Page 1 帯広畜産大学学術情報リポジトリOAK:Obihiro university

'
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'
黒ボク土からのアンモニア揮散に及ぼす土壌pH・温度
・施用窒素形態の影響
笛木, 伸彦, 谷, 昌幸, 中津, 智史, Fueki,
Nobuhiko, Tani, Masayuki, Nakatsu, Satoshi
日本土壌肥料学雑誌, 78(3): 309-312
2007-06
http://ir.obihiro.ac.jp/dspace/handle/10322/2969
日本土壌肥料学会
帯広畜産大学学術情報リポジトリOAK:Obihiro university Archives of Knowledge
,
3
0
9
ノート
ニ7揮散については,一般に日本の土壌は酸性土壌である
こと,またいくつかの研究事例 15,
16) によれば,表面施用 L
た窒素のうち 7:/ モニア揮散によって消失したのは O~
黒 ボ F土 か ら の ア ン モ ニ ア 揮 散 に 及 ぼ す
土 壌 pH・ 温 度 ・ 施 用 窒 素 形 態 の 影 響 判
7%と少なし問題視されることは少なかった.実際,北
海道十勝地方の例川を挙げると,今のところ畑土壌の pH
は5
.
5程度と低く, pHが 7を 超 え る よ う な 土 壌 は 少 な
し
、
.
笛木伸彦"・谷
昌幸町・中津智史料
しかし,前述のように畑作における今後の施肥技術にお
いて窒素の表面施畑が用いられる場面が増える見込みがあ
ること 3べ ま た 笛 木 ら 川 が 報 告 し た よ う に 畑 土 壌 の pH
キーワード 黒ポク土,ァ γ モニア揮散,土壌 pH
,リン
酸の特異吸着,窒素形態
1 はじめに
が上昇する傾向を示す場合もあることから,日本の畑土壌
において 7:/モニ 7 揮散による窒素損失が生じうる土壌
pH,温度,施用窒素形態等について明らかにする必要が
ある.
畑作における窒素の表面施肥は,秋まき小麦の起生期追
また,黒ポタ土は日本の代表的畑土壌の一つであるが,
肥1)やデ γ プ γ 原料用ジャガイモの開花期追肥2)などで用
黒ボタ土はリ γ酸イォ γ の特異吸着等に見られるように特
いられ,作物が窒素を要求するタイミ Y グに合わせて効率
異な物理化学的性質を持つことが知られている瑚.このこ
的に施肥できる長所を持つ.そのため,今後テ γ サイの分
とから,黒ボ F土は既往の知見とは異なる 7:/モニア揮散
施など他の畑作物の栽培においても表面施肥の導入が期待
されている 3,
4
)
反応、を示す可能性がある.
しかし,表面施肥は 7:/モニ 7揮散によって窒素が損失
する短所も持つ
7:/モユア揮散は物理化学反応であり,
以上の背景から,本研究では黒ボク土における表面施用
窒素の 7:/モエア揮散に及ぼす,土壌 pH,温度,施用窒
素形態の影響について明らかにしようとした.
土壌 pHや温度の上昇等の要因によって促進され,また窒
2
. 材料と方法
素の形態によって異なる,-川.すなわち,酸性矯正等の
1
) 供試土壌
pH管理や施肥のタイミ
Y グ(施肥時の温度),あるいは
北海道立十勝農試圃場より採取した黒ボ F土の作土(深
窒素肥料種の選択を誤れば 7:/モニ 7 揮散により施肥効率
h表面施肥を行う際には
が低下する可能性があるのでトg
cm) を,風乾・砕土後 2mmのふるいを通して
供試した.常法 η ,
1
9
) により分析した供試土壌の化学性は,
7:/モニ 7揮散をできるだけ少なくするよう配慮すること
.
5
)が 5
.
9, 交 換 酸 度 見 が 0
.
3,
土 壌 pH (土:水ニ 1:2
が望ましい.
7:/モニア揮散に関しては,中国間や欧米 5,
6
,札川など海
全炭素含量(チューリ Y 法)が 25.0gkg-',全窒素含量
外の高 pH条件において豊富な研究事例がある.中国黄土
5
4mmol
,k
g
'であった.交換性のカノレシウ
ガ一法)が 1
高原のアルカリ性土壌における研究事伊戸では,施肥窒素
5
8
0mgk
g
'
ム・マグネシウム・カリウムはそれぞれ 1,
(炭酸 7:/モニウムや尿素の場合)の 30%以上が 7:/モニ
)
, 1
9
2mgkg-' (MgOとして), 1
9
7mg
(CaOと L て
K
,
Oとして),有効態 yy 酸(トノレオーグ法)は
k
g
'(
7揮散によって消失すると報告されており,ヨーロッパで
も 7:/ モニ 7 揮散の 80~90% は農業由来で,このうち
10~20% は施肥窒素に由来すると報告されている"
日本においては,家畜糞尿に関連した 7:/モユア揮散の
研究が多数行われている 2ト叫.しかし施肥窒素の 7:/モ
さ 0~20
(ケノレダーノレ法)が 2.5gkg九 CEC (ショーレ
Y
ベノレ
1
2
0mgP
,
O,kg-1 (
P,O,として),
リ Y 酸吸収係数は 1
7
.
7
P,O,として)であった.なお, pH 7の試料は以
gkg-' (
下の手順で調整した.原土 (pH5
.
9
) 1kgに炭酸カルシ
ウム 7gを加えて十分混合し,さらに 1Lの蒸留水を加え
て混合後,再び風乾・砕土 L2mmのふるいを通した.
Nobuhik~ F
u
e
k
i,MasayukiTaniandS
a
t
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h
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nfromA
n
d
o
s
o
l
川本報告の一部は日本土壌肥料学会神奈川大会 (
2
0
0
3年)に
おいて発表した.
M 北海道立十勝農業試験場 (
0
8
2
0
0
7
1北海道河西郡芽室町新
生)
時帯広畜産大学畜産学部畜産科学科 (
0
8
0
8
5
5
5帯広市稲田町
西 2線 1
1
)
判北海道立中央農業試験場 (
0
6
9
1
3
9
5北海道夕張郡長沼町東
6線 北 1
5号)
2
0
0
6年 9月 6日受付・ 2
0
0
6年 1
1月 1
5日受理
日本土壌肥料学雑誌第 78 巻第 3 号 p.309~312 (
2
0
0
7
)
色
2
) 通気法による 7γ モニア揮散培養実験
供試土壌を円柱型の密閉フタ付ポリエチレ γ ボトノレ(内
径 8.8cm, 底 面 積 6
0
.
8cm
九高さ 1
2
.
3cm
,図 1
) に乾
0
0g入れ,容積重が 0.8Mgm-'になるよう充
土として 1
填・均平後,噴霧器で蒸留水 4
1
.9mLをできるだけ均一
に加え,さらに水分を土壌中によくいきわたらせるため一
昼夜 4Cで静置した.次に,土壌表面に各形態の窒素(尿
素,硫酸 7:/モニウム y:/酸ーアンモニウム, リY酸二
0
7:/モニウム,以下ではそれぞれ URA
,ASF,MAP,
DAPと略記)を N と Lて 6.08mgになるように,各室
0,
0
0
0mgN L-'溶液 6
.
0
8mLを,ガラス製噴霧器
素の 1
3
1
0
日本土壌肥料学雑誌第 7
8巻 第 3号
(
2
0
0
7
)
(7γ モニア揮散率, %
)
=[(各試験区における,その時点までの累積 7'/モニ
7態窒素揮散量, mgN)- (空試験区における,そ
の 時 点 ま で の 累 積 7'/モニ 7 態窒素揮散量, mg
N)J
/
(
窒素施用量, 60.8mgN)X100
図 l 通気法によるアンモニア揮散実験の概念図
を用いて噴霧 L,土壌水分を最大容水量の 60%,窒素施
0gm-' (ポリエチレ yボトノレあたり
用 量 が N として 1
60.8mg) となるよう,各処理区を設定した.なお,各窒
0,
0
0
0mgNL
'溶液は特級試薬を用いて作成した.
素の 1
上記処理の後, Terman
のを参考にして組み立てた実験
) により,ただちに通気法による培養実験を開
装置(図 1
0mLs-'とし,試料の乾燥を防ぐた
始した.透気流量は 1
めいったん蒸留水を通過させてから,供試土壌の入った密
閉フタ付ポリエチレ Y ボトルへ流入させた.ボトノレからの
流出空気中の 7'/モニ 7 は
, 1
0
0mLの 1molL
'希 硫 酸
を通過させて捕捉した.この希硫酸は適宜回収・交換し,
オートアナライザー (AACSI!,プラ
y
・ノレーベ社製)
によりアンモニア捕捉量を定量しその累積値をアンモニア
揮散量とした.培養日数は 1
4日間と L,培養開始後の 7
Y モニ 7 補足量の測定精度は 3~6 回とした.なお,培養
実験の際には,窒素を添加しない空試験区を併置した.培
5または 3
0
'
C,反復は 2とした.
養温度は 1
得られたデータを以下の式により,アンモニア揮散率
(施用窒素量に対するアンモニア態窒素揮散量の割合)と
して算出した.
3
) 窒素添加 2
4時間後の土壌 pH
供試土壌1
0gと URA,ASF,MAP,DAPの 1
0,
0
0
0
.
0
8mg),蒸留水
mgNL-'溶液を 0.608mL (Nとして 6
4.19mL (最大容水量の 60%相当)を 125mLポリエチレ
Y ボトノレに入れてよく混合し, 1
5
'
Cまたは 3
0
'
C
で2
4時間
0
.
2mLを加え,常法 1
7
,
1
9
)により
静置後にさらに蒸留水 2
土壌 pHを測定した.反復は 3とした. W
hitehead and
R
a
i
s
t
r
i
c
k川はこの窒素添加 2
4時間後の土壌 pHが 7'/モ
ニア揮散程度を説明するのに有効であるとしている.
,
なお, URA
,ASF MAP
,DAP溶 液 (
1
0,
0
0
0mgN
L→)の pHは,それぞれ 7
.
1,5
.
1,4
.
0,7
.
8であった.
3
. 結果と考察
通気培養法による各処理区における 7'/モニア揮散率の
推移を図 2に示した.なお,すべての処理区において培養
1
4日目以降の 7'/モニア揮散が無視しうるほど小さいこ
とが確認された.
7'/モニア揮散率はどの処理区においても,土壌 pHの
.
9→ 7
.
0
) と培養温度の上昇 (
1
5→ 3
0
'
C
)に
上昇 (pH5
より促進されており,この傾向は既往の報告ト川と一致し
た.以下では,ア γ モニア揮散率の各処理区聞における違
いを,窒素添加 2
4時間後の土壌 pH (
表1
) と併せて考察
Lt
ヒ
.
DAP区および URA区のア Y モニ 7揮散率は,いずれ
の条件においても ASF区 お よ び MAP区より高く(図
2
),また窒素添加 2
4時間後の土壌 pHについても, DAP
区および URA区が ASF区および MAP区より高かった
(表1).
3
Dr
一
.
ト
ー
-cト
4ト
言
3
0C
g
U
R
A
:
2
7
.
8
土a
9
a
A
S
F
:
13.1
土1
.
0
c
M
A
P
:7
.
8
:
!
:t1d
pH7~
γ UR
A
:4
.
8
:
!
:
O
.
7
b
o
A
S
F
:
1
.
3
士0>,
1-0-噌
r-lト MAP: 1
.
4
土0
.
1c
...~ ~ ----0
民「プ。
。
。
。
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!
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3
0C
0
pH5
.
9
1
0
7
U
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1
1日主 O
.
9
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3
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F
:制 ± 日 "
1
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1
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7
.
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0
7
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:
O
.
O
b
一oーA
S
F
:Q44
士O
.
1
c
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A
P
:0
.
3
土日 0
,
-D-D
A
P
:3.3:!:0.3
a
加
pH
20
-戸 〆
戸
プ
士
F
。
1
0
OU圃
7
培葺回数
1
4
。
o
•
1
4
J
1
7
9
図 2 アンモニア揮散率に及ぼす土壌 pHおよび
培養温度の影響
URA:尿素, ASF:硫酸ア Y モニウム, MAP:
リY 酸ーァ γ モュウム, DAP リY 酸二ア Y モ
ニウム.各凡例の右の数字は培養 1
4日自の 7'/
モニ 7揮散率(平均土標準偏差,n
=
2
)
. 培養 1
4
日自のアンモュア揮散率の比較:同一図内(同pH かつ同一培養温度)で a~d の文字が異なる
7
培豊田数
1
4 場合は, LSD法による有意差(戸く 0
.
0
5
) がある
ことを示す.
笛木・谷・中津:黒ポタ土からのアンモニア揮散に及ぼす土壌 pH・混度・施用窒索形態の影響
表 1 各窒素添加 2
4時間後の土壌 pH
培養温度窒素形態
3
0
"C
炭酸カルシウム
.
0
)
添加土 (pH7
原士
(pH5
.
9
)
7
.
2士0
.
1a
1
:0
.0b
7
.
0:
7
.
0士0
.
0b
.
0a
7
.
2土0
6
.
3士0
.
0b
6
.
1土0
.
0d
6
.
2士0
.
0c
1
:0
.
0a
6
.
9:
URA
ASF
MAP
DAP
3
1
1
ASF区のア γ モニア揮散率に有意差がなかったこと(図
2
) と符合すると考えられた.
一方, MAP区の 7'/モニア揮散率が低いのは,既往の
.
0,前述)であり,土
報 告 川 で は MAPが強酸性 (pH4
壌に施用した直後から土壌 pHが大きく低下するためとさ
れている.しかし,表 lの結果では, MAP添 加 2
4時 間
1
:0
.
0b
6
.
3:
1
:0
.
0b
URA
7
.
2:
.
0c
6
.
1土0
.
0c
ASF
7
.
0土0
1
:0
.
0d
6
.
1士0
.
0c
MAP
6
.
8:
EAP
7
.
3土 0
.
0a
7
.
1:
1
:0
.
0a
URA:尿素, ASF:硫酸 7γ モニウム, MAP: リン酸
ーァ γ モニウム, DAP: リン酸二ア Y モユウム.デ タ
は平均±標準偏差 (
n 3) で示した.窒素形態聞の比
較同一培養温度 (
3
C・
Cか 1
5
"C)かっ同一供試土壌内
後の土壌 pH値は, 0~0.2 低下する程度(炭酸カルシウ
(炭酸カルシウム添加土か原土)で a~d の文字が異なる
Y酸イオ Y の特異吸着が生じ,これに伴い水酸化物イオ γ
1
5
'
C
二
場合は, LSD法による有意差(声 <
0
.
0
5
) があることを
示す.
ム添加土 (pH 7.0) の場合)か,むしろ 0.2~0.3 上昇し
ており(原土 (pH5
.
9
) の場合),弱酸である ASFの添
加 (pH5
.
1,前述)と大差なかった.このように本研究
における MAP添 加 2
4時間後の pHが既往の知見叫と異
なったのは,供試土壌がリン酸吸収係数の大きい(l7.7g
0
5k
g
l
) 黒ボク土であるため, MAPを添加するとリ
P,
(OH-) が放出されることによって pHが上昇するためと
考えられる同.
DAP区の 7'/モニ 7 揮散率は,高温・高 pH (
3
0
'
C
'
なお, MAPにおいて推察されたリ Y 酸イオンの特異吸
pH 7
.
0
) 以外の条件では URA区 よ り も 高 し こ の こ と
着に伴う pH上昇は, DAPにおいても生じたものと考え
は DAPがアルカリ性 (pH7
.
8, 前 述 ) で あ れ 添 加 2
4
られるが, DAPは元々 7 ノレカリ性 (pH7
.
8,前述)であ
時間後の土壌 pH (表1)が URA区よりも高かったこと
るために特異吸着による pH上昇はマス F され,観察でき
と対応した.
なかったと考えられる.
一方, URA区 の 7'/モニ 7 揮 散 率 は 高 温 ・ 高 pH
次に培養 1
4日目の各処理区からの 7'/モニ 7 揮散率と
(
3
0
'
C
'pH7
.
0
) 条件では DAP区よりも高く(図 2
),こ
窒素添加 2
4時間後の土壌 pHの関係を図 3に示した.両
3
0
'
C・pH7
.
0
) 条件における,添
のことは高温・高 pH (
3
0
'
C, 15T) ごとに有意な指数関数の関係
者は培養温度 (
加2
4時間後の pH (
表1
) が URA区今 DAP区であった
にあり,この結果はWhi
t
e
h
e
a
dandR
a
i
s
t
r
i
c
k叫が窒素添
ことと対応した. URAはほぼ中性 (pH7
.
1,前述)であ
加2
4時間後の土壌 pHと7γ モニ 7揮散率が高い正の相
るが,土壌中では土壌微生物の持つウレアーゼの作用によ
関を示すことを見出したのとほぼ同様の傾向であった.
以上のことから,黒ボ F土にはリン酸イオ Y の特異吸着
り 加 水 分 解 し て 炭 酸 7'/モニウムとなって pHが 上 昇
0
), 7:/モニ 7 揮散が促進される 51 またこのウレアー
し2
に伴う pH挙動に特徴があるにせよ,他の土壌と同様に窒
ゼによる加水分解反応は 7~32Tの範囲では温度の上昇に
素添加 2
4時間後の土壌 pHを測定することによって黒ポ
よって著しく促進されることが知られている叫.すなわち
タ土におけるアンモニ 7揮散の窒素形態間差は説明できる
高温 (
3
0
'
C
) と高 pH (pH 7
.
0
) の相乗効果によって,
ことが明らかとなった.
URA区の 7γ モニ 7揮散率が DAP区よりも高まったも
本結果に基づき,営農場面において表面施胞を行う場
のと考えられる.なお URA区の 7'/モニ 7揮散速度は最
合,アンモニア揮散をできるだけ抑制するための留意点と
大化するまでに 4日程度を要し,他の処理区と異なる傾向
)
. このことはウレアーゼ活性が最大化す
を示した(図 2
3
0
るまでに 2~4 日を要すること叫に起因すると考えられ
る.
ASF区の 7'/モニ 7 揮散率は,高 pH (pH 7
.
0
) 条件
では温度の高低によらず MAP区より高く,低 pH (pH
5
.
9
) 条 件 で は 温 度 の 高 低 に よ ら ず MAP区 と 同 等 に 低
かった. ASFは酸性土壌 (pHく 7
) では 7'/モニア揮散
の生じにくい窒素であることが知られている 5.5叫が,逆
揺
軍
拡
6
.
0
), さ ら に 1
5
'
C• pH7
.
0条 件 で は URA区 と
と(図 2
<
>
:DAP
r
=0
.
9
4
9,n
=
8
R
1
0
p
、
(CaCO,)を多量に含む土壌に ASFが施用されると石膏
のことは,炭酸カノレシウムを添加した条件 (pH7
.
0
)に
DAP
•
培養且度 1
5'C
O:URA
口 ASF
b
.:MAP
y=6 凹 X10.7X (1 1.1)~
。
おけるアンモニア揮散率が ASF区 >MAP区であったこ
・
h
に石灰質土壌など pHが高く (pH>7),炭酸カノレシウム
(CaSO
,)と炭酸アンモニウム ((NH,
),
CO,)が生成 L,
URA施用時よりも 7γ モ
ニ
二 7揮散率が高くなる広島問.こ
畠
色
京
証 20
培養温度目℃
e:URA
圃 ASF
.
t
.:MAP
口
.
•
。
。
y
=6
.
0
0
x1
0
s
.X
(
1
9
.
3
t
。 r=O.962~, n=8
. 0
6
.
2
6
.
4
6
.
6
6
.
8
7
.
0
7
.
2
7
.
4
童苦語加 24時間後の土壌pH
図 3 培養 1
4日間でのアソモニア揮散率と土壌 pHの関係
URA:尿素, ASF:硫酸ァ γ モニウム, MAP: リソ酸ーァ γ
モニウム, DAP: Vγ 酸ニア Y モニウム.土壌 pHは窒素添
加2
4時間後に測定.*
*
Pく 0
.
0
1で有意な相関であることを
示す.
日本土壌肥料学雑誌第 7
8巻 第 3号
3
1
2
して以下のことが指摘できる. (1)土壌 pHを 高 く し 過
.
9条件での 7
ぎない.ただし,本研究における土壌 pH5
Yモ ι 7揮散率は, DAPを除けば数%以下と低かったの
で,極度に低 pHとする必要はない. (2)土 壌 温 度 の 高
い 時 期 の 表 面 施 肥 は 避 け る . (3)ASFと MAPは
,
URA,DAPよりも 7'/モニア揮散率が低いので,表面施
肥 には ASFまたは MAPが望ましい.
ただし MAPの表面施肥の是非については, 1y 酸の』巴
効が低下するおそれがあり 22},今後の検討が必要であろ
う.
謝辞本研究をまとめるにあたり,東北大学大学院農
学研究科・農学部資源生物科学専攻の菅野均志助手ならび
に北海道立十勝農業試験場の加藤淳主任研究員には有益
な御助言をいただき,また北海道立十勝農業試験場の竹内
晴信栽培環境科長,八谷和彦生産研究部長,菊地治己場長
ならびに北海道立中央農業試験場の木曽誠二農業環境部長
には御校閲いただきました.ここに深く謝意を表します.
文 献
1
) 渡辺祐志:秋まきコムギの品質と肥培管理,品質向上の
9
9
9,p
.127~ 1
3
0
肥培管理,北海道農業と土壌肥料 1
(
19
9
9
)
2
) 東田修司・佐々木利夫 でん原用ばれいしょ品種「コナ
フプキ j に対する窒素追肥,道立農試集報, 7
7,59~63
(
1
9
9
9
)
3
) 今野一男:網走地方町畑作地帯における有機物および土
壌の窒索開固と施肥対応,道立農試報告, 9
8,7
4(
2
0
01
)
4
) 笛木伸彦・中津智史・秦泉寺敦・鐘下伊雄・鈴木克則:
直播テ Y サイにおける全層施肥と分施の有効性,現地圃
0,1
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4
)
場における効果実証試験,土肥要旨集, 5
5
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)
7
) 那明徳・佐伯和利・松本聴・中国黄土高原土壌にお
(
2
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7
)
ける施肥窒素のアンモニ 7揮散,土肥誌, 6
5,373~377
(
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)
1
1
) 松村昭治:畑土壌への家畜尿施用にともなう窒素揮散,
土肥誌, 5
9,568~572 (
1
9
8
8
)
1
2
) 湊啓子・田村忠・前田善夫過リ
y 酸石灰添加によ
る牛ふん尿の堆肥化過程におけるアンモニア揮散抑制,
新得畜試研究報告, 2
3,17~24 (
2
0
0
0
)
1
3
) 松中照夫・熊井実鈴・千徳あす香:パイオガスプラント
消化液由来窒素のオ チヤードグラスに対する肥料的効
果,土肥誌, 7
4,31~38 (
2
0
0
3
)
1
4
) 宮田尚稔・池田英男.貯蔵中のメタン発酵消化液からの
7'/モニウムの消失,同上, 7
7,577~581 (
2
0日6
)
1
5
) 阿江教治・尾形保:イ Y キュベ ショ y 実験による草
地表層土壌の硝酸化成及びアンモニア揮散,草地試研報,
2
3,42~49 (
1
9
8
2
)
1
6
) 三木直倫・高尾欽弥経年草地の炭カノレ表面施用に伴う
3,2
1~31 (
19
8
5
)
施肥窒素の動態,道立農話集報, 5
1
7
) 笛木伸彦・中津智史・梶山努・有田敬俊・古館明洋・
山神正弘:移植および直播栽培テ γ サイにおける初期生
育障害の発生要因,土肥誌, 7
3,373~382 (
2
0
0
2
)
1
8
) 日本土壌肥料学会:土壌り吸着現象, p
.43~48,博友社,
東京 (
1
9
81
)
1
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)
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) 越野正義.肥料の種類と性質,土壌・植物栄養・環境事
典
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.230~299 ,博友社,東京 (1994)
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