第2章 フィードバック制御の考え方 制御システムの構成要素が揃ったら、制御アルゴリズムを決めなければなり ません。制御アルゴリズムが適当でなければ、制御はうまくいかない。このた めの説明は制御理論の教科書では、多くのページを使っています。 この授業も、制御設計に関する理解を最終的な目的としているが、この章では、 フィードバック制御設計の考え方をイメージ的に理解してもらいます。 2-1 制御問題と物理問題の違い ニュートンの力学の基本式のなかに、 F=Ma というものがあります。これを車の速度制御に当てはまると、 dv F =M dt ここで、Fは車を動かす力、Mは車の質量、vは車の速度である。 物理の授業では、この式を使って、色々な計算をしました。 物理の問題: 停止状態にある質量 M のボールに力 F を加える。T 秒立ったとき、 このボールが走った距離xとそのときの速度vを求めよ。 解: 力 f(t)と速度 v(t)の関係は、運動方程式 dv(t ) d 2 x(t ) or f (t ) = M f (t ) = M dt dt 2 任意の時間 t のときの速度 v(t ) と距離 x(t ) は 1 t 1 t t v(t ) = f (t )dt 、 x(t ) = f (t )dt ∫ M 0 M ∫0 ∫0 となるので、T秒たったときの速度と距離は 1 T 1 T t v(t ) = Fdt 、 x t = Fdt ( ) M ∫0 M ∫0 ∫0 dv(t ) を用いて、力 f(t)が分かれば、任意の dt 時間tにおける速度 v(t)と距離 x(t)を計算できる。しかし、制御では、逆の問 題を考える。 制御の問題: 停止状態にある質量 M のボールを T 秒後に、距離 X まで移動 し、かつそのときの速度は V となるように、推力 f(t)を求めよ。 この問題は、運動方程式 f (t ) = M 10 このような問題はこれまで解いたことありますか? この問題は別の言い方でも表現できる。 制御の問題: 停止状態にある質量 M のボールを以下の速度パタンに追従 して走らせるための推力 f(t)を求めよ。 制御の問題に関しても当然ニュートンの定理が成り立ちます。このとき、上 の運動方程式を使って、f(t)を逆計算すればよいのではないかと考えるかもし れません。このような考えは所謂フィードフォワード制御です。フィードバッ ク制御の考えは、このような緻密な計算はしない。フィードバック制御は車の 速度と目標速度を随時比較して、差があれば、この差が少なくするように、力 を加減する。 2-2 フィードバック制御の考えをルール化しよう フィードバック制御の構成は4つの部分から成り立っているが、数理的にシス テムを考えるとき、二つの部分に分けることにします。ここで、制御ルールの 部分は、センサー、制御機、アクチュエータを合わせたものと考えてよい。人 を車を運転する場合、対象は車、制御は人間と分けた場合に対応する。 例2-2 上の問題の続き。 人が考える制御:車が早かったら、アクセル、遅かったら、ブレーキ 人間の直感のルール化:力= f (t ) = F + K (V − v(t )) ――成功? 理論的な制御ルール: f (t ) = f (V − v(t ), v&(t )) ――>これから勉強する 例2-3: 倒立振子制御 制御について: 人の直感: 棒の倒れる方向へ振り子の根元を動かす 人間の直感のルール化:力=αθ or 力=αθ+βdθ――成功? 理論的な制御ルール: F = f (θ ,θ&, x, x& ) 11 例2-3:磁気浮上システム 人間の直感: 間隔が離れたら、電流をもっと流す。 人間の考えを式に: V = Kh 理論の設計: V = f (i, h, h&) このように、論理的に制御ルールを設計するために、もっと制御対象を知らな ければならないことが言える。 演習問題: 具体的な制御問題を一つ挙げ、この問題に対する制御の考えを述 べ、その考えを数式化してみよう。 先週演習問題の解答について: 問題点、1. 制御の例をあげるとき、 “バイク”、 “車”のように、対象の名 前だけを書く人がおおいです。バイクの何を制御するとはっきり 書く必要があること 2. 制御系を構成する4つの部分をそれぞれ示すところで、 “1)バイク、2)人 3)足、、、のように、これもまたも のだけを言って、4つの要素との対応関係を明示する必要がある こと。 多くの人は、とてもよい回答をしてきました。 12
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