エネルギー

カナダの天然資源エネルギー ~ 現在と将来
エネルギー
カナダと世界に
大きく貢献する
技術革新
水素燃料電池自動車に
家庭で燃料補給
カナダのエネルギー産業
カナダと世界に大きく貢献する技術革新
エネルギーの安定供給は、世界的な貿易自由化の進展に伴い、社
会の発展を促進し、世界経済の成長を刺激する最も確実な方法の
一つとして捉えられてきましたが、競争が激化する世界市場でこ
の課題はますます重要なものとなりつつあります。カナダのエネ
ルギー産業はこの重要な問題に積極的に取り組んでいます。
カナダのエネルギー業界の生産高はカナダの国内総生産(GDP)の
カナダのエネルギー業界の生産高
7 パーセントを占め、輸出高は 260 億ドル以上にのぼりますがその
中で世界規模の競争力を持つ関連テクノロジー・サービス・設備
産業が育成されています。カナダの産業は技術革新の最先端にあ
りますがこれを可能にしたのは、国が大規模なエネルギー資源を
開発し、エネルギー生産、輸送、利用において新しいテクノロジ
ーと幅広い専門技能への投資を推進してきた結果です。本稿は、
国際市場におけるエネルギー開発に貢献できるカナダ産業の将来
性を概観するものです。
カナダの天然資源エネルギー ~ 現在と将来
ENGERGY
ハイバニアにおける
海上油田技術
石油とガス
カナダの石油・ガスの分野における専門
技術は広範囲にわたり、産業は技術力、
生産力共に飛躍的な進歩を遂げていま
す。設備の製造、販売における信頼性と
良質なサービスはカナダにとって成功
の鍵となっています。カナダの石油およ
びガス設備産業は、石油・ガスの探索・
開発に必要な様々な機械装置や設備を
作り出しています。また、地球物理学的
評価、油田消火活動、安全研修、地震調
査、掘削請負を始めとする関連サービス
も行っています。カナダがその強力な設
備機器供給国として知られている分野
には、探索、掘削、脱水、第 2・第 3 回
収などがあります。貯留層内画像診断、
油井シミュレーション、生産最適化にお
ける技術革新により成熟した油田から
の回収率を倍増させました。カナダはさ
らに、硫黄分の約 99 パーセントを回収
することによって酸性ガス貯留層の開
発を安全に行えるテクノロジーを確立
しました。
カナダは、全長 50 万キロメートル以上
の地下パイプラインを擁し、この世界最
大のパイプライン・インフラストラクチ
ャ網によって天然ガス、原油、液化天然
ガス、精製品が輸送されています。これ
らのパイプラインを製造・維持管理する
企業は、パイプラインの構築、操作、試
験、調査に必要な専門サービスや設備な
どの専門技能を世界中に輸出していま
す。
アルバータ州における高度な
石油・ガステクノロジー
3 つの大洋に面し、ほぼ 4 百万平方キロ
また、石油・ガス資源の開発においては、
メートルの大陸棚を有する、カナダの石
新規施設の建築設計などに対する厳し
油・ガス産業は、世界のどんな厳しい場
い環境指針を策定し、自然環境の保護、
所でも使用できる設備と技術の開発、提
環境に及ぼす悪影響を最小限に抑える
供を行ってきました。沖合作業における
予防措置を講じてきました。これに対応
テクノロジー、寒冷地でのオペレーショ
し、業界では多種多様な環境保護テクノ
ンやその設備機器ではカナダは世界の
ロジーが開発されました。カナダの石油
リーダーです。また、重油の精製やオイ
業界では、二酸化炭素を分離しながら石
ル・サンド、ビチュミンを硫黄分の少な
油とガスを生産できる原油増進回収と
い合成石油に加工する技術にも優れて
炭層メタン回収に注目が集まっていま
います。厳しい地勢という課題を克服す
す。傾斜掘り技術により一つの現場から
る中で培ってきたこのカナダの専門技
多数の油井を掘削できるようになり、田
能・知識はいつでも世界で活用すること
園景観への影響を少なくしています。さ
が出来ます。
らに廃棄物を減らし、真水の使用を軽減
出来る環境上無害な新しい泥土を開発
カナダのメーカーは又、化学・石油化学
しました。カナダの専門技術は他にも、
産業の加工・製造に関連する機械、設備
ガス漏れ探知、測地・写真測量調査、地
機器も数多く製造・輸出しています。さ
図作成、精密重力調査、海底地層探査な
らに、カナダのコンサルタントおよび建
どがあげられます。これらのテクノロジ
設会社は、フィージビリティースタディ
ーや専門技術は、地球にやさしい経済開
ーやプロセス機器組立て、システム構
発策やエネルギー資源開発を推し進め
築、設計・調達計画を含む総合精油所の
る他の諸国でいつでも役立てていただ
プロジェクト、精油所リハビリテーショ
けるものです。
ン、石油化学・化学プロジェクト等にも
優れた能力を持っています。
二酸化炭素を
吸収する先進
エネルギー・
テクノロジー
カナダの天然資源エネルギー ~ 現在と将来
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代替・再生可能なエネルギー
とエネルギー利用効率
高効率エネルギー技術と代替エネルギ
ー技術を開発・販売するカナダの企業
は、長年エネルギー革新に取り組み、世
界で最先端のクリーンエネルギー技術
開発の一翼を担っています。これらの技
術は、今後環境排出の削減など、経済・
環境上の恩恵をもたらすものです。
カナダの一次エネルギー供給の約 17 パ
ーセントは、主に、工業プロセス熱、電
気または室内暖房向けの水力発電やバ
イオマス発電(木材などを燃焼させる方
式)などの再生可能な資源です。その結
果、カナダは、大規模・小規模水力発電、
アクティブソーラ、工業空気予熱用ソー
ラウォール、太陽光発電、風力エネルギ
ー、地熱ポンプ、バイオエネルギーなど
遠隔地用太陽光発電
の費用効率が高く、環境保護の面で信頼
開発です。これらの代替燃料は、ガソリ
できるエネルギー技術の開発・実用化に
ンやディーゼルに比べて排出量が少な
おいて幅広い技能を持つ、再生可能なエ
いのはもちろんのこと、カナダでは大規
ネルギー分野のリーダー的存在となっ
模な供給が可能です。例えば、既に輸送
ています。これらの技術の輸出量はかな
用燃料として活用されている天然ガス
り多く、増加しています。クリーンな代
の埋蔵量は我国の年間総使用量の 30 倍
替輸送技術の開発は、世界で最も急速に
もあると推定されています。 有用な資
拡大している産業の一つです。カナダで
源に立脚し、発展してきたカナダのテク
進んでいる技術分野は、電気自動車(電
ノロジーは商業化に近づいています。ま
池または電力貯蔵装置で動く)と並ん
た、カナダの新しいテクノロジーによ
で、天然ガス、プロパン、エタノール、
り、木材廃棄物などのバイオマスからの
水素などの代替燃料用車両と燃料補給
エタノール生成、水を含む様々な資源か
インフラストラクチャ・ハードウエアの
らの水素生成もなってきました。
電力
長年、カナダ電力業界は最新式の画期的
なエンジニアリングやテクノロジーを
開発し、水力発電、石炭、天然ガス、石
油やウランによる発電により国内の電
力内ニーズを満たしてきました。世界的
に見て、カナダは第 5 位の電力生産国で
す。
ブリティッシュ・
コロンビア州に
カナダ製の発電装置には、小規模太陽光
おける大規模発電
発電・風力発電設備からベネズエラに建
技術革新、工程変化、新製品は、日々進
設された世界最大の空冷式水力発電用
歩を続け、エネルギー利用効率を上げ、
の高効率ガスタービンまであります。そ
パルプ・紙、鉄鋼、セメント、石油・ガ
の他際立ったカナダの特徴としてジェ
ス、食品・飲料業界といった産業の環境
イムズ湾プロジェクトがあります。 こ
パフォーマンスの向上に一役買ってい
れはナイアガラ大瀑布の 3 倍の高さを持
ます。カナダで進んだ専門技術分野に
つ余水路と世界最大の地下発電所です。
は、流動床燃焼、廃棄物利用エネルギー、
又オンタリオパワー社は世界最大規模
二酸化炭素吸収・集約型排出抑制、熱管
の石炭火力発電の一つを運転していま
理、プロセス最適化などがあります。カ
す。カナダでは、環境負荷を最小限に抑
ナダは、従来型でも、又代替エネルギー
え地方への電力供給を低維持費で可能
に於いても国内・世界市場でクリーンで
にする先進管理システムや、世界水準の
エネルギー効率の高い、住宅・商業ビル
小規模水力発電技術も開発しています。
向けエネルギーの開発・利用を推進して
きた世界のリーダーでもあります。重要
カナダは、原子力分野でも製品、サービ
分野としては、先進の統合機械システ
スや専門技術を広範囲に開発していま
ム、エネルギー利用効率の高い窓と建物
す。カナダの CANDU 原子力発電プラント
のアセンブリー、熱管理システム、シミ
は、効率性と安全性の点で世界最高の評
ュレーション・分析ソフトウエア、先進
価を受けています。カナダ原子力エネル
の建築物設計、R-2000 住宅建設、環境
ギー株式会社(AECL)は、カナダの国営
にやさしい建築部材・評価などがあげら
企業です。同社は、CANDU 原子炉と MAPLE
れます。カナダは、国際標準と認められ
実験用原子炉の建設・販売・管理を行っ
た RET スクリーン再生可能エネルギー・
ており、加えて実証済みのシステム残し
プロジェクト分析ソフトウエアを開発
ながら設計を継続的に改良しています。
しました。RET スクリーンは以下のウエ
AECL は、原子力エネルギー・システムや
ブサイトで世界中のユーザーに無料で
テクノロジーでは、アジアと欧州、南米
提供されています。
における最大のサプライヤーの一つで
(www
www.
retscreen.gc.ca)
ca
www.retscreen.gc.
す。
カナダの天然資源エネルギー
カナダの天然資源エネルギー ~ 現在と将来
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電力会社をはじめとして化石燃料を動
カナダには、電力産業を支えるコンサル
力源とする産業は、プラントのライフサ
ティング・エンジニアやエンジニアリン
イクルが終るにつれ、修理・近代化・更
グ・コントラクターが 200 社以上ありま
新のための最新技術や設備機器を開発
す。企業連合やパートナリングによっ
してきました。電力会社で 7-8 社が従来
て、さまざまな専門分野の優良プレイヤ
型蒸気発電プラントのリニューアルを
ーを組み合わせ、人材不足を補いスキル
行い、環境配慮型の高効率運転を行って
の供給態勢を可能にしています。
います。この分野では、ロボット使用の
修理メンテナンス・ユニット、診断・管
大企業は、エンジニア・調達・建設コン
理システム、発電スケジューリングや河
トラクターの役割を担い、下請けに出す
川管理ソフトなどの最新製品が上げら
設備機器の設計や調達、リスクなど、通
れます。
常の固定価格・ターンキー方式でのプラ
ント建設や立ち上げの全責任を含むサ
カナダでは、経済的な理由から多くの水
ービスを提供しています。もう一歩踏み
力発電所が遠隔立地であるため、世界初
込んで、全財務資金組み立てなど、トー
の 735Kv 送電線、最新の交流特別高電圧
タル・プロジェクト・ソリューションを
(EHV)や直流高電圧(HVDC)など、新し
提供する企業もあります。リードタイム
い送電技術が開発されてきました。カナ
の短さ、製品提供の柔軟さ、製品の一段
ダの大容量送電ネットワークは、
の標準化、性能保証やサポート・サービ
158,156 キロに及ぶ高電圧線から成り、
スの充実を重視するカナダのサプライ
電力会社は世界最低水準の料金でしか
ヤーは、世界中でこの分野でのサービス
も政府助成金無しで配電を行っていま
提供に優れた実績を積んできました。
す。サンパウロの 15.4 セント/kwh、シ
カゴの 10.3 セント/kwh といった代表的
な住宅用電力料金に比べ、カナダの料金
カナダ天然資源省ウェブサイトをご参
は kwh 当たり 5 セント未満です。カナダ
照下さい。
電力産業は、最新式変圧器、開閉器やワ
www.nrcan.gc.ca/es
イヤー・ケーブルなど、送電・配電の設
フランス語ウェブサイト
備・サービスに関して経験豊かで能力の
www.nrcan.gc.ca/se
高いサプライヤーを擁しています。送
電・配電上の諸問題の対応に、監督・管
理・データ取得(SCADA)やその他のネ
ットワーク管理システムがカナダの電
力システムに統合されつつあります。
小規模水力
発電タービン
www.nrcan.gc.ca
 Her Majesty the Queen in Right of Canada, 2001
Catalogue Number: M22-137/2001-3E
ISBN: 0-662-30032-7