かいよう胃腸の活動を高める腹式呼吸法胃炎、胃潰瘍が気になるかたへ腹式呼吸には、リラックス効果や胃腸の機能を高める働きがあります。初めは意識的に行い、だんだん習慣化させるとよいでしょう。 1 手を組んで下腹部に置き、意識をお腹の辺りに集中させる。 2 背筋を伸ばして、口をとがらせぎみにしながら息を細く長く吐く。この時、肩の力を抜いて頭は天からつられているような感じにする。 3 ストレスと胃の話吐き終わったら、息は自然に深く入ってくるにまかせる。 2009年2月改訂 MCA3209B01 (4495) OM 監修：京都大学大学院消化器内科学教授千葉勉ストレスと胃腸胃の働き仕事や子育て、環境の変化など、私たちは日頃さまざまなストレスを感じています。人によって、その受け止め方は違いますが、ストレスを受けると胃や腸などの消化器系が敏感に反応するといわれています。阪神淡路大震災後の調査では、被災者のなかに胃潰瘍患者が大幅に増加したという報告があります。これは震災という非常に強いストレスが胃にそのまま反映されて炎症を起こし、短期間で胃潰瘍を発症したものと考えられています。また、中国には古くから「胃は精神の住まい」ということわざがあるように、ストレスと胃炎は非常に密接な関係にあるのです。胃は、一時的に食物をためておく貯蔵庫のようなものです。食物を胃液で消化しながら、少しずつ十二指腸に送り出します。胃粘液には胃腺と呼ばれるたくさんの小さい穴があり、たんぱく質を消化するための胃酸（攻撃因子）とともに、胃の粘膜を守る粘液（防御因子）が分泌されています。かいよう食道食べ物を消化する胃酸胃の粘膜を守る粘液十二指腸 1 2 ストレスが関係している胃腸の病気胃炎過敏性腸症候群胃の表面が炎症を起こし、ただれた状態をいいます。症状や原因によって、急性胃炎と慢性胃炎の2つに分けられます。急性胃炎慢性胃炎胸やけや悪心、重症では吐血や下血が起こることがあります。自覚症状が少なく、加齢やヘリコバクター・ピロリ（ピロリ菌）によるものと考えられています。かいよう胃潰瘍胃の粘膜の一部が欠損した状態をいいます。食後や空腹時、みぞおちのあたりに持続的な痛みが起こります。また、同じような症状が十二指腸にあれば、「十二指腸潰瘍」と呼ばれます。 3 腸がストレスに対して過敏に反応し、便秘・下痢などの便通症状、腹痛を長期間繰り返す病気です。胃に不快な症状があっても、検査では特に異常が見つからない…。このような症状は機能性胃腸症（FD）と呼ばれ、ストレスが関係している場合もあります。この他にも胃腸の病気はたくさんあり、同じ病気でも人によって自覚症状が異なります。「胃腸の調子が悪いな」と思ったら、自分で病名を決めつけずに、医師の診断を受けることが大切です。食後や空腹時に決まって起こる痛みが、3日間以上続くなどの症状があったら、早めに受診しましょう。 4 かいようストレスと胃炎・胃潰瘍の関係特に影響があるのは精神的ストレスなぜストレスが胃炎や胃潰瘍の原因になるのでしょう？胃は、普段は少々乱暴に扱っても弱音をはくことはめったにありませんが、ストレスには極めて敏感に反応します。ストレスには、過労や暴飲暴食などの物理的なものもありますが、胃にとって特に影響が大きいのは、不安や緊張、いらいらなどの精神的なストレスといわれています。健康な胃は、攻撃因子と防御因子のバランスをとっていますが、胃がストレスを感じると、胃の血流が悪くなり、胃を守るだけの十分な粘液を作り出すことができなくなります。このように、防御因子の働きが弱まってそのバランスが崩れると、胃酸は、もともと鉄も溶かしてしまうくらいの強い酸ですから、食物だけでなく、胃も消化してしまうわけです。この状態が一時的なものであれば胃炎にとどまりますが、長く続くと胃潰瘍になってしまいます。胃過労不安・心配緊張・怒り暴飲・暴食粘液や胃血流など胃粘膜を守るもの潰瘍脳下垂体胃酸やペプシン、フリーラジカルなど胃粘膜を攻撃するもの防御因子攻撃因子ピロリ菌も胃のバランスを崩す原因の1つ胃に住むピロリ菌が、胃粘膜に傷害を与えることがわかってきました。ピロリ菌に感染した胃に何らかのストレスがかかると、胃粘膜に炎症が起こり、潰瘍の発症が多くなると考えられています。 5 6 かいよう胃炎・胃潰瘍の薬と働き薬局で買える胃薬の話防御因子を強くする薬 ●防御因子増強薬薬局やドラッグストアーで気軽に買える胃薬には、粘液や胃の血流の増加に必要なプロスタグランジンを増やし、粘液を分泌させます。この中には、胃粘膜の炎症に対する作用をあわせ持つ薬もあります。 ●胃粘膜保護薬いくつかの薬を配合した総合胃腸薬や、水なしで飲めるように工夫されたチュアブル剤など、いろいろな種類があります。また、もともとは医師の処方薬だった胃粘膜の表面に保護層を作り、胃酸から守ります。効果の高いH 2 ブロッカーも薬局で買えるようになり、とても便利になりました。 ●組織修復薬これらの薬は胃の不快な症状をとることができるため、傷ついた粘膜の修復力を高めます。広く服用されています。しかし、自分の判断で飲み続けることによって、自覚症状に隠された重大な病気を攻撃因子を弱める薬見逃してしまうこともありますので、 ●プロトンポンプ阻害薬胃粘膜中の酸を作るプロトンポンプを直接抑えて胃酸を減少させます。気になることがあれば医師の診察を受けましょう。 ●H2ブロッカー胃酸の分泌を促すヒスタミンの作用をブロックして、胃酸を減少させます。 ●制酸薬古くからある薬で、胃酸を中和して刺激を少なくします。 7 8 胃にやさしい生活 ◆趣味や適度な運動でストレス解消！ ◆禁煙 9 胃にやさしい食事 ◆規則正しい生活 ◆ゆっくり食べて腹八分目 ◆空腹の状態を長く続けない ◆飲酒は適量 ◆胃に負担がかからないように消化のよい食事をこころがける ◆香辛料などの刺激物、塩辛いものは避ける 10