中級編 1-1-2 [浜エージェンシー] 女優のポスター出演

中級編 1-1-2
事案①-ブルー
[浜エージェンシー]
女優のポスター出演
〔広告代理店
浜エージェンシー(代表取締役
浜敏男)の秘密事項〕
浜エージェンシーは小規模の広告代理店です。大手の広告代理店の下請けとして仕事をす
ることが多いのですが、今回は知人の紹介で、都内の麺類組合からそばに含まれる物質が
血液をさらさらにするというキャンペーンポスターを制作するプロジェクト(総額120
0万円、印刷費等の直接経費400万円)を受注しました。かつて大手広告代理店のプロ
ジェクトで一緒に仕事をしたことがある女優久松英子さん(53歳)に依頼することにし
ました。久松さんは、知名度は申し分ありませんが、ここ数年、仕事に恵まれていないと
いう噂を聞いています。久松さんに支払える予算は300万円で、都内で掲示するポスタ
ー(A2 サイズ及び A3 サイズ)への出演を考えています。評判がよければ、関東近県向け
のポスター製作もありえます(この場合は少なくとも報酬は倍増するでしょう)
。下請けが
長かったため芸能界に直接のコネはなく、他に有力な候補がいないので、多少のプラスを
してもよいと考えていますが、久松さんは一線を退いているので、このくらいで十分かと
思っています。かつてはともかく、久松さんは浪速さんより格下でしょう。また、これを
機に、大手を通さない直接受注を増やすきっかけにしたいと考えています。もし、6週間
後までに適当な候補が見つからなければ、この1200万円のほかに、他に5000万円
の関連受注をふいにしてしまいます。
中級編 1-1-7
事案②-ブルー
[アラマキ工房デザイン事務所]
CGデザイン業務についての争い
〔下請会社(アラマキ工房デザイン事務所)側の秘密事項〕
・ アラマキ工房は、同じ美大を卒業したデザイナー二人で経営している小さなデザイン事
務所です。12年ほどやってきてようやく軌道に乗ってきました。
・ アラマキ工房は本件デザイン作成にあたり、締め切りに間に合わせるために6案のうち
4案を個人のデザイナー2人に再発注しました。そのため各個人デザイナーに対し各4
0万円で合計80万円の支払が生じています。50万円を受け取ったのは再委託した各
デザイナーへの支払が必要であったためであり50万円で納得したためではありませ
ん。少なくとも赤字になることだけは回避したいと考えています。
・ アラマキ工房は本件デザインの作成料金は150万円が相当と考えています。アラマキ
工房デザイン事務所は他社からの発注についてもデザイン料として1案15万円~2
0万円で請負っています。
・ アラマキ工房は今後もデザイン作成業務の仕事が欲しいため代官山デザインセンター
との継続的な契約を望んでいます。ただ、これまでのように単発の発注を繰り返すので
はなく、毎月安定した発注を受けたいと考えています。今回のような、発注しているの
かしていないのかわからないようなつきあいには、ほとほとうんざりしています。
・ 「代官山デザインセンターが次の物件で上乗せしますから。」の話は3年前から毎回言
われてきたことで、一度も上乗せしてもらったことがありません。今回についてもその
後の仕事で上乗せはありませんでした。
・ 代官山デザインセンターの担当者は美大を出たわけでもなく、デザインを理解していま
せん。いつも斬新なアイデアを評価しないくせに、芝広告社からほめられると手のひら
を返したようなことを言います。2案の出来が悪かったなどと言われるのは心外です。
・ 代官山デザインセンターから受注した1150万円は全体の収益の2割程度に当たり
ます。他の業務は、中小企業からのWEBデザインといった地味な仕事が多いのに対し
て、比較的広く世に出回る代官山デザインセンターの仕事は、デザイナーとしてやりが
いがある仕事です。
・ 実は、アラマキ工房のパンフレットでは、代官山デザインセンターの許可なしに実績を
紹介しています。アラマキ工房の名前をポスター中に残してもらえるとか、実績を広告
してよいという条件になればありがたいと思っています。
中級編 2-1-2
事案③-ブルー
[申立人]
針混入事件
〔樋口ソーイング:縫製業者(下請け)側の秘密事項〕
(社長:樋口三千男)
1. 針の混入という、聖徳紡績からの通告は、口頭で一方的になされたもので、証拠を
示されたわけではありません。
2. その時、「零細に足を引っ張られた」と聖徳紡績の検収担当から叱責された口調が、
いまだに頭に残ります。このような高飛車な物言いをされたのは 20 年で初めてです。
3. 証拠を示されないまま、月々15 万円の加工賃に対して、30 万円のペナルティは過大
です。
4. 聖徳紡績でも検収(針が入っているかを納品の段階でチェックする)しています。
5. 消費者の人が嘘をついている可能性も全くは否定できないと思います。
6. 今後とも、聖徳紡績との取引を続けたいのはやまやまです。しかし、今後も似たよ
うなことがあると完全に赤字になります。
7. 実は、作業員に、やや高齢の人がいたため、こういうミスが起こるかもしれないと
内心不安でした。しかし、安い作業単価では、このような内職労働に頼らざるを得
ないのが現状です。むしろ、納品時の検収をしっかりやってもらいたいのが本音で
す。
8. さらに本音を言えば、今後取引が正常化する保証があるなら 30 万円の支払をしても
良いと考えています。ただし、再発防止は、むしろ聖徳紡績側の体制整備でしか解
決できないものです。
9. 再発防止されないなら、むしろこちらから取引を断りたいくらいです。もちろんそ
の場合は、ペナルティなど支払うつもりはありません。
10. わが社は、家族経営(従業員3人)で内職のあっせんを中心に 20 年ほど営業して
きましたが、ここ数年はかなり不景気で、事業の継続も危ない状況です。
11. 聖徳紡績以外からの受注は多くは望めません。
中級編 3-1-2
事案④-ブルー
[申立人]
イベントスペースの無断占有
〔出展者(B製作所)側の秘密事項〕
・ A社が開催しているオフィス家具展示会には3年連続で出展しています。今年は、空気
清浄機の出展をしました。
・ 区域21に在庫商品等を置いたのは、思いのほか空気清浄機がよく売れたため遠方の倉
庫まで、そのたびごとに取りに行くのが面倒でしたし、区域21は借り手もなく空いて
いましたし、人通りもないため展示会の運営に支障はないと考えたためです。
・ 当日A社からは何も言われていません。気づいたのなら連絡すべきです。連絡を受けて
いれば、除去するなど適切に処置を取れたと考えます。事後に請求されるのは納得でき
ません。
・ 区域21は人通りもなくそもそも借り手もなく空いていたのですから、使用に対して規
定料金通り50万円の全額請求には納得できません。
・ 担当者(アルバイト)はB製作所が区域11と区域21の両方を借りているものと勘違
いしていました。いい加減なアルバイトを雇ったのは落ち度ですが・・
・ B製作所は空気清浄機が予想外に売れたので来年度以降もA社のコンベンションに出
展したいと考えていますが、来年度はもっと人通りのいい区域に出展したいと考えてい
ます。
中級編 5-1-2
事案⑤-ブルー
[申立人]
行列植木鉢事件
〔タコ・イカ焼き屋の事情〕
1.わたしは、中町商店街に 3 年前に店を開き、タコ・イカ焼き屋を経営しています。お
かげさまで人気が出て、いつも行列が絶えません。
2.しかし、行列ができるのも良し悪しなこともあります。先日隣の酒屋さんが、うちの
客が酒屋さんが大切にしていた植木鉢を割ってしまったと怒鳴り込んできました。
3.なんと 100 万円も支払えというのです。そんな値打ちのある骨董品なら、道端に出さ
ずに家にしまっておくのが常識だと思います。
4.そもそもわたしとしては、本当にうちのお客さんがやったのかどうかもわかりません。
5.酒屋さんにしては、ウチばかり繁盛しているのが悔しかったのかもしれません。
6.今回の件では、お金を支払ってもいいのですが、植木鉢代など知れていると思ってい
ます。酒屋さんは商店街組合広報部長もされていて、にらまれたくないと思っていま
す。
7.この件では、お見舞いで最大 10 万円くらい支払ってもかまいません。しかし、これか
ら味を占められて、なにかと難癖をつけられるようになるのは困ります。
中級編 5-2-2
事案⑥-ブルー
[申立人]
夕顔電気
〔夕顔電気側の事情(秘密事項)〕
1. 夕顔電気が取り付けたシャンデリアは、夕顔電気のものではなく、お客様(田中さ
ん)が外国で買ってきたものです。お客様からの依頼で照明器具を取り付けた経験
はこれまでにもありますが、このタイプのシャンデリアは初めてです。
2. 今回、ベテランの職人が見たところ、これくらいの重さは耐えられるだろうと思い、
取り付けました。しかし、シャンデリアの重さは量っていません。錐(きり)で梁
があるところをチェックして、梁からぶら下げました。ただこれまでの経験からこ
の程度の重さで梁が耐えられないことは考えられないので、住宅の欠陥か壁紙の糊
の質のせいだと思っています。
3. 桐壺不動産の物件が手抜き工事をしていた場合、夕顔電機もグルと思われてはたま
りません。責任の範囲を明確にしたいと考えています。
4. 夕顔電機としては本件を他人に言いふらす動機はありません。しかし、田中さんが
手抜き工事だと騒ぐなと約束を取り付けるというようなことは出来ないと思います。
5. 桐壺不動産とはこれまでの関係もあって、これからも桐壺不動産建築の物件で受注
を受けたいと思っています。したがって自分達のミスでないにせよ、桐壺不動産と
の関係が悪化して受注がストップすることは避けたいと思っています。その意味で
は、今回全額負担もやむを得ないと思っていますが、それは最終手段であり、でき
るだけ少ない負担額で済ませたいと考えています。
中級編 5-3-2
事案⑦-ブルー
[申立人]
ふとん乾燥機の仕入れ
〔山田プラスチックの事情〕
1. 山田プラスチックは、大手家電メーカーA 社のグループ企業である山本電機製作所
に、ふとん乾燥温風袋を20年前から納品していました。このふとん乾燥温風袋は、
山本電機製作所がA社ブランドで製造しているふとん乾燥機に使われています。
2. 2年前にふとん乾燥機のモデルチェンジがあり、その対応のために、山田プラスチ
ックは、ふとん乾燥温風袋の製作機械を新調しました。2万個売れれば回収できま
すが、まだ 5000 個しか売れていません。
3. 3ヶ月前に突然、山本電機製作所から山田プラスチックに対し、ふとん乾燥温風袋
の仕入れ打ち切りの申し入れがありました。
4. 仕入れ打ち切りの申し入れに際し、山本電機製作所から、山田プラスチックで既に
製作済みの 4000 個については、山本電機製作所が全て買い取ると言われましたが、
未だに買い取ってもらっておりません。
5. 20年も取引をしているのに、今回の山本電機製作所の申し入れは、あんまりな仕
打ちだと感じています。噂では、家電メーカーA 社の国内工場閉鎖と海外移転計画
が決まった影響が出ているのではないかという話もあります。そうなると、山田プ
ラスチックとしては工場閉鎖を考えざるを得ません。
6. ふとん乾燥温風袋は、耐久性・耐熱性・遮断性があり、パッキング等の変更をすれ
ば、山田プラスチックにある今の製作機械を使って、他の用途、例えば、ふとん収
納袋用にも作り直すことが考えられます。そうすれば、掃除機等の空気を吸い上げ
る機械等の家電製品と一緒に販売することも可能です。