第1回 リード・マネージメント研究会 - 株式会社プロコムインターナショナル

第1回
リード・マネージメン ト研究会
会 期
2016 年 1 月 23 日(土)
会 場
コクヨホール
〒108-8710 東京都港区港南1丁目8番35号
TEL:03-3450-3712
当番世話人
庄田 守男
東京女子医科大学病院 循環器内科
ご挨拶
第1回リード・マネージメント研究会
当番世話人 庄田
守男
東京女子医科大学病院 循環器内科
エキシマレーザシースが日本で使用可能になり早7年、心臓ペーシングデバイスのリード管理は
総じてリード・マネージメントと呼ばれ、心臓ペーシングデバイス感染診療は確実に進歩していま
す。2015 年夏、これまでのエキシマレーザ心内リード抜去システムに加えて非レーザリード抜去
システムが承認され、リード・マネージメントは新たなシーンを向かえつつあります。また、リー
ド抜去をはじめとするリード・マネージメント診療に携わる医療従事者の数も年々増えています。
この度、リード・マネージメントに関する幅広い知識・技術を習得する必要性を感じ、本研究会
を設立するに至りました。リード抜去手術に携わる医師のみならず、心臓ペーシングデバイスに関
与する全ての医療従事者を対象として、日常診療にすぐに役立つ情報を共有できる研究会とした
いと思いますので、宜しくお願い致します。
1
会場への交通案内
コ ク ヨホール
〒108-8710 東京都港区港南1丁目8番35号
TEL:03-3450-3712
▲
東
京
ソニー
コクヨ品川オフィス
港
南
口
品川フロントビル
旧海岸通り
・京浜急行品 川 駅
JR
東京中央卸売市場
品川
インターシティ
横
浜
▼
品川駅 港南口(東口)を出て
徒歩 5 分
※お客様専用の駐車場はございません。
公共の交通機関をご利用ください。
2
首都高速一号羽田線
コクヨ
ホール
NTT品川ツインズ
会場案内
2F
非常
階段
懇親会会場
[ 多目的ホール ]
自動販売機
階段
EV
EV
非常
階段
ホール入り口
総合受付
PC受付
講演会場
[ コクヨホール ]
公衆電話
展示会場
クローク
ホワイエ
自動販売機
3
日程表
2016年 1 月 23 日㊏ 於:コクヨホール
9:00
9:25∼9:30
開会の辞
9:30∼11:00
演者:合屋
関口
岡本
清野
今井
大森
10:00
教育セッション
座長:中里 祐二
11:00
11:00∼12:00
演者:和田 暢
永島 道雄
山田 貴之
How to Session 1
座長:松本 万夫
12:00
雅彦
幸夫
陽地
雄介
克彦
裕也
12:00∼13:00
ランチョンセミナー
演者:Nigel Lever
座長:庄田 守男
共催:Cook Japan株式会社
13:00
13:00∼14:00
演者:花澤 康司
加藤 雄一
高野 誠
長谷川 智明
Oral Session 1
座長:四倉 昭彦
14:00
14:00∼14:30
ミニシンポジウム『Lead Durability』
座長:合屋 雅彦
15:00
15:00∼16:00
演者:黒瀬 潤
佐々木 健人
三好 章仁
中村 誠之
Oral Session 2
座長:加藤 律史
16:00
16:00∼17:00
演者:芝田
荷見
野中
岡田
Oral Session 3
座長:成田 裕司
17:00
匡史
映理子
利通
修一
17:00∼18:00
演者:西井 伸洋
庄田 守男
Nigel Lever
How to Session 2
座長:新田 隆
18:00
演者:渡辺 敬太
中島 博
18:00∼
閉会の辞
18:15∼
懇親会 会場:多目的ホール
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参加者へのご案内
1. 参加登録
• 受付場所:コクヨホール
• 参加費:5,000円
2. 懇親会
• 会 場:多目的ホール (コクヨホール隣の部屋)
• 時 間:18時15分より
• 参加費:研究会参加者は無料
演者・座長へのご案内
1. 口演時間
• 発表時間 . . . . . . . 教育セッション (15分)
How to Session (20分)
ミニシンポジウム (10分)
一般演題:Oral Session (各8分発表・7分討論)
• PCスライド発表について
1) PCスライドによる発表を行っていただきます。
2) 進行は座長によって行います。発表者は座長の指示に従って下さい。
2. 発表形式
PCプレゼンテーション (1面)・Power Pointのみでの講演となります。
スライドフィルム、VHS等のビデオは使用できません。
ご自身のパソコンもしくは、メディア (USBメモリー、CD-R) をご持参ください。
3. 受付
演者は、発表セッション開始30分前までにPC受付 (ホールホワイエ) にお越しください。
PC本体持込みの場合も、動作確認のため、必ずお立ち寄りください。
4. 発表機材とデータの作成
❑ メディアを持参される方へ
1) 受付可能なメディア:USBメモリー、CD-Rのみです。
2) OSについて:Windows7に対応しています。
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3) 対応可能なPower Pointのバージョンについて:Microsoft PowerPoint 2010、2013、解像度XGA
(1024 x 768) をご用意します。
4) Macintoshで作成されたファイルは上記環境で動作確認済みのファイルをお持ちください。また、
動画・Macintosh の場合は、念のためご自身の PC をお持ち込みください。詳細については以下の
「PCを持ち込まれる方へ」をご参照ください。
5) 混雑時にはご発表時間順に対応させていただきますので、ご了承ください。
6) 持ち込まれるメディアには、ファイル名を「演題番号・氏名」として保存願います。
(例:P-1 東京 太郎) また当日の発表データ以外入れないようにしてください。
7) メディアを介したウィルス感染の事例があります。最新のウィルス対策ソフトで事前にチェックし
ておいてください。
8) フォントはOS標準フォントのみ使用可能です。
❑ PC本体を持ち込まれる場合
1) Macintoshをご使用の場合、動画をご使用の際は、念のためPC本体をお持ちください。
2) お持ち込みが可能な機種は、Windows Vista以降が動作する機種またはMacintoshで、モニター出
力端子がミニD-sub15ピンコネクターが装備されているものに限ります。変換コネクターが必要な
場合は、ご自身でお持ちください。
※薄型PCでは出力端子の規格が異なる場合がございます (HDMIなど)。
3) 電源アダプターを必ずご持参ください。
4) スクリーンセーバーや省電力設定は事前に解除してください。
5) 念のためバックアップデータとして、USBデータまたはCD-Rデータを必ずお持ちください。
6) 演者はPC受付にて動作確認後、発表セッション開始30分前までに会場内のPCオペレーター席にPC
本体をお持ちください。
7) スムーズな進行のために、PowerPointの「発表ツール」のご使用はできません。
8) 発表終了後、PCオペレーター席でPCをお受け取りください。
5. 発表方法
1) 前の発表が始まりましたら、会場左手前方の次演者席にご着席ください。
2) 発表は、演台上にセットされておりますモニター・マウスを使用し、ご自身で操作してください。
6. 進⾏
演者は発表セッションのご発表の15分前までに、口演会場内の次演者席付近にお越しください。
座長は担当セッション開始10分前までに次座長席にご着席ください。
座長は、開始の合図が入り次第登壇し、セッションを開始してください。
発表・討論を含めて、時間内に終了するようにご協力ください。
7. 討論
討論者は、予め会場内のマイクの近くでお待ちください。
所属・氏名を述べたのち、簡潔にご発言ください。
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プログラム
2016年 1 月 23 日㊏ 於:コクヨホール
開会の辞
9:25∼9:30
教育セッション
座長: 中里 祐二
9:30 ∼11:00
順天堂大学医学部附属浦安病院 循環器内科
1. リード抜去法の ABC
○合屋 雅彦
東京医科歯科大学 不整脈センター
2. リード抜去術前の準備
○関口 幸夫
筑波大学医学医療系 循環器内科
3. 術前検査
○岡本 陽地、尾﨑 正知、吉野 充、大橋 範之、田坂 浩嗣、藤井 理樹、門田 一繁
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 循環器内科
4. 麻酔科医によるリード抜去中の経食道心エコー
○清野 雄介
東京女子医科大学 麻酔科学教室
5. 感染デバイス処理に対する外科医の Tips & Tricks
○今井 克彦
広島大学病院 心臓血管外科
6. 開胸 / 開心リード抜去手術
○大森 裕也、宮城 泰雄、坂本 俊一郎、新田 隆
日本医科大学 心臓血管外科
How to Session 1
座長: 松本 万夫
11:00∼12:00
東松山医師会病院 院長
1. リード抜去術における断端処理の方法
○和田 暢、岡村 英夫、草野 研吾
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 不整脈科
2. メカニカルシースによる抜去
○永島 道雄
小倉記念病院 循環器内科
3. レーザーシース抜去の tips&tricks
○山田 貴之、加藤 薫貴、寺杣 晋彦、長谷川 隆夫
高石藤井心臓血管病院
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ランチョンセミナー
座長: 庄田 守男
12:00∼ 13:00
東京女子医科大学 循環器内科
共催: Cook Japan株式会社
Techniques and the Tool Kit for Lead Extraction
○Nigel Lever
Director Heart Rhythm Section Green Lane Cardiovascular Services Auckland Hospital
Senior Lecturer Department of Medicine University of Auckland, New Zealand
Oral Session 1
座長: 四倉 昭彦
13:00∼ 14:00
北光記念病院 循環器内科
1. タインドリード(Passive fixation; Pass-fix)とスクリューインリード(Active-fixation; Act-fix)
使用後での高感度トロポニンT(hsTnT)の変化に関する比較
−多施設ランダム化研究(The PACMAN-Study)
○Koji Hanazawa1),Kazuaki Kaitani2),Patrick Blazek3),Boris Starčević4),Jerko Ferri-Čertić5),
Verena Semmler3),Carsten Lennerz3),Martin Karch6),Christian Grebmer3),Hrvoje Vražić4),
Christof Kolb3)
1)Japanese Red Cross Society Wakayama Medical Center,2)the Departments of Cardiology of the Tenri Hospital, Tenri, Japan,
3)German Heart Centre Munich, Munich, Germany,4)University Hospital Dubrava, Zagreb, Croatia,
5)General Hospital Dubrovnik, Dubrovnik, Zagreb,6)Klinikum Ostallgäu, Kempten, Germany
2. ICD デバイス感染後にS-ICD植込みを検討しているステロイド長期投与患者の一例
○加藤 雄一、西井 伸洋、津島 翔、三好 章仁、橘 元見、杉山 弘恭、中川 晃志、渡邊 敦之、森田 宏、
中村 一文、伊藤 浩
岡山大学病院 循環器内科
3. 心室頻拍へのショック不成功に対して、皮下コイルリードを追加し、除細動閾値を軽減した
虚血性心筋症の 1例
○高野 誠1)、原田 智雄1)、中島 育太郎1)、山田 麻理可1)、古川 俊行1)、松本 直樹2)、明石 嘉浩1)
1)聖マリアンナ医科大学病院 循環器内科、2)聖マリアンナ医科大学 薬理学
4. Class I のシステム抜去適応があるものの、抜去リスクを考慮し手技を断念した1症例
○長谷川 智明、関口 幸夫、山上 文、篠田 康俊、黒木 健志、野上 昭彦、青沼 和隆
筑波大学医学医療系 循環器内科
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ミニシンポジウム『Lead Durability』
座長: 合屋 雅彦
14:00∼14:30
東京医科歯科大学 循環器内科
1. 当院における Riataリードの長期成績
○渡辺 敬太1)、新田 順一1)、岩崎 司1)、林 洋介1)、平尾 龍彦1)、稲村 幸洋1)、鈴木 雅仁1)、
加藤 信孝1)、根木 謙1)、佐藤 明1)、大和 恒博1)、松村 穣1)、淺川 喜裕1)、合屋 雅彦2)、平尾 見三2)
1)さいたま赤十字病院 循環器科、2)東京医科歯科大学医学部附属病院 不整脈センター
2. ICD リードの耐久性
○中島 博
日本デバイス治療研究所(J-RIDT)
Oral Session 2
座長: 加藤 律史
15:00∼16:00
埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科
1. レーザーシースを用いた感染リード抜去術 −当院での初期5 例の効果と安全性の検証−
○黒瀬 潤、福沢 公二、木内 邦彦、松本 晃典、小西 弘樹、市堀 博俊、今田 宙志、兵庫 聖大、
平田 健一
神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科分野 不整脈先端治療学部門
2. エキシマレーザーシースによるリード抜去術において開心術時の切開・縫合部位が
心タンポナーデ発症と関連し、開胸下心房修復術を要したペースメーカ感染の一例
○佐々木 健人1)、中村 紘規1)、内藤 滋人1)、鈴木 菜穂子1)、大塚 佳満1)、沓澤 大輔1)、清水 学1)、
山口 由明1)、千賀 通晴1)、矢野 利明1)、武 寛1)、南 健太郎1)、菅井 義尚1)、熊谷 浩司1)、大島 茂1)、
岡田 修一2)、江連 雅彦2)、金子 達夫2)
1)群馬県立心臓血管センター 循環器内科、2)群馬県立心臓血管センター 心臓血管外科
3. 当院でデバイス全抜去困難であったデバイス感染の 3 例
○三好 章仁1)、西井 伸洋1)、加藤 雄一1)、津島 翔1)、橘 元見1)、杉山 弘恭1)、中川 晃志1)、渡邊 敦之1)、
森田 宏1)、中村 一文1)、伊藤 浩1)、増田 善逸2)、笠原 真悟2)、佐野 俊二2)
1)岡山大学病院 循環器内科、2)岡山大学病院 心臓血管外科
4. レーザーシースを用いたリード抜去時に上大静脈穿孔を合併するも救命に成功した 1 例
○中村 誠之1)、吉田 幸彦1)、鈴木 博彦1)、宮澤 宏幸1)、伊藤 歩1)、田邊 すばる1)、長坂 遼1)、
渡邊 諒1)、森 悠1)、前田 眞勇輔1)、青山 豊1)、小椋 康弘1)、神谷 宏樹1)、七里 守1)、平山 治雄1)、
宗像 寿祥2)、田中 啓介2)、加藤 亙2)、田嶋 一喜2)
1)名古屋第二赤十字病院 循環器内科、2)名古屋第二赤十字病院 心臓血管外科
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Oral Session 3
座長: 成田 裕司
16:00∼ 17:00
名古屋大学大学院 医学系研究科 心臓外科学
1. CRT 依存の低左心機能症例に対し感染リード抜去後に開胸下心外膜リード縫着を施行した
1例
○芝田 匡史、坂本 俊一郎、宮城 泰雄、大森 裕也、新田 隆
日本医科大学 心臓血管外科
2. 当院での心移植におけるエキシマレーザーシースを用いた遺残リード抜去
○荷見 映理子、藤生 克仁、小島 敏弥、福馬 伸章、松原 巧、清水 悠、小室 一成
東京大学医学部附属病院 循環器内科
3. 人工心肺下に弁修復術を併設した感染リード抜去の手術報告
○野中 利通、大沢 拓哉、大塚 良平、小坂井 基史、野田 怜、櫻井 寛久、櫻井 一
JCHO中京病院 心臓血管外科
4. エキシマレーザーリード抜去術導入後の外科的リード抜去
○岡田 修一1)、金子 達夫1)、江連 雅彦1)、長谷川 豊1)、小此木 修一1)、小前 兵衛1)、桐谷 ゆり子1)、
内藤 滋人2)、熊谷 浩司2)、菅井 義尚2)、中村 絋規2)、佐々木 健人2)、南 健太郎2)
1)群馬県立心臓血管センター 心臓血管外科、2)群馬県立心臓血管センター 循環器内科
How to Session 2
座長: 新田 隆
17:00∼ 18:00
日本医科大学付属病院 心臓血管外科
1. スネアリング・テクニック
○西井 伸洋
岡山大学 循環器内科
2. 頚静脈アプローチ
○庄田 守男
東京女子医科大学 循環器内科
3. Usefulness of Evolution
○Nigel Lever
Director Heart Rhythm Section Green Lane Cardiovascular Services Auckland Hospital
Senior Lecturer Department of Medicine University of Auckland, New Zealand
閉会の辞
18:00 ∼
10
教育セッション【1】
リード抜去法のABC
○合屋 雅彦
東京医科歯科大学 不整脈センター
心臓リズム植え込みデバイスの留置症例数の増加、留置年数の増加とともに感染、血管閉塞、リード不全、
upgrade 目的等様々な理由によりリード抜去を必要とする症例が増加している。本邦では 2009 年からエキ
シマレーザーが使用可能となっていたが2015年からはCook社製のデバイスも使用可能となった。
しかし日常臨床においては本来抜去術のクラス I 適応であるデバイス感染症においてもいまだ不適切な治
療がなされている症例が散見される。本邦におけるリード抜去術はいまだ十分に普及、発展しているとはい
いがたいのが現状である。
今後は非感染症例に対する適応が拡大していくと考えられリード抜去術の重要性は高まることが予測さ
れる。
本セッションではリード抜去とはなにか、その適応、手技の内容に関し述べる。
11
教育セッション【2】
リード抜去術前の準備
○関口 幸夫
筑波大学医学医療系 循環器内科
ペースメーカならびに植込み型除細動器 (Implantable cardioverter-defibrillator; ICD) 等によるデバイ
ス治療は世界中に普及し患者の多くの生命を救っている。しかしながら、その一方で、この治療の重篤な合
併症であるデバイス感染が約1−2%の頻度で報告されており、我々が最も注意すべき合併症のひとつといえ
るであろう。
デバイス感染に対する治療の基本は、抗菌薬投与、汚染されたデバイス除去、汚染組織のデブリドマン、
そして新たなデバイスの再植込みである。つまり、デバイス感染が生じた場合には、すみやかに完全なデバ
イスシステム抜去を行う必要がある。デバイスは体外に露出しているものの感染に伴う炎症所見がないとい
うような症例でもすでに感染を起こし全身性の感染へと移行していくことが報告されており、2009 年に米
国不整脈学会から発表された Expert Consensus においても、感染症症例の経皮的リード抜去適応について
デバイスに起因する感染性心内膜炎、敗血症、持続的なグラム陽性球菌菌血症と同様にポケット感染に関し
てもクラスI適応となっている。
近年、我が国でもエキシマレーザーを用いた経静脈的リード摘出術が可能となり感染症例数の増加ととも
に手術件数も増加している。リード留置期間が 1 年未満などの短い場合には経皮的に用手牽引することで抜
去が可能なことがあるが、年月が経つにつれて、リードと血管壁またはリード同士の癒着が進行し用手牽引
のみでは抜去が困難となり同時に癒着箇所も増加していく。この癒着を剥離するのに役立つのがエキシマ
レーザーシステムである。海外の多施設研究データでは完全抜去成功率が 96.5% と非常に優れた結果が報告
された。その反面、死亡をはじめとする重篤な合併症も頻度は決して高くないものの報告されている。
このセッションでは、リード抜去に際して、より安全にかつ高い成功率で手技を行うことを目標にどのよ
うに術前準備を行っていくべきか自験例をふまえて考えてみたい。
12
教育セッション【3】
術前検査
○岡本 陽地、尾﨑 正知、吉野 充、大橋 範之、田坂 浩嗣、藤井 理樹、門田 一繁
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 循環器内科
今日リード抜去は本邦においても徐々に広く行われてきており、感染患者やリード不全症例に対して確固
たる根治的治療として知られるようになった。しかしながらリード抜去の手技自体は致死的な合併症リスク
を潜在的に内包しており、手技にあたっては十分に注意をして行なければならない。
術前検査では患者自体の情報、デバイスシステムの情報の両方を十分得て手技に望むべきである。
まず患者の情報としては一般的な開心手術前の腎機能、全血を含む採血項目、心機能、呼吸機能、合併疾
患、開心術の既往、デバイス適応疾患、ペーシング依存かどうかなどの把握は言うまでもなく認識しておか
なければならない。合併症や多面的アプローチの可能性を考えあらゆる静脈アクセスの確認、緊急時の
PCPSや IABP のルート確保に必要な動静脈の閉塞の有無などを確認するのに画像検査は非常に重要である。
経食道心エコーはリード関連心内膜炎の合併、卵円孔などの先天性心疾患がないか、疣贅の大きさやリード
の癒着の程度もみることができる。しかしながら経食道心エコーでも上大静脈や無名静脈は描出することが
困難である。近年 3D 構築 CT は非常に画像分解能がよく、コイルや先端チップなどの金属部分で一部ハレー
ションを認めるが概ねリードの走行をたどっていくことができる。前後方向へのリードのたわみや癒着の程
度も推察することができ、リード留置部位を確認することができる。特にリード先端が心筋を穿孔して留置
されている場合もあり、抜去後の心タンポナーデ発症の予想にもつながる。
次にシステムの情報としては本体およびリードの種類、遺残リードの有無、留置経路、植え込み年数、そ
れぞれの適応レーザーシース径、リード構造などを把握して手技に望むべきである。
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教育セッション【4】
麻酔科医によるリード抜去中の経食道心エコー
○清野 雄介
東京女子医科大学 麻酔科学教室
リード抜去中の画像モダリティとして透視に加えて心エコーを用いることが望ましいとされており,経胸
壁心エコー (TTE) や経食道心エコー (TEE) が汎用されている。TEEは基本的に全身麻酔・気管挿管が必要
にはなるが,術野に干渉することなく継続的なモニタリングが可能であり情報量も多い。TTEと比較すると
TEEの侵襲度は高いため合併症の発生が懸念されるが,注意深く愛護的な操作でTEEによる合併症の多くは
回避が可能である。心臓外科手術においてTEEが安全に使用され,大きな役割を果たしていることを考えれ
ば,リード抜去においてもTEEの有用性は高いと思われる。
リード抜去中における経食道心エコー (TEE) の役割は,主に心機能評価,病変の評価,リード抜去による
合併症の早期発見である。
1) 心機能評価
リード抜去が適応となる患者では心機能低下や弁疾患が併存していることは珍しくない。TEE で左室や
右室機能,弁機能の評価を行い,循環管理の参考にする。特に三尖弁はリードが通過している場合に三尖弁
逆流をきたしていることがあり,リード抜去の前後での比較のために評価しておく。循環動態が変動する場
合には原因検索にTEEが有用である。
2) 病変の評価
リード抜去の主な適応が心内膜炎であるためにリードに疣贅が付着している症例は多い。リードに付着す
る疣贅の大きさや部位,形態の評価は治療方針の変更につながることもあるので重要である。リード抜去後
の残存疣贅も塞栓症の原因となり得るため,術前と同様に評価する。
3) リード抜去による合併症の早期発見
リード抜去中の合併症としては心臓の損傷,心タンポナーデ,上大静脈や無名静脈などの血管の損傷,肺
塞栓,弁の損傷が挙げられる。これらの合併症の発生頻度は2-4.5%と報告されており頻度が高いとは言えな
いが,いったん発症した際には致命的な結果を招くこともある。TEEによって合併症を早期に発見し迅速に
対処する必要がある。
手技中の循環変動の原因の多くはリードの牽引や麻酔薬による血管拡張,出血による循環血液量減少など
であるが,右室や血管の損傷による心タンポナーデが循環変動の原因となることもある。心タンポナーデを
来すと循環虚脱につながるため,血圧低下が起きた場合やリードが抜去された時に,TEEで心嚢液の有無や
増減を確認する。
TEE をリード抜去中に使用することで臨床的に重要な情報をリアルタイムで得ることができる。TEE か
ら得られた情報によってより効果的で安全にリード抜去を行い,合併症を迅速に診断し介入することが可能
となる。
14
教育セッション【5】
感染デバイス処理に対する外科医のTips & Tricks
○今井 克彦
広島大学病院 心臓血管外科
デバイスの抜去手技は,様々なデバイストラブルシューティングの内の「システム全抜去」の一部である
が,システム全抜去のうちリード抜去以外の部分は「ポケット関連操作」である.現在,多くの場合の抜去
手技は内科医が行うことが主流であるが,ポケット摘出操作やデブリードメント,静脈アクセス部位の剥離
などは外科医が担当する場合も多い.これらの外科パートを担うのは,多くの施設では「心臓外科医」では
なく,
「皮膚科医」や「形成外科医」である.特にエキシマレーザーシースを用いた抜去の場合,心臓外科
医の臨場は必須となっているが,心臓外科医はあくまで主に心血管損傷時の対応である「開胸」や「人工心
肺」のために待機していることがほとんどであるため,ポケット摘出操作に関与しないことも多い.
一方,デバイス感染は,デバイストラブルの内でも頻度も高く,また,臨床的には重要度の高いものであ
る.電子デバイス以外の人工物感染にも,循環器診療ではしばしば遭遇するが,人工弁や人工血管の感染へ
の対応は通常心臓外科医が行うことが多く,そのノウハウも蓄積されている.人工物感染の難しさは,人工
物除去 ( 手術 ) と,その人工物の患者への必要性,再度同様の人工物を体内に植え込む際 ( 手術 ) に,感染や
その他の問題をどう解決しながら行ってゆくか,などの戦略を総合的に立てなくてはならないところにある
と考えられる.
現在世界的に見て,システム全抜去手技の全てを単一診療科,単一術者で行っている施設は少ない.当科
では,心臓外科医が skin to skin でシステム全抜去手技を行っている.また,術前入院から治療計画,再デ
バイス植込みについても単一診療科で行っている.この観点から,人工物感染患者の管理と,手術について
は特にポケット操作についての気づき症例を通して共有し,各施設のチーム内で活かして戴きたい.
15
教育セッション【6】
開胸/開心リード抜去手術
○大森 裕也、宮城 泰雄、坂本 俊一郎、新田 隆
日本医科大学 心臓血管外科
近年、エキシマレーザーをはじめとするリード抜去デバイスの発達により、経静脈的・経皮的リード抜去
術が盛んに行われている。従来、開胸あるいは開心術でなければ抜去不能であったリードが、様々なデバイ
スとテクニックを駆使することにより経皮的抜去が可能になったことは、リード抜去を必要とする患者に
とっては福音であろう。しかしながら、依然として開胸・開心術を必要とする症例は少なからず存在し、そ
の適応の見極めは極めて重要である。ではどういった症例が開胸・開心術の適応となるのだろうか。リード
断端把持困難や超長期間留置リードなど経皮的抜去が困難な場合のみならず、リード抜去自体は容易でも巨
大vegetationの付着などのために開心術が選択される場合もある。現在のところ本邦において、開胸・開心
術によるリード抜去の明確なガイドラインはなく、各施設・各症例の状況に応じて判断されているのが現状
である。
開胸・開心術によるリード抜去の利点として、直達視野が得られるということ、弁形成や心外膜リード縫
着などの併施手術が可能であるということ、安定した血行動態が得られることなどが挙げられる。欠点とし
ては、手技が侵襲的であり合併症のリスクが高まること、ヘパリン化による危機的出血を助長する恐れがあ
ることなどが考えられる。開胸によるリード抜去を選択する場合は、こうした利点・欠点を十分に検証する
必要がある。
今回、開胸・開心術によるリード抜去術の適応と考えられる様々なケースを検討し、実際の開胸・開心術
の際のポイントや、術中の順行性あるいは逆行性エキシマレーザー併用にも触れ理解を深めることで適応決
定の一助としたい。
16
How to Session 1【1】
リード抜去術における断端処理の方法
○和田 暢、岡村 英夫、草野 研吾
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 不整脈科
リード抜去術において、断端処理は手技全体の成否を左右する重要な要素である。リード断端処理には以
下の手順がある。
(1) ルーメンの確認とスクリューの格納
ストレートスタイレットを用いて、インナーコイルルーメンの通過性を確認する。スクリューインリード
の場合は、可能な限りアンスクリューを試みる。スタイレットが抜けなくなってしまった場合は、そのまま
ロッキングデバイスとして使用する。
(2) コネクターの切断とリードロッキングデバイス (LLD) の挿入
LLD をルーメンに挿入する前にコネクターを切断する必要がある。その際、ルーメンが潰れてしまうと
LLDが挿入不能になる。既に切断されているなど、リードが極端に短い場合はLLDが挿入不能となり手技の
難易度が増す。リードの切断、把持、ルーメンを広げるといった各種操作のために作られた専用デバイスも
使用可能である。LLDは透視を見ながら可能な限り遠位側まで挿入する。
(3) ICDリードの場合のケーブル導線露出と結紮
同軸構造でないICDリード等を抜去する際に、LLDで固定されていないケーブル導線がたわんで段差がで
きてしまい、シースが進まなくなる事がある。ケーブルを露出させて縫合糸とまとめて結紮することによっ
て牽引が可能となる。Cook 社のリードエクステンダー (Bulldog) をケーブルに固定すると簡便かつ強力に
牽引することができる。
(4) 絶縁体の結紮、固定
LLD 挿入後、近位端の外側絶縁体を結紮もしくは Cook 社のコンプレッションコイル (One-Tie) の巻き付
けによって、LLDに圧着させる。結紮する場合は2-0や0の編み糸を用いる。太すぎる糸の使用や大きすぎる
ノットを作ってしまうと、シースが通過不能となる場合がある。ルーメンのないリードを抜去する場合や、
LLD が通過不能な場合は、絶縁体や導線に結紮した糸を牽引する方法がある。Bulldog でコイル導線を把持
して牽引する方法は、糸の断裂やコイルの伸長・断裂を防ぐ上で有用である。
(5) 導線やLLDが断裂した場合の対処
癒着の強いリードを抜去する際に牽引する力が強くなってしまい、糸の断裂、LLDの抜け・断裂、コイル
の伸長・断裂が起こる事がある。その場合、断端処理をやり直す。糸やフィッシュテープ、Bulldog 等を用
いて、残った導線および絶縁体を再度牽引できるようにするための工夫が必要となる。
17
How to Session 1【2】
メカニカルシースによる抜去
○永島 道雄
小倉記念病院 循環器内科
徐脈性不整脈治療に対しペースメーカが使用可能となり約40年が経過した。
さらに近年では植え込み型除細動器、心不全に対する両室ペーシング治療も導入され、デバイスを留置さ
れた患者数は増加している。それに伴い留置部の感染、心内膜炎の合併、不具合リード等によりリードの抜
去を要する症例も増加している。
2009 年より本邦でも Excimer laser system (ELS) が使用可能となり、経静脈的リード抜去例に使用して
いる。ELSは留置年数が経過し、癒着した組織の剥離に非常に有用なツールであり、現在の経静脈的リード
抜去の主体となっている。しかしながら、ELSのみでは抜去できない症例も少なからず存在し、他のツール
の導入が必要と考えられていた。2015年4月より、メカニカルシースが本邦でも使用可能となった。メカニ
カルシースを用いたリード抜去の歴史は本邦では浅く、使用経験などを共有することで、適切な使用方法、
合併症の回避につながると考えられる。そこで今回、このセッションでは、メカニカルシースの使用方法、
注意点などについて考えていきたい。
18
How to Session 1【3】
レーザーシース抜去のtips&tricks
○山田 貴之、加藤 薫貴、寺杣 晋彦、長谷川 隆夫
高石藤井心臓血管病院
デバイス感染症や不具合リードに対する治療のひとつとしてリード抜去術があるが、現在本邦でのリード
抜去術の主流は、レーザーシースを用いた経皮的リード抜去術である。レーザーシースは、本邦において欧
米よりも約 10 年遅れて 2010 年より保険償還となっており、その適応や手技が徐々に広まっている段階であ
るが、構造としてはシース構造の先端にエキシマレーザーを照射する機能がついており、血管内や心腔内で
のリードの癒着組織をに対してレーザーを照射し、蒸散させてリードを癒着組織から剥ぐため、通常のシー
スを用いるより、比較的容易にリードの剥離、抜去が可能である反面、リードの癒着は血管壁に接している
部位に発生することから、レーザーによるリード周囲の血管壁や心臓壁に対するinjuryが発生する可能性も
あり、その使用、操作には細心の注意が必要である。とくに上大静脈や鎖骨下静脈合流部での血管壁損傷は
その程度によって、血胸などの大量出血を招き、重大な合併症を引き起こすことがあり、致命傷になる可能
性もある。また心臓壁での損傷は、場合によっては心タンポナーデを合併し、血行動態の破綻にもなり得る
ため、レーザーシースによる経皮的リード抜去術は心臓血管外科などのバックアップ体制をとり合併症対策
を十分に行ったうえで、丁寧なシース操作が求められる。そして抜去するリードはその種類や年数、臨床経
過によって抜去時の注意点が異なるため、様々なリードの構造や特性にも精通する必要がある。また基本的
に経皮的リード抜去術は 2 つと同じ症例がないため、安定した技術の習得にはある程度の症例数が必要では
あるが、本セッションにおいてはレーザーシース抜去の tips&tricks を症例を交えて presentationとするが、
その中から少しでも明日からの臨床に役立ててもらえれば幸いである。
19
How to Session 2【1】
スネアリング・テクニック
○西井 伸洋
岡山大学 循環器内科
リード抜去は、エキシマレーザーシースの出現により、治療成績が向上している。しかしながら、症例に
よっては他の方法を選択しなくてはいけない場合もあり、それぞれに精通している必要がある。リード挿入
部位からのアプローチだけではなく、下大静脈アプローチや内頚静脈アプローチも重要な選択肢の一つであ
る。この手技をする際には、何らかのデバイスを用いてリードを確保する必要がある。主にはスネアを用い
てリードを把持するが、様々な種類が存在する。グースネックスネア (ev3)、エンスネア (Merit Medical
System)、ニードルアイスネア (COOK Medical) がある。
グースネックスネアは輪投げ形式であり、リードの先端が心筋から離れている場合に主に使用される。輪
のサイズにより6種類存在するが、主には 15mm、25mm が使用される (当院ではほぼ15mm)。大きい径の
スネアのほうが、より広い範囲を捕捉できると思われがちだが、あまり径が大きいと血管内、あるいは心内
でつっかえてしまい、十分なコントロールができない場合がある。下大静脈からリードを把持する場合に、
リード先端が右房内にあるとつかみにくく、下大静脈や上大静脈内でリードの把持を試みた方が、リードを
把持できる確率が高くなる。リードが静脈壁に沿っているとスネアで把持しづらく、血管内に浮いている状
況のほうがつかみやすい。スネアのみではなく、リードも同時に操作すると把持できる確率が高くなる。ス
ネア自体の回転でリードを把持しづらい場合は、外筒を少しシェイピングして ( 元々ある程度湾曲している
が ) 操作することで、スネアが届く範囲が広がる。また、一方向からの透視のみでは、リードとスネアの関
係を把握するのが難しいため、時々角度を振って確認すると実際の関係がよりはっきりする。Bongiorni 法
を用いる場合は、内頚静脈からリードの先端を把持すると8Fなどのシース内に引き込めるが、ぎりぎりの先
端を把持するのはやや難しいテクニックである。
エンスネアも同様にリードの先端が心筋から離れている場合に把持するスネアの一種である。こちらもサ
イズの違いで5種類使用できる。3つの輪があるため、どこかの輪にリードが通ればリードを把持できる。
ニードルアイスネアは、リードの先端が外れていなくても横から把持できるスネアである。こちらは、サ
イズの違いで 2 種類使用できる。鍵状の部分と曲線の部分でリードを横から把持できる。スネア自体がやや
堅いため、心内や血管内での操作に注意を要する。
いずれにしてもそれぞれに精通することで、手技の幅が広がり、成功率の上昇、手技時間の短縮につなが
ると考えられる。
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How to Session 2【2】
頚静脈アプローチ
○庄田 守男
東京女子医科大学 循環器内科
経皮的リード抜去手術の基本はリード・エントリーサイトからの抜去である。左鎖骨下静脈よりリードが
挿入されている場合には左前胸部の皮膚を切開し、ここから抜去する。ところがリード断端が静脈や心内腔
に脱落している場合にはどこかの静脈からスネアを挿入してリードを補足しなければならず、頚静脈や大腿
静脈が使用されることがある。また、リード石灰化などで腕頭静脈や上大静脈との癒着が強固で有る場合に
は、リード断端をわざと心血管内に脱落させて石灰化癒着組織を避けるような形でリード抜去用デバイスを
挿入することがある。このように、リード・エントリーサイト以外の血管からリード抜去を行う方法は一般
的ではないが、抜去困難例に対する方策として重要なテクニックである。このセッションでは、通常の方法
では抜去困難であった症例を提示し、内頚静脈アプローチ法による抜去の how to、さらにその技術の tips
and tricksを説明する。
21
How to Session 2【3】
Usefulness of Evolution
○Nigel Lever
Director Heart Rhythm Section Green Lane Cardiovascular Services Auckland Hospital
Senior Lecturer Department of Medicine University of Auckland, New Zealand
Transfemoral extraction techniques are important for an extraction operator to have available.
For some situations it is the primary approach, and in others, as an adjunct or a bail out if the
superior approach has failed. Different uses of the femoral techniques are discussed highlighting the
importance of this approach.
22
ミニシンポジウム『Lead Durability』
【1】
当院におけるRiataリードの長期成績
○渡辺 敬太1)、新田 順一1)、岩崎 司1)、林 洋介1)、平尾 龍彦1)、稲村 幸洋1)、
鈴木 雅仁1)、加藤 信孝1)、根木 謙1)、佐藤 明1)、大和 恒博1)、松村 穣1)、
淺川 喜裕1)、合屋 雅彦2)、平尾 見三2)
1)さいたま赤十字病院 循環器科、
2)東京医科歯科大学医学部附属病院 不整脈センター
【背景】St. Jude Medical社製のRiataリードは過去に多く使用されていたが、リード線露出の問題が報告さ
れており、より慎重な経過観察が必要である。
【方法】当院において、2005年12月から2008年8月までにSt. Jude Medical社製のRiata 1580/ Riata 1581/
Riata ST Optim 7021 リードを使用した連続 38 例について後ろ向きに調査した。今回はリード損傷の発生
率、内容、またリード抜去の安全性について検討を行った。
【結果】リード埋め込み時の平均年齢は60歳 (±13.6歳)、男性36人 (94.7%)、観察期間中央値7.1年 (四分位値
5.2-7.7年) であった。
明らかなリード損傷は 3 例 (7.9%) に認められ、各々リード線露出、断線による誤作動、ノイズの発生が
1例ずつであった。リードの明らかな損傷以外に、3例において閾値上昇を認めた。
38例中11例にてリード抜去を施行し、明らかなリード損傷の3例、閾値上昇の2例、感染により1例、また
リード損傷は認めなかったが本人の希望のあった 5 例についてもジェネレーター交換時にリード抜去を行っ
た。これら全例においてリード抜去時、抜去後に重大な合併症は認めなかった。
【考察】当院においては、38例中3例において、明らかなリード損傷が認められた。また11例に対してリード
抜去を施行したが、重大な合併症は認めなかった。
23
ミニシンポジウム『Lead Durability』【2】
ICDリードの耐久性
○中島 博
日本デバイス治療研究所(J-RIDT)
ICDリードの耐久性は未知であると言ってよい。その理由はICDリードの構造にある。ICDリードの基本
構造は導線と被覆であるが、低電圧ペーシング導線と高電圧除細動導線が同じリードの中に混在する特徴が
ある。さらに multi lumen 構造 (MLS) の耐久性自体も未知である。そこで ICD リードの耐久性は導線ある
いは被覆のみならず、リード構造も考える必要がある。
ICDリードは今世紀の幕開けとともに一斉にMLSへと変化した。その理由はstraight conductorの採用で
ある。MLS は tip 電極に繋がるスタイレットルーメンを持ったコイル導線の周囲に straight conductor が配
置される構造である。この構造では除細動導線をコイルにする必要がなく、除細動動線はさらに低抵抗化が
可能である。そしてこの構造の最大の利点は、経静脈リードの宿命とも言える細口径化を可能とした事であ
る。残念なことにICDリードの不具合はその細口径化と共にもたらされた。Sprint fidelis (Medtronic) の不
具合は Composite 導線の filer を細くした事である。一方、Riata (St. Jude Medical) の不具合は、細口径化
に伴って薄くなった外側被覆のシリコーン耐久性が原因とされている。Riata は断面を見るとシンメトリー
な構造を持っているが、同様の構造を有するリードにLinox (Biotronik) とIsoline (Sorin) がある。Linoxは
Riata と酷似した導線露出が報告されている。Isoline (Sorin) の不具合はシンメトリー構造の問題をよく説
明している。Isolineは、RVコイル導線がコイル近位端と遠位端の2カ所に溶着されている。この部位はリー
ドの中で屈曲を強いられる可能性のある部位であるが、Isolineは、RVコイル下のRV導線にETFE被覆を持
たない構造である。この導線が外側被覆を磨耗してコイルに 断続的に接触。integral bipolarのIsolineは導
線とコイルの接触ノイズとなり不適切作動した。果たして断面がシンメトリーであるという構造は、耐久性
に有利であろうか?
リードの耐久性は各社が提供するリードパフォーマンスレポートで論じられる。しかし、集計方法やサン
プル数が異なるため、それぞれのデータを単純に比較はできない。前向きレジストリは信頼性の高いデータ
を提供しているが、限られたモデルで実施されているに過ぎず、その規模もまちまちである。
ここまでは受け身の立場で述べてきたICDリードの耐久性であるが、より積極的にICDリードの耐久性を
高める方法は無いであろうか?それは、心拍動による天文学的回数の反復ストレスを受けにくい留置を心が
ける事ではないだろうか。
24
ランチョンセミナー
Techniques and the Tool Kit for Lead Extraction
○Nigel Lever
Director Heart Rhythm Section Green Lane Cardiovascular Services Auckland Hospital
Senior Lecturer Department of Medicine University of Auckland, New Zealand
This discussion covers themes in lead extraction from the varying strategies, techniques, and
tools used for lead extraction.
Lead extraction has evolved as infections, lead failures and vascular access issues have declared
themselves as significant problems for transvenous implanted devices. With the aging population and
increasing patient longevity, survival with implanted devices also continues to increase.
With
generator replacements an important risk for infection and the need to replace failed leads, there is an
increasing need for lead extraction. Adding to the burden of such procedures is the age of the patient
requiring extraction, the longevity of pacing and the complexity of their comorbidities that impacts on
the management approaches required. An example of a way to establish a service for extraction work
is discussed.
25
Oral Session 1【1】
タインドリード(Passive fixation; Pass-fix)とスクリューインリード
(Active-fixation; Act-fix)使用後での高感度トロポニンT(hsTnT)の
変化に関する比較 −多施設ランダム化研究(The PACMAN-Study)
○Koji Hanazawa1),Kazuaki Kaitani2),Patrick Blazek3),Boris Starčević4),
Jerko Ferri-Čertić5),Verena Semmler3),Carsten Lennerz3),Martin Karch6),
Christian Grebmer3),Hrvoje Vražić4),Christof Kolb3)
1)Japanese Red Cross Society Wakayama Medical Center,
2)the Departments of Cardiology of the Tenri Hospital, Tenri, Japan,
3)German Heart Centre Munich, Munich, Germany,
4)University Hospital Dubrava, Zagreb, Croatia,
5)General Hospital Dubrovnik, Dubrovnik, Zagreb,
6)Klinikum Ostallgäu, Kempten, Germany
【背景】ペースメーカ (PM) 挿入時のリード固定後に微少心筋障害を反映してトロポニン T (TnT) の上昇が
観察される場合がある。TnT の上昇の程度はタインドリード (Passive fixation; Pass-fix) とスクリューイ
ンリード (Active-fixation; Act-fix) の2種類のリード間で差があるか高感度TnT (hsTnT) を測定することに
より比較した。
【方法】新規 PM 挿入例で同意が得られた連続症例において心室リードを Pass-fix 群と Act-fix 群の 2 群に無作
為に割り付け挿入、心房リードが必要な症例は全例スクリューインリードを挿入した。植込み前と植込み
18-24時間後にhsTnTを測定した。
【結果】当院とヨーロッパの 6 施設にて計 326 例 ( 平均 74± 歳 , 64% 男性 ) が登録された。房室ブロック例が
131例、洞不全症候群が 103例、徐脈性心房細動が 73例、その他が 19例であった。202 例 (62%) でデュアル
チャンバー PM、124例 (38%) でシングルチャンバー PMが植込まれた。Act-fix群で平均年齢がやや若かっ
た (73±10 versus 75±9歳) がそれ以外にベースライン値に両群間で差はなかった。hsTnT測定においては術
前後の各測定値は両群間で差はなく、術後の hsTnT の上昇値は Act-fix 群で 0.019±0.033 ng/ml で、Pass-fix
群で0.016±0.023 ng/mlであった (p=n.s.)。
【結語】PM 挿入後に一定の微少心筋障害を反映して hsTnT の上昇があることが確認されたがリードのタイ
プの違いでその程度の差は無い事が確認された。
26
Oral Session 1【2】
ICD デバイス感染後に S-ICD 植込みを検討しているステロイド長期投与
患者の一例
○加藤 雄一、西井 伸洋、津島 翔、三好 章仁、橘 元見、杉山 弘恭、中川 晃志、
渡邊 敦之、森田 宏、中村 一文、伊藤 浩
岡山大学病院 循環器内科
ステロイド長期使用は10倍以上もデバイス感染リスクを上昇させるとの報告がある。間もなく本邦でも使
用可能となる subcutaneous-implantable cardioverter defibrillator (S-ICD) は、血管内にリードを留置し
ないため感染性心内膜炎のリスクを低減できるメリットがある。今回我々はICD植込み後にデバイス感染を
発症したステロイド中止困難症例を経験した。
症例は71歳男性。2014年8月、他科入院中に心室細動を発症し、二次予防としてICD植込み適応と判断し
た。しかし尋常性天疱瘡に対し高容量ステロイド内服中でありデバイス感染リスクが高いことから、bridge
therapyとしてwearable cardioverter defibrillator (W-CD) を適用し、ステロイド漸減後にICD植込みを施
行した。
2015年7月に左手背を受傷後に熱発。血培からMSSA検出され抗菌薬投与で炎症反応は軽快するも中止後
に再燃。心エコーで右室リード周囲に疣贅を認め、感染性心内膜炎と診断した。デバイス全抜去後の右室
リードからはMSSAを検出、抗菌薬加療にて炎症は軽快した。
現在、再度W-CDを適用中であるが、作動なく経過している。本症例はデバイス感染既往もあることから、
新デバイスであるS-ICDの効果が期待される症例であり、経過・治療方針を含め報告する。
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Oral Session 1【3】
心室頻拍へのショック不成功に対して、皮下コイルリードを追加し、
除細動閾値を軽減した虚血性心筋症の1例
○高野 誠1)、原田 智雄1)、中島 育太郎1)、山田 麻理可1)、古川 俊行1)、松本 直樹2)、
明石 嘉浩1)
1)聖マリアンナ医科大学病院 循環器内科、
2)聖マリアンナ医科大学 薬理学
症例は59歳男性。2001年に広範囲前壁中隔心筋梗塞を発症、その後2013年に失神し、低心機能 (EF:20%)
であるから植込型除細動器 (ICD : Ellipse, St. JUDE社, Lead : Durata Dual coil DF-4, St. JUDE社) を他
院で植込み、アミオダロン (AMD) の内服が開始された。2015年秋に動悸を自覚し、その後ICDの適切作動
を経験した。そのため救急要請となったが、その後も適切作動は継続し、意識消失した。ICDの適切作動で
はVTは停止せず、救急隊の体外式除細動器によってVTは停止した。VTの加療目的に当院へ緊急入院となっ
た。VTに対してカテーテルアブレーション (CA) を施行した。心室のsubstrate ablationを行い、VTの易誘
発性がなくなったことを確認し、CAは終了とした。またVTがICDからのショックで停止しなかったことか
ら、ソタコールの追加内服を開始した。また皮下コイルリード (Subcutaneous array, Medtronic社) の追加
を既存のDF-4リードを用いて施行した。同時にICD交換術 (ICD : Fortify, St. Jude社) を行った。手術時の
除細動閾値は、23J であった。今回我々は、除細動閾値が高い虚血性心筋症に対して AMD 内服継続の上で、
皮下コイルリードの追加植込術を行い、除細動閾値を軽減することができた症例を経験したので報告する。
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Oral Session 1【4】
Class I のシステム抜去適応があるものの、抜去リスクを考慮し手技を
断念した1症例
○長谷川 智明、関口 幸夫、山上 文、篠田 康俊、黒木 健志、野上 昭彦、青沼 和隆
筑波大学医学医療系 循環器内科
洞不全症候群のため1992年DDDペースメーカが植込まれ、ペースメーカリード感染で入院した93歳女性。
リードに疣贅が付着しており、これまで何度かの抗生剤治療でも繰り返し発熱を起こしており、抜去以外に
感染コントロールは困難と考えられたため、高齢ではありリスクはあるものの Class I のシステム抜去適応
と判断され経皮的ペースメーカシステム抜去目的に当院へ転院となった。しかし、前医の CT から遺残リー
ドが直接上大静脈に挿入されているものと思われ、通常のアプローチではリード抜去の際に上大静脈損傷の
可能性が高く、外科的なアプローチが必要であると考えられた。心臓血管外科と相談し、本来ならば胸骨正
中切開で鎖骨、肋骨をはずしてのアプローチが必要となるが 93 歳と高齢で、体重が 36kg と痩せており体力
やADLも低下していることを考慮すると、適応の判断は熟考が必要と考えられた。このため、心臓血管外科
で低侵襲な範囲で視野を広げてもらい、リードの血管挿入部にアプローチができた場合はリードを含めたシ
ステム抜去を行い、視野が確保されず挿入部にアプローチができない場合は、抜去自体を断念する方針とし、
手術のメリット・デメリット、内服治療継続等に関する説明を家族に行った結果、家族から侵襲的な処置は
のぞまない旨の返事があり今後抗生剤治療による内科的管理を継続する方針となり、抗生剤加療、リハビリ
テーション、食事による栄養状態の改善を図り、再転院となった。
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Oral Session 2【1】
レーザーシースを用いた感染リード抜去術
−当院での初期5例の効果と安全性の検証−
○黒瀬 潤、福沢 公二、木内 邦彦、松本 晃典、小西 弘樹、市堀 博俊、今田 宙志、
兵庫 聖大、平田 健一
神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科分野 不整脈先端治療学部門
【背景と目的】当院では2015年3月、エキシマレーザーを用いたリード抜去術を開始した。初期5例の安全性
と効果を検証した。
【方法と結果】対象は 2015 年 3 月∼ 10 月、当院でレーザーシースを用いたリード抜去術を施行した連続 5 例。
全てポケット感染例でペースメーカー 4例、植込み型除細動器1例。心房リード5本、心室リード4本、ショッ
クリード2本。植込み後経過期間は104±99ヶ月 (最長270ヶ月)。血液培養は2例で陽性であったが、敗血症等
の重篤な症状を認めなかった。手術はハイブリッド手術室で麻酔科、心臓血管外科、形成外科、臨床工学・
放射線技師、看護師と循環器内科で行った。初期 2 例は学会指定指導医立会いで手術を行った。1 例 ( 心房・
心室各1本) は用手牽引で抜去。心房リード1本は中途断裂し、下大静脈アプローチを要した。残り8本は鎖骨
下静脈からレーザーシースで抜去に成功した。長期留置リード、ショックリードは手術時間238分、376分と
残り3症例 (101±12分) と比較して時間を要したが、全例で全システム抜去に成功し、重篤な周術期合併症を
認めなかった。術前、術後、感染症内科と協議し、抗生剤の選択、治療期間、再植え込みのタイミングを決
定した。
【結語】指導医先生と多職種の協力でリード抜去術を安全に導入できた。本手術は1%の重篤な周術期合併症
が報告されており、慎重に経験を積む必要がある。
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Oral Session 2【2】
エキシマレーザーシースによるリード抜去術において開心術時の切開・
縫合部位が心タンポナーデ発症と関連し、開胸下心房修復術を要した
ペースメーカ感染の一例
○佐々木 健人1)、中村 紘規1)、内藤 滋人1)、鈴木 菜穂子1)、大塚 佳満1)、
沓澤 大輔1)、清水 学1)、山口 由明1)、千賀 通晴1)、矢野 利明1)、武 寛1)、
南 健太郎1)、菅井 義尚1)、熊谷 浩司1)、大島 茂1)、岡田 修一2)、江連 雅彦2)、
金子 達夫2)
1)群馬県立心臓血管センター 循環器内科、
2)群馬県立心臓血管センター 心臓血管外科
症例は63歳、男性。2010年6月僧帽弁閉鎖不全症に対し僧帽弁置換術、三尖弁形成術を施行。術後洞性徐
脈を認めたため同年 7 月 dual chamber ペースメーカ植込み術を施行 ( 心房リード : St. Jude Medical 1999-
52, 心室リード:St. Jude Medical 2008Tc) 。2014年5月ペースメーカジェネレータ交換術を施行、2015年
5 月ペースメーカ本体の露出を認め当院紹介入院。2015 年 6 月全身麻酔下でエキシマレーザーシースによる
リード抜去術を施行。心房、心室リードの先端はともに中隔に留置されており、いずれもスクリュー収納後
容易に心筋からはずれ右房内まで牽引可能であった。心室リードはレーザーシースを用いて抜去に成功。心
房リードは右房内まで容易に癒着剥離が進むも、先端が下位右房自由壁でトラップされた。このため右大腿
静脈経由でリードの牽引・抜去を試みるも困難であった。再度レーザーシースを用いて抜去を試みたところ
心タンポナーデを発症、直ちに PCPS を確立するとともに開胸手術に移行。下位右房自由壁の穿孔部位には
結紮されたモノフィラメント糸および挫滅組織を認めた。僧帽弁置換術、三尖弁形成時の切開・縫合部位に
リード先端がトラップされた可能性が高いと考えられた。損傷部の閉鎖およびリード抜去に成功し、術後感
染の再燃なく独歩退院。エキシマレーザーシースによるリード抜去術において開心術時の切開・縫合部位が
心タンポナーデ発症と関連し、開胸下心房修復術を要したペースメーカ感染の1例を経験したので報告する。
31
Oral Session 2【3】
当院でデバイス全抜去困難であったデバイス感染の3例
○三好 章仁1)、西井 伸洋1)、加藤 雄一1)、津島 翔1)、橘 元見1)、杉山 弘恭1)、
中川 晃志1)、渡邊 敦之1)、森田 宏1)、中村 一文1)、伊藤 浩1)、増田 善逸2)、
笠原 真悟2)、佐野 俊二2)
1)岡山大学病院 循環器内科、
2)岡山大学病院 心臓血管外科
エキシマレーザーシースを導入し現在までに当院でデバイス抜去を施行した症例は80例を超えたが、リー
ドが残存した症例が3例あった。
そのうち 2 例は抜去に難渋するリードとして知られている ThinLine (Intermedics 社 ),Fineline (Boston.
Scientific社) が留置されており、リード先端が一部残存した。1例目は82歳男性。完全房室ブロックでDDD
植込 7 年後にジェネレーター交換し、その翌年にデバイス感染で紹介。心房リード抜去の際、エキシマレー
ザーシースで徐々に剥離は進んだが、心耳の癒着が強く最終的に先端が残存した。2 例目は 73 歳男性。完全
房室ブロックで DDD 植込 7 年後にジェネレーター交換し、その 2ヶ月後に紹介。心房リード剥離に難渋し、
陽極近位部でブレイクし陰極が残存した。
3例目は65歳男性。完全房室ブロックでDDD植込9年後にジェネレーター交換し、その4年後に紹介。心房
リードはロッキングスタイレットが通過せず、コンダクタにエチボンド2カ所固定してのみの牽引となった。
メカニカルシースでも剥離は進まず途中でコンダクタが切れた。下大静脈からの牽引も試みたが癒着は剥離
できず、最終的に左鎖骨下の断端を把持出来なくなり全抜去を断念したが、現在まで感染再燃なく経過して
いる。リードはMembrane (SJM社) であった。
これら残存症例を中心に当院での工夫を踏まえて報告する。
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Oral Session 2【4】
レーザーシースを用いたリード抜去時に上大静脈穿孔を合併するも
救命に成功した1例
○中村 誠之1)、吉田 幸彦1)、鈴木 博彦1)、宮澤 宏幸1)、伊藤 歩1)、田邊 すばる1)、
長坂 遼1)、渡邊 諒1)、森 悠1)、前田 眞勇輔1)、青山 豊1)、小椋 康弘1)、神谷 宏樹1)、
七里 守1)、平山 治雄1)、宗像 寿祥2)、田中 啓介2)、加藤 亙2)、田嶋 一喜2)
1)名古屋第二赤十字病院 循環器内科、
2)名古屋第二赤十字病院 心臓血管外科
【症例】64歳、男性
【現病歴、経過】繰り返すペースメーカー感染のため当院紹介。レーザーシースを用いた経静脈電極抜去術
を手術室にて施行。4 本のうち、3 本のリード抜去はレーザーシースで抜去に成功。最後の 4 本目の右心房
リードもレーザーシースで抜去を試みたところ、上大静脈上端で、ショック状態となった。経食道心エコー
で心タンポナーデを確認し、CPR開始。すぐに右大腿動静脈からPCPS挿入・開始まで10分、開胸手術まで
13分、SVC修復終了まで62分であった。術後経過は良好で、意識レベルも問題なく、感染コントロールも良
好となり、新規ペースメーカーを挿入し、独歩退院となった。
【考察】術前よりいつでもPCPSが回せるよう、右大腿静脈を確保していたこと、心臓外科医に手術着を着て
待機をしてもらっていたため、すぐに救命処置が行え、救命に成功した。
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Oral Session 3【1】
CRT依存の低左心機能症例に対し感染リード抜去後に開胸下心外膜
リード縫着を施行した1例
○芝田 匡史、坂本 俊一郎、宮城 泰雄、大森 裕也、新田 隆
日本医科大学 心臓血管外科
【背景】両心室ペーシング (CRT) 依存症例のデバイス感染は、リード抜去後に伴うCRTの中断による心不全
の悪化と再植込み部位とアプローチに苦慮する場合がある。
【症例】症例は 76 歳男性。2004 年に DCM に伴う低左心機能にて左前胸部より CRT-D 植込みが施行された。
断線などの経過を経て最終的には右鎖骨下静脈より RV リード・LV リード、左鎖骨下静脈より非機能 ICD
リード・RAリードが挿入されていた。2015年9月に電池交換を施行。その2週間後より発熱・創部より排膿
を認めたため、システム抜去目的に当科紹介。
【経過】エキシマレーザー使用下に4本のリードをすべて抜去。術後はカテコラミンからの離脱は困難であり、
MR は mild から moderate に増悪し、房室ブロックを契機に心不全は進行したため早期に CRT 確立が必要と
考えられた。両側前胸部に感染創があり、両側鎖骨下静脈は閉塞しているため、開胸下に心外膜リード縫着
を施行。RVリードは心尖部へ、心房リードは左房天蓋部Bachmann束へそれぞれ縫着。LVリードは術前心
エコーにて最も遅延収縮がみられた左室側壁基部に縫着。CRT 確立直後より TEE にて MR の改善が確認さ
れ、術後第5病日に抜管可能であった。
【考察および結語】経静脈的に左室ペーシングが困難な症例に対しては左小開胸または胸腔鏡下に心外膜
リード縫着が選択される場合がある。本症例のように両心室および心房に心外膜リード縫着が必要な場合は
胸骨正中切開が有効と考えられるが、術中に左室リードの至適ペーシング部位を決めることは困難であり今
後の課題となる。
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Oral Session 3【2】
当院での心移植におけるエキシマレーザーシースを用いた遺残リード
抜去
○荷見 映理子、藤生 克仁、小島 敏弥、福馬 伸章、松原 巧、清水 悠、小室 一成
東京大学医学部附属病院 循環器内科
レーザーシースを用いたペースメーカーリード抜去が保険収載されて以降、本邦でも感染症例を主として
抜去が多くの施設で行われるようになっている。当院では感染症例のみならず、心移植症例でもレーザー
シースを用いた遺残リード抜去を行っている。遺残リードはMRI施行ができない、リード感染の原因となり
うるなど長期的な問題を抱えており、移植症例では従来では鎖骨下静脈に遺残するリードを用手的に牽引抜
去するか、本体のみ抜去する方法がとられてきた。当院でも移植後、術中に用手的にリードの牽引抜去を
行ってきた。しかしながら、当院で移植されたもしくは移植後当院でフォローされている 73 例のうち 36 例
(49.3%) で術中にリード抜去が行われており、手術での抜去は27例 (全抜去の75%) であった。手術での抜去
は成功率が 70.4% であったものの、レーザーシースを用いた抜去は 9 例 (25%) 行われており、全症例で抜去
に成功している。両群ともに、合併症発症はないものの、手術によるリード抜去にはリード遺残が 29.6% 生
じている。これらの結果からレーザーシースを用いた抜去を行うことで、今後心移植後の遺残リードに伴う
問題を解決することが期待される。当院で施行している移植症例に対するレーザーシースを用いた抜去につ
いて実際の症例を提示をして報告する。
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Oral Session 3【3】
人工心肺下に弁修復術を併設した感染リード抜去の手術報告
○野中 利通、大沢 拓哉、大塚 良平、小坂井 基史、野田 怜、櫻井 寛久、櫻井 一
JCHO中京病院 心臓血管外科
心臓再同期療法 (CRT) や ICD 治療の広がりによりデバイス植え込み数は増加傾向であり,それに伴って
デバイス感染は 3 倍になったとの米国からの報告もある.日本では 2010 年にエキシマレーザー装置による
transvenous pacemaker lead extraction が保険診療となり開胸および人工心肺使用下のリード抜去術は減
少傾向にある.レーザー装置によるリード抜去術は低侵襲であるが右室穿孔や血気胸などの重篤な合併症も
2-3%認め,循環器内科医と心臓外科医のチーム医療を要する治療である.今回,28年前にSSSでペースメー
カー植え込み,9年前にCRTにアップグレード,3年前のgenerator交換後にMSSA感染を発症し,局所の処
置と感染再発を繰り返していた 83 歳男性の右室リードに関連した感染性心内膜炎に対して三尖弁形成を併
設した開胸リード抜去術を施行した 1 例について報告する.本症例を通してデバイス感染に対する治療方針
ならびに開胸リード抜去術の位置付けについての考察を発表予定である.
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Oral Session 3【4】
エキシマレーザーリード抜去術導入後の外科的リード抜去
○岡田 修一1)、金子 達夫1)、江連 雅彦1)、長谷川 豊1)、小此木 修一1)、小前 兵衛1)、
桐谷 ゆり子1)、内藤 滋人2)、熊谷 浩司2)、菅井 義尚2)、中村 絋規2)、佐々木 健人2)、
南 健太郎2)
1)群馬県立心臓血管センター 心臓血管外科、
2)群馬県立心臓血管センター 循環器内科
【はじめに】当院では心臓植込み型電気的デバイスの感染に対して、積極的にエキシマレーザーを用いて抜
去している。しかし、エキシマレーザー抜去適応外の症例もある。外科的にデバイスを抜去した症例を報告
する。
【症例 1】84 歳男性。1996 年に洞不全症候群に対して左鎖骨下に PMI (AAI) を施行された。感染を繰り返し
2006年に generator 抜去と右鎖骨下に PMI (AAI) を施行された。2015年 3 月に右側 PM 感染を合併、当院紹
介後の同年 4 月に on pump beating でデバイスを抜去し、心外膜リードを縫着した。リードの末梢側は左季
肋下に誘導して留置した。
【症例2】43歳男性。1999年に完全房室ブロックに対して左鎖骨下にPMI (DDD) 施行、2002年にAリードを
追加された。2015年2月にPM感染を合併、8月にgeneratorを抜去し、右鎖骨下にPMI (VVI) を施行された。
しかし、感染を制御できず、当院紹介となり、同年 11 月に症例 1 と同様に外科的にデバイス抜去を施行、心
外膜リード縫着を施行された。
【症例3】68歳女性。2012年に洞不全症候群に対して左鎖骨下にPMI (DDD) を施行された。その際に右気胸
を合併した。気胸は保存的加療で軽快した。2015 年 5 月に感染を合併、当院紹介となり、同年 12 月に症例 1
と同様にデバイスを抜去、その際にリードの一部が心外に露出し胸膜と癒着していた。
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第1回リード・マネージメン ト研究会 協賛企業
第1回リード・マネージメント研究会を開催するにあたり、
多くの企業様よりご支援を賜りましたこと、ここに厚く御礼申し上げます。
第1回リード・マネージメント研究会 当番世話人 庄田
株式会社エム・イー
株式会社エムシー
Cook Japan株式会社
センチュリーメディカル株式会社
セント・ジュード・メディカル株式会社
第一三共株式会社
ディーブイエックス株式会社
東レ株式会社
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
日本メドトロニック株式会社
日本ライフライン株式会社
バイオトロニックジャパン株式会社
ブリストルマイヤーズ株式会社
ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
(50音順)
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守男 第 1 回リード・マネージメント研究会
プログラム・抄録集
2016 年 1 月 20 日 発行
発行者 第 1 回リード・マネージメント研究会
当番世話人 庄田 守男(東京女子医科大学病院 循環器内科)
印刷所 株式会社プロコムインターナショナル
〒 135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館 9 階
TEL: 03-5520-8821