ー」で出品物を確認し、欲しいものがあったら古書業者に入札を委託します。委託を受けた古書業者は「入 札会」で代理入札し、最高値をつけた方が落札するというシステムになっています。 ・七夕古書入札会 明治古典会が毎年 7 月に開催する入札会。江戸期以前から現代までの書籍、書簡、原稿などをはじめ、戦 後の少年雑誌や映画ポスターなども出品される。 ・古典籍展観大入札会 東京古典会が毎年 11 月に開催する入札会。和本、古筆、古文書、古地図、錦絵などが出品される。 直筆資料を味わう 作家の直筆資料からは作家の個性や人柄をうかがうことができます。また、直筆原稿は活字になって読者の 目に触れる前の、編集者や印刷所の手が加わっていない状態の作品を読むことができるので、資料的な価値 も非常に高いと考えられます。最近では「直筆で読む」シリーズや「直筆原稿版」として手軽に読める本も 出版されています。それらの本の解説にはそれぞれの作家の文字や言葉遣いの癖などが詳しく紹介されてい るので、自分で原稿を読み解いて味わうのも楽しみ方の一つです。 ■千代田区立図書館の資料で調べる ・ 『直筆で読む「坊ちゃん」 』夏目漱石/集英社(資料 ID:1000232395) ・ 『直筆で読む「人間失格」 』太宰治/集英社(資料 ID:105895304) ・ 『オーパ! 直筆原稿版』開高健/集英社(資料 ID:1101017109) ・ 『夏の闇 直筆原稿縮刷版』開高健/新潮社(資料 ID:130288335) ・ 『近代作家自筆原稿集』青木正美/東京堂出版(資料 ID:107261422) ・ 『近代詩人・歌人自筆原稿集』青木正美/東京堂出版(資料 ID:100710623) <豆知識>永井荷風と平井呈一 作家の直筆資料は世界に 1 つしか存在しない貴重な資料だけに、贋作問題も付きまといます。 永井荷風は親交をあつくしていた平井呈一が、自分の筆跡をまねて偽原稿や短冊などの贋作を作成して売りさば いていたことを知り、この事件をもとに「来訪者」という作品を書いています。 『荷風全集 第 18 巻』永井壯吉/岩波書店(資料 ID:130378979) 『永井荷風 その反抗と復讐』紀田順一郎/リブロポート(資料 ID:130460140) 作家が愛した原稿用紙 作家に欠かせないものと言えば原稿用紙。作家が愛した原稿用紙は現在でも昔と変わらず販売されていたり、 レプリカとして復刻されたりもしています。この原稿用紙を使えば、文豪気分に浸れるかも? ・復刻版文房堂製原稿用紙(千代田区神田神保町 1-21-1 文房堂)中原中也、有島武郎、横溝正史が愛用し た原稿用紙をシリーズ化して復刻販売している。それぞれに自筆原稿のレプリカが付いている。 ・相馬屋製原稿用紙(新宿区神楽坂 5-5 相馬屋源四郎商店)夏目漱石、北原白秋、石川啄木などに愛され た原稿用紙。明治の中期に、それまで和半紙だった原稿用紙を尾崎紅葉の助言で洋紙にして売り出したの がはじまり。 ・満寿屋の原稿用紙(台東区浅草 5-70-11 川口ビル 1 階 満寿屋)作家の丹羽文雄からの依頼でつくられた 原稿用紙は、 「文学賞がとれる原稿用紙」という神話が生まれ、現在でも多くの作家が愛用している。第 一次オイルショックの際、司馬遼太郎からは 5 万枚の注文があったことも。 ・漱石山房原稿用紙(横浜市中区山手町 110 神奈川近代文学館)橋口五葉デザインによる漱石特注の原稿 用紙をほぼ原寸大に再現。当時の「朝日新聞」新聞小説の版組に合わせ 1 行 19 字詰になっている。神奈 川近代文学館はこの原稿用紙の木版版木、紙型を所蔵している。 コンシェルジュのおすすめ 文学館に行ってみよう! 作家の直筆資料に触れるには、文学館に行くのもおすすめです。作家が書いた文字やイラストをデザインした オリジナルグッズを販売している館もあり、好きな作家の筆跡を身近に味わうことができます。 ・日本近代文学館(目黒区駒場 4-3-55)芥川龍之介や有島武郎、川端康成や夏目漱石などの自筆絵葉書や色 紙のレプリカを販売。 ・台東区立一葉記念館(台東区竜泉 3-18-4)樋口一葉自筆の和歌短冊のレプリカを販売。 ・池波正太郎記念文庫(台東区西浅草 3-25-16)池波正太郎の自筆画をプリントした手ぬぐいや扇子、自筆原 稿が印刷されたポストカードなど豊富なグッズを販売。 2014 年 12 月発行 千代田区立千代田図書館
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