カテゴリー・イノベーション 新戦略論 - DENTSU CONSULTING

競争せずに事業を成長させる
長をドラスティックに促進する力を
が、再び覇権を取り戻すには、真剣
年までキリンは︿ラガービール﹀を
市場競争がよい例となる。一九八六
工夫に汲々とするよりも、他ブラン
既存のカテゴリー内で、消費者の
ブランド選好に与えるインパクトの
持っているのです﹂
︵阿久津教授︶
にゲーム・チェンジを行う必要があ
軸に市場シェア %という圧倒的な
コモディティ化の嵐に巻き込まれ、 たとえば、日本のビール業界にお
けるキリンビールとアサヒビールの
製品やサービスの価値を失った企業
る。だが、どのようにしたら革新的
教授が提唱する﹁カテゴリー・イノ
フェローのデービッドA・アーカー
その有力な手がかりの一つが、電通
な成長戦略を実行できるのだろうか。
テゴリーを創出すると、市場シェア
ライ・ビール﹂という新しいサブカ
れなかった。ところがアサヒが﹁ド
立場にあり、競合製品はまったく現
であるというのだ。
市場においては唯一有効な成長戦略
まう。それこそが、激動する今日の
リーやサブカテゴリーを創出してし
ドが比較検討されない新しいカテゴ
の阿久津聡教授は、﹁カテゴリー・イ
同教授の著書の監訳を務める、一
橋大学大学院・国際企業戦略研究科
的に市場シェアの三七%
︵二〇〇一年︶
ーを創ったにすぎない。しかし最終
かで〝ドライ〟というサブカテゴリ
の活用がある。
て、進化したソーシャル・メディア
いのだろうか。その一つの方法とし
では具体的に、どのようにカテゴ
リー・イノベーションを起こせばよ
ソーシャル・メディアの
進化で加速する
ブランディング
は大きく変動した。キリンのシェア
の凋落は、新サブカテゴリーである
︿一番搾り﹀や︿麒麟淡麗﹀
︵発泡酒︶
の投入でようやく止まる。
ノベーションとは簡単に言うと、他
を誇る日本のナンバーワンのビール
﹁アサヒはまったく新しい飲み物を
の市場とは明確に違う差別化ポイン
会社に成長した。このようにカテゴ
つくったわけではなく、ビールのな
トのある市場を創造することです﹂
法のなかに秘められている。
して勝つという最強の戦略がこの方
テゴリー・イノベーション。戦わず
カテゴリーそのものを革新するこ
とで、新たな提供価値を創造するカ
モメンタムである。
をたたみかけて投入するスピードと
る。ここで重要になるのは、新製品
を逃さず迅速に事業をローンチさせ
造していく。ステップ3では、機会
しにくいアプローチやスキームを創
社の強みを活かしつつ、他社が模倣
生態系〟をつくること。ここでは自
ステップ2は、イノベーションを
効果的に提供する仕組み、〝ビジネス
面では生きてきます﹂
︵及川社長︶
ションはどのように行われるべきな
では具体的に、ソーシャル・メデ
ィアを通じたカテゴリー・イノベー
考えなければならない﹂と指摘する。
創り育てていくコラボレーションを
するものではなく、生活者とともに
はやブランドは企業がコントロール
り積極的に参加したがっている。も
通じて、企業やブランドの活動によ
のモニターやサービスの評価などを
﹁ソーシャル時代の生活者は、商品
電通ビジネス・クリエーション局
コンサルティング室の小西圭介氏は、
リー・イノベーションは、企業の成
テゴリーやサブカ
テゴリーを生み出
し、そのカテゴリ
ーを支配できるブ
電通コンサルティング、ディレクタ
ーの及川直彦社長である。
MDBDのプロセスは三つのステ
ップに分けられる。ステップ1は、
まずニーズの芽に気づくこと。﹁顧客
の生活場面や社会的な価値観にも向
き合いながら、意思を持って市場調
査を行い、提供価値の創造を行う。
重要なのは、先入観なく顧客との対
話を繰り返すこと。ソーシャル・メ
ディアを利用した対話等も、この場
『カテゴリー・イノベーション』
デービッド・
A・
アーカー著より抜粋
るような新しいカ
と説明する。﹁ライバルを陳腐化させ
企業の成長を
ドラスティックに促進する
イノベーション
ベーション﹂という考え方である。
60
使用経験
検討
グループから
ブランドを
選ぶ
ランドは成功する。
それができないブ
ランドは市場競争
に敗れ、消費者の
ブランド
選好性
ブランド・
レレバンス
支持を失ってしま
ビスとして、マー
う﹂
のか。
そのヒントとして小西氏は、﹁製
ケティング・ドリ
MDBDとは、自
品からサービス・プラットフォーム
費者ではなく協力者︵ サポーター︶
社の強みや資源か
ブン・ビジネス・
として顧客創造を行うこと、ソーシ
ら発想するのでは
にブランド拡張すること、ユーザー
ャルとリアル・コミュニティを結び
なく、マーケット
デザイン︵ MDB
つけ、支援すること﹂という四つの
に存在する﹁声﹂
体験を増幅してフィードバック・ル
ポイントを挙げる。言葉を変えれば、
からアイデアを着想し、マーケット
D︶という方法論
ソーシャル・メディアを利用して価
との対話を通じて洗練させる事業開
ープ︵商品開発のためのフィードバッ
値創造のリソースをどれだけ外部に
発手法のことだ。
を提案している。
拡張、形成できるか︱︱それがこれ
﹁新規事業開発の現場でありがちな
ク・サイクル︶を生み出すこと、消
からのカテゴリー・イノベーション
のは、既存の製品やサービスが貢献
くさん見てきました﹂と言うのは、
形態で煮詰まってしまうケースをた
をイメージしてしまう。そんな思考
ながら、最初から完成された〝実〟
まうこと。またニーズの発見と言い
できる範囲で顧客ニーズを考えてし
を生み出すカギになるという。
本格的な
カテゴリー・イノベーションを
支援するMDBD
電通グループでは、このカテゴリ
ー・イノベーションを支援するサー
既存市場で競争する方法は2つある。消費者に選ばれるブ
ランドになる「ブランド選好モデル」か、競合他社の市場
の関連性を失わせる「ブランド・レレバンス・モデル」だ。
及川直彦
電通コンサルティング ディレクター 代表取締役社長
競合他社の市場関連性を失わせる「ブラン ド・レレバンス・モデル」
小西圭介
電通 ビジネス・クリエーション局
コンサルティング室
検討する
ブランドを
いくつか選ぶ
「カテゴリー・イノベーション」
とは、
既存カテゴリーの魅力を失わせる新カテゴリーを創出し、
それを代表するブランドになること。
コモディティ化が進む競争の激しい市場のなかで、
競争をせずに成長できる唯一無二の新戦略論として注目されている。
阿久津 聡
一橋大学大学院
国際企業戦略研究科教授
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