人間科学部研究年報 平成 25 年 実存概念と幼児期の絵本の読み聞かせ体験が絶望感に与える 影響の検討 An Investigation by Existential Feeling and Picture-book Reading in Early Childhood Give to Effect Hopeless 五明 優介 1、谷川 賀苗 2 Yusuke Gomyo、Kanae Tanigawa 【Summary】 The aims of this study are to look into whether existential thought gets over desperate situations or not from the aspect of life-span development and whether picture-book reading in early childhood, which is assumed to create a sense of basic trust, leads to existential thought or not. Furthermore, supposing that existential thought eases a sense of despair, this study also examines whether this is the case. The results indicate a strong negative correlation(r =−.751)between existential feeling and hopelessness, a poor positive correlation(r =−.282)between existential feeling and picture-book reading. Enough correlation(r =−.182)was not found between picture-book reading and hopelessness. Based on the research, it seems clear that existential feeling eases hopelessness and helps people overcome despair. Furthermore, it strongly indicates that picture-book reading in early childhood the development of existential feeling. 【要旨】 本研究は、生涯発達の視点から、実存概念の有無が絶望的な状況を乗り切る要因になるのか、 また、基本的信頼感の成立の要因になっていると考えられる幼児期の絵本体験が実存概念の芽生 えに影響があるのかを調査を実施した。さらに、実存概念が絶望感を軽減させる考え、幼児期の 絵本の読み聞かせ体験は絶望感を軽減させる要因になるかについて調査を実施した。 これらの調査の結果、実存概念と絶望感の間に強い負の相関(r =−.751)が見られた。また、 1 帝塚山学院大学大学院人間科学研究科臨床心理学専攻 2 帝塚山学院大学人間科学部 ― 14 ― 実存概念と幼児期の絵本の読み聞かせ体験が絶望感に与える影響の検討 実存概念と絵本の読み聞かせ体験との間に弱い正の相関(r =−.282)が見られた。絵本の読み聞 かせ体験と絶望感の間には、ほとんど相関がなかった(r =−.182)。 本研究を通して、実存概念が絶望感を低減させることが明らかになり、絶望を乗り越える力と なることが分かった。実存概念の成立に、幼児期の絵本の読み聞かせ体験が影響していることに ついては、今後の研究課題になった。 Key word:実存概念、絶望感、幼児期の絵本の読み聞かせ体験 【はじめに】 Frankl(1978,1986)よると、現代人は生きるための手段(means)を手に入れたが、そのた めにかえって人びとは何のために生きるのかという意味(meaning)を失ったという。今日の情 報社会や産業社会において、欲しい情報や物は多少の対価を払えば容易にいつどこにいても手に 入れられ欲求を容易に満たすことができる。また、企業は利益を得るために、すぐさま消費者に 新たな欲求を芽生えさせようとマスコミケーションを用いて欲求源を広告して欲求を刷り込む。 そして、企業は人々の欲求を容易に満足させて、再びすぐさま新たな欲求を芽生えさせ刷り込ま せる。このような欲しいものが容易に手に入る社会は人々に生きる方法を与え、人々の生きる手 段の拡大につながった。 しかし、この社会において人は、欲求を満足させる意味やそのために必要な忍耐や努力を見 失っている。また、これらの社会は人々に効率とスピードを求める。そこでは個人という人格は さほど重視されず、有能な生産媒体の 1 つとみなす傾向がある。さらに、人々も生産活動はあく まで生活手段としてとらえており、生活の目的としてとらえてはいない。 このような傾向は人間から人間性を奪い「~にすぎない」というニヒリズム(nihilism)を促進 させる。Frankl(2005)はニヒリズムを学問上のものと生活上のものとの 2 種類に分けている。 前者は心理主義といった還元主義のなかにあらわれ、後者は「人生に意味がない」や存在意義の 不明瞭さといった実存的な虚無感、つまり実存的空虚感(existential vacuum)を指す。実存的空 虚感とは「生きる目標および内容がないという感じ」をいう(Frankl,1955)。本論では後者の実 存的空虚感に焦点をあて実存概念を考えたい。 さて、ここで実存の定義が問題になる。Frankl は実存的空虚感の説明として「生きる意味」を 挙げている。そして、この概念は哲学や心理学領域で専門的な見地からさまざまな研究者によっ て定義がなされてきた。しかし、浦田(2013)によると、 「生きる意味」については 20 世紀に入っ てから哲学・心理学の領域において微妙な位置に置かれてきたという。彼によれば、哲学では素 人的な考えと捉えられ、それ自体を考えることが無意味であると軽視されてきた。また、心理学 ― 15 ― 人間科学部研究年報 平成 25 年 では行動や感情に注目して「生きる意味」が「心の問題を超えた哲学的な問い」として扱われて きた。 このような流れのなかで、2000 年前後から心理学の領域では、新たに登場してきたポジティブ 心理学やナラティブ・アプローチによって「生きる意味」という問題があらためて注目を集めて きた(浦田,2013)。その心理学の領域のなかで先駆けて Frankl が実存に焦点をあて提唱した実 存 分 析 お よ び ロ ゴ セ ラ ピ ー で は、Crumbaugh & Maholick(1964,1968) が 作 成 し た PIL (Purpose In Life)や Lucas(1972)が作成したロゴ・テストなど Frankl の弟子などによって実 存概念が心理面に及ぼす影響が研究されてきた。日本では岡堂ら(1993)が邦訳した PIL など心 理尺度を用いた統計的研究が多くなされている。 浦田(2013)によると、心理学において「人生の意味」に関する問題は統一された定義がなさ れていないと述べている。だが、 「人生の意味」は全体像を捉えることができて統一された定義が できる概念なのだろうか。人間の内面や感情をはたして定義できるものなのだろうか。また、統 一化してしまってよいのだろうか。性格や感情は人によって異なってくる。たとえば、 「幸せ」と いう感情1つ取っても食べることによって感じる人もいれば、ゆっくりと過ごせることに幸せを 感じる人もいる。人間が感じることや物事の捉え方は、その人の過去の経験も含めた全体から来 るものだと考える。仮に「幸せ」などの抽象概念を定義として一般化するとなると人間そのもの を定義することにならないだろうか。無理に定義づけることは、まさに人間を物として扱う学問 的ニヒリズムになりはしないだろうか。そこで、本論では実存を明確に定義することを避け、 「生 きる意味への問い」としてとらえ考えたい。さらに、統計的に表された実存概念は実存を構成す る要素の一部として考えたい。 実存について、生涯発達の視点からいつごろから実存的なことを考え始めるのかという問題が ある。白井(2001)によれば、実存を考える時期として、実存について考えることは時間意識と 並行するとして、自身の思考過程や内面変化を意識でき時間を意識し始める小学校高学年ごろと している。また、守屋(2005,2010)は青年期初期の第 2 次反抗期(the second rebellious age) 前後から「自己の過去から未来へと向かう時間的側面に関する意識内容」と定める時間的自我 (temporal self)の傾向がみられ、この時期から「人は何のために生きるか」ということを問い始 めるという。これらの概念をまとめると、実存について考え始める時期は個々に違うが、おおよ そ思春期から青年期初期と考えられる。筆者の NPO での子どもの相談を受けてきた経験からす ると、小学校中学年ごろまでの子どもたちは今日や明日といった短期的な時間の問題を訴えるこ とが多い。一方で、思春期からの年齢層では今現在のことはもちろんだが、10 年先といった将来 のことや一生のことなど「生きる意味」や「人生の意味」といった自己存在価値に関する疑いや 疑問を訴えてくる子どもが多いと感じている。彼らはよく「自分なんか…」や「生きていても仕 方がない」などと自分に自信が持てないかのように訴えてくる。そこには未来に不安感やあきら ― 16 ― 実存概念と幼児期の絵本の読み聞かせ体験が絶望感に与える影響の検討 めといったネガティブな感情さえ感じることがある。 現代における思春期・青年期の若者の他者との関わり方は、土井(2008)が述べるような相手 を傷つけず、軋轢が生じないように気を使い合う「優しい関係」が広まっている。付かず離れず の微妙な関係にある現代の若者たちにとって、 「独り」になることは避けるべきことがらなのかも しれない。 気をつかい合い、付かず離れずの関係のなかでは、高垣(2004)の述べるように「子どもを取 り巻く人間関係から不安や恐れ、痛みを共有し、ともに悩む泥臭い関係はますます姿を消してい る」。このような対人関係の希薄さは、現代社会の将来の不透明さや閉塞感によってさらに増長し ているように思われる。このような感情を共有できない状態でネガティブな感情の増幅と蓄積は 絶望感に繋がると考えられる。平井(2008)によれば、絶望感は失望や憂うつ・あきらめと いった単純なものだけではなく、 「見通しがきかず、今の瞬間しかみえず、未来に目を閉じている こと」であり、「待つこと、願うこと、信頼すること、信仰すること」を失った状態と定義して いる。さらに、「想像力の欠如」も挙げられており、これらは「孤立・孤独・寂しさ」に通じると いう。 絶望感は精神病性うつ病や双極性無感情障害の症状としても表れ、自責や希死念慮・無気力感 をともなう(松木,2007)。うつ病を患っている人々が 100 万人近くいる現代日本において絶望感 という問題は非常に重要なテーマである。 一方、病的な症状を起因するものとは別に、挫折や失敗など環境によって生じる絶望感もある。 この 2 つの絶望感は同質のものであるかどうかは議論が必要だが、少なくとも平井が定義してい る内容に両者当てはまるだろう。 しかし、絶望的な状況においても絶望せずに向き合う人もいる。Frankl の強制収容所での体験 のように極限状態においても絶望せずに『論文を書くという』という与えられた意味に答えよう と未来に向かう姿勢を取ることもできる。この両極の態度の間には、自身の「人生の意味」を発 見し、意味と向き合い、自身の人生のナラティヴを想像できるかできないかに起因しているので はないだろうか。 この自身の物語を想像する力は、自身を絵本の登場人物に投影して読み聞きする幼児期の絵本 の読み聞かせ体験にその一因があると考えられる。そこで本研究では実存概念と自己の物語 (narrative)を物語る能力について幼児期の絵本との出会いに注目したい。幼児期の子どもは、成 長に寄り添ってくれる大人を通して絵本と出会い、その世界の広がりの時間を楽しむ。子どもは 絵本の読み聞かせを通して、読み手である大人との心のふれあいを深め、絵を楽しみながら、こ とばの世界に出会い、想像力を膨らませていく。乳児が出会う絵本では、絵を見ながら、ことば のリズムや繰り返しを楽しみ、基盤的な言語を獲得していくと同時に、身近な他者(親や保育者) とのスキンシップを通して基本的な信頼感を形成していく。 ― 17 ― 人間科学部研究年報 平成 25 年 生活の場が広がり、ことばの獲得が急激に発達する 2、3 歳ごろの子どもは、絵本の世界を通し て、絵本の主人公と自分を一体化させて基本的な生活習慣を学んだり、自律心を養ったり、また 乳児期よりも広がりの中でことばの不思議さやおもしろさを内在化していく。 他者との関係性を築く世界に身を置くようになる 4 歳からの絵本は、ことばの楽しみからより 言葉の世界が広がり身近なお母さん、お父さん、幼稚園・保育園の先生、友だちと絵本の内容を 共有したり、想像力を広げて絵本に描かれている世界との一体化を深めるようになる。文字を読 むことが出来なくても、繰り返し絵本を読んでもらうことを通して、絵本の絵と文章をイメージ の世界でつなぎ合わすことができ、絵本の内容をしっかりと理解するようになる。 5 歳から 6 歳になると、自分でもある程度字が読めるようになり一人でも絵本を楽しむことが できる。感情の発達も大人がいだく感情に近くなる。知的好奇心も旺盛なり、現実の世界を描く 絵本の内容から、想像を働かせるお話にも興味が広がる。 乳幼児期の子どもの発達と絵本については、成長を見守ってくれる身近な大人との基盤的関係 性の構築、社会的動物としてのことばとの出会い、情操の育み、自律性、行動力、探究心、好奇 心という人間として生きるための基本的な「力」を養ってくれることであると捉えることができ る。子どもは絵本を通して物語に出会い、そのなかの主人公と自分を重ね合わせ絵本の世界の楽 しみを味わう。そして、子どもは成長の日々において、さまざまな人との出会い、かけがえのな い経験を通して自己の確立していく。子どもが、絵本で出会う「物語」と時間を重ねることによ り自己の内面に養ったものは、脇(2008)が児童文学と子どもの発達の事例を挙げながら指摘す るように、発達の過程において、子ども自身の物語を紡いでいく力を支える一要因となるのでは ないだろうか。 現代の日本において対人関係は希薄化しているといわれる。一方で、携帯電話やゲーム機など といった電子機器との関係はより密になっている。対人関係も電子メールなど電子機器を用いて 行い、1 日中携帯電話を触っているような状態の人もいる。このような状況下で人は「一人 (oneself)」でいることが多くなった。しかし、そこにはいつも何かしらの誘惑や媒体があり、 「独 り(alone)」の時間を確保できなくなっている。 実存や絶望感、絵本に共通する一要因として、「独り(alone)」を生き抜くことが考えられ る。実存は自身を見つめる「独り(alone)」として、絶望は耐えきり乗り越えるため努力として の「独り(alone)」として、絵本は自己の世界を広げる「独り(alone)」としての時間を要して いる。 本研究では生涯発達の視点に立ち、一生涯において一度は体験するだろう困難(絶望感)を肯 定的にとらえて乗り切る力を実存概念の有無に関係があると仮定することにする。また、実存概 念の育成には自身の物語を紡いでいく力を取得する一因として絵本の読み聞かせ体験が考えられ る。本研究では実存概念の獲得と絵本の読み聞かせ体験の関係を調査する。 ― 18 ― 実存概念と幼児期の絵本の読み聞かせ体験が絶望感に与える影響の検討 【目的】 実存概念を構成する要素として、信頼感や自己の人生を物語る能力と関係がある幼児期の絵本 の読み聞かせ体験と関係があると考えられる。本研究では、実存概念を構成すると考えられる要 素の関連性を明らかにし、思春期・青年期の実存概念の構築に絵本の読み聞かせ体験がどのよう な影響を与えているか尺度を用いて明らかにする。また、絶望を生き抜く要因として幼児期の絵 本体験や実存概念の有無が考えられる。幼児期の絵本体験や実存概念が絶望を乗り越えていくの にどのような影響を与えているのか明らかにする。 【方法】 1.調査対象 大阪府内の心理学専攻の大学生を対象に 2013 年 7 月に調査を行った。有効回答数 121 名(M44 名、F77 名)であった。回答者の学年は 2 ~ 4 回生(2 回生 58 名、3 回生 42 名、4 回生 21 名)で あった。 2.調査の実施手続き 大学で心理学の講義中にアンケート用紙を配布して実施した。実施に際して、アンケート用紙 とは別に調査概要と目的を記載した同意書を配布して調査への同意を求めた。アンケート概要に 同意した学生には配布した同意書にサインしてもらい、同意書のみ切り離してアンケートととも に提出してもらった。 3.調査尺度 絵本の読み聞かせ体験感情尺度:幼少期に絵本を読み聞かせてもらったときの感情について 6 つの質問項目を作成した。曖昧な回答を避けるために「はい」「どちらかといえばはい」「どちら かといえばいいえ」 「いいえ」の 4 件法を採用することにした。得点化は「はい(4 点)」から「い いえ(1 点)」とした。 絶望感尺度:Beck et al.(1974)の 20 項目からなる尺度を谷(1998)が邦訳したものをそのま ま採用した。得点化は「よく当てはまる(3 点)」から「全く当てはまらない(0 点)」である。 実存概念尺度:Frankl の実存分析の概念をもとに高井(1999)が独自に開発した「実存的生き 方態度インベントリー(Existential Attitude toward Life Inventory:略記は EAL)」を曖昧な回 答を避けるために 4 件法で採用した。得点化は「よく当てはまる(4 点)」から「全くあてはまら ない(1 点)」である。 これら 3 つの尺度を用いて作成した質問用紙は調査の前に、分筆者のゼミ生 4 名に分筆者が口 頭で同意を得てからプレテストを行い、質問項目や構成などアンケートとして違和感がないかを ― 19 ― 人間科学部研究年報 平成 25 年 確認した。 【結果】 1.絵本の読み聞かせ体験感情尺度 尺度の信頼性を確認するために 1 週間の間隔をとって再検査法による信頼性係数を算出した。 その結果 r = .631 であった。α係数はα= .841 で高い内的整合性を示した。やや安定性を欠いた が、内的整合性の高さから一定の信頼性が確認された。 各 項 目 の 平 均 値 を Table.1 に 示 す。 全 体 の 平 均 値 を 算 出 し た 結 果、M = 18.03(SD=3.94) であった。各項目でもっとも平均値が高かったのは項目 6「物語を楽しんだ」で M = 3.27(SD = .81)であった。 Table.1 絵本尺度の記述統計 M SD 1. わくわくした。 3.17 .92 2. 心が温かくなった。 2.95 .87 3. 言葉(ふわふわ や ぽわ~んなど)を楽しんだ。 2.88 .94 4. ゆったりとした気分になった。 2.88 .87 5. 安心した。 2.88 .89 6. 物語(ストーリー)を楽しんだ。 3.27 .81 男子 2.73 .93 女子 3.17 .82 全体 18.03 3.94 全下位尺度の相関を算出したところ、その範囲は 1%水準で .272 ~ .694 であった。もっとも相 関が強かったのは項目 1「わくわくした」、2「心が温かくなった」の間であった。また、相関が もっとも弱かったのは項目 4「ゆったりとした気分になった」、6「物語(ストーリー)を楽しん だ」の間であった。 男女の得点を比較するため t 検定を実施した。t 検定の結果、項目 1 で(t(77.19)= 2.90, p < .05)、項目 2「心が温かくなった」で(t(78.63)= 3.00,p < .01)、項目 6「物語(ストー リー)を楽しんだ」で(t(82.02)= 3.59,p < .01)と有意差があり、3 つの下位尺度で女性が男 性よりも得点が高かった。 分散分析による学年間の得点を比較したが、どの学年間にも有意な差は認められなかった。 ― 20 ― 実存概念と幼児期の絵本の読み聞かせ体験が絶望感に与える影響の検討 2.絶望感尺度 Cronbach のα係数によって信頼性を求めたところα= .904 であり高い内的整合性を示した。 各下位尺度の平均値を Table.2 に示す。全下位尺度の平均値は M = 28.25(SD = 10.02)であり、 谷(1998)の研究結果 M = 22.6(SD = 7.9)よりも高い得点を示した。男女別の得点は男性が M = 28.80(SD = 12.60)、女性が M = 27.95(SD = 9.06)と両者とも個々人の得点にばらつきがみ られた。 下位尺度のなかで項目 4「10 年後の生活」が M = 2.40(SD = .78)と得点が高かった。一方、 得点が低かった項目 16「何かを望むことはばかげている」は M = .88(SD = .73)であった。 Table.2 絶望感尺度の記述統計 M SD 1. 私は希望で胸をわくわくさせながら未来を待ち望んでいる* 1.74 .88 2. 私は物事を自分の思う通りにはできないので、あきらめたほうがましだ 1.29 .86 3. 物事がうまくいかななくても、それがいつもでも続くわけではないと思えば気が楽になる 1.21 .79 4. 10 年後に私がどんな生活をしているか、予想できない 2.40 .78 5. 私が最もやりたいことを成し遂げるための時間は十分にある* 1.54 .87 6. 私がとても心配していることは、将来うまく解決すると思う* 1.52 .88 7. 私の未来は暗いように思われる 1.31 .87 8. 普通の人よりはましな人生が送れると思う* 1.48 .80 9. 私はいまだにチャンスが得られないし、これから先もチャンスに恵まれるとはとても思えない 1.12 .83 .97 .89 11. 自分の将来を思うと、苦しみばかりで楽しいことはなさそうだ 1.07 .81 12. 私が本当に欲しいものは手に入れられないと思う 1.37 .96 13. 未来のことを考えると、今よりも幸せになっているだろうと思われる* 1.48 .80 14. 何事にせよ私の望むとおりにはならないだろう 1.42 .88 15. 私は未来を強く信じている* 1.63 .86 .88 .73 17. 将来、私が心から満足するようなことはありそうにない 1.12 .84 18. 私にとって未来はあいまいで不確かなものである 2.24 .90 19. 将来、悪いことよりも良いことのほうが多くありそうだ* 1.46 .82 20. 望むものを得ようと思っても多分手に入らないだろうから、懸命に努力しても仕方がない 1.00 .78 男子 28.80 12.60 女子 27.95 9.06 2 回生 27.83 9.19 10. 私の過去(現在より前)の体験は、私の未来のためになるものだったと思う* 16. 私が望むものは決して手に入れられないから、何かを望むことはばかげている ― 21 ― 人間科学部研究年報 平成 25 年 3 回生 29.64 10.67 4 回生 26.67 10.99 全体 28.25 10.02 注、*がついている項目は逆転項目を示す。 各下位尺度における男女の得点を比較するため t 検定を行った結果、項目 19「良いことが多く ありそうだ」にのみに(t(81.98)= 1.96,p < .05)の有意差があり、男性が女性よりも得点が 高かった。学年を要因とする分散分析を行った結果、項目 5「やりたいことを成し遂げるための 時間」で(F(2,118)= 3.68,p < .05)あった。Tukey b を用いた多重比較によれば、3 回生と 4 回生の間に有意差があり、3 回生のほうが得点が高かった。 3.実存概念尺度 最尤法による因子分析(プロマックス回転)の累積寄与率は 45.98%で、優位確率は 0.1%水準で あった。得点化は因子負荷量の絶対値が .350 以上のものを採用することにし、35 項目のうち 4 項 目(3「私はなにか役立つことをしたいと思う」、26「私は自分の人生に対して、自分なりに意味 を見出している」、28「私は人との関わりによって、自分自身というものを深く知ることができる と思う」、31「私は仕事や家庭や社会的活動や趣昧など、自分が打ち込んでいるものがある」)を 削除して 31 項目を得点化の対象とした。高井(1999)の因子分析と比較すると、第 1 因子では項 目 24 が新たに因子間で移動しており、ほとんどの項目で因子内で移動が見られたが内容は同じで あった。第 4 因子では項目 4、24、32 が他因子へ因子間で移動がみられ、残りの項目も因子内で 移動がみられた。第 2、3、4因子では高井(1999)の結果とは異なる結果が示された(Table.3)。 第 1 因子は「自律性・責任性・独自性」、第 2 因子は「課題追求性」、第 3 因子は「意味追求性」、 第 4 因子は「実存追求性」と命名した。第 1 因子では 1 項目を除き高井(1999)の研究と類似し ているため、そのまま命名した。第 2、3 因子は高井(1999)の因子内容と類似しているものが少 なかったため独自に命名した。第 4 因子は高井(1999)の「存在の価値」因子と類似した因子内 容だが、3 つの下位尺度が他因子に因子間で移動していることから新たに独自に命名した。 ― 22 ― 実存概念と幼児期の絵本の読み聞かせ体験が絶望感に与える影響の検討 Table.3 実存概念尺度の因子分析の結果 自律性・責任性・独自性 課題追求性 F1 F2 F3 F4 10. 私は直面する様々な問題に対して、どのように対処するかを自 分で決めることができる .768 -.061 -.100 .049 35. 私は自分の行為の結果がたとえ悪くても、その責任を自分でと ることができる .744 -.194 .055 .023 2. 私はたとえ人から非難されても、自分が正しいと思うことは主 張する .728 .002 -.121 .040 20. 私は人からどう思われようと、自分の感じ方や考え方を大切に した生き方をしている .726 -.017 .078 .041 6. 私は自分の生き方は自分で決めることができる .688 -.012 -.130 .254 24. 私は自分のなすべき仕事や役割は責任をもってやりとげる .584 -.006 -.112 .164 16. 私は必要ならば、権威に対してでも対抗することができる .567 .031 -.005 -.078 13. 私は自分なりの価値観や良心に従って物事を考え、行動を決定 している .519 -.023 .371 -.088 30. 私は人生を自分の意志と決断によって生きていると感じてい る .507 .278 -.058 -.033 27. 私は孤独を覚悟してでも、自分の信念に従って生きたいと思う .454 -.085 .207 -.193 7. 私はたとえつらくても、自分が直面すべき自分自身の問題から 逃げることはしたくない .400 .152 .055 -.032 5. 私は自分の能力や可能性を活かした生き方をしていると思う -.026 .874 -.156 .072 22. 私は自分のなすべき課題や目標を、自分から進んで見つけよう とする .006 .636 .100 .010 1. 私は自分の人生を充実したものにする努力をしている .044 .615 .117 -.065 4. 私は毎日の生活の中で、自分の役割を自分なりによく果たして いると思う .007 .555 -.132 .199 18. 私は自分の仕事に対して、やりがいを感じている .186 .546 .021 .030 8. 私はいつも、なにかの課題に取り組んでいる -.018 .507 .070 .017 15. 私はある目標を達成したなら、すぐに次の新たな目標に向かっ ている .150 .479 .219 -.207 29. 私は人生において、自分なりの使命感を感じている .045 .422 .244 .018 34. 私はいつも、ものごとに意欲的に取り組んでいる .104 .411 .224 .218 25. 私は社会や他の人のために役立つことをすることに、喜びや生 きがいを感じる -.203 .373 .039 .078 ― 23 ― 人間科学部研究年報 平成 25 年 -.218 -.152 .716 .323 33. 私は生きていく上で味わう、つらい経験をも自分の成長の糧 (材料)にしている .124 .019 .711 -.109 12. 私はいかなる運命や境遇におかれても、そこに生きる意味を見 出すことに努めたいと思う -.010 .033 .616 .086 17. 私はたとえ苦しくても、自分にとって意味ある生き方をしたい -.076 .146 .592 .010 23. 私には大切に思う人、または、自分を大切に思ってくれる人が いる .043 -.213 .482 .479 21. 私は自分の苦しみや悩みの中にも、意味を見出そうとしている -.008 .274 .477 -.003 11. 私には目指す目標がある -.002 .345 .418 -.011 9. 私は周囲の人たちにとって必要な存在である .089 .155 -.041 .740 14. 私は周囲の人によって何らかの役に立っていると感じている -.074 .442 -.002 .557 19. 私は生きている価値のある人間であると思う。 .085 -.017 .418 .472 F1 F2 F3 F2 .660 ― F3 .514 .588 ― F4 .240 .340 .275 意味追求性 32. 私は、あるもののために、または、ある人のために生きている と言える対象である 実存追求性 因子相関行列 カイ 2 乗 自由度 有意確率 484.65 347 .000 各因子の内的整合性を調べるために、各 4 つの因子の下位尺度ごとに Cronbach のα係数を求 めた。第 1 因子下位尺度のα係数はα= .874、第 2 因子下位尺度はα= .860、第 3 因子下位尺度 はα= .822、第 4 因子下位尺度はα= .786 であった。いずれも高い数値が得られており、各因子 下位尺度の内的統合性は十分に保たれているといえる。 4.尺度間の相関 各尺度間の Peason の相関を Table.4 に示す。実存、絶望感の間で r =- .751,p < .01 と強い 負の相関がみられた。また、絵本と実存概念の間に r = .282,p < .01 の弱いが正の相関がみられ た。絵本尺度と絶望感の間には r =- .182,p < .05 とほとんど相関がみられなかった。 ― 24 ― 実存概念と幼児期の絵本の読み聞かせ体験が絶望感に与える影響の検討 Table.4 3 つの尺度間の相関 絵本尺度 * 絶望感尺度 -.182 ** 実存概念尺度 .282 絶望感尺度 ― -.751** p < .01 *p < .05 ** 【考察】 1. 絵本の読み聞かせ体験感情尺度 再検査法による尺度の安定性がやや低かったが、これは被験者の回答時の心理的状態が影響し ているのではないかと考えられる。また、尺度の性質上、過去のことを思いだして回答してもらっ ているため、回答時に振り返った場面や時期が異なっていたことも考えられる。 3 つの項目で女性が男性よりも有意に得点が高かったが、言語能力の発達が女性が男性よりも 早期に発達することと関係があるのかもしれない。また、幼児期のお飯事といった女児の遊び方 も影響しているのかもしれない。これらの仮説をもとに幼児期の生育歴や遊びなどを含めた詳細 な尺度を作成することが今後の課題である。 本調査では多くの学生にとって幼児期の絵本の読み聞かせ体験が肯定的に記憶されていた。絵 本との出会いは絵本を誰かに読んでもらうという共有体験であり、この体験を通じて子どもは基 本的信頼感を育んでいくと考えられる。また、大学生になっても幼児期の絵本のストーリーを覚 えていることから、幼児期における絵本の読み聞かは幼児期の体験の中で重要な位置にあると考 えられる。そして、幼児期にストーリーを重視していることは興味深く、以降の研究の課題にな るだろう。 2.絶望感尺度 谷(1998)が研究した時期に比べ、現代の大学生は全体的に見ると絶望感が強くなっているこ とが明らかになった。一方で、個々の得点に差が出たことにより、絶望感の程度に個人差がある こと明らかになった。各下位尺度の平均をみると大学生は将来に対する不安が強いことが伺える。 また、過去の出来事が現在に与える影響はあまりないと考えている。一方で、欲しいものは手に 入れられえるという希望を持っている。欲しいものは手に入ると考えているが、未来がどうなる か想像できないという不安感を現代の大学生は強く抱いていることが分かった。しかしながら、 下位尺度間で相間があまり見られなかったため、他の要因が絶望感を抱くのに影響していると考 えられる。 学年間で差が見られたのは 3 回生と 4 回生の間であった。3 回生の方が絶望感が高かったこと ― 25 ― 人間科学部研究年報 平成 25 年 は、4 回生が大学生を終え、これらか新たな場所に出ていくのに対して、3 回生はまだ何も知らな い就職活動という未知なイベントを迎えていく不安が影響しているものと考えられる。 3.実存概念尺度 高井(1999)の研究と比べ、自律性・責任性・独自性因子以外で、因子内容に大きな変化が見 受けられた。また、因子分析の結果削除された項目は 4 項目あり、現代の大学生が抱く実存概念 は高井が研究したころと比べて変化していることを示唆していると考えられる。 因子内容を見ると、自律性・責任性・独自性因子では自己選択や自身の生き方を重視する傾向 が強いことが判明した。この傾向は多様化するサブカルチャーや仕事観など若者文化の影響を受 けているのかもしれない。また、価値観の多様性が各因子内容を変化させたのかもしれない。し かし、内容は変化していても 4 項目を除く、31 項目が因子分析の対象となっており、これらの因 子が実存概念の基盤であると考えられる。 一方、削除された 4 項目をみると、対人関係や社会奉仕を連想させる項目である。これらが実 存概念から削除されたことは、人とのかかわりの希薄さ、また自己中心的な保身を重視する大学 生の態度を示していると考えられる。しかし、彼らは完全に他者を無視しているわけではなく、 課題追求性因子内容から自身の能力の範囲で、自身を主体においた考えに基づいていると考えら れる。 4.各尺度相関 各尺度間に強弱の相関が見受けられたことにより仮説は支持された。実存概念と絶望感の間に 負の相関が示されたことで、自律性や課題や意味などを追及することで絶望感は減少していくこ とを示唆していると思われる。 実存概念と絵本尺度に正の相関があったことは、幼児期の絵本の読み聞かせ体験が実存概念の 成立に多少の影響を与えていることを示唆している。幼児期にさまざまな世界に触れながら成長 することで、自身に課せられている責任や課題、物事の意味を自身で考える能力が培われていく と考えられる。 絵本の読み聞かせと実存概念や絶望感に関係性があることが明らかになった。しかし、絵本の 読み聞かせは誰に読んでもらっていたかや家庭環境などさまざまな要因によって受け取り方が変 化してくると考えられる。今後、読んでもらっていた人物や家庭環境などの調査を行い、絵本の 読み聞かせ体験に与える影響を考えていかなければならない。また、今回使用した絵本尺度は簡 潔性を重視したが、より細分化した感情を調査していく必要があるだろう。 今回の調査で絶望感が過去に比べて高くなっていることが判明した。実存概念が絶望感を減少 させることは本調査で明らかになった。また、将来に不安を感じていることが現代の大学生の絶 ― 26 ― 実存概念と幼児期の絵本の読み聞かせ体験が絶望感に与える影響の検討 望感の大きな要因だということも判明した。しかし、何が彼らの将来に不安を与えているのかが 不明である。この結果も踏まえて、大学生がどのようなことで未来に不安を感じ絶望的になって いるのかを明らかにしていく必要がある。 今回の研究で一定の実存概念の基盤となる概念が明らかになった。しかし、今回使用した高井 (1999)の EAL では削除項目も出たため、PIL やロゴ・テストなど他の実存心理学の実存尺度と 関連性を改ためて、調べる必要があると思われる。Frankl(1956)は現代社会を「世俗化した社 会」と呼んでいるが、彼がこのように唱え始めてからはや 5 0 年以上経っている。われわれは「世 俗化された社会」のなかで生活様式も変化している。生活様式の変化は人々の思想を変化させて いく。そのため実存概念を現代を生きる者の目線から再検討する必要があると思われる。 今回の調査では、被験者数が少なく、学科専攻や性別に偏りがあった。また、一校で調査を行っ たため、学生の傾向や学力など本調査に影響した可能性がある。今後、調査対象を広げる必要が ある。 【謝辞】 予備調査、信頼性の検討検査、アンケート調査にご協力いただいた学生のみなさん、またアン ケートを取らせていただける機会を作ってくださった H 先生、T 先生に厚く御礼申し上げます。 【参考文献】 浦田 悠 (2013) 『人生の意味の心理学 ―実存的な問いが生むところ―』 京都大学学術出版 岡堂哲雄 (監修) PIL 研究会 (編) (1993) 『生きがい―PIL テストつき―』 システムパプリカ Crumbaugh, J. 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