エッセイ デジタル革命が金融業界に与える影響 2016年10月31日 山本 誠一郎 アライアンス・バーンスタイン株式会社 代表取締役社長 本稿では、デジタル革命が金融業界に与える影響に ついて考えてみたい。ここに興味深い調査結果があ る。シスコシステムズ社とIMD(スイスの経営大学院)が 共同で、デジタル革命が各産業に与える影響を調査し たものだ。そのタイトルは、「Digital Vortex (デジタル 化のうず)」。デジタル革命により、どの産業が最も変革 のうずに巻き込まれやすいのか? 5年以内に上位10 社から消えてしまう企業は? 5年以内に上位10社から どころか、消滅してしまう企業は? 【図表】 この調査は、グローバルのビジネス・リーダー941人(12 産業)にアンケートをとったものである。結論として、デ ジタル革命の影響を最も受けやすい上位5つの産業 は、1. テクノロジー、2. メディア娯楽、3. 小売り、4. 金 融サービス、5.通信となっている。金融サービスは全12 の(広義の)産業の中でも第4位と最も影響を受けやす い産業の一つに分類されている(図表)。 デジタル化のうず 出所:Digital Vortex “How Digital Disruption is Redefining Industries” And IMD and Cisco Initiative 当資料は、2016年10月13日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されてい る情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するもので はありません。また当資料の記載内容、データ等は今後予告なしに変更することがあります。本文中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明の ための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)はアライアンス・バーンスタ イン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社はABの日本拠点です。 デジタル化の波は教育産業にも押し寄せている(上位 6番目)。日本において、東進ハイスクールなどスタジ オ収録型の映像授業形式が普及してきているように、 例えば、米国の経営大学院(MBA)にもデジタル革命 は確実に浸透してきている。今や、米国のトップ・ビジ ネス・スクールが提供するファイナンスなどのコア科目 はWebベースで格安で受講できるようになっている。 MBAプログラムにおいて、かつては、1年目に受講する コア科目が主で正教授が担当し、2年目に受講する選 択科目は従で助・准教授が担当していた。今や、主の コア科目はWebベースとし、従であった選択科目をリア ルな場で正教授が授業するなど、主従が逆転してきて いる学校も出てきている。 現在進行しているデジタル革命に対して、世界的な経 営者も危機意識を表明している。 「デジタルなくして未来なし。」 株式会社ファーストリテーリング 柳井 正 代表取締役会長兼社長 「Wall Streetにシリコンバレーがやってくる。」 JPモルガン・チェース ジェームス・ダイモン 会長兼CEO 「10年後までに今の企業の40%が姿を消す だろう。」 ジョン・チェンバース シスコシステムズ前CEO 「過去20年間、デジタル革命は消費者向けインター ネットの分野がけん引してきた。…しかし、今後 10-20年で、産業の世界にデジタル化による変革 の波が本格的に訪れる。…GEは接続産業企業 (connected industry company)だ。」 ジェフ・イメルト GE会長兼CEO 金融サービス産業における危機意識は、特に米国に おいて強い。その理由は、米国における新しい世代の 台頭と無縁ではない。「The Millennial Disruption Index」(注)によると、将来最も破壊的な状態に陥る可能 性の高い業界は「銀行」となっている。アンケートによる と、米国の若者が銀行サービスに対して辛辣にとらえ ている事実が浮かび上がってくる。米国の若者世代は リーマン・ショックの体感度が大きく、日ごろ銀行の窓口 で受けるサービスに対してよい印象を持っていないこと も影響しているのであろう。 「銀行はどこも同じだ」と回答 ⇒ 全体の53% 「90日以内に他の銀行に切り替えることにオープン だ」と回答 ⇒ 3人に1人 「銀行員の話を聞くくらいなら歯医者に行った方が ましだ」と回答 ⇒ 全体の71% 米国ではミレニアル世代が全人口の20%を占め、ます ます影響力を持つことから、既存の大手金融機関は強 い危機感を醸成している。現に、直近5年間で米国のリ テール店舗は20%以上も減少している。近年のスマホ の普及に加え、こうしたミレニアル世代の台頭が米国に おけるフィンテック・ブームを促している。マッキンゼー の調査結果によれば、フィンテックにより最も影響を受 ける金融ビジネス領域は、主として個人向け貸付や決 済といったリテール分野とも言われている。 日本は米国と比較しミレニアル世代の構成割合が低 く、銀行、特に国内系金融ブランドへの信頼が高い。さ らにリーマン・ショックの影響が米国ほど大きくないな ど、米国とは状況が異なる点が多い。従って、米国のよ うに破壊的な状況には陥りづらいと予想する向きもある が、日本においても底流では銀行のリアル店舗離れは 着実に進行すると考えるべきかもしれない。 次稿では、デジタル革命の資産運用業界への影響に ついて考えてみたい。 (注)ネット企業のスクラッチ社が米国1万人以上のミレ ニアル世代(2000年以降に社会人になった世代)にア ンケートをとったもの アライアンス・バーンスタイン株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号 【加入協会】 一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会/日本証券業協会/ 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 http://www.abglobal.co.jp 当資料についての重要情報 当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定投資信託の取得をご希望の場合には、 販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさ るようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。 投資信託のリスクについて アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には 為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありませ ん。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託 が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面 等をご覧ください。 お客様にご負担いただく費用:投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります 申込時に直接ご負担いただく費用 …申込手数料 上限3.24%(税抜3.00%)です。 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.0304%(税抜1.8800%)です。 その他費用…上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確 認ください。 上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンス タイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。 ご注意 アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行い ますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、 金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取 引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含 むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用 戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や 性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及び その合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。
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