第 66 回税理士試験 解答速報 酒 税 法 本解答は平成 28 年 8 月 11 日 13 時に学校法人大原学園が独自に作成したもので、予告なしに内容を変更する場合が あります。また、本解答は学校法人大原学園が独自の見解で作成/提供しており、試験機関による本試験の結果等につい て保証するものではありません。 本解答の著作権は学校法人大原学園に帰属します。無断転用・転載を禁じます。 酒 本試験模範解答 税 法 〔第一問〕 (1) (2) 趣 旨 (10 点) 手 続 (12 点) ① 未納税移出 国産酒類の酒税の納税義務の成立は、原則としてその製造場からの移出の時とされている が、いったん製造場から移出された酒類であっても、その酒類が他の酒類の原料に使用され る場合など直ちに消費のための流通過程に入らない場合がある。このような場合に、原則に 従って課税することは、二重課税の問題や消費税本来の建前から好ましくないので例外規定 を設け、一定の要件のもとにおいてその移出に係る酒税を免除することとしている。 ② 未納税引取 輸入酒類の酒税の納税義務の成立は、原則として保税地域からの引取りの時とされている が、いったん保税地域から引き取られた酒類であっても、その酒類が他の酒類の原料に使用 される場合など直ちに消費のための流通過程に入らない場合がある。このような場合に、原 則に従って課税することは、二重課税の問題や消費税本来の建前から好ましくないので例外 規定を設け、一定の要件のもとにおいてその引取りに係る酒税を免除することとしている。 ① 承 認 酒類製造者が未納税引取の規定の適用を受けて酒類を保税地域から引き取ろうとする場合 には、その保税地域の所在地の所轄税関長の承認を受けなければならない。 ② 申請書の提出 ①の承認を受けて酒類を保税地域から引き取ろうとする者は、一定の事項を記載した申請 書を当該税関長に提出しなければならない。 ③ 証明書の提出 税関長は、①の承認を与える場合には、その承認の申請者に対し、相当の期限を指定して、 当該酒類が適正な場所に引き取られたことについての当該場所の所在地の所轄税務署長の証 明書を提出すべきことを命じなければならない。 これに基づき、酒類製造者は当該証明書を当該税関長に提出することが必要である。 ④ 亡失手続 ①の承認を受けて引き取った酒類を移入場所に移入する前に、災害その他やむを得ない事 情により亡失した場合において、その亡失の場所の最寄りの税務署の税務署長に亡失の事実 を届け出て、当該税務署長から亡失証明書の交付を受けたときは、当該証明書は、③に掲げ る証明書に代えて用いることができる。 資格の大原 本文中無断転載禁 -1- (3) 適用を受けることができる場合 ( 8 点) 酒類製造者が、次に掲げる酒類を保税地域から次に掲げる場所に引き取ろうとする場合に 未納税引取の規定の適用を受けることができる。 ① 酒類製造者が酒類の原料とするための酒類……当該酒類をその原料とする酒類の製造場 ② 酒類製造者が、その製造した酒類で輸出されたものを当該輸出の日から1年以内にその 酒類の製造場へ引き取るためのもの……当該酒類の製造場 ③ 酒類製造者がその製造した酒類と混和して更に移出することが明らかな酒類を自己の酒 類の製造場へ引き取るためのもの……当該酒類の製造場 資格の大原 本文中無断転載禁 -2- -70点- 〔第二問〕 品目及びその判定理由 商品名 品 目 A 果実酒 B (1 点) 清 酒 C (1 点) ビール D (1 点) ウイスキー (1 点) 判 定 理 由 ① 果実(りんご果汁)及び糖類(果糖)を原料として発酵させた酒類は、 糖類の重量(150kg×1=150kg)が果実に含有される糖類の重量(250kg) 以下、果糖を使用していること、アルコール分(14.0 度)が 15 度未満で あることから果実酒に該当する。 ② 果実酒にアルコール(原料用アルコール)、糖類(ぶどう糖)、香味料(ぶ どう果汁)及び炭酸水を加えた酒類は、混和アルコール割合(9.6%)が 10 10%を超えていないこと、糖類の重量(60kg)が酒類の重量の 100 10 =170 ㎏)以下、ぶどう糖を使用していること、アルコー (1,700 ㎏×100 ル分(7.0 度)が 15 度未満であることから果実酒に分類される。 混和アルコール割合 30 ×0.5 1,000 ×0.14+30 ×0.5 = 9.6% (3 点) 米及び米こうじを主原料として発酵させて、こして水を加えた酒類は、副 50 原料の重量(30 ㎏+250 ×60.0度 95.0度 ×0.8157=158.7 ㎏)が米の重量の100 50 =200 ㎏)を超えていないこと、アルコール分(15.0 ((350 ㎏+50 ㎏)×100 度)が22 度未満であることから清酒に分類される。 (2 点) 麦芽(発芽させた大麦)及びホップ(フムロン)を主原料として発酵させ 50 た酒類は、副原料の重量(500kg+500kg=1,000kg)が麦芽の重量の100 50 =1,000 ㎏)を超えていないこと、アルコール分(5.5 度) (2,000 ㎏×100 が 20 度未満であることからビールに分類される。 (2 点) ① 穀類(大麦)を発芽させた穀類(発芽させた大麦)及び水により糖化さ せて、発酵させたアルコール含有物を蒸留して水を加えた酒類は、留出時 のアルコール分(70.0 度)が 95 度未満であることからウイスキーに該当 する。 ② アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留して水を加えた酒類は、アルコ ール分(45.0 度)が 36 度以上 45 度以下、エキス分(1.5 度)が 2 度未満 であることからスピリッツに該当する。 ③ ウイスキーにスピリッツ及び水を加えた酒類は、原酒割合(11.7%)が 10%以上であることからウイスキーに分類される。 原酒割合 400 ×0.6 400 ×0.6+4,000 ×0.45 = 11.7% (3点) 資格の大原 本文中無断転載禁 -3- 商品名 品 目 判 定 理 由 E 甘味果実酒 ① 果実(りんご果汁)及び糖類(ぶどう糖)を原料として発酵させた酒類 は、糖類の重量(60 ㎏×1=60 ㎏)が果実に含有される糖類の重量 (60 ㎏)以下、ぶどう糖を使用していること、アルコール分(11 度)が 15度未満であることから果実酒に該当する。 ② 果実酒に糖類(砂糖)を加えて発酵させた酒類は、糖類の重量(60 ㎏+ 20 ㎏×1.05=81 ㎏)が果実に含有される糖類の重量(60 ㎏)を超えてい (1 点) ることから果実酒とはならず、甘味果実酒に分類される。 (3 点) F 発泡酒 麦芽(発芽させた大麦)及びホップ(ルプリン)を主原料として発酵させ 50 (700 ㎏× 50 = た酒類は、副原料の重量(400 ㎏)が麦芽の重量の100 100 350 ㎏)を超えていることからビールとはならず、麦芽を原料の一部とし発 泡性を有すること、アルコール分(5 度)が 20 度未満であることから発泡酒 (3 点) (1 点) に分類される。 G 雑 酒 ① アルコール含有物を単式蒸留機で蒸留した酒類に、くえん酸及び水を加 えた酒類は、アルコール分(25 度)が 26 度未満、エキス分(1.3 度)が 2 度未満、木製の容器で 1 年以上貯蔵した酒類を含まない(11 ヶ月)こと、 着色又は着香がないことから単式蒸留しょうちゅうに該当する。 ② 米等を原料として発酵させてこした酒類で、香味、色沢その他の性状が 清酒に類似するものは、アルコール、しょうちゅう(水以外の物品を加え ていないもの)又は清酒を使用していないことから合成清酒とはならず、 アルコール以外の酒類(単式蒸留しょうちゅう)を使用していることから その他の醸造酒ともならず、エキス分(5 度)が 2 度未満でないことから (1点) 雑酒に分類される。 (3 点) H スピリッツ ① ビールを蒸留した酒類はビールとはならず、エキス分(0.5 度)が 2 度 未満であることからスピリッツに該当する。 ② スピリッツにホップエキス、レモン果汁及び炭酸水を加えた酒類は、麦 芽を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを使用しているこ とから発泡酒とはならず、エキス分(1.8 度)が 2 度未満であることから (1点) スピリッツに分類される。 (3 点) 資格の大原 本文中無断転載禁 -4- ① 適用税率 品 目 商品名等 計 算 過 程 果実酒 A (その他の発泡性酒類) 内採点箇所 各2点 税 率 (円/ ) 80,000 清 酒 B 120,000 ビール C 220,000 ウイスキー D 200,000円+10,000 円×25 度= 450,000 円 450,000 甘味果実酒 E 120,000円+10,000 円×3 度= 150,000 円 150,000 発泡酒 F 麦芽比率 700㎏ 700㎏+400㎏+10㎏= 63.0% 63.0%≧50% 220,000 雑 酒 G 220,000 スピリッツ H 370,000 資格の大原 本文中無断転載禁 -5- ② 課税標準数量 品 目 商品名等 計 算 過 程 果実酒 A 1,800 ×6 本×250 ケース= 2,700,000 ※ 食品表示法の規定により収去された10 本は非課税 課税標準数量 ( ) 2,700,000 清 酒 B 720 ×20 本×2,000 ケース+500 ×24 本×600ケース = 36,000,000 ※ 製造場内で滅失した 100 は移出していないため課税 されない 36,000,000 ビール C 1,800 ×6 本×200 ケース+350 ×(24 本×100 ケース+ 30 本)= 3,010,500 ※ 公的機関主催の品評会に送付した30 本は課税移出 3,010,500 ウイスキー D (1) 課税標準たる数量 1,800 ×6 本×100 ケース= 1,080,000 (2) 免除に係る課税標準たる数量 1,800 ×500 本= 900,000 (3) (1)-(2)= 180,000 180,000 甘味果実酒 E 300 ×30 本×3,000 ケース= 27,000,000 27,000,000 発泡酒 F 720 ×(20 本×500 ケース+2,100 本)= 8,712,000 ※ 酒類販売業者に無償で提供した2,100 本は課税移出 8,712,000 雑 酒 G 2,000 ×(6 本×300 ケース+200 本)+1,000 ×6 本× 7,000 ケース= 46,000,000 ※ 在日アメリカ大使館に送付した200 本は課税移出 46,000,000 スピリッツ H 300 ×(24本×800ケース+50本)= 5,775,000 ※ 製造場見学者に対して試飲させた50本は移出とみな して課税 5,775,000 資格の大原 本文中無断転載禁 -6- ③ 課税標準数量に対する酒税額 品 目 商品名等 計 算 過 程 果実酒 A 〈判定〉 前年度実績 1,400 > 1,300 ∴ 清酒等に係る税率の特例の適用なし 2.7 ×80,000 円= 216,000 円 清 酒 ビール B C 酒 税 額 (円) 216,000 〈判定〉 前年度実績 1,000 < 1,100 ≦ 1,300 前月末実績 180 < 200 当月末実績 180 +36 = 216 > 200 ∴ 200 に達するまで清酒等に係る税率の特例の適用 あり (1) 216 -200 = 16 (2) 36 -(1)= 20 (3) (1)×120,000 円= 1,920,000 円 (4) ① (2)×120,000 円= 2,400,000 円 ② ①×90%= 2,160,000 円 (5) (3)+(4)= 4,080,000円 4,080,000 〈判定〉 前年度実績 1,050 ≦ 1,300 前月末実績 100 < 200 当月末実績 100 +3.0105 = 103.0105 ≦ 200 ∴ 全量につきビールに係る税率の特例の適用あり (1) 3.0105 ×220,000 円= 662,310 円 (2) (1)×85%= 562,963 円 562,963 ウイスキー D 0.18 ×450,000 円= 81,000 円 81,000 甘味果実酒 E 27 ×150,000円= 4,050,000 円 4,050,000 発泡酒 F 麦芽比率50%以上 ∴ 清酒等に該当しない 8.712 ×220,000 円= 1,916,640 円 1,916,640 雑 酒 G 46 ×220,000円= 10,120,000 円 10,120,000 スピリッツ H 5.775 ×370,000 円= 2,136,750 円 2,136,750 酒税額の合計額 23,163,353円 資格の大原 本文中無断転載禁 -7- ④ 控除を受けようとする酒税額 品 目 商品名等 甘味果実酒 E スピリッツ D 計 算 過 程 (1) 税率 150,000 円 (2) 戻入数量 300 ×20 本= 6,000 (3) 控除税額 0.006 ×(1)= 900 円 控除を受けよう とする酒税額 (円) 900 (1) 移入酒類の税率 200,000 円+10,000 円×25 度= 450,000 円 (2) 使用数量 4,000,000 (3) 控除税額 4 ×(1)= 1,800,000 円 酒税額の合計額 ⑤ 納付すべき酒税額 計 算 過 程 ③-④= 21,362,453 円 21,362,400 円(百円未満切捨) 1,800,000 1,800,900円 納付すべき酒税額 (円) 21,362,400 資格の大原 本文中無断転載禁 -8- □合格ラインの読み□ 〔第一問〕 重要度が高い趣旨及び規定が問われたこと、また問題文の与えられ方に難解な点がなかったことか ら、一部に酒税法施行令の規定が解答に挙がりますが、暗記の精度が試された出題内容でした。 〔第二問〕 平成 21 年度(第 59 回)以降継続している品目判定問題から税額計算問題へ連動する形式で出題さ れました。品目判定問題及び適用税率に解答しづらい箇所もありましたが、正解を導くことは可能で あり、また他に難解な資料はなかったため、最終値を正解することは可能でしょう。 <品目判定問題> 商品G 水以外の物品を使用したもの(=砂糖等を加えたしょうちゅう)は、選択必須原料であるしょう ちゅうに該当しないため、また清酒・アルコールが使用されていないことから合成清酒が否定され ます。こちらの論点に気付かない場合であっても、米の重量計算によって、合成清酒が否定できる ため、最終的な品目の雑酒は正解することが可能です。 商品H 蒸留されたビールは、使用されている原料が不明確であるものの、ビールの必須原料となる麦芽 の使用は明らかなため、発泡酒に認められない原料になります。他にしょうちゅうやウイスキーの 否定も考えられますが、発泡酒の否定を明示すれば問題ないでしょう。 <税額計算問題> 商品C 酒類の製造免許取得日により、ビールに係る税率の特例については、経過措置が適用され前年度 実績が 1,000k 超 1,300k 以下であっても特例割合 85%が適用されます。特例判定については、 前年度実績 1,300k の要件のみで解答することになります。 商品H 酒税法第 3 条第 3 号ハに規定するその他の発泡性酒類(ビール・発泡酒以外の発泡性を有する酒 類でアルコール分が 10 度未満)には、アルコール分が 10 度未満ではないことから該当しないため、 適用税率は品目であるスピリッツに応じた 370,000 円が適用されます。 総合的なラインを予想すると、合格確実ラインは、第一問は酒税法施行令(申請書の提出)の解答 がしづらかった点を除き、趣旨及び根拠規定の書き損じは許されない出題内容であったことから 27 点、第二問は難解な出題論点はなく、解答ボリュームが少なかったことから、満点である 70 点、合計 97 点が合格確実ラインの目安となります。 また受験生の方々全体の出来にもよりますが、第二問の失点により、ボーダーラインは合計 91 点前 後と思われます。 資格の大原 本文中無断転載禁 -9- -10- -11-
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