生活習慣病と薬 ―その2 糖尿病― 《基礎知識編》 No10.

No10.
今回のテ−マ
生活習慣病と薬 ―その2
《基礎知識編》
糖尿病―
糖尿病には1型と日本人の糖尿病患者さんの約95%を占める2
型、その他の種類があります。2型は、暴飲暴食、運動不足、スト
レス、肥満などの生活習慣の乱れが糖尿病発症の引きがねとなって
いるため、生活習慣病と呼ばれています。特に自覚症状が無いまま
病気が進行するので定期検診で発見されることも多くあります。そ
のまま放置すると、体の様々な部位に障害が出てきます。
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薬剤科 医薬品情報管理室発行
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Q1.糖尿病とは?
A1.インスリンというホルモンの作用が低下したため、体内に取り入
れられた栄養素がうまく利用されずに、血糖(血中のブドウ糖)
が高くなっている状態をいいます。
糖尿病は、膵臓の細胞が破壊されてインスリン(膵臓から分泌
される血糖を下げるホルモン)を分泌できない1型糖尿病と、イ
ンスリンの分泌量が少なくなったり、効き方が悪くなる事により、
徐々に血糖値が上昇し症状が進んでいく2型糖尿病、妊娠や遺伝
子異常などの原因により1型にも2型にも含まれない糖尿病に分
けられます。
インスリンが不足すると栄養素の1つのブドウ糖が体に
取り込まれず、血液中にあふれて濃度が高くなり、食事を
摂っても元気が出ない状態になります。生まれつき糖尿病
になりやすい要素をもっている人もいますが(親戚に糖尿
病の方がいる場合は特に注意が必要です!)、様々な生活
習慣が引き金になって発症する場合もあります。
この病気にかかりたての頃に現れる症状(初期症状)と
しては、尿の回数が多くなる、のどが渇く、お腹がすく、体重
が減る、疲れやすい、手足のこむらがえり(足がつる)等です
が、自分で“おかしいな”と感じる時はすでに糖尿病がひどく
なっている場合があります。
早期発見、早期治療が最も大
糖尿病型の判定:基本的には随時血
切になります。定期的に健康診断を受けて、 糖 200mg/dL 以上、早朝空腹時血
糖 126mg/dL 以上が確認された時
全く症状がない時期に病気を見つけ、治療を
となります。糖尿病が疑わしい場合
始めましょう。調子が良くても1∼2ヶ月に
には、ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖
一度は受診や、血液検査を受けるなど継続して治
がどれくらい体内で利用出来るか)
療を続けましょう。
で確定します。その他の症状や合併
症の有無も考慮します。
お酒はカロリーがあり、食事療法が乱
れる原因になりがちです。また大量に
飲んだ場合、低血糖を起こす危険があ
ります。一方たばこは血管を細くする
ため、合併症の進行につながります。
尿の回数が多い、口が渇く、
最近目がかすむ(糖尿病性
網膜症)
こんな時は診察を受けまし
ょう!
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Q2.糖尿病は治療しないとどうなるの?
A2.糖尿病3大合併症を生じたり、感染症になりやすくなります。意識
障害を起こすこともあります。
血糖の高い状態が続くと(約 5∼10 年)糖尿病3大合併症など全身に様々な
障害を生じます。糖尿病3大合併症は色々な条件が重なって発症すると考えら
れています。現在有力なのは次の説です。
①
②
糖の濃度が高くなると血液はどろどろしてきます。徐々に全身の血液の
流れが悪なるため血管を詰まらせたり、血管壁に負担が掛かり小さなこ
ぶを作ることがあります。目・腎臓など細い血管が集まる場所程起こり
易くなります。さらに大きめの血管では動脈硬化(動脈の壁が硬く、も
ろくなり、血管が詰まりやすくなったり、破れやすくなったりすること)
が起こることがあります。
長い間、血液中の糖が高い状態が続くと、糖・脂肪・蛋白質などを体の
中でエネルギ−に変化させる経路に異常が生じます。
その結果、糖尿病性網膜症、腎症、神経障害が起きてくると言われています。
また、高血圧、高脂血症がある患者さんでは狭心症や脳梗塞などを合併する危
険が高くなります。
血糖値が高い状態は細菌が住みやすい環境になると同時に、体内に
ある“退治する力(免疫力)”が低下するため、風邪をひきやすくな
ったり、傷が治りにくくなるなど感染症にかかりやすくなります。
そのため帰宅後はうがいをする、小さな傷から化膿しないように毎日
手足を確認するなど予防を行って下さい。
急激に血糖が高い状態になると脱水症状を起こして、極度の場合に
は意識障害、昏睡状態となります。
糖尿病3大合併症
糖尿病性網膜症
糖尿病性腎症
:目が見えにくくなり、最悪の場合は失明する。
:腎臓に障害が起こり、蛋白尿やむくみが出る。これが進むと
人工透析をする必要がある。
糖尿病性神経障害:手足の先の知覚が鈍くなり、さらにしびれや痛みが出る。ま
た、糖尿病性壊疽(えそ)を起こしやすくなり、場合によっ
ては切断することになる。
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Q3.どんな治療をするの?
A3.第1に食事療法、次に運動療法を行います。薬物療法は血糖値が下
がらない場合補助的に使われます。糖尿病治療の目的は、高血糖を
正常まで低下させ、合併症を防ぎ、症状の進行を抑えることにあり
ます。
《食事療法と運動療法》
“これを食べて糖尿病が治った”とか“これを飲んで血糖値が下がった”
という宣伝をよく耳にしますが、安易にそういったものに頼らず、あくま
で治療の基本は食事療法と運動療法です。自己流におこなうと、栄養
がかたよったり、食事の量(カロリー)と運動量がつりあわないこと
がありますので専門家による指導を受けて取り組んで下さい。
《薬物療法》
薬の効き目は、食事と非常に関係しています。食直前、食後など薬
を飲む時間を確認してから飲み始めましょう。(詳しくは−No11 生活習慣病
と薬 ―その2 糖尿病−《治療編》で説明します。)
血糖コントロールの指標とその目標値
コントロールの評価
HbA1c値(%)
空腹時の血糖値(mg/dL)
食後2時間の血糖値(mg/dL)
優
5.8 未満
100 未満
120 未満
良
5.8∼6.5
100∼119
120∼169
可
6.6∼7.9
120∼139
170∼199
不可
8.0 以上
140 以上
200 以上
ヘモグロビンA1c(HbA1c):4∼6週間前からの平均の血糖値を示します。高ければ、過去の
血糖が高い状態が続いていたことが判ります
合併症の発症予防や進行を防ぐためには、‘優’及び‘良’を目指しましょう!
薬は正しく使いましょう!
ご不明な点は、医師または、
薬剤師にご相談下さい。
① 外来の方は、お電話もしく
は、薬をご持参の上、薬剤
科の窓口までお願い致しま
す。
② 入院中の方は、病棟に伺っ
ている薬剤師または、担当
医師・病棟看護婦にお申し
出下さい。
どうぞお大事に!
02.07
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