テーマ:双曲幾何と微分幾何入門 担当:塩谷 隆(東北大学) テキスト:P.M.H. ウィルソン著,小島定吉監訳,石川昌治訳, 「曲空間の幾何学」,朝倉書店 曲率が負の定数(−1)の空間を双曲空間と呼び,そこで展開される幾何が 双曲幾何である.古典的にはユークリッド原論の平行線公準の成り立たない 非ユークリッド空間として,初めて発見された空間である.双曲空間は非自 明で一見すると分かりにくい幾何学的対象のうちで,一番基本となる空間で ある.群論や複素関数論とも関連が深く,現在でもさかんに研究されている. テキストは微分幾何と位相幾何の基本的な考え方を学部生向けに解説し た良書である. (訳者の石川昌治先生は東北大の私の同僚. )今回は,微分幾 何の基礎であるリーマン計量(3章)と双曲幾何(4章)を中心に学び,余 裕があればその他の微分幾何の基礎概念(6,7,8章)を学ぶ. テキストを読むのに必要な基礎知識としては,微分積分と線形代数のみ であり,学部2・3年生に適したテキストである. 1∼3章は読まなくても先に進めることができる.4章でリーマン計量 を学ぶ.リーマン計量とは曲がった空間の形を表す量である.リーマン計量 で曲線の長さを測ることができて,2点を結ぶ曲線の長さの下限により2点 間の距離を定義することができる.等長写像と面積についても学ぶ.5章で 双曲幾何に入る.ポアンカレモデル,上半空間モデル,メビウス変換,双曲 直線,双曲距離,鏡映,双曲三角形などを学ぶ.時間に余裕がある限り,6 章で曲面論(ガウス曲率,第二基本形式),7章で測地線(曲線の変分,ガ ウスの補題),8章でガウス・ボンネの定理を学ぶ. 参加希望者は,できれば4章を予習してきてほしい.
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