Amaki Original “Paragraph reading for science with key words” words”(PaReSK パレスク) PaReSK 理念とその背景及び定義 科学英語読解メソッド 理念とその背景 国際的に活躍できる科学者として必要な能力の一つに英語の論文を読んだり,科 学に関する幅広い知識を英語の資料から得たりすることが挙げられる。大量の情報 にアクセス可能な現代では,逐語訳ではなく,専門用語などのキーワードに着目し てパラグラフごとの大意を読み取っていくことが必要である。 また,PaReSKは,PISA調査を実施しているOECDが定義するリーデ ィングリテラシーに準拠したものとなっている。 PaReSK の定義 タイトルや図や写真などのキャプションに記載されている専門用語などをキー ワードとし,その詳細な解説を教員がプレリーディングとして行う。次にパラグラ フごとの大意を個人もしくはグループでつかみ発表する。最後に教員がそれらをつ なぎ合わせて全体の大意を把握させる。 PaReSK の分類 ① P a ReSK junior 英語圏で使用されている少年向けの科学に関する教科書や読本を使用し,キーワ ードを基に科学に関する内容を理解する。 ② P a ReSK literacy 題材として,“The Daily Yomiuri”などの英字新聞や,“TIME”などの週刊誌 の科学記事を扱い,科学の幅広い分野での教養を身に付ける。 ③ P a ReSK professional 題材として,英語圏で使用されている科学に関する教科書や科学論文使用し,科 学の専門的な内容を理解し,身に付ける。 【参考】PISA2009 における Reading Literacy は,“ Reading Literacy is understanding, using, reflectinig one’’ s goals, to develop one’ on and engaging with written texts, in order to achieve one one ’ s knowledge and potential , and to participate in society.” society. ” と定義されている。 PISA2009 では,以前の定義から “ engaging with” with ” が新たに付け加わっている。この “ engaging with” with ” は,読みへの興味や意欲など,態度面の特徴を表 し ている。 PaReSK では,写真や図表などの非連続テキスト( non continuous text) text ) と,読みへの興味や 意欲( engaging with written texts)に重点を置いている。 texts )に重点を置いている。 物理Ⅱ 岡山県立倉敷天城高等学校 3年4組 学習指導案 12名(校内科目名「標準物理Ⅱ」) 使用教室(物理第2教室) 単 元 (題材) 目 指 計 標 導 画 指 導 上 の 立 場 指導者 教員A,ネイティブ教員B ◎原子核と素粒子 ○物理学の最先端で行わ れている研究についての 最新の知見を,生涯にわ たって科学雑誌な ど様々なメディアから積極的に得ようとする態度を身に付ける。【SSH研究仮説】 (関心・意欲・態度) ○原子核や素粒子に関連 した様々な現象について ,物理の原理・法則など を基にしてその有 用性や危険性を適切に評価できる思考力・判断力を身に付ける。 (思考・判断) ○原子核や素粒子,宇宙 論などについて,図・表 やグラフなどを基に,他 者にわかりやすく 表現する力を身に付ける。 (観察・実験の技能・表現) ○原子核や素粒子,宇宙論などについての基礎知識を身に付ける。 (知識・理解) 第1次 第2次 第3次 第4次 原子核 ……………………………………………………… 放射線とその性質 ………………………………………… 核反応と核エネルギー …………………………………… 素粒子と宇宙 ……………………………………………… 1時間 1時間 1時間 1時間(本時) ◎単元観(教材観) 高等学校の物理でこ れまで学習してきた内容 を踏まえ,学習の最終段 階として原子核と 素粒子を扱 う。こ の単元 には,現在 研究の 最先端 で行われて いるこ とも含 まれており ,実 際の物理学 の研究 の一端 に触れさせ ること ができ る。この単 元の学 習を通 して,物理 学が 人類に対し てどの ような 貢献をして いるか につい て理解させ ること により ,学習意欲 を高 めることができると考えている。 ◎生徒・学級の実態(学級観) 普通科3年次生の物理Ⅱについては,「発展物理Ⅱ」と「標準物理Ⅱ」に分かれて履修さ せている。 生徒の 学習意 欲は概ね高 く,授 業にも 積極的に参 加して いる。 一部,英語 を取 り入れた授業にも抵抗なく取り組んでいる。 ◎指導・支援上の基本方針や留意点(指導観) この単元には,現在 研究の最先端で行われて いることも含まれており ,実際の物理学や 天文学の研 究の一 端に触 れさせるこ とがで きる。 この単元の 学習を 通して ,生涯にわ たっ て科学研究 につい ての関 心を持ち続 け,最 先端の 知見を様々 なメデ ィアか ら得ようと する 態度を養うことを目標としたい。【SSH研究仮説】 第4時では,Higgs粒子についてのTIME誌の記事を題材に授業を行う。授業の展開はSSH 研究開発の一 環として本 校が開発した 科学英語読 解メソッドPaReSK(パレ スク)の理念に 基 づいて行う。 なお,PaReSK(パレスク)については,別紙「科学英語読解メソッドPaReSK 理念とその 背景及び定義」を参照されたい。 本 時 案 (第4次) 素粒子,宇宙論についての最新の知見を科学雑誌などから積極的に得ようとする態度を 身に付ける。(関心・意欲・態度) 2 素粒子,宇宙論についての基本的な考え方を理解した上で,Higgs粒子探索の物理学にお ける意義を理解する。(知識・理解) 学習活動・内容 教師の指導・支援 留意事項・評価規準 本 時 の 学 習 内 容 で あ る Higgs 導 入 に 当 た っ て は プ リ ン ト ○留意事項 粒子の探索の意義につい て理解 Hunting the Higgs(Key Words) な 素粒子の名称など, かなり する。 どを参照しながら説明を加える。 の数 の新 出 用語 が 出て く るの 1 教科書と補助教材により,素 で, プレ リ ーデ ィ ング に 十分 粒子の分類,ビッグバン宇宙論 1 教科書と補助的に使 用する な時間をかける。 についての基礎的事項につい University Physicsから,素粒子 て 説 明 す る 。 合 わ せ て Proton, 及び 宇宙 論 の理 解 に必 要 な知 Photon な ど の キ ー ワ ー ド に つ 識を得る。 いて説明を行う。 2 TIME誌の記事 “Hunting the Higgs. Physicists may soon nab the most elusive 2 記 事 の タ イ ト ル 及 び 図 の キ ャプションをネイティブ教員 particle of all” (April9,2012)の Bが 音 読 し , 教 員 Aが 説 明 を 加 タイ トル や 図に 含 まれ て いる え る 。 プ リ ン ト Hunting the 英単 語を キ ーワ ー ドと し てそ Higgs(Key Words) れらの意味を理解する。 パラグラフごとに書 かれ てい キ ー セ ン テ ン ス を ネ イ テ ィ ○留意事項 日本語についての説 明は, ブ教員Bが音読し,その概要に る内容を理解し,Higgs粒子探索 逐語 訳で は なく , 大意 を 伝え ついて,必要事項を補いながら の研究の意義を理解する 。ネイ ることとする。 教員Aが説明する。 テ ィ ブ 教 員 Bが 音 読 す る キ ー セ ンテンスに注意を払い, 大意を 把握するよう努める。 □ 評 価 に つ い て は ,1 単 位 時 間 を通して次の2点について 行う。 1 Paragraph 1 1 CERN(欧州原子核研究機 ジュネーブ郊外にある欧州 構)のWebページの写真を用い 原子核研究機構(CERN) ながら,LHCが山手線の大き ◆総括的評価 素粒子,宇 宙論につ いての さに匹敵する巨大な装置であ 及びその施設である大型ハ 最新 の知 識 を科 学 雑誌 な どか ることを理解させる。 ド ロ ン 衝 突 型 加 速 器( L H C ら積極的に得ようとする。 )について理解する。 (関心・意欲・態度) [発問,観察] 2 LHCにおいて,ビッグバン 2 Paragraph 2 L H C の 中 で ,光 速 近 く ま 直後のエネルギーに相当する で加速した陽子と陽子の衝 巨 大 な エ ネ ル ギ ー が 発 生 す る ◆総括的評価 ことを理解させる。また,発生 突 に よ り ,ビ ッ グ バ ン 直 後 の 素粒子,宇宙論につ いての 状況(擬似的なミニチュア) するミニブラックホールは瞬 基本 的な 知 識と 考 え方 を 理解 が 再 現 で き ,Higgs粒 子 が 出 て 時に蒸発するであろうことを した上で,Higgs粒子探索の物 くる可能性があることを理 付け加える。 理学 にお け る意 義 を理 解 して 解する。 いる。 (知識・理解) [発問] 3 東京大学大学院理学系研究 3 Paragraph 3 科 准教授 による データ を示し 1 2 月 に L H C で Higgs粒 な が ら , Higgs粒 子 発 見 の 可 能 ◇形成的評価 子の兆候をとらえたことと, 性が高いことを説明する。 米国シカゴの加速器テバト 専門用語,英単語, 英文が LHCでの陽子の加速と陽 ロ ン ( Tevatron) で も 独 立 に 理解 でき て いる か どう か ,適 子同士の衝突の動画を提示す その兆候をとらえたことを 宜発 問を 行 った り ,パ フ ォー 知 り ,Higgs粒 子 が 見 つ か る 可 る。 マン スを し たり し なが ら 理解 能性が極めて高いことを理 を促す。 解する。 (知識・理解) 4 [発問] 4 Paragraph 4 陽子や中性子がク ォークか らなっていることを再度確認 1960年 代 ま で に ,そ れ ま で する。 最小の単位であると考えら れ て い た 陽 子 や 中 性 子 が ,よ 力を媒介する粒子がボソン 本 時 の (学習) 目 標 導 入 展 開 1 (Boson)であ ること, 例えば 分子と分子にはたらく電磁気 力は,分子同士が光子をキャッ チボールすることによっては たらくことを理解させる。 り小さな粒子であるクォー クからなっていることが明 ら か に な り ,ま た ,そ の 説 明 に は ,力 を 媒 介 す る ボ ソ ン と 呼ばれる一連の粒子の存在 が必要となることを理解す る。 5 5 Paragraph 5 ビッグバン直後には全て の も の に 質 量 が な く ,そ の 後 光子以外の粒子が質量を持 つようになったことを理解 す る 。ま た こ の こ と を 説 明 す る た め の Higgs 場 を 英 国 の 物 理 学 者 Higgs 氏 が 考 え た こ と を知る。 6 Higgs粒 子 が「 神 の 粒子 」と 呼ばれる由来について説明を 行う。“The God Particle,a name ○ 留 意 事 項 Higgs粒 子 は , 一 般 の 人 た ち widely used by everyone except physicists”の “except physicists” に は レ ー ダ ー マ ン に よ る 本 の に着目させる。 題 名 に よ っ て「 神 の 粒 子 」と し て 有 名 に な っ た が ,物 理 学 者 た ち は「 神 の 粒 子 」と は 呼 ば な い 理由を考えさせる。 7 重力子やダークマターなど が未だに見つかっていないこ と など を 説 明 し ,Higgs粒 子が 見つかったとしても物理学の 研究にはまだまだ先があるこ とを理解させる。 また,衝突のエネルギーをさ らに上げるための計画「国際リ ニ ア コ ラ イ ダ ー 計 画 」( ILC) にも触れる。誘致に向けて,福 岡県と佐賀県にまたがる 「脊 振山地」と岩手県の「北上山地 」が名乗りを挙げていることを 付け加える。 6 Paragraph 6 陽子-陽子の衝突により, 極 め て ま れ に Higgs 粒 子 が 発 生 す る こ と ,ま た ,発 生 し た としてもすぐに壊れてしま い ,別 の 粒 子 に 変 わ っ て し ま うことを理解する。 捕 ま え に く い Higgs 粒 子 が “the goddamned particle” と 名 付 け ら れ , そ れ が 転 じ て “The God Particle” と 呼 ば れ る よ う になった経緯を理解する。 7 ま と め Paragraph 7以降 た と え Higgs 粒 子 が 見 つ か ったとしても,物理 学の 研究 には,まだまだ先が ある こと を知る。 Higgs 場 は ど ろ ど ろ と し た シロップのようなもので,そ の中を進もうとすると抵抗を ○留意事項 質 量 の 起 源 を 与 え る Higgs場 受けること,また,その抵抗 の大きさが質量の違いになる の 説 明 と し て 核 心 の 部 分 で あ ことを理解させる。必要に応 る。丁寧に説明を行う。 じてパフォーマンスを行う。 今後,Higgs粒子発見の報道を 今 後 , Higgs粒 子 発 見 の報 道を ○留意事項 注意して待つことが大切 である 注意して待つよう促す。 生涯にわったて科学の 最先端 ことを理解する。 で行われていることに関 心を持 ち続けるよう促す。 実験準備 参考資料 ・ 教 科 書 「 改 訂 高 等 学 校 物 理 Ⅱ 」( 数 研 出 版 ) pp.261-267 ・TIME “Hunting the Higgs. Physicists may soon nab the most elusive particle of all” (April9,2012) ・“University Physics”(Addison-Wesley)pp.1512-1513 ・「ヒッグス粒子発見の可能性高まる」東京大学理学部ニュース2012年3月号 ・プリント Hunting the Higgs(vocabulary):ネイティブ教員B ・プリント Hunting the Higgs(Key Words):教員A
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