. . ( . ): ∼ シンポジウム Ⅲ <心肺蘇生におけるアミオダロン注の位置づけ> 心肺蘇生の進歩とアミオダロンの位置づけを考える 横 山 広 行* 意識・呼吸なし 心肺蘇生と救急心血管治療のための ガイドラインによる心肺蘇生法 人工呼吸2回 アメリカ心臓協会 (AHA) は20 1 0年に「心肺蘇生と救 1) 急心血管治療のためのガイドライン」 (以下,AHAガ 循環兆候なし イドライン) を作成し,それに準拠した 「AHA/ACLS パッド装着するまでCPR プロバイダーマニュアル」を公表した.本マニュアル の研修コースで使用されるチェックシート内に,心室 ショック3発 細動(VF),無脈性心室粗動(VT)のマネジメントで 「適切な量もしくは適切な薬剤を選択する」 との欄に, CPR 1分 これまでに「アミオダロンを考慮する」 という回答が多 く寄せられるほど,心肺蘇生においてアミオダロンが ACLS 重要となりつつある. 図1 AHAのアルゴリズム (AHA/ACLSプロバイダーマニュアル2000より引用) AHAガイドラインの変遷 1.AHAガイドライン2 0 0 0年版 『AHAガイドライン20 0 0年版』においては,VTを伴 現在ではアミオダロンのみが望ましいとされる. う心肺蘇生では,電気的除細動(DC)を3回連続施行 実際,AHAガイドライン2 000年版に従い,院外心停 後に心肺蘇生(CPR)を1分間行い,その後再度DCを 止に対し自動体外式除細動器(AED)を使用して心拍 3回施行して二次心肺蘇生(ACLS)を施行する方法が 再開したが,1分後に心停止となってしまう症例を とられていた(図1) .主に二相性除細動器を使用し, 2 0 03年頃に経験した. DC2回目以降はアミオダロンが推奨されていた. 2.AHAガイドライン2 005年版 AHA ガ イ ド ラ イ ン に 準 拠 し た2 0 00年 版 の AHA/ AHAガイドライン2 00 5年版では,ALIVE試験3)の結 ACLSプロバイダーマニュアルでは,一次救命措置 果が反映されている.これ以降,現在に至るまでVF/ (BLS)において,VF/VTによる心肺停止例に対し血管 無脈性VTに伴う心肺蘇生ではDC後2分間のCPRとと 収縮薬投与後に除細動を行い,抗不整脈薬のアミオダ もに血管収縮薬を使用し,3回目のDC後に抗不整脈 ロン,リドカインなどを推奨していた. ただ, このエビ 薬を考慮するとしている (図2) .20 06年頃には,DC直 2) デンスはARREST試験 のみであり,リドカイン過剰 後に胸骨圧迫によるCPRを2分間施行した結果,心肺 投与による死亡例が報告されていることから,2 0 13年 再開となった症例を経験し,この治療の妥当性を実感 した. * H. Yokoyama:門脇医院,国立循環器病研究センター ― ( 630)― 第18回アミオダロン研究会講演集 心室細動/無脈性心室頻拍 除細動器の到着 心停止 血管収縮薬投与 抗不整脈薬の考慮 A CPR CPR = CPR リズムチェック リズムチェック CPR 次へ 5サイクル,または 2分間のCPR CPR A リズムチェック =除細動器充電中のCPR =電気ショック 図2 CPR−BLSとACLSの統合 DC→DC+血管収縮薬→DC+抗不整脈薬考慮 (ACLSプロバイダーマニュアルAHAガイドライン2 005準拠より引用) 3.AHAガイドライン2 0 1 0年版 どうであったかというクリニカルクエスチョンを設定 現時点で最新のAHAガイドライン2 0 1 0年版では,さ し,PubMed,Cochrane library,EMPRESSなど少な らに質の高いCPRを可能にするべく,これまでのA (気 くとも3種類のデータベースを用いて検討を行った. 道確保) ―B (人工呼吸) ―C (胸部圧迫) の順からC―A―B この一定の法則に従い3名のworksheet authorが検討 の順へと変更された.誰もができるスキルから蘇生開 し,その結果2 5論文を選定した.さらに詳細に条件設 始とすることで,CPRの遅れを軽減できると考えられ 定することで,supportiveな8論文を抽出した.表15) る.治療者の観点から,心停止後のケアでは経皮的心 に示すとおり,エビデンスレベル別にまとめている. 肺補助などの循環管理,低体温療法,酸素濃度と換気 アミオダロンに関する論文は3論文であり,ARREST 量の適正化などが推奨されるようになった. 試験,ALIVE試験ともに含まれていた.一方,neutral な15論文中5論文がアミオダロンに関する論文であり, AHAガイドライン2 0 10年版が 推奨する薬物治療 AHAガイドライン2 0 0 5年版作成時のエビデンスも含 難治性のVF/VTに対してはアミオダロン投与と記 5) ミオダロンに関する論文であった (表3) .VT,無脈 載されているが,実際には 「投与を考慮」 とするのが望 性VFに対するアミオダロンの有効性を検討したラン ましい.また,心停止アルゴリズムでも同様に, 「アミ ダム化比較試験は,2 01 3年現在も非常に少ないことが オダロン投与を考慮」とするのが妥当であろう. 結論づけられた.詳細はOngらが『Resuscitation』 誌に その他,200 5年版からの変更はほぼないが,アトロ て報告している6)ので,参照いただきたい. ピンのみ「無脈性電気活動(PEA)や心静止でルーチン ただし,前述のARREST試験では,DC3回施行後エ 使用は推奨されない」 とされた. ピネフリンを投与した5 04例に対しアミオダロン3 00 5) まれる (表2) .また,opposingな5論文中2論文がア mgを投与したところ,プラセボ群に比べ生存入院率 AHAガイドラインにおける ワークシート作成方法 換算でアミオダロンを投与したところ,リドカイン投 AHAガイドライン20 10年版は国際蘇生連絡協議会 与群に比べ生存入院率は増加した3).DCの回数など, の国際コンセンサス(ILCOR CoSTR) 2 0 1 0の発表を受 現在の手順とは条件が異なるため,今後さらに検討を けて作成された.筆者自身が急性冠症候群 (ACS)項目 重ねる必要がある. は増加した2).一方ALIVE試験では, 3 47例に対し体重 4) のワークシート作成に参加した経緯 から,以下に作 心停止に対するアミオダロンの効果 成の流れについて概説する. 心停止と抗不整脈薬をキーワードに抽出した18 5の AHAガイドライン2 01 0年版にもあるように,質の高 論文を対象に,心停止に対する薬物療法において薬物 いCPR,DC,血管収縮薬などによりVF,VTが停止し を投与した場合と投与しなかった場合でアウトカムが ない場合にアミオダロンを考慮するのが望ましい. ― ( 631)― . 表1 Summary of evidence:Evidence supportinç clinical question Good Dorian, 2002 B (Amio vs Lido) Kudenchuk, 1999 B (Amio vs Lido) Fair Nowak, 1981 B (Bret vs Plac) Gorgels, 1 996 Herlitz, 1 997 Herlitz, 20 0 3 E A (Lido vs no Lido) (Proc vs Lido) (Lido vs no Lido) Somberg, 200 2 B (Amio vs Lido) Ohshige, 20 05 C (Lido vs no Lido) Poor 1 2 3 4 5 Level of evidence A:return of spontaneous circulation, B:survival of event, C:survival to hospital discharge, D:intact neurological survival, E:other endpoint, Amio:amiodarone, Lido:lidocaine, Bret: bretylium, Plac:placebo, Proc:procainamide. (文献5より引用) 表2 Summary of evidence:Evidence neutral to clinical question Good Olson, 19 84 Allegra, 2001 B A (Mg vs Plac) (Bret vs Lido) Hassan, 2002 A (Mg vs Plac) Haynes, 1981 C (Bret vs Lido) Haynes R 1 98 1 C (Bret vs Lido) Fair Tahara, 20 06 Kovoor, 2005 B C (Sota vs Lign) (Nife vs Lido) Thel, 1997 A (Mg vs Plac) Fatovich, 1997 A (Mg vs Plac) Kowey, 1 9 9 5 Rea, 200 6 E E (Amio vs Lido) (Amio vs Lido) Levine, 1 9 96 Pollak, 2 006 E C (Amio) (Amio vs Lido) Stiell, 199 5 B (Bret, Lido, Proc) Skrifvars, 2 0 04 E (Amio) Poor 1 2 3 4 5 Level of evidence A:return of spontaneous circulation, B:survival of event, C:survival to hospital discharge, D:intact neurological survival, E:other endpoint, Plac:placebo, Bret:bretylium, Lido: lidocaine, Sota:sotalol, Lign:lignocaine, Nife:nifekalant, Amio:amiodarone, Proc: procainamide. (文献5より引用) ― ( 632)― 第18回アミオダロン研究会講演集 表3 Summary of evidence:Evidence opposinç clinical question Good Fair Weaver, 1990 B (Lido vs no Lido) Nademanee, 20 0 0 van Walraven, 199 8 C B (Lido vs no Lido) (Amio, Proc, Bret vs no Anti) Tomlinson, 2 0 08 Hallstrom, 199 1 E C (Amio) (Quin, Proc vs no Anti) Poor 1 2 3 4 5 Level of evidence A:return of spontaneous circulation, B:survival of event, C:survival to hospital discharge, D:intact neurological survival, E:other endpoint, Lido:lidocaine, Quin:quinidine, Proc:procainamide, Anti: antiarrhythmic, Amio:amiodarone. (文献5より引用) AHAによれば,ヒトの心停止中に,ルーチンに投与し た場合に生存退院率が増加するというエビデンスはな く,短期予後は改善するが,長期予後は改善しないと のことである. 質の高いCPR,DCを中断もしくは遅らせないため にも,時間経過とともに薬物の効果が急速に低下する 前に,除細動抵抗性の場合には速やかにアミオダロン を投与することも必然であろう.ただし,アミオダロ ン投与の際,低血圧,徐脈など重篤な副作用に注意す る必要がある. 以上を踏まえて,今後,AHAガイドライン2 0 10年版 のプロトコルに沿った,ACSに対するアミオダロンの 使用効果について検討する必要がある. 追 記 なお,本研究での利益相反はない. 文 献 1)Field JM, Hazinski MF, Sayre MR, et al:201 0 American Heart Association guidelines for cardiopulmo- nary resuscitation and emergency cardiovascular 6. care. Circulation 20 10;122 (1 8 Suppl 3) :S640―S94 2)Kudenchuk PJ, Cobb LA, Copass MK, et al:Amiodarone for resuscitation after out―of―hospital cardiac arrest due to ventricular fibrillation. N Engl J Med 8. 1 9 99;34 1:871―87 3)Dorian P, Cass D, Schwartz B, et al:Amiodarone as compared with lidocaine for shock―resistant ventricu0. lar fibrillation. N Engl J Med 2 0 02;3 46:88 4―89 4)Lin S, Yokoyama H, Rac VE, et al:Novel biomarkers in diagnosing cardiac ischemia in the emergency department:a systematic review. Resuscitation 201 2; 1. 83:68 4―69 5)American Heart Association:Appendix:Evidence― based worksheets:201 0 international consensus on cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiovascular care science with treatment recommendations and 2 010 American Heart Association and American Red Cross International Consensus on first aid science with treatment recommendations. Circulation 20 10;1 22 (16 Suppl 2) :S6 06―S638. 6)Ong ME, Pellis T, Link MS:The use of antiarrhythmic drugs for adult cardiac arrest:a systematic re0. view. Resuscitation 20 11;8 2:66 5―67 ― ( 633)―
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