「メキシコ文化を楽しむ -様々な角度からメキシコをみる試み-」

第 5 回 メキシコ文化研究会 連続講演会
「メキシコ文化を楽しむ -様々な角度からメキシコをみる試み-」
2012 年 1 月 24 日~5 月 8 日
講演内容紹介
第 1 回 「メキシコ・シティ旧市街の広場と街路」
2012 年 1 月 24 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
西村亮彦 (建築学・都市工学、メキシコ国立自治大学 建築学研究所 ポスドク研究員)
広場や街路をはじめとする都市の屋外空間は、市民の生活を支える公共空間として様々な役割を
果たしています。メキシコの首都、メキシコ・シティの旧市街では、アステカ族の都市テノチティトラン
の時代から今日に至る、その長い歴史の中で、屋外空間を舞台とした豊かな生活文化が育まれて
きました。本講演では、メキシコ・シティ旧市街の広場や街路がどのように形成され、それが市民に
よってどのように使われてきたのか、歴史的な変遷を概観した上で、その現状について考えたいと
思います。
第 2 回「ルイス・バラガン -グアダラハラの建築-」
2012 年 1 月 31 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
川上聡 (建築家、LEGORRETA+LEGORRETA 設計事務所)
メキシコを代表する近代建築の建築家ルイス・バラガンは、メキシコシティに移住し建築家として大
活躍する以前にも、その出生の地グアダラハラに数々の建築作品を残しています。その多くは近代
的とは言えず、くむしろ古典的、伝統的な手法に基づいて設計されていますが、その伝統的な建築
の中にも後期のバラガンの傑作につながる独自の空間的特徴を見出すことができます。そんなバ
ラガンのグアダラハラ時代の建築を、いくつかの代表的な作品を紹介しながらし説明します。
第 3 回 「メキシコ各地の気候風土とアシエンダ建築」
2012 年 2 月 7 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
楠原生雄 (建築学、環境大学大学院 サステイナブル建築学研究科 サブコーディネーター)
伝統建築と呼ばれるものは、その土地の気候風土に合わせて、適切な形態や材料を用いることに
より快適な生活環境が得られるよう工夫されていました。諸気候に適応するための叡智ともいえる
その原理は、空調の利用を抑える省エネの基本として、今日の建築設計においても見直されつつ
あります。この講演では、アシエンダ建築という例を通じて、熱帯から乾燥まで多様な気候をもつメ
キシコの、各地の住居建築がどのように気候に適応してきたのかを、分かりやすく説明したいと思
います。
第 4 回 「裁判史料からみる 18 世紀植民地社会 –セマナ・サンタの祭礼費用をめぐるせめぎあい-」
2012 年 2 月 14 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
和田杏子 (歴史学、青山学院大学大学院 日本学術振興会特別研究員 DC)
本講演では、変動の時代であったとされる 18 世紀メキシコで作成された文書を基に、植民地社会
を生きる人々が上からの改革をどのように受け止め、行動したのかを追っていきます。具体的には、
人々(先住民、聖職者、スペイン人役人)がどのような裁判戦術を用い、それによってどのような目
的を達成しようとしていたのかを分析することで、イスミキルパン行政区(現イダルゴ州イスミキルパ
ン市)の社会秩序がどのように変わっていったのかを明らかにします。
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第 5 回 「メシーカ人の一生 -ゆりかごから墓場まで-」
2012 年 2 月 21 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
池田和歌子 (オアハカ歴史学・図像学・図像解釈学、メキシコ国立自治大学大学院 哲文学部 メソ
アメリカ学専攻 修士課程)
14 世紀初頭からメキシコ中央高原で台頭したメシーカ(アステカ)人は、当時メキシコ盆地内にあっ
た巨大な湖の上にテノチティトランという湖上都市を建設しました。彼らが戦争と貢納制度を通して
勢力を拡大し、宗教面では太陽が機能し続けるために人身御供を捧げていたことはよく知られてい
ますが、メシーカ社会を支える一般の人々はどんな生活をしていたのでしょうか?文献や絵文書など
から再構成できる、あるメシーカ人の一生を、「ゆりかご(誕生)から墓場(死)まで」概観いたします。
第 6 回 「オルメカ、テオティワカン、マヤの広がり −メソアメリカ文化圏の東端から−」
2012 年 2 月 28 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
市川彰 (エルサルバドルを中心としたメソアメリカ考古学、名古屋大学大学院博士課程後期・日本
学術振興会特別研究員 DC2)
オルメカ、テオティワカン、マヤといった現在のメキシコに栄えた先スペイン期文化は、メソアメリカ各
地の広い範囲でその影響力をうかがうことができます。その影響はどこまで及び、どのような文物
がどのようにもたらされたのか、本講演ではメキシコ・シティから数千キロも離れた「エルサルバド
ル」というメソアメリカ文化圏の東の端からメキシコ先スペイン期文化について考えてみたいと思い
ます。
第 7 回 「メキシコ文学の魅力 -女性作家が描いたメキシコ社会-」
2012 年 3 月 6 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
洲崎圭子 (文学、お茶の水女子大学大学院 比較社会文化学専攻 博士後期課程)
オクタビオ・パスやカルロス・フエンテス、"文学"と言えば男性ばかり。女性は書かなかったのでしょ
うか?そんなことはありません。ラウラ・エスキベルの『赤い薔薇ソースの伝説』やアンヘレス・マスト
レッタの『命を燃やして』は映画化もされました。その彼女たちに先んじた作家ロサリオ・カステリャノ
スは、チアパスの大農園の娘として先住民使用人たちに囲まれて育ちました。彼女の生涯と、自伝
的とされる小説を中心にいくつかの作品をご紹介します。
第 8 回 「メキシコ人移民失踪事件 -9.11 以降の世界における移民問題-」
2012 年 3 月 13 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
平井伸治 (文化人類学・移民研究、メキシコ社会人類学高等研究所 北東地域プログラム 准教授)
メキシコの農村を出て国内を北上し、国境を越えて米国へと向かう人々が失踪する事件が近年連
続して起こっています。100 年以上の歴史をもつメキシコから米国への国際労働移動という現象に
おいて、移民がここまで大量に失踪することは異例の事態で、これまでの研究の仕方では理解でき
ない難題に研究者も直面しています。今回の講演では、メキシコ人移民の失踪事件を紹介しながら、
10 年前に起きた米国同時多発テロ以降、世界と国境と移民問題がどのように変化してきたかを説
明します。
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第 9 回 「ワステカ地域のカーニバル; イスカテペックの事例から」
2012 年 3 月 20 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
吉田和隆 (文化人類学、広島大学 総合科学研究科 博士課程前期)
カトリックなど西方教会の文化圏で四旬節の前に見られる祝祭として有名なカーニバルは、メキシコ
でも人々にとって身近なお祭りとして親しまれています。本講演では、ベラクルス州北部のワステカ
と呼ばれる地域に属するイスカテペックという町のカーニバルのお祭りをテーマに、カーニバルの時
期に町の住民の手によって表現される彼らの文化についてお伝えしたいと思います。
第 10 回 「過去の人権侵害と向き合う: 民主化後のメキシコの挑戦と挫折」
2012 年 3 月 27 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
馬場香織 (比較政治学・ラテンアメリカ政治、東京大学法学政治学研究科 博士課程)
今日の民主制下のラテンアメリカ諸国では、過去に内戦中や軍政下で起こった拷問や強制失踪と
いった人権侵害とどう向き合うかについて、多くの議論がなされてきました。この問題は、71 年間続
いた制度的革命党(PRI)による一党支配の下で、広くこうした人権侵害が行なわれてきたメキシコと
も無関係のものではありません。本報告では前フォックス国民行動党(PAN)政権でどのような過去
の人権侵害をめぐる正義追求の試みがなされ、なぜ挫折したのかについて検討してみたいと思い
ます。
第 11 回 「民族舞踊からみるオアハカ州」
2012 年 4 月 10 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
村田佳子 (地域社会学、メキシコ社会人類学高等研究所 研究生)
舞踊はコミュニケーション手段のひとつであり、その中で伝えようとされることは、踊り手たちが帰属
する
社会で発せられているメッセージの縮図であると言えます。
本講演では、数あるオアハカ州の民族舞踊の中から数例を挙げ、その特徴や、外部から影響を受
けたと推測できる身体技法に対する受容について考察することで、オアハカ州の社会について「踊
る身体」を切り口とした分析を試みます。
第 12 回 「メキシコ考古学の発見をたどる」
2012 年 4 月 17 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
新谷葉菜 (考古学、名古屋大学大学院 博士課程前期)
オルメカ、マヤ、アステカ・・・メキシコには数多くの文明が栄えてきました。世界有数の規模を誇るメ
キシコ国立人類学博物館の展示では、そういったメキシコの先スペイン期文化に触れることができ
ます。では、それらの遺跡や遺物はいつ、誰に、どのように発見され、展示にいたったのでしょうか。
この講演では、メキシコを代表する考古遺跡や遺物がどのように発見されてきたのか、どのような
研究者が歴史のなぞの解明に挑んできたのか、その発見の歴史をたどりたいと思います。
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第 13 回 「メキシコの博物館 2 メキシコ国立美術館絵画鑑賞の手引き -20 世紀絵画からメキシコ
の昔の風景をイメージする-」
2012 年 4 月 24 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
渡辺裕木 (保存修復学・博物館学、メキシコ国立修復保存学博物館学大学修士課程・ADABI, A.C.)
メキシコシティーの歴史地区(Centro Histórico)にあるメキシコ国立美術館(MUNAL)にスポットを当て
てお話します。この美術館は、日本人にとって馴染みの深い画家の作品が少ない為、観光ルートに
組み込まれやすい人類学博物館に比べると注目される事は少ないのですが、幾つかの鑑賞ポイン
トを抑えて訪れるだけで、広い博物館を飽きる事なく散策することができます。本講演では、「本で
読むしかない古い時代のメキシコを二十世紀絵画からイメージする」というテーマで、当美術館を
「バーチャル(仮想)鑑賞」してみたいと思います。
第 14 回 「ピラミッド建設後のお供えの様子 -ラ・ホヤ遺跡の一括資料から-」
2012 年 5 月 8 日 (火) 朝の部 10:30、 夜の部 19:00
黒崎充(考古学、メキシコ国立自治大学 哲文学部 考古学専攻 博士課程)
メソアメリカのピラミッドの中には、その建設前や建設後にお供えされたと考えられる土器などが出
土する例があります。このうち、建設後に供えられたと考えられるものは、何かの儀礼を行った後に、
土器や土偶などを配置ないし放棄した様子が見られます。ベラクルス州中部地方南地域のラ・ホヤ
遺跡でも、古典期後期(紀元後 700 年から 1000 年)に相当するこれらの土器資料が出土しており、
今回は、この供えられた資料の特徴についてと、どのような儀礼が行われたと考えられるかなどお
話したいと思います。
主催
共催
在メキシコ日本国大使館
協力
Artes Gráficas Panorama
Copyright (C) 2011 メキシコ文化研究会
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