平成 20 年度春期 基本情報技術者試験 分析報告

(株)ウイネット
平成 20 年度春期
基本情報技術者試験 分析報告
この度弊社では、模擬試験ご採用校様の一部並びに弊社教材外部ライティングスタッフの皆様から、
本試験出題内容に関するご意見を聴取させていただき、情報処理教育研究室で整理及び分析を行いまし
た。今後のご参考として、今回の本試験総評をご報告させていただきます。
また、情報処理教育研究室では、平成 21 年度春期に予定されています新・基本情報技術者試験、IT
パスポート試験に対応すべく、新・試験制度実施に向けた動向を注視するとともに、逐次、対応手法を
ご提案させていただく予定です。
<午前問題>
1.出題形式
H20 春
H19 秋
H19 春
H18 秋
H18 春
H17 秋
H17 春
用語選択(図表除く)
18
16
15
8
8
15
14
文章選択(図表除く)
26
31
36
32
31
39
35
計算・思考
32
30
28
35
36
24
28
図表(計算・思考除く)
3
2
0
4
5
0
1
SQL
1
1
1
1
0
2
2
分析報告(1/2)
(1)過去問題との類似度
過去の基本情報技術者試験、
(旧)
第二種情報処理技術者試験と全く同じ又は非常に類似の問題が、
次のように数多く出題されました。
(過去に複数回出題されたものは、最も近年の出題を記載。
)
問
問1
問3
問5
問6
問10
問13
問15
問16
問18
問19
問20
問21
問23
問26
問28
問29
問30
問31
テーマ
2 進数を 16 進数で格納
−1 の 2 の補数表現
情報落ち
ニュートン法
パリティビット
ヒープソート
ユークリッドの互除法
DRAM
演算命令の動作順序
MIPS 値の計算
キャッシュメモリ
磁気ディスク装置の性能
IrDA
タブレット
タスクスケジューリング
API
アーカイブ
デュプレックスシステム
過去の出題
H16 秋問2
H15 秋問3
H18 春問5
H17 春問5
H17 春問10
H17 春問14
H15 秋問15
H16 秋問16
H13 秋問19
H17 春問18
H17 春問20
H12 春問25
H16 秋問27
H16 春問28
H18 春問28
H18 春問30
H16 秋問35
H11 春問52
問
問 32
問 36
問 39
問 41
問 42
問 44
問 46
問 49
問 50
問 52
問 54
問 55
問 59
問 60
問 62
問 68
問 78
テーマ
信頼性の計算
ADSL
SGML
論理データ設計
DFD
モジュール結合度
デザインレビュー
開発から運用への移行
逓減課金方式のグラフ
IPv6(128 ビット)
DHCP
MPEG-4
共有ロックと占有ロック
データベースの回復処理
データベースの再編成
リスク分析
順序付け(ジョンソン法)
過去の出題
H12 春問54
H15 春問40
H17 春問38
H11 春問57
H14 春問47
H18 春問41
H15 春問52
H17 春問49
H18 春問49
H18 春問51
H17 秋問51
H17 春問52
H14 秋問68
H17 春問62
H15 春問70
H17 春問69
H17 春問77
この 35 問は、全体(80 問)の約 44%を占めています。平成 17 年度∼平成 19 年度の 6 回の平
均が約 40%ですから、今回は過去問題の再出題比率がやや高かったと言えます。
(2)新傾向問題
次の表のような新傾向問題が出題されました。
前回と比較して、用語選択、計算・思考、図表が増え、文章選択が減りました。
2.出題分野
IT 共通知識体系
基本情報技術者試験
3.問題内容
株式会社ウイネット
情報処理教育研究室
出題形式
平成 20 年度春期
H20 春
H19 秋
H19 春
H18 秋
H18 春
H17 秋
H17 春
Ⅰ コンピュータ科学
15
15
15
15
15
15
15
Ⅱ コンピュータシステム
22
23
20
20
20
20
25
Ⅲ システムの開発と運用
14
15
15
15
15
15
20
Ⅳ ネットワーク技術
4
5
7
7
7
7
6
Ⅴ データベース技術
7
5
6
6
6
6
4
Ⅵ セキュリティ
6
5
5
5
5
6
2
Ⅶ 標準化
2
2
2
2
2
1
1
Ⅷ 情報化と経営
10
10
10
10
10
10
7
前回と比較して、データベース技術、セキュリティが増え、コンピュータシステム、システムの開
発と運用、ネットワーク技術が減りました。
問
問17
問24
問35
問37
テーマ
スーパスカラ
USB のインタラプト転送
ゲートキーパ
エキスパートシステム
問
問 64
問 69
問 70
テーマ
バイオメトリクス認証の FRR と FAR
ISMS の確立に必要な事項の実施順序
日本工業標準調査会
4.合格ライン
IRT(Item Response Theory:項目応答理論)に基づくスコア(200∼800 点)算出で、午前の試
験と午後の試験がともに 600 点以上で合格です。難易度でみると、前回とほぼ同程度であるため、均
等配点(各問 1.25 点)で採点して、100 点満点中 65 点程度が午前の試験の合格ラインになると考え
られます。
5.今後の指導方法
過去の試験と全く同じ又は類似の問題が数多く出題される傾向は、今後とも継続されるように思わ
れますので、過去問題を十分にマスタする対策が最も重要です。また、新用語対策として、パソコン
やネットワークに関する新聞記事やテレビ番組に、
常に興味をもって触れていくことも必要でしょう。
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<午後問題>
1.出題概要
弊社の情報処理教育研究室の Web ページからもご案内しておりますが、IPA から新試験制度の手引きに基づき,
新・基本情報技術者試験(以下,新・基本情報という)の概要が発表されています。現在の基本情報技術者試験(以
下、基本情報という)のスタイルで出題されるのは、あと残すところ H20 秋期の 1 回のみです。来年の H21 春期か
らは新・基本情報の出題となり大幅に出題形式が変更になります。また、新・基本情報を踏まえて、過去数回の出題
傾向から分析しても、H20 秋期は現状の難易度以上に難しくなることはないと予想されます。
さて、今回の基本情報で出題された概要についてです。問 1 のハードディスク装置は、製品 A∼製品 C の性能比較
による、アクセス時間、キャッシュを用いたヒット率の算出に関する出題です。問 2 の文字列の出現回数は、文字列
操作の基本的なアルゴリズムの出題です。問 3 のデータファイルのバックアップは、何種類かのバックアップ方式の
違いを比較する出題です。問 4 の擬似言語問題は、リストを作成するための探索アルゴリズム及びデータ構造に関す
る出題です。問 5 のプログラム設計では、入力された集計項目に基づき、集計販売構成一覧表を出力します。マスタ、
トランザクション及び中間ファイルを用いた業務の概略フロー図に基づいて、処理の連携を把握します。
言語問題は、各言語ともに基本的な文法、及び、基本的な手法に基づくアルゴリズムの出題で、時間配分の範囲内
で余裕をもって解くことが可能な内容です。ただし、問 10 は、既約分数への変換という数学的要素の強いテーマで
の出題となっています。
2.出題テーマ及び難易度 【難易度 5:難しい、4:やや難しい、3:例年並み、2:やや易しい、1:易しい】
テーマ
難易度
ポイント
問1
午前の応用:ハードディスク装置
3
アクセス時間、ディスクキャッシュを用いたヒット率の算出
問2
擬似言語:文字列の出現回数
3
テキスト文中の同一文字列の出現回数
問3
午前の応用:データファイルのバックアップ
3
バックアップ時間、障害発生時の復旧時間の算出
問4
擬似言語:リストの作成
3
リスト作成のための探索アルゴリズム・データ構造
問5
プログラム設計:販売構成一覧表の作成
3
指定された集計項目に基づく販売構成一覧表の作成
問6
C:文末脚注の挿入
3
テキスト文中の参考資料名を文書の末尾に編集
問7
COBOL:アンケートの集計結果
3
イベントの人気投票によるアンケートの集計結果
問8
Java:電気ポットの状態遷移の模倣
3
電気ポットの状態遷移を模す(加熱状態、休止状態など)
問9
CASLⅡ:単語管理テーブルの作成
3
文字列中の単語の切り出し、単語テーブルの作成
問10
C:既約分数への変換
3
正の有限小数又は循環小数の既約分数への変換
問11
COBOL:比例代表選挙の議席数の算出
3
ドント式を用いた政党の投票数の獲得議席数の算出
問12
Java:キーとそのキーに関連付けた文字列
3
キーを基にそのキーに関連付けられた文字列を表示
問13
CASLⅡ:最大値・最小値・平均値
3
数字列を 10 進数とみなし、最大値・最小値・平均値を算出
3.出題傾向及び問題別分析
□ 必須問題(問1∼問5)
問 1 は、アクセス時間、ディスクキャッシュを用いたヒット率がテーマで、3 種類のハードディスク装置を題
材とした出題です。午前問題の計算問題としての要素が強いのですが、難易度的にも例年と同等レベルです。
問 2 は、文字列の検索アルゴリズムがテーマで、同一文字列の出現回数を題材にした出題です。検索アルゴリ
ズムのポイントは、文字列の検索位置の判定条件になります。
問 3 は、データのバックアップがテーマでそのバックアップ方式を題材にした出題です。差分バックアップと
増分バックアップを比較し、
バックアップ時間、
復旧時に必要となる磁気テープの本数や復旧時間を算出します。
問 4 は、探索アルゴリズム及びデータ構造がテーマで、リスト作成を題材にした出題です。リストの探索処理
のポイントは、リストの作成(更新)
、データ同士の比較・判定、ポインタの更新になります。
問 5 は、グループトータル及び集計表がテーマで、集計項目に基づく販売構成一覧表を題材にした出題です。
ファイル様式、各業務の分析、及び、業務の概略フロー図を理解し、ユーザからの要求仕様・追加仕様に迅速に
対応する能力を問います。
□ 問6、10(C)
問 6 は、文字列検索及び切り出しがテーマで、テキスト文中の文末脚注の設定を題材にした出題です。特定の
平成 20 年度春期
基本情報技術者試験
分析報告(2/2)
文字で囲まれた参考資料名を文末に抜き出し、それに対応した参照番号を振ります。問 10 は、文字列処理、数
学的な思考力がテーマで、正の有限小数又は循環小数の既約分数への変換を題材にしています。与えられたプロ
グラム仕様に基づいて、算術式を含め、既約分数への変換手順を的確にプログラムに反映させます。
□ 問7、11(COBOL)
問 7 は、トランザクションファイルの集計処理がテーマで、アンケートによる集計処理が題材です。仕様変更
では、アンケートの無効データをカウントする処理に基づくプログラムの変更を問います。問 11 は、SORT 文、
表操作、コントロールブレイクがテーマで、比例代表選挙における各政党の議席数の算出が題材です。比例代表
選挙における当選者の決定順序をドント式を用いて決定していることから、SORT 命令におけるキー指定、テー
ブルへのデータ登録、コントロールブレイク処理がポイントになります。
□ 問8、12(Java)
問 8 は、クラスの継承、例外処理がテーマで、簡略化した電気ポットの状態遷移の模倣が題材です。休止状態
や加熱状態をどのようにプログラム上で展開するかがポイントです。問 12 は、インタフェースの活用がテーマ
で、キーとそのキーに関連付けられた文字列の出力が題材です。機能を拡張する際、既存のクラスにインタフェ
ース中の抽象メソッドをすべてオーバライドすることがポイントになります。
□ 問9、13(CASLⅡ)
問 9 は、文字列操作がテーマで、文字列の切り出し、及び、単語テーブルの作成が題材です。アセンブラ言語
において、コントロールブレイクの概念をいかに反映させるかがポイントです。問 13 は、10 進数から 2 進数へ
の変換、2 進数から 10 進数への変換がテーマで、入力ファイル中の数字列を 10 進数とみなし、最大値・最小値・
平均値の算出が題材です。入力処理、除算処理、出力処理からなる副プログラムを主プログラムから分割して、
複数のプログラムで展開します。
4.今後の出題予想テーマ(今後の展開)
擬似言語問題が問 1∼問 5 中で 2 題出題されるのは、H18 年秋以来になります。また、関係 DB の操作に関する出
題が過去 4 回連続で出題されましたが、今回の出題はありません。このように、問 1∼問 3 の必須問題はテーマが流
動的で絞りきれない傾向にあります。少なくとも過去 5 年間分の過去問題を分析し、重点的に学習することが大切で
す。今後の重要なテーマとしては、セキュリティ対策(暗号化方式、認証)及びデータベースのアクセス権限になり
ます。また、今後も関係 DB の操作及び正規化、ネットワーク(IP アドレス、データ伝送時間、TCP/IP、CSMA
/CD)に関する出題が予想されます。
問 4 の擬似言語問題では、文字列操作、及び、整列法に基づく基本的なアルゴリズムを学習することが重要です。
特に、基本交換法、基本選択法、基本挿入法を基に、クイックソート、ヒープソート、シェルソートなどの改良型の
整列手法も十分に理解することが大切です。
問 5 のプログラム設計では、今後も Web 上の処理システム及びデータベースを絡めた概略フロー図での出題が予
想されます。また、プログラム設計の重要なテーマである、プロセスフロー、入出力関連図、モジュール構造図、モ
ジュール間インタフェース、モジュールの流れ図などが今後も出題されることが予想されます。
プログラム言語及び擬似言語の問題では、代表的な整列手法はもちろんのこと、データ構造(テーブル、スタック・
キュー、逆ポーランド記法、リスト、木構造、グラフ「最短経路問題」
)
、探索手法(2 分探索、番兵法など)
、文字列
の照合(ボイヤムーア、KMP 法)に関する基本的なアルゴリズムに基づく出題が予想されます。また、テストデー
タに基づく限界値テスト、命令の実行回数、変数の値などの正確なトレース結果の算出、さらに、仕様変更に伴うプ
ログラム保守の問題に備えて、表面的なアルゴリズムの学習だけで終わらないようにすることがポイントです。
さて、新試験制度の手引きによれば、出題分野が細分化されますが、現在の基本情報の学習範囲における出題内容
を熟知していれば、十分に新・基本情報に対応が可能です。また、現在の初級シスアドに出題されている表計算問題
が選択問題に追加されます。すなわち、言語問題を選択せずに新・基本情報に合格することができます。さらに、言
語問題が 2 題から 1 題に変更され、言語問題の出題割合や配点比率が低くなることが予想されます。また、データ構
造・アルゴリズムをテーマとする問題は必須問題として残ることから、擬似言語を用いた基本的なアルゴリズム手法
の問題は引き続き出題されると考えます。ビジネス系学科を専攻した受験生に配慮して、現在の問 5 のプログラム設
計は選択問題となります。今後は新しい分野の選択問題の出題内容及び出題形式が注目されますが、4 月末から 5 月
上旬に掛けて、新・基本情報対応のサンプル問題が IPA から発表されます。そのサンプル問題によって新・基本情報
の全体像がようやく見えてくることから、より具体的な新・基本情報の対策の立案が可能になると考えます。
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