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小学生への英語を読むことの指導の第一歩

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Ⅲ
研修への参加記録
英語科
小学生への英語を読むことの指導の第一歩
A Study of Teaching a First Step of Reading to Elementary School Students
千葉大学大学院教育学研究科英語教育専攻
木更津市立富来田中学校
高橋 健司
Ⅰ. はじめに
2011 年から小学校5、6年生に外国語活動が必修となり完全実施された。日本の英語教育に大きな変化
をもたす可能性がある。小学校での英語の文字の扱い方は、英語活動(1998~2008)の時には、文字の導入は
英語嫌いにつながる可能性があるので「音声を中心に扱う(文字は導入しない)」こととしていたが、外国語
活動(2008~)となり、「児童の負担とならないように扱う」こととなった。「英語ノート 2 」ではアルファベッ
トの順序と大文字、小文字の形と名前が導入された。
中学校で初めて教科として始まる英語学習の問題として、教育課程実施状況調査(2005)でも明らかになっ
ている、生徒の「英語嫌い」がある。原因を特定することは容易ではないが、授業がわからないというも
のが主な理由であると考えられる。英語学習を困難にしているものの一つに、英語学習の入門期に、音声
と文字の関係が複雑なために、単語を発音し、文章を音読することがむずかしいことがあげられる。中学
校で音声と文字の関係に関する指導の改善が必要なことは明白である。しかし、中学 1 年生は入学直後の
数回の授業の後に、英語の文字を使った読み、書きが導入されるため、音声と文字の関係を学習する時間
が十分ではない現実もある。そこで、小学校外国語の時間に、音声を中心としながらも、音声と文字の関
係に慣れ、ある程度身につけることができれば、中学校の英語学習にスムーズに接続できると考えられる。
Ⅱ. 研究課題
1. 1 年間、20 回の 10 分間モジュールで、小学5、6年生に、音声と文字の関係の暗示的な指導が英単
語の読みに効果をもたらすか否かを明らかにする。
2. 児童が音声と文字の関係を学習するときに何を困難と感じるか明らかにする。
Ⅲ. 研究
1. 参加者 公立小学校5年生 (翌年6年生) 11 名
2. 期間
2010 年 10 月~2011 年9月
3. 手順 [1] プレアルファベット・英単語綴り認識テスト
[2] プレ英単語読みテスト
[3] ポスト英単語読みテスト
[4] ポスト質問紙調査
[5] 授業メモ
[6] 抽出児童(3名)との面接、学級担任との面接
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研修への参加記録
4. 指導の方針
・外国語活動 45 分の中の 10 分間のモジュールを 20 回実施する
・明示的なフォニックスのルール指導は行わず児童の気づきを促すことを重視する
・慣れ親しむまで繰り返すこと
・書く指導は行わない
Ⅳ. 結果と考察
1. 結果
(1) プレアルファベット、英単語綴り認識テスト
ほとんどの児童はアルファベットの大文字の名前と形にはなじみがあり、また単語を聞いて単語
の綴りを 3 つの選択肢の中から選ぶこともおおむねできた。
(2) プレ英単語読みテスト
11 名の児童のうち、1 名が5問中5つ読め、4 名が 1 つ読むことができ、6 名は読むことができな
かった。アルファベット1文字の名前と形を認識することができても、初見で英単語を読むことは
とてもむずかしいことが推察される。
(3) ポスト英単語読みテスト
8 名の児童が5問中 1 つ以上の英単語を読め、6 名がプレ英単語読みテストよりも多く読め、2 名
が同数で、3 名は読むことができなかった。
(4) ポスト質問紙調査
全児童が大文字の名前とアルファベット順に並べることはできると回答しているが、そのうち 3
名は小文字の認識がむずかしいと回答している。全児童が昨年よりも音声と文字の関係がわかるよ
うになったと回答しているが、これは音声と文字の関係が身近に感じられるようになってきたとい
うことで、初見の英単語が読めることまでは意味してはいない。小文字の認識と音声と文字の関係
がむずかしいと回答している児童は、英単語を読むことができなかった。10 名の児童が時々黒板に
書かれた英単語や文を読むことができると回答している。
(5) 抽出児童の授業中の行動
プレ、ポストテストの比較で結果が伸びた児童2名とあまり伸びなかった児童 1 名を抽出児童と
し、個人面接で話しを聞き、学級担任との面接から授業内外での児童の様子や反応について話しを
聞き、授業メモと合わせて、考察記述した。
2. 考察
(1) 音声と文字の関係の指導の効果
11 名中、6 名の児童が英単語を読めた数が増加し、2 名が同数、8 名が 1 つ以上読むことができた
ので、音声と文字の関係を指導することが英単語の読みにある程度の効果があったと言えるだろう。
アレン玉井(2010)は文字指導には時間がかかり、繰り返し指導することが必要で、小学校高学年で
も大文字の習得に半年、小文字には 1 年近くかかると主張している。英語ノートのように、文字指
導を単元化し、集中して指導することも考えられるが、10 分間モジュールという限られた時間であ
るが、児童が繰り返し学習することで音声と文字の関係が少しずつ定着していったと思われる。
明示的にフォニックスのルールを教えたときに、興味を示す児童もいたが、同時に当惑する児童
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研修への参加記録
もいた。教師の発問が、児童の気づきを促したときに音声と文字の関係がより強いものになると感
じられた。
英語に対して苦手意識をもっていた児童が、音声と文字の関係に気づき、わかるようになり、英
語に対して自信をもつことができたり、動機づけが高まったりしたと回答している。
(2) 音声と文字の関係の学習での困難点
アルファベット 1 文字を発音することが困難である児童がいる(表 Level 7)。抽出児童の 1 人は学
習塾に通い、外国語活動に意欲的に参加し、アルファベットを書くことができ、黒板の英単語も読
むことができるが、初見の英単語を読むことができなかった。アルファベット 1 文字を、自分で発
音することができず、文字の名前(/bi:/)と基本音(/b/)の混同が原因の 1 つと考えられる。プレ、ポス
ト英単語読みテストで読めなかった児童 3 名のうち 2 名は、英単語を聞いてその中に含まれる文字
を言い当てることがあるが、自分で発音することはできなかった。音声と文字の関係には少しずつ
慣れてきているが、自分でアルファベットの1文字を発音することがむずかしいようである。また
この 2 名は小文字の形と名前の認識がむずかしいと答えており、アレン玉井(2010)が主張するように、
小文字の認識が十分できない段階では初見の英単語を読むことがむずかしいかもしれない。
文字のもつ音声を混成することが困難である児童がいる(表 Level 8)。2 名の児童が、それぞれの文
字がもつ音を理解し、1 文字であれば文字を見て発音できるが、その文字を混成させて発音すること
ができなかった。また別の児童は、文字を混成することができるが、日本語のように単語の終わり
の子音に不必要な母音をつけてしまうことがあった。ローマ字で表記された日本語は、基本的に子
音+母音なので、英単語では表記されていない文字は音声化しないという助言で理解されたようだ。
音声と文字の関係の指導段階
Stage 4 英単語を読む
Level 9
英単語を読む (/bæt/)
Stage 3 文字を音声化する
Level 8
文字のもつ音の混成をする ( b+at →bat, ba+t→bat )
Level 7
文字1文字を見て、その基本音を発音する (/b/)
Level 6
文字1文字の音を聞いて、その文字のカードを選ぶ
Level 5
単語の音声を聞いて、その中に含まれる子音のカードを
Stage 2 音声を聞き、
文字を認識する
(B,T from /bæt/)
Level 4
英単語の音声を聞いて、語頭音のカードを選ぶ
( B from bat/bæt/)
Stage 1 音声を聞いたり、
Level 3
文字を見たりして、 Level 2
Level 1
英単語を聞いて、語頭音を言う
文字1文字を見て、その名前を言う
文字の名前を聞いて、そのカードを選ぶ
音声を認識する
この音声と文字の関係の指導段階の表には、大文字、小文字の習得、母音の習得が除かれている。
児童にとって小文字の形を見分けたり、母音のちがいを聞き分けたり、発音したりすることはむず
かしいことであり、習得にとても時間がかかるので、表中に示すことが困難であったためである。
継続的に指導の機会を設け、繰り返し指導することで、児童が慣れ親しみ、理解を深めることが可
能になると考えられる。
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Ⅴ.結論
プレ・ポスト英単語読みテストの結果や抽出児童の行動を考察すると、音声と文字の関係を指導するこ
とは英単語の読みにある程度の効果があると言えるだろう。本研究で、児童が音声と文字の関係を学習す
る上で困難な点は、文字 1 つ 1 つの基本音を発音することと文字のもつ音を混成することの 2 点であった。
この2つの段階では繰り返し練習する機会が必要であると思われる。本研究では、限られた指導時間の関
係上、文字や単語を書く指導を実施しなかったが、アレン玉井(2010)が主張するように、アルファベットの
文字や単語を書く力が単語の認識に関係するとすれば、単語を読むことにも良い影響を及ぼすことも考え
られる。
本年度、小学校外国語活動は完全実施され、積極的な文字指導は推奨されていないが、音声と文字の関
係を指導することが英語学習の継続性や中学校英語へのスムーズな接続をする一助となることを期待する。
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