これからのマネジメントサービス ∼リーダーシップ

これからのマネジメントサービス ∼リーダーシップ、そして、ディシジョンメイキング∼
マネジメントを語るときに忘れてはならないキーワードがあります。それは「リーダーシップ」と「ディシジョンメイキング」です。前回コラムの中
の「『ルビコン川を渡る』決断と実行」を発展させた形のお話をいたしましょう。
これらは、現段階で私たちが求める「ディシジョンメイキング・プロセスマネジメント」の基盤になると考えています。
グループでの意思決定をプロジェクトとして捉えた場合のプロセス、つまりディシジョンメイキング(意思決定)プロセスをここで紹介します。
計画は実施のためにあり、実施は正しい意志決定のもとに行われるべきであることはすでに述べてきました。その計画と実施を結ぶのが
GO サイン、つまり決定です。「ディシジョン(決定・結論)とは、熟慮の最終点で行動の始点である」といわれています。
ディシジョンメイキングがプロジェクトであるならば、立上げフェーズから計画フェーズ、そして実施、終結と各段階を経て完了にいたります。
そこには、判断し決定するためのデータや情報というインプット、決定に至るプロセス、そして決定事項であるアウトプットが存在します。 ディ
シジョンメイキングでは、まず何を決定すべきか(アウト
プット)を明確にして、そのためにどのような情報やその
他のリソースを収集するか(インプット)を定め、それらを
アウトプットに導くプロセスを考えなければなりません。
これから、その理由と手順の例を挙げてみます。 「思
考」とは、そのディシジョンに向けた知的活動ですから、
このプロセスは思考のプロセスでもあるのです。
アウトプット:
まず、ディシジョンメイキングにおいては、決定事項としてのアウトプットの内容は何を満たしていなければならないのかを固めることが肝要
です。例えば、事業方針や戦略との整合性、当該ビジネスの期待する結果を導くための要素などがあります。つまり、アウトプットとは、元に
自ら定めた「right」であり「成功」の定義に沿って行動し、将来期待される結果(到達点)とそこに至る行動プロセスを決定することなのです。
しかし、実際にそこに到達するのに立塞がるのが「リスク」であり「不確実性」です。ここでは、リスクは予測出来るものとして、不確実性は予測
不可なものとして捉えられます。一般に意志決定とは、リスクがあり、不確実で、またさまざまな制約条件の中で行われるものですから、曖昧
さが残る場合もあるでしょう。ただ危険なのは、それらを「判らないもの」として意識外に置いてしまうことです。それはアウトプットの曖昧さを
助長してしまいます。それでは、アウトプットの後に行われた行動の結果(アウトカム)が、自ら考える right と成功の定義と整合性を維持して
いるかどうかの判断を後にレビューすることはできません。それでは、継続性のあるマネジメントができないのです。
また、アウトプットには、スコープを行動前に明確にしておくことをも包含されています。
インプット:
次に、アウトプットを決定するために必要な情報を含めたリソースは何であるかを決めることが必要になります。そのリソースは知識であった
り、技術であったりもします。それらがインプットとなります。そこに制約条件(時間や物理的収集条件など)があるにしても、必須のリソース等
をとにかく明確にしていきましょう。これがディシジョンメイキングにおけるスコープの定義になるのです。
個々が自らの経験や自らの現状把握でコトが足りるとして十分なリソース収集を怠ったり、収集するのが困難なリソースを除外してしまったり
するのは危険です。いうまでもなく、それがアウトプットに悪影響を与えることになります。
収集するのが困難なリソースを除外するかどうかはディシジョンメイキングにおけるプロセスで判断することなのです。また、プロセスの中で
再度必要な追加情報等の収集が発生することは十分にあり得ます。
プロセス:
ディシジョンメイキングが信頼されることは、マネジメントにとって死活的に重要です。
その信頼は、決定する人の「パーソナリティー」や「経験」の混合体の結果であるとよくいわれています。しかし、不確実でリスクがあり、さらに
複雑でスピードある市場や技術の変化が激しい環境のもとでは、インプットからアウトプットを導くプロセス(シナリオやアプローチ)を判断基
準を含めて説明できるところに、信頼のドアが開かれるのだと考えられます。なぜなら、そうした環境のもとでは「パーソナリティー」や「経験」
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は信頼の根拠となり得ず、思考プロセスを理解することでしか、信頼に足るかどうかを周囲は判断できないのです。つまり、何を持ってそう決
めたのかを説明することでしか、その決定に信頼は寄せられないと考えてもいいでしょう。
私達が目にする現実的で論理的なプロセスの多くは、「選択肢のストーリー」です。十分な情報を収集して、集約し、その中からいくつかのスト
ーリ(選択肢)を描き、検討し、決定していく。それらのプロセスを文書化しておくことがとても重要です。
そして、もう一つの大切な点は、選択するために必要なデータや情報をどの範囲まで収集すれば決定するに十分であるかということ、そして
その選択する上での原点(判断基準)をどこに置くかということです。これらを事前に決めないで、または時間などの制約の理由で、収集範囲
や判断基準を考慮することなしに行われる意志決定がいかに多いことでしょうか。この収集アプローチは全数検査かサンプリング検査かの
相違と酷似して、妥当性や十分性が問われるところなのです。
いずれにしても、重ねて述べますが、ある仮説やシナリオの上での収集にしても、重要なことはこれらのスコープとプロセスを、事前に明確
にして合意し、また後日になってもレビュー出来るようにしておくことが最も重要な点です。
さて、ディシジョンメイキングのプロセスの型には、例えばプロジェクトでいう Water-Fall 型とスパイラル型、もしくは増殖型があります。何れ
のプロセスであっても、収集から結論への収束させるフェーズの切り替わるゲートがあり、そのゲートを事前に定めておくことの重要性を強
調しておきます。
さらに現実の世界では、これら決定過程での論理的プロセスとそれに絡まってくるメンタル要素があります。ここでは、それらについての記述
はしませんが、この 2 つの力はアウトプットを左右することを確認しておきます。
決定に従った行動とアウトカム
意思決定をし、それを行動に移して、はじめて結果(アウトカム)が生まれます。人はその結果を見てからその意思決定の良し悪しを判断する
傾向がありますが、結果だけの良し悪しの議論が組織の信頼を担保するのでしょうか?
ここで申し上げたいのは、個々の決定と結果の両者を常にレビューすることを通じて、そのもととなっている意思決定のインプット、プロセス、
そしてアウトプットという一連のクオリティーを高めてゆく活動が組織価値になり、結果的に組織の信頼になるということです。これが第 1 回目
のコラムに示した QC-TQC-TQM の進化の過程で、利害関係者からの信頼に向けたマネジメントの質は、意思決定の質にあると申し述べた
理由なのです。
私たちはこうした信頼を得るためのディジョンメイキング・マネジメントをさらに具体化し、みなさまに提供したいと考えています。
図1のフローの中で一番困難なことは、決定したことを行動に移すことです。たと
え「Where : どこへ行くのか」、「What : 何をすべきか」、「How : いかにすべき
か」の決定が具体的で明瞭であったにしても、そうです。 例えば、How を決定し
ても、またそれを Do に移行できない壁、過去の成功経験、不確実に対するメンタ
ル、評価要素との相違、そして恐れなどが存在するのです。ここでは、メンタル要
素と論理思考(Thinking)の両軸での指導が大きな力となり、その主役はリーダー
シップです。
特に先例のない結論を実現するには、マネジメント力だけでなく、大きなリーダー
シップが求められます。ここで、マネジメントの限界とリーダーシップの役割につ
いて述べてみたいと思います。
P・F・ドラッカーは、マネジメントとリーダーシップの違いについて、前者を「複雑な
トレードオフの関係にある要素を処置すること」とし、後者を「変化を処置すること」
と言及しています。
前者は、企業活動においては、経営資源をもとに成長し拡大するためにビジネス要素をマネジメントすることが求められるという意味です。
一方、それぞれのビジネスにも寿命があり、その変換や進化するためにはリーダーシップが求められると主張するのが後者です。
言い換えれば、さまざまな決定の中で、先例のない、またもしくは後戻りできないケースで「Go」もしくは「No Go」をリスクや不確実を包含して
判断すること。そして「Go」を決定したならば、同時に行動へ突き進むこと。こうした大きな決断を組織として行うためには、リーダーシップが
必要となるということです。
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このコラムで今まで対象にしてきたマネジメントは、プロセスを重視し、また常に right を追い求め続ける仕組みです。一方で組織がその後も
進化し続けるために変化(がらがらポン)しなければならないケースに直面した場合、その文化そのものが大きなバリアになることがありま
す。 図2 で示していることは、今まで向かうべき right な方向 €
ビジョン’
3 0 がありそれを実現するためにマネジメントを通じて継続的改善をしてき
たが、ある時点で向かう方向が新しい right €30
ビジョン’
に変更となり、方針戦略の変更、続いてマネジメントの仕組みまでも変更する場合は、そ
れまでのマネジメントによる改善でなく、リーダーシップによる変化が求められるということです。
このように、新しいマネジメントを入れ込み、今までの仕組みからリエンジニアリングをするところにリーダーシップが重要な役割を果たすの
です。
ここではトップのあるべき姿を説明しているのでなく、あくまでもリーダーシップとしての思考と姿勢を述べていることに留意してください。
もう一つの世界
ペンシルバニア大学のビジネススクールであるウォートンスクールの S・J・ホッチは、この決定と行動に向けたアプローチに 2 つの世界があ
ると言及しています。それは西洋と東洋の差異を意味しています。つまり、西洋では時間軸としてスピードを求め、それは短期的で単一的で、
そして近視眼的な決定で行われる傾向にあります。それに対し東洋では、長期的で、さらに複合で全方位的な視点で、決定する状況が熟す
機会を待って決定する傾向があるとしているのです。これらの思考モデルについては別途紹介できればと考えます。
これまで、多くのマネジメント手法が紹介され、さまざまな組織が目的をもって導入を図ってきました。しかしある時点で、それまでの導入済
みのマネジメントシステムとこれから導入しようとするマネジメントシステムを相互にどのように取り扱えばよいのかが、組織にとって大きな
課題になってきます。
英語で‘
Perfect€31
という単語があります。サン=テグジュペリはこの意味を、「これ以上足すものがないほどまでになったとき」をいうのでなく、
「これ以上取り去ることができないとき」であると言及しています。
今私たちはもう一度、新しい現実を前にして、何を残し、何を取り去るかを見直すことも重要な決定であろうと考えますし、その決定プロセスに
おいてもこの視点を考慮することが重要となります。
そしてここでもまた決断が求められ、同時にその行動においてリーダーシップが求められるのです。
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西
健
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