コイン投げ100回 (レポート課題付き) 私達の身の回りで起こる現象には、 不確実(ランダム)な要素が含まれて いるのが普通です。 しかし、身の回りの現象を、何度も繰 り返し経験することはできません。 そこで、確率実験を通して、ランダム について学んでゆきます。 1 ランダム(random) とは? 結果を確実に言い当てることのできない現象 にはランダムな要素が存在する。 ランダムにも、程度の差があり、 1. 2. 3. コインやサイコロのように、確率がほぼ分かっ ているランダム(ペットボトルのフタを投げる ときには、)。 確率分布の形状しか分らないランダム。 確率分布の形状さえ、はっきりしないランダム。 2 最も単純なコインの場合を考え よう。 確率を考えるのは、試行(確率実験、あ るいは、確率現象の観察)の前であり、 ありとあらゆる想定ができる。 割合(統計数値)はデータから計算され る。 試行の結果に対して、確率が割り当てら れ、データから得られる割合(統計数 値)と比較される。 3 コインを1回だけ投げるとき、 起こり得 る事象 確率 表 0.5 裏 0.5 状態 表の確率 確率 裏の確率 表 0.5 0.5 0.5 裏 スタート 0.5 4 コインを2回投げるとき、 起こり得 る事象 状態 表の確率 確率 裏の確率 確率 表 1/2 1/ 2 スタート 1/ 2 裏 1/2 5 コインを2回投げるとき、 起こり得 る事象 表表 確率 表の確率 確率 裏の確率 表表 1/4 表 1/4 1/ 2 1/2 1/ 2 表裏 状態 1/4 表裏 1/4 1/ 2 スタート 裏表 1/4 裏表 1/ 2 1/ 2 裏裏 1/4 1/4 裏 1/2 1/ 2 裏裏 1/4 6 コインを2回投げるとき、 起こり得 る事象 表表 確率 表の確率 確率 裏の確率 表表 1/4 表 1/4 1/ 2 1/2 1/ 2 表裏 状態 1/4 表裏 1/4 1/ 2 スタート 裏表 1/4 裏表 1/ 2 裏裏 1/4 1/ 2 1/4 裏 1/2 1/ 2 裏裏 1/4 7 状態 表の確率 確率 裏の確率 コインを3回投げるとき、 起こり得 る事象 確率 表表 1/4 表 1/ 2 1/2 1/ 2 表裏 1/4 1/ 2 スタート 裏表 1/ 2 1/ 2 1/4 裏 1/2 1/ 2 裏裏 1/4 8 コインを3回投げるとき、 表表表 起こり得 る事象 確率 表表表 1/8 表表裏 1/8 表裏表 1/8 表裏裏 1/8 裏表表 1/8 裏表裏 1/8 裏裏表 1/8 裏裏裏 1/8 表表 1/4 表 1/ 2 1/ 2 1/ 2 1/2 表表裏 1/8 表裏表 1/ 2 表裏 1/4 1/ 2 スタート 裏表 1/ 2 1/8 1/ 2 1/4 1/ 2 1/8 1/ 2 表裏裏 1/8 1/ 2 裏裏表 1/8 1/ 2 裏 1/2 裏表裏 1/8 裏裏表 1/ 2 裏裏 1/4 1/ 2 1/ 2 1/8 裏裏裏 1/8 9 コインを3回投げるとき、 表表表 起こり得 る事象 確率 表表表 1/8 表表裏 1/8 表裏表 1/8 表裏裏 1/8 裏表表 1/8 裏表裏 1/8 裏裏表 1/8 裏裏裏 1/8 表表 1/4 表 1/ 2 1/ 2 1/ 2 1/2 表表裏 1/8 表裏表 1/ 2 表裏 1/4 1/ 2 スタート 裏表 1/ 2 1/8 1/ 2 1/4 1/ 2 1/8 1/ 2 表裏裏 1/8 1/ 2 裏裏表 1/8 1/ 2 裏 1/2 裏表裏 1/8 裏裏表 1/ 2 裏裏 1/4 1/ 2 1/ 2 1/8 裏裏裏 1/8 10 確率はランダム(不確実)な現象を理 解するのに必要な考え方. 「確実に起こらないこと」や「確実に起こること」は、 わかりやすい。 しかし、起こったり、起こらなかったりするややこし い現象を、ランダム(不確実)な現象と呼ぶことにし よう。 確率の考え方は“カードゲームやサイコロ、コイン などの賭け”から生まれた。 確率についての考え方を理解するには、ランダム な現象を繰り返し観察することである。 11 ジェロラモ・カルダーノ (Gerolamo Cardano 1501-1576) 著名な占星術師、宮廷貴族おかかえの医者、 パヴァーノ大学の医学科長を務めるなどした。 確率をよく理解し、ギャンブルをして儲けて いた。 「標本空間」(すべての起こり得る可能性を 数え上げたもの)という考え方を考案した。 「たまたま」日常に潜む「偶然」を科学する、ダ イヤモンド社 レナード・ムロディナウ著よ り。 12 回答 クルマを 隠すドア 1 1 1 3 1 1 3 3 B 3 A 3 C 1 スタート 3 B 1 1 3 1 C 3 1 1 3 3 3 C B 1 C A B C A 2 C 2 A 1 B 1 A 1 1 3 B 1 1 1 C 2 1 C 1 1 B 2 A A 1 開かれるドア A 2 1 2 B モンティ・ ホール問題 を例に、標 本空間とそ の確率を考 えてみよ う: 回答 クルマを 隠すドア 1 1 1 3 1 1 3 3 B 3 A 3 C 1 スタート 3 B 1 1 3 1 C 3 1 1 3 3 3 C B 1 C A B C A 2 C 2 A 1 B 1 A 1 1 3 B 1 1 1 C 2 1 C 1 1 B 2 A A 1 開かれるドア A 2 1 2 B モンティ・ ホール問題 を例に、標 本空間とそ の確率を考 えてみよ う: サイコロ投げの効用 コイン(サイコロ)投げ(実際にやってみると, 意外な発見がある). 1. 2. フランスの博物学者ビュフォン(1707-88)は4040回投げ て2048回表が出た. イギリスの数学者カール・ピアソン(1857-1936)は 24000回投げ12012回表だった. 天気予報の降雨確率にどう対応するかのヒ ントが与えられるかもしれない。 人生の運にも対応できるかもしれない。 15 捏造ランダムと実験ランダムとの差は どこにあるのか(レポート課題1) コインを投げずに、100回のコイン投げ データを捏造してみよう。 表ならH(head)、裏ならT(tail)と書き込 む。 私たちの考えるランダムな系列を作っ てみよう。 16 コイン投げの際のランダム性 完全なランダムとは:表の出る確率と裏がでる確率 がそれぞれ 0.5 であり,以前の表裏の出方が次に 全く影響を与えない. 中途半端なランダムとは:コインの回転数不足のう えに,漫然と同じ投げ方をしていると,直前の結果 が次に影響を与える可能性が否めない.コインを 机のうえで回転させると,コインの形状が影響を及 ぼす. 完全なランダムにするには,通常人が文句を言わ ないようにすればよいが、これは難しい。 17 捏造ランダムと実験ランダムとの差は どこにあるのか(レポート課題1) 次に,十分回転を付けることを心がけ,実際に100 回投げ、同様に記録して行こう。 両者を,様々な方向から,比較してみよう. 実際のランダムは、捏造されたランダムと、どこが 違うのか. はたして、捏造を見破ることはできるのだろうか? 18 自分のデータを比較して、法則 を見つけよう。 たとえば、“表の出た数が、50に近い方が 捏造データである”、のような法則を見つ けてみよう。 ほかにも、“10回毎の合計が散らばってい る方が捏造である”、“連の長さの最大が 大きい方が捏造である”、といった法則が 考えられる。 自分でも何か考案してみよう。 19 表の出た回数を比較する-1 去年までのデータでは 表の数の比較(119人データ) 45 40 35 捏造データ 30 25 20 15 実験データ 10 5 0 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 20 表の出た回数を比較する-2 去年までのデータでは 20回中表の数(119人データ) 250 200 150 捏造 実験 100 50 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 連の長さに注目しよう コイン投げで,表が出たらH、裏が出たらTと 記録するとしよう. すると、結果は THHTTTHHHHT・・・のよう に表される. 表の出た回数と裏の出た回数ではなく,同じ 面がどの程度連続するかに注目してみよう. THHTTTHHHHT ・・・・では,長さ1の連(T) に続き,長さ2(HH)の連,長さ3(TTT)の連, 長さ4の連(HHHH)が続いている. 22 連の長さの度数分布表を作ろう 自分のデータを使う 捏造データ 連の長さ 度数 累積度数 1 30 2 10 3 6 4 4 5 1 6 1 7 0 8以上 0 合計(Σ) 52 30 40 46 50 51 52 52 52 相対度数 累積相対度 数 長さが3以下の 連の数 23 連の長さの度数分布表を作ろう 捏造データ 連の長さ 度数 累積度数 1 30 30 2 10 40 3 6 46 4 4 50 5 1 51 6 1 52 7 0 52 8以上 0 52 合計 52 相対度数 累積相対度 数 30 52 0.58 10 52 0.19 24 連の長さの度数分布表を作ろう 捏造データ 連の長さ 度数 累積度数 相対度数 1 30 30 0.58 2 10 40 0.19 3 6 46 0.12 4 4 50 0.08 5 1 51 0.02 6 1 52 0.02 7 0 52 0.00 8以上 0 52 0.00 合計 52 累積相対度数 30 52 0.58 40 52 0.77 46 52 0.88 25 連の長さの度数分布表を作ろう 捏造データ 連の長さ 度数 累積度数 相対度数 累積相対度 数 1 30 30 0.58 0.58 2 10 40 0.19 0.77 3 6 46 0.12 0.88 4 4 50 0.08 0.96 5 1 51 0.02 0.98 6 1 52 0.02 1.00 7 0 52 0.00 1.00 8以上 0 52 0.00 1.00 合計 52 26 グラフを作り,比較する 連の長さの相対度数 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 相対度数(捏造) 連の長さの累積相対度数 相対度数(実験) 1 0.20 0.10 0.00 0.8 累積相対度数 (捏造) 累積相対度数 (実験) 0.6 0.4 0.2 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 27 連の長さの理論値を考えよう 確率 連の長さ 確率 累積確率 1 2 3 4 5 6 7 8以上 合計 28 実際にコインを投げて観察しよう 連の長さ1 1 2 違う面 最初の 面 連の長さ2 1 2 1 2 違う面 連の長さ3以上 同じ面 1 2 同じ面 29 同様の作業を繰り返すと、 連の長さ1 連の長さ2 違う面 違う面 最初の面 同じ面 違う面 同じ面 違う面 同じ面 同じ面 連の長さ3 連の長さ4以上 30 連の長さの理論値を考えよう 理論値 連の長さ 相対度数 累積相対度数 1 0.5 0.5 2 0.25 0.75 3 0.125 0.875 4 0.0625 0.9375 5 0.03125 0.96875 6 0.015625 0.984375 7 0.0078125 0.9921875 8以上 0.0078125 1 合計 1 31 連の個数についても考えよう 違う面 違う面 最初の面 違う面 違う面 最初の面 最初の面 最初の面 最初の面 違う面 違う面 最初の面 違う面 最初の面 最初の面 32 連の総数を比較する 連の総数の分布 16 14 12 10 捏造データ 実験データ 8 6 4 2 0 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 55 57 59 61 63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 33 連の最大長を比較する 最長の連の長さの分布 60 50 捏造データ 40 実験データ 30 20 10 0 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 34 コイン投げによるランダムウォーク コインを投げて,表(H)裏(T)を記録する. 表ならば1ポイント儲け(+1),裏ならば1ポ イント損をする(-1)と考える. この作業を繰り返すときの累積ポイントはど のようになるのだろうか? エクセルでは,=IF( RAND()>0.5,1, -1)とす ればランダムな ( 1, -1) を発生できる. 35 ランダムウォークの作成法 表なら1、裏なら-1 36 ランダムウォークの作成法 37 頭とコインのランダムによる 頭で考えて作成したランダムな系列から作られ るランダムウォークと,コインを投げて作成した ランダムな系列から作られるランダムウォーク とを,グラフを描くことにより比較せよ. 酔歩(ランダムウォーク)の比較 20 捏造 実験 15 10 5 0 -5 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 -10 -15 -20 38 捏造・実験データの比較 39 ランダムウォークの実現例-1 ランダムウォーク 30 20 10 0 1 9 17 25 33 41 49 57 65 73 81 89 97 105113121129137145153161169177185193201209217225233241249 -10 -20 -30 40 ランダムウォークの実現例-2 ランダムウォーク 30 20 10 0 1 9 17 25 33 41 49 57 65 73 81 89 97 105 113 121 129 137 145 153 161 169 177 185 193 201 209 217 225 233 241 249 -10 -20 -30 41 ランダムウォークの実現例-3 ランダムウォーク 30 20 10 0 1 9 17 25 33 41 49 57 65 73 81 89 97 105 113 121 129 137 145 153 161 169 177 185 193 201 209 217 225 233 241 249 -10 -20 -30 42 ランダムウォークの実現例-4 ランダムウォーク 30 20 10 0 1 9 17 25 33 41 49 57 65 73 81 89 97 105 113 121 129 137 145 153 161 169 177 185 193 201 209 217 225 233 241 249 -10 -20 -30 43 いろいろ考えてみよう ゲームなどで、連続して起こる現象(連勝、連敗) は,何らかの流れがあるのか、それとも、全くのラ ンダムなのか。 株価の変動も,なにか理由があってのことか、それ ともランダムなのか。実際のところ分からない。 私たちが、身の回りの不確実な現象について考え るとき、参考になるのではないか。 不確実な現象は、確率を伴う。数多く観察すると、 それぞれの事象の起こる割合は、それぞれの確率 に近付くが、近づき方はランダムなのである。 44 レポート提出期限と注意事項 期限:2011年5月12日(木)~21日(土)午後6時 提出先:第1学舎授業支援ステーション 配布プリントを完成し、レポート用紙(A4)に感想・比 較方法等を書いて(800字程度)、合計6枚を提出す ること。 45
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