優秀賞 支え合う家族 「何でそんな事するん?死んでしまう やろ。 」 サクが本気で一かみすれば、モモはイ 父 か私 か ど ち ら か が 必 ず 電 話 を か け ま す 。私 は 毎 日 、 母 か ら サ ク と モ モ の 話 を 聞 く のを 楽 し み に し て い ま す 。 い つ も話を聞いた後には、あまりにもおか し す ぎ て 、 ほ お の 筋 肉 が ひ き つっ て い ます。 あ る 時 、 モ モ が 裏 口 から 家 の 中 へ 入 るので、 「絶対に入らさんとってよ。 」 と、サクに番を頼んでおきました。す きを狙って、モモが入ろうとしました。 す ると サ ク は モ モ を 押 さ え 付 け 、 か み つこ う と し ま した 。 バ アは 慌て て 怒 鳴 りました。 こう言うと、サクも納得したそうです。 「でもかみつくんはいかんけんの。約 束で。 」 チ コ ロ で す 。バ ア は サ ク の お 尻を 初 め て しば き ま し た 。 バ ア は サ ク に 二 度と モモをかまないよう にしつけ るた めに、 心を鬼にしてそうしたのです。生まれ て 初 めて バ ア に し ば か れ た サ ク は 、ブ ルブル震えておびえました。バアは、 「モモをかんだらいかんので。分かっ たな。もうせんな。 」 と言いながら、サクの頭をなでました。 突然、 「ワオワワワオワワワオワオ……。 」 と 、 長 々 と 訴 え る よう に言 い 出 し ま し た。バアは何を言っているのか、初め は分からず、唖然としていたそうです。 が 、自 分 が 言 っ た こ と を 思 い 出 し ま し た。 「 あ あ 、 サ ク は 、 入 ら した ら い か ん 言 う た け ん 、 入 れ ん かっ た ん や の 。 サ クは悪ないんやの。バアが悪かった。 ごめん。ごめん。 」 高松市立高松第一中学校一年 石井 沙世 私 の 祖 母 こ と バ アは 、 山 に 囲 ま れ た 静 か な 田 舎で 、 広 い 庭 の あ る 大き な 家 に一人住んで います。 犬のサクと 猫の モモがいっしょです。 サ ク と モ モ は 、 犬 と 猫な の に 、 バ ア の教育のおかげで、仲間意識が生まれ て、対等に仲良くつき合っています。 バ ア は 一 人 暮 し の せ い も あ っ て 、 二匹 が 小 さ い 時 から 、 子 供 に 話 す よう に 、 自然に声をかけていました。だから、 サ ク も モ モ も 、 バ ア の 言 葉 を よく 理 解 します 。動 物 にも 、かなりの学習 能 力 があるものだと、驚くことばかりです。 バアはこ の二匹とにぎやかな毎日を 送っています。母は、祖父が亡くなっ て か ら は 、 毎 日 か かさ ず バ ア に 電 話 を かけています。母が体調が悪い時は、 -2- バアはサクの鳴き方で、おしっこか、 人が来たか、変わったことがあった知 ら せ か が分 か り ま す 。 サ ク は 、と て も 観 察 力 が い い た め 、山 から 大 き な 木 の 葉が落ちてきただけで も知らせます。 バアが新聞を植木の上に置き忘れてい ることも、干している毛布が落っこち て い るこ と も 、 知 人 が 旅 行 の お 土 産 を 柱にひっかけていることも。これはと ても助かるそうです。そして、こんな ことまでも。 バ ア が 蚊 取 り 線 香を い つ も の 場 所 か ら 一メ ー ト ル 右へ 置 い て い ま し た 。 サ クはバアに知らせました。 「えんで 。 風 の向き が いつも と 違うけ んの。 」 するとサクはきまり悪そうにしていた ものの、納得したそうです。 冬のある日のこと。バアは納屋で仕 事をす る時寒いので 、 いつも扇風機型 遠 赤 外 線 ヒ ー タ ー を つ け ます 。 も ち ろ ん サ ク と モ モ も い っ し ょ に納 屋 に 入 り ます。一番に入ったモモが、いきなり 手で回そうとしました。 「モモ。そんなんではつかんわ。 」 バアが笑い ながら 皮肉っぽく言うと、 今度は口でかんで回そうとしたのです。 もちろん回るわけはありません。バア は、 「 モ モ 、 そ こ 回 し て も ま だ つ かん で 。 これ がまだ入っとらんけんの。 」 と 笑 い な が ら コ ン セ ン ト を 見 せ ま した 。 モモがオニヤンマを狙っていた時の こと。 「それはモモには大きすぎるわ。 」 とバアは言いました。モモは振り返り、 し っ と 言わ んば か り に 、 キ ッ と バ ア を にら み つけ ま した 。そ して 飛 び か か り ま し た 。も ち ろ ん 相 手 は 余 裕 で 飛 び 去 りました。モモは、 「アーア。アーア。アーア。 」 と半オクターブずつ位声の高さを上げ ながら、まるで人間の子供のように悔 やんで、バアの方へとやってきたそう で す 。 そ して バ ア の 足 にぐ る ち ん ぐ る ちんと頭をこすりつけました。 「残念やったの。お前にはちょっと大 きすぎたんじゃわ。 」 と言いながら、背中をなでてやりまし た。 犬 の 自 覚 の 無 い サク に 、 い た ず ら を 生きがいにしているモモ。バアは毎日 大き な 声 を 張 り上 げて 、二匹 に 対 抗 し ています。 「 も う 二 人 には 振 り 回 さ れ る わ 。 で も 憎めんのじゃわの。おらんかったら 精がないわ。 」 結 局 、 バ ア にと っ て 二 匹 は 目 の 中 に 入 ってしまっている、かけがえのない存 在なのだと思います。そして、一人と 二匹は 心 の 通い合 った 家族で あ るこ と に違い ありません 。私は、バアにもサ クとモモにも長生きして欲しいです。 今 の ま ま 、 み ん な の事 を 思 い や っ て く れ る優 し い バ ア の ま ま 、 長 生 き し て 欲 しいです。 -3-
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