脳の高次機能の局在と解剖学的特徴の研究

○プロジェクト研究0321-2
研究課題
「脳の高次機能の局在と解剖学的特徴の研究」
○研究代表者
医科学センター教授
齋藤基一郎
○研究分担者
作業療法学科教授
鷲田孝保
放射線技術科学科助教授
門間正彦
放射線技術科学科助教授
塚本信宏
付属病院診療放射線科講師
熊谷英夫
付属病院診療放射線科助手
上原正典
付属病院診療放射線科助手
鹿野直人
医科学センター嘱託助手
稲垣裕美
(8名)
○研究年度
平成16年度
(研究期間)
平成15年度~平成17年度(3年間)
1.研究目的
脳の高次機能の局在と解剖学的特徴の3次元的数量化を主にMRI、fMRIなどの画像解析装置と画像処理
技術を用いて機能形態計量学的に行う。現在、3つのサブテーマを平行して遂行している。
1)大脳皮質の幾何学的特徴の数量化 2)物体および空間認識時の脳機能の研究 3)画像上の脳
組織の判別と計測の自動化
2.研究方法
本研究では大脳皮質の幾何学的特徴の数量化と物体及び空間の認知機構の解明のため、MRIとfMRIに
よって得られた膨大な量の脳画像情報を新しく開発されたソフトウェアーを用いコンピュータ処理し、
定量的解析を行い、その指標を求める。
本年度は既にデータとして集計してある健常脳の5例にさらに計測された35例のデータを加え、それ
らを対象として、画像処理用パソコンを用いて、白質、灰白質の体積測定プログラムを開発しつつある。
また、大脳皮質の厚さの処理方法として、本年度は、基本的な最短距離を求める方法を行い、処理され
た結果の検証と処理時間や精度の文献的な考察を行う。また、脳機能研究では健常被験者に、色の意味
する漢字をその意味とは異なる色で書いた画像を見せ、fMRIで解析を行い、脳内視力が脳のどの部位で
働くのか目下検討している。
3.研究結果
研究開始2年度のため基盤整備とデータ収集に多くの時間を費やしたが、下記、5.に見るような若干
の研究成果(研究論文1編、学会発表5件)を得て、第16回国際解剖学会(京都)において、その成果の
一部を発表した。期待される成果は脳の高次機能の解析と解剖学的特徴を可視化し、数量的に求めるこ
とにある。脳の立体学的数量化は神経科学者の長年の強い希望であるので、殊に脳に関する機能的構造
学的2次元データから正確な脳の3次元の構造復元を行い、機能の局在とこれらに関連した構造の定量化
が実現可能となろう。体積測定プログラムにおいては、文献的な結果よりもそのデータにばらつきが見
られた。今後の検討が必要と考えられる。しかし、大脳半球に左右差はほとんどなく、この処理の信頼
性を傍証する結果であると考えられた。厚さを求めるプログラムは、512×512×100ボクセルの総当た
りでも20分程度で計測が可能であった。厚さの評価は、まだ、文献的には比較できるものが少ないが、
概ね一致した傾向が得られ、1~4mmで、前頭葉の前部と後頭葉の後部では薄く、ほぼ対称的に左右半球
部の厚さの分布が得られた。大脳皮質全域に渡り、厚さの色調度を表示することができ、それを立体的
に可視化することが可能となった。また、fMRIの研究から、被検者全員に、両側頭頂葉と両側後頭葉に
脳内視力による賦活化が認められ、全員ではないが補足運動野と前頭連合野背外側部、Broca領域にも
認められた。従って、脳内視力は、後頭葉を中心として、それ以外の上記大脳と関連して機能する程度
を意味する概念としての妥当性が示唆された。
4.考察(結論)
次年度(最終年度)の研究成果に基づき考察と論文の作成を行う。
5.学会等での研究発表
1.論文:齋藤基一郎,馬場則男,門間正彦,熊谷英夫,塚本信宏,八重口直樹.ヒト大脳
皮質の厚さの3次元定量的研究-MRI画像に対するボクセル処理-.形態・機能,第2巻,
第2号:47-54,2004.
2.学会等での発表:国際交流(シンポジウム).韓国ソウル市,Chung Ang University,
College of Medicine,Department of Anatomy.2004年1-2月.
3.学会等での発表:国際交流(シンポジウム).中国大連市,大連医科大学,大連プラス
ティネーション研究所.瀋陽市,中国医科大学,解剖学教室.2004年7月.
4.学会等での発表:K. Saito,M. Monma,H. Kumagai,N. Tsukamoto.3D-MORPHOMETRICAL
ANALYSIS OF HUMAN BRAIN BY MEANS OF MRI.Anatomical Science International vol.79
Supplement,330,2004年8月,第16回国際解剖学会発表(京都).
5.学会等での発表:大浦直樹,熊谷英夫,齋藤基一郎.f MRIによる脳内視力の検討の試み.
第32回日本磁気共鳴医学会大会,2004年9月(大津)
6.学会等での発表:齋藤基一郎,門間正彦,熊谷英夫,稲垣裕美.MRIによるヒト大脳皮質
の3次元定量的研究-厚さ分布の相違について-.日本解剖学会関東支部,第92回学術集会,
2004年11月(栃木)
7.学会等での発表:小田桐淳,門間正彦,熊谷英夫,塚本信宏,鷲田孝保.fMRIによるMental
rotation時の賦活:回転角度の賦活への影響.第32回日本磁気共鳴医学会大会,2004年9
月(大津)
8.学会等での発表:門間正彦,小田桐淳,熊谷英夫,鷲田孝保,齋藤基一郎.fMRIによる
回転角度の異なるMental rotation時の賦活.平成16年電気学会計測研究会,2005年3月(広
島)
9.学会等での発表:門間正彦,稲垣裕美,齋藤基一郎.ヒト大脳皮質の脳回パターンの解
析.第59回形の科学シンポジウム,2005年6月(札幌・申込中)
6.参考文献
1)
2)
3)
Gilissen E,Zilles K.(1996).The calcarine sulcus as an estimate of the total volume
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Kitagai H ,Mori E ,Yamaji S et al.(1998).Frontotemporal dementia and Alzheimerdisease;
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(1998).Reliability and validity of an algorithm for fuzzy tissue segmentation of
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