災害対策本部要員の応急対応訓練シミュレータの開発

Ⅲ-3
巨大地震・津波による太平洋沿岸巨大連担都市圏の
総合的対応シミュレーションとその活用手法の開発
10.災害対策本部要員の応急対応訓練シミュレータの開発
10.1 災害対策本部要員の応急対応訓練シミュレータの制作
10.1.1 研究の目的
本研究は、地震災害発生時における震後 3日間程度におけ
る災害対策本部要員の応急対応訓練のためのロールプレーイ
ングゲームの開発を目的としたものであります。
10.1.2 研究の概要
災害対策本部要員にとって必要な資質とは、地震時に起こ
りうる種々の状況に対して臨機応変の的確な判断ができるこ
と、伝達される情報の不確実性と情報伝達の遅延に対し、被
害の全容を予測しつつ先を見ながら時々刻々の対応を考えな
ければならないこと、そして初動対応のみならず、本部の対
応が軌道に乗る3日目程度までの状況の変化に対処できるこ
と、等であります。図 1に示しますように、コンピューター
から算出される被災状況を、都道府県または市区の災害対策
本部要員として参加する研修生(プレヤー)に提示すること
により、彼らが関係部局と連絡・調整しながら「必要な」①
情報収集、②被災者支援、③復旧などの対応措置を「遅滞な
く」、時々刻々に投入していく疑似体験の場を創出するもの
で、プレヤーは対応の効果を体験的に自己評価できる構造と
なっています。
図 1 全体構造
既存モデルの研究
被害・被災者モデル開発
防災機関モデルの開発
ユーザインターフェースの制作
ゲーム演出効果・マニュアル制作
巨大都市実証実験
10.1.3 研究の内容
図 2に示しますような手順で、ゲーミングモデルを開発し
ました。訓練ゲームは地震後 3日間程度を1日∼1.5日で実施
するもので(表 1)、災害対策本部長、総務・財務関係、医
療・厚生関係、市民生活・福祉関係、土木・建設関係等 5∼10
のプレヤーを対象としています。
各部局は各エージェント(警察、消防、自衛隊、地区災
害対応センター、医療機関、ライフライン等の防災機関)
から伝達された被害情報や現場活動情報に基づき、自衛隊
要請や医療班派遣、各種物資の調達などの対応行動を決定
し、その結果が次のステージの被害情報としてプレヤーに
反映され、ゲームが進行していきます。
本システムの特徴は、訓練ツールとしてみると、① 地
震発生から応急活動を行うのに重要な 3日間を対象とした
点、② 時刻・季節・曜日・震源地を変化させることで 90
通り以上のシナリオを作り出すことができる点(図 3)、
③巨大都市から、人口 40万人程度の中小都市まで幅広く
対応できる点、等です。また、シミュレータの新規性とし
ては、① 現場防災機関の活動をエージェント型モデルと
して記述した点、② 被災者の挙動を 3日間にわたって記
述した点、③ 情報の収集過程をモデル化したことにより
不完全情報下の意思決定状況を実現した点にあります。
本研究を進めるにあたり、資料提供、ヒアリング、実証実
験の実施等で、東京都・東京消防庁・藤沢市、他、多くの防
災関係機関のご協力をいただきました。
防災関係機関挙動の研究
図2
表1
中核都市実証実験
研究の手順
ゲームの実施スケジュール
a) 巨大都市のケース
b) 中小都市のケース
図 3 実証実験のケース