フォトニック結晶導波路における 共伝搬・逆伝搬スロー

フォトニック結晶導波路における
共伝搬・逆伝搬スローライト系
研究紹介
近 藤
圭 祐,馬 場
俊 彦
非線形を用いた光制御は多彩で高速な反面,一般に効果が小さ
し,相互作用を起こす系を紹介する.増強された非線形に,ス
い.しかし Si フォトニック結晶導波路の強い光閉じ込めとスロー
ローライトが得意とする群遅延や分散の操作をミックスすると,断
ライト効果を用いれば,これをオンチップで手軽に増強することが
熱的波長変換,高速遅延チューニング,パルス圧縮,ドップラー
できる.本稿では特に,2 つのスローライトパルスが同時に伝搬
シフトといった機能が得られる.
1. まえがき
数十〜数百倍ゆっくりと伝搬する「スローライト」が発生する.
光伝搬の制御は,光,熱,電気,機械動作などさまざまな
構造を微調整すると短い光パルスもスローライト化され9〜13),
物理作用を伝搬路に与え,光が感じる実効的な屈折率変化
図 1(a)の導波路 A のように空間的に圧縮されてエネルギー
Δn を生じさせることで行われる.光による光の制御では,高
密度を高める.また導波路 B,C のように,2 個のスローライ
強度の光と媒質の間の非線形相互作用がしばしば議論され
トパルスが同時に伝搬すると,さらに興味深い現象が起こる.
1)
る .しかし高速な非線形の Δn は一般に小さく,十分な制御
2 つのパルスの向きに応じて,我々はこれらを共伝搬・逆伝
には光ファイバのような長いデバイスが必要になる.ところで
搬スローライト系と呼んでいる.
2,3)
が急速に発展し,誰もが
これまでスローライトには,光バッファや分散補償,小型な
高度な光集積チップを作れるようになった.ここでの基本導波
光変調器や光スイッチ,高感度な光検出器やセンサ,相関演
近年,シリコン(Si)フォトニクス
4)
路である Si 細線は,Si 自体が大きな非線形係数をもつ こと
算を使った測定器など,さまざまなデバイス応用が期待されて
に加え,光ファイバの千分の 1 以下という微小断面積で光パ
きたが,本稿では上記のような系の非線形応用に特に注目す
ワー密度を高めるため,オンチップの非線形を簡単に実現す
る.まず光パルスのスローライト化を実現する低分散・可変分
4〜7)
る
散スローライトを説明し,次にこれが実現する 4 つのユニーク
.また,我々が研 究する Si フォトニック結 晶 導 波 路
な機能を紹介する14〜17).
(Photonic Crystal Waveguide: PCW,図 1(a))を組み込む
と,さらに非線形が大きくなる8〜10).ここでは光が真空中の
(a)
A
(b)
円孔
導波路
B
スローライト
C
ス
パル
制御
A
ス
パル
信号
B
0.295
LSPCW
0.290
Δ
C
分散可変
低分散
PCW
PBG
0.285
0.3
線
Si 細
図1
(c)
Frequency ω (2π / )
ス
パル
制御
1 μm
0.4
0.5
Wave number (2π/ )
共伝搬・逆伝搬スローライト系の概要.(a)PCW を伝搬するスローライトパルス.A は 1 個のパルス伝搬.B は信号パルスと制御パルスの共伝搬.C は
逆伝搬.(b)製作された Si LSPCW の走査型電子顕微鏡写真.点線の丸は導波路から数えて 3 列めの円孔列をシフトさせていることを表す.(c)LSPCW と
PCW のフォトニックバンド.格子定数 a に対して,Si スラブ厚さ t=0.55 a,円孔直径 2 r=0.59 a,シフト量 s=0.18 a.
横浜国立大学 大学院工学研究院
〒 240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台 79-5.
分類番号
7.9,7.11
e-mail: [email protected], [email protected]
Co- and counter-propagating slow-light systems.
Keisuke KONDO and Toshihiko BABA.
Department of Electrical and Computer Engineering, Yokohama National University (79-5 Tokiwadai, Hodogaya-ku, Yokohama 240-8501)
共伝搬・逆伝搬スローライト系(近藤・馬場)/ 研究紹介
OY167004(研究紹介_近藤先生・馬場先生)_下版_三校_再校_初校_0校.mcd
595
Page 1
16/06/23 13:52
v6.20
(b)
制御パルス
信号
パルス
λin
λin
Δ
(c)
Δλ=λ
0
ω'
4.9 nm
(i)
(ii)
−15
−20
0
1
2
c/ s
3
4
5
制御なし
制御あり
ω'
ωin
(ii)
dω
d
Wave number
Wavelength (nm)
図3
断熱的波長変換.(a)共振器系と(b)共伝搬スローライト系の概要.(c)
2 つのパルスの群速度の比 vc /vs に対する Δλ の変化.信号パルスの中心
−10
−5
0
5
制御パルス
(i)
あり
制御パルスなし
1546 1548 1550 1552 1554
制御パルスなし
制御パルス
あり
g=
Frequency ω
−10
Δ c (ps)
−15
ωin
Normalized intensity
Δλ (nm)
λ'
(b)
−5
図2
制御パルス
信号
パルス
自由キャリヤ (Δ )
(d)
Δ
(c)
自由キャリヤ
s
λ'
共振器
−25
(a)
c
Normalized output
(a)
10
0
−10
−20
15
Relative delay (ps)
遅延チューニング.(a)概要.(b)フォトニックバンド上の信号パルスの
動作点(青丸)の遷移.(c)LSPCW から出力された信号パルスの時間波形.
半値全幅 1.5 ps の参照パルスとの相互相関法により得られた.
波長は λ=1.55 µm,n=3,Δn=−0.005.(d)共伝搬系で実験的に観
測された出力信号スペクトル.
3.
2.
低分散・可変分散スローライト
3.1
共伝搬スローライト系
動的制御による断熱的波長変換
まず,光パルスを伝搬する低分散 PCW を紹介する(図 1
動的制御とは,光がいるまさにそのとき,その場所の屈折
(b))
.PCW は Si スラブ上の導波路とそれを挟む円孔列で構
率を変えることを指す.このとき,ギターのチューニングのよう
成されるが,ここでは 3 列めの円孔をわずかにシフトさせてい
に光が波長を変える現象を断熱的波長変換15,21〜27) と呼ぶ.
る8,14,18).このような 格 子 シフト型 PCW(Lattice-Shifted
過去には図 2(a)のような共振器系で多くの研究があり,共振
PCW: LSPCW)の分散関係(フォトニックバンド)を PCW と
器内の光が Δλ≈λΔn/n だけ波長を変化させる.系に損失が
比較する形で図 1(c)に示す.バンドは小さな傾きが低群速度
なければ変換効率は 100 % であり,原理上,単一光子で
を,小 さな 曲 率 が 低 分 散 を 表 す.PCW は 光 の 禁 制 帯
あっても波長変換が可能である.ただしここでの Δλ は Δn の
19,20)
みで決まるため,一般に小さい.一方,共伝搬スローライト
(Photonic Band Gap: PBG)
近くで低群速度を示すが,
その周波数範囲は狭く,分散が大きいため,短い光パルスは
系を使えばより大きな Δλ が得られる(図 2(b))
.制御パルス
伝搬できない.一方,LSPCW のバンドは低群速度を示す周
は伝搬中に Δn を発生し続け,これと重なって伝搬する信号
波数範囲が広く,しかも低分散なため,短パルスでも形状を
パルスは,断熱的波長変換を継続的に受けるのである.図 2
変えずに伝搬できる.光通信波長 1.3〜1.6 μm の高強度パル
(c)は,制御パルスの群速度 vc と信号パルスの群速度 vs の
スを Si LSPCW に導入すると,非線形吸収(2 光子吸収,
比に対する Δλ の計算例である.両パルスの速度が近づき共
Two-Photon Absorption: TPA)により自由キャリヤが発生し,
伝搬が長くなると,Δλ は発散的に増大する.また,vc/vs が大
プラズマ分散による Δn が生じる.さらに LSPCW ではバンドに
きくなると信 号 が 停 止 する共 振 器 系 の 状 況 に 近 づき,
8,14)
変曲点が現れる
.その周辺で Δn によるバンドの周波数シ
フトをうまく利用すると,群速度や分散が可変になる.
共伝搬・逆伝搬スローライト系では,高強度の制御パルス
Δλ≈λΔn/n となる.つまり共伝搬系は共振器系の拡張といえ
る.図 2(d)は 2 つのパルスを共に低分散バンドに設定したと
きの実験例であり,共振器系より大きな Δλ=4.9 nm が観測さ
を低分散バンドの波長に設定して Δn を誘起し,別の波長の
れた.長い制御パルスのほうが信号パルスへの作用が均一に
信号パルスを制御する.信号パルスの波長,2 つのパルスの
なるので,スペクトル広がりが少ない単純なシフトとなる.
長さや入力タイミングによって現象が変わる.例えば共伝搬系
3.2
遅延チューニング
で信号パルスも低分散バンドに設定すると,制御パルスと並
次に,信号パルスを可変分散バンドに設定した共伝搬系を
走して長く作用を受ける.信号パルスを可変分散バンドに設
考える.図 3(a)の(i)のように信号パルスが遅れて入力される
定すると,制御パルスの作用を受けながら,群速度や分散を
と,すでに Δn が生じた後の導波路を信号パルスが通ることに
変える.信号パルスを PBG 付近に設定すると,透過/反射
なる.Δn があるとバンドは周波数シフトするが(図 3(b))
,
も切り替えられる.
信号パルスの ω は変化しないので,k が変化して,結果的に
群速度が減少する.一方,図 3(a)の(ii)のように制御パルス
と信号パルスが同時に入力され,共伝搬すると,断熱的波長
変換が起こる.バンド図上では信号パルスが ω と k の両方を
応用物理
596
OY167004(研究紹介_近藤先生・馬場先生)_下版_三校_再校_初校_0校.mcd
Page 2
第 85 巻
第 7 号(2016)
16/06/23 13:52
v6.20
(c)
非線形
スペクトル
拡大
分散補償
入力
Intensity(a.u.)
(a)
制御
パルスなし
18
16
14
λ
制御
パルス
あり
制御パルスなし
4
2
0
−20
0
20
Delay(ps)
12
信号パルス
制御パルス
自由キャリヤ
Intensity(a.u.)
(b)
Δ c(ps)
10
8
6
4
2
0
−2
−4
制御
パルス
あり
制御パルスあり
4
2
0
−20
0
20
Delay(ps)
−6
−8
λ
−10
図4
1542 1544 1546 −20 −10 0 10 20
λ(nm)
Delay(ps)
パルス圧縮.(a)光カー効果を用いる圧縮の概要.(b)共伝搬スローライト系における圧縮の概要.(c)制御パルスの入力タイミング
Δtc に対する信号パルスのスペクトルと相互相関測定された時間波形のカラーマップ.白線は制御パルスのタイミングを表す.右の波形は制
御パルスなし/ありのときの出力信号波形.強度は,波形観測と同時に測定した平均パワーとパルス時間幅から算出した.
変えながら遷移し,群速度が増大する.図 3(c)は出力され
スを可変分散バンドに,制御パルスを低分散バンドに設定す
た信号パルスの時間波形を入力タイミング Δtc ごとに観測した
るが,制御パルスをより短くし,大きな群速度をもたせて,後
もので,Δtc <−5 ps の(i)では遅延がわずかに増加し,Δtc
から入力する.こうすると制御パルスは信号パルスを追い越
≈0 ps の(ii)では大きく減少した.
すが,その際に信号パルスに断熱的波長変換を起こさせる.
ところで,(i)ではキャリヤの有無が遅延チューニングの起源
ここで制御パルスは LSPCW 自体の損失と TPA を受けて徐々
なので,制御パルスがなくなっても,キャリヤが消滅するまで
に減衰するので,信号パルス内でも Δλ が徐々に変化し,結
遅延は元に戻らない.一方,(ii)では制御パルスの重なりが
果的に単調なチャープが形成される.その後,LSPCW の中
直接的に信号パルスに作用するので,キャリヤ生成を利用し
で分散補償すると圧縮されたパルスが出力される.実測され
ているにもかかわらず,遅延は制御パルスの有無に追随して
た信号パルスのスペクトルと時間波形を制御パルスの入力タイ
高速に切り替わる.また,信号パルスの入力が遅れると,そ
ミング Δtc に対してカラーマップ表示したのが図 4(c)である.
れを補償するように出力が早まる(図 3(c)).つまり制御パル
信号パルスはスペクトルが徐々に拡がり,白線で表される制
スをクロックとすることで,光信号処理で一般に難しいとされる
御パルスの前に押し出される形で圧縮されている.入力時の
高速な光信号のリタイミング動作が実現できる.
フーリエ限界パルス幅 13.9 ps が,出力時には最小で 1.4 ps
3.3
まで圧縮された.圧縮率 9.9 はオンチップパルス圧縮30〜32)
パルス圧縮
パルスの時間圧縮には,スペクトル拡大とそれに伴う分散
で報告された最大の値である.
の補償が必要である.スペクトル拡大には,光カー効果による
自己位相変調が一般的に用いられる1,28〜30).ここでは時間 t
4.
逆伝搬スローライト系のドップラーシフト
に対して単調な波長チャープが形成されるので,その後の分
ここでは,制御パルスと信号パルスをそれぞれ LSPCW の
散補償と圧縮が容易である(図 4(a)).Si 導波路中のパル
別の端部から入射,伝搬させ,LSPCW の中で衝突させる.
ス伝搬でも光カー効果は起こるが,パルスが発生させる TPA
このとき,制御パルスによる Δn が PBG を高周波側にシフトさ
誘起キャリヤがパルス自らに作用する断熱的波長変換も同時
せる状況を考える(図 5(a)).信号パルスの周波数 ωin をバ
に起こる.しかもこれはパルス中央で大きくなるため,光カー
ンド端近くに設定すると,PBG がシフトした領域には進入でき
効果の単調なチャープを乱してしまう.実際,波長 1.55 μm
なくなるので,制御パルスは動くミラーとして働き,信号パル
付近で TPA を起こさない InGaP PCW ではパルス圧縮率 5.2
スはこれに反射される.つまりあたかも「光が光を反射する」
31)
が得られている
のに対して,TPA が起こる Si PCW では
32)
2.3 しか報告されていない
.
といった興味深い振る舞いが可能になる.このとき信号パルス
は,ドップラー効果によって周波数が ω≈ωin +2 kvc にシフト
これに対して,共伝搬スローライト系を用いると Si PCW で
すると予想される.類似の技術として,音響波が光を反射,
も大きな圧縮率が可能になる(図 4(b)).ここでも信号パル
ドップラーシフトさせる音響光学変調33〜35) があるが,音響波
共伝搬・逆伝搬スローライト系(近藤・馬場)/ 研究紹介
OY167004(研究紹介_近藤先生・馬場先生)_下版_三校_再校_初校_0校.mcd
597
Page 3
16/06/23 13:52
v6.20
c
Position (μm)
PBG
PBG
Wavenumber
20
信号パルスの
軌跡
10
Δ =−0.02
λin
Δ =−0.5
λin
10
c=
−0.100
−4
10
10−2
10−2
c=
−0.040
10−4
10−2
c=
−0.025
10−4
1400
20
10
0
0.5
−0.063
10−4
1600
1800
1400
1600
Wavelength(nm)
Δω
0.25
Δ
0.27
c=−0.143
30
0
c=
0.26
0.24
(b) 40
Wavenumber
−2
Normalized intensity
30
0
ωin
100
0.27
c=−0.077
ω (2π / )
Frequency ω
ω'
0
−0.1
(a) 40
ωin
(b)
Δ
自由キャリヤ
ω (2π / )
制御パルス
信号パルス
Position (μm)
(a)
1.0
Time (ps)
1.5
0.26
0.25
0.24
0.3
0.5
(2π/ )
0.7
図 6 信号パルス(実線)とミラーの Δn(カラープロット)の時空間的変化
(左図),および対応するバンド上の断熱的波長変換による遷移の軌跡(右
図).(a)信号パルスが完全に反射される条件.(b)信号パルスがミラーの中で
逆進する条件.
1800
フトのほかに灰色矢印のシフトも見られ,その振る舞いは,
図 5 スローライト誘起反射型ドップラーシフト.(a)信号パルスの反射の概念
とバンドのシフト.(b)LSPCW 入射端付近で観測された信号スペクトル c は
真空中の光速.λin は信号パルスの入力波長.
ω=ωin+(k−kin)vcに一致する.よってこれもドップラーシフト
と呼べるが,こちらは断熱的波長変換では説明できない.詳
しい説明は省略するが,これは非断熱的なドップラーシフトで
ある35,36).さらに図 5(b)では,Δn が小さくvc が速いとき,こ
は遅いため,シフト量は非常に小さい.一方,上記の PBGミ
れらのいずれにも一致しないピーク(白抜き矢印)が見られ
ラーは準光速で動くので,音響波より 4 桁以上も大きなシフト
る.これはバンド図において信号パルスが傾き vc の黒線上を
が期待できる.図 5(b)は衝突後の信号パルスのスペクトルの
遷移するものの,最終的に,最初のバンドに戻らない状況で
計算例である.水色の線は入力スペクトル,紺色の線は反射
ある.つまり信号パルスはミラーに進入し,そこから抜け出せ
スペクトルを表す.Δn が大きいときに注目すると,vc が大きい
ない.これはドップラー効果に当てはまらない断熱的波長変換
ほど波長シフトが大きくなるというドップラー効果の特徴が現
として説明される.
れ,LSPCW で実現可能な vc に対して 150 nm という巨大な
シフトが見られる.ただし Δn が小さいと,このようなシフトが
5. むすび
消滅する.
2 つの光の間に生じる非線形相互作用とそれによる光制御
これらの振る舞いも断熱的波長変換により説明できる.制
は,4 光波混合やパラメトリック増幅など,古くから研究されて
御パルスによる Δn は動的に発生するので,信号パルスは,
きた.フォトニック結晶導波路の共伝搬・逆伝搬スローライト
これに衝突する瞬間に断熱的波長変換を受けるのである.こ
系を用いれば,従来にない光制御がオンチップで実現できる.
の点を考慮して信号パルスと Δn に関する時空間的な軌跡と
今後,さらなる新機能の開発が期待される.
フォトニックバンド上の軌跡を計算すると,図 6 のようになる.
本研究は,(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構
図 6(a)は Δn が大きく,信号パルスがミラーの前に完全に反
(NEDO)
「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技
射されるときである.バンド上の信号パルスは黒線の上を遷移
術開発」プロジェクトの支援を受けた.
し,群速度の正負が逆転する k=0.5(2 π/a)を超えて,最終
的に最初のバンド(緑色)の上に戻る.断熱的波長変換とバ
ンドの理論からこの黒線を導出すると,ω=ωin +(k−kin +2
π/a)vc となり,ドップラー効果と同じ形式になった.つまりこの
波長シフトはドップラーシフトであり,それは断熱的波長変換と
等価だということがわかる.ところで図 5(b)では,黒矢印のシ
文
1)G.P. Agrawal: Nonlinear Fiber Optics (Academic, 2007).
2)G.T. Reed: Silicon Photonics (Wiley, 2008).
3)W. Bogaerts, R. Beats, P. Dumon, V. Wiaux, S. Beckx, D. Taillaert, B.
Luyssaert, J.V. Campenhout, P. Bienstman, and D.V. Thourhout: J.
Lightwave Technol. 23, 401 (2005).
応用物理
598
OY167004(研究紹介_近藤先生・馬場先生)_下版_三校_再校_初校_0校.mcd
献
Page 4
第 85 巻
第 7 号(2016)
16/06/23 13:52
v6.20
4)M. Dinu, F. Quochi, and H. Garcia: Appl. Phys. Lett. 82, 2954 (2003).
(1981).
5)H.K. Tsang, C.S. Wong, T.K. Liang, I.E. Day, S.W. Roberts, A. Harpin, J.
Drake, and M. Asghari: Appl. Phys. Lett. 80, 416 (2002).
29)A.M. Johnson, R.H. Stolen, and W.M. Simpson: Appl. Phys. Lett. 44, 729
(1984).
6)R. Dekker, A. Driessen, T. Wahlbrink, C. Moormann, J. Niehusmann, and
30)D.T.H. Tan, P.C. Sun, and Y. Fainman: Nat. Commun. 1, 116 (2010).
31)P. Colman, C. Husko, S. Combrié, I. Sagnes, C.W. Wong, and A.D. Rossi:
M. Först: Opt. Express 14, 8336 (2006).
7)Q. Lin, O.J. Painter, and G.P. Agrawal: Opt. Express 15, 16604 (2007).
8)T. Baba: Nat. Photonics 2, 465 (2008).
Nat. Photonics 4, 862 (2010).
32)A. Blanco-Redondo, C. Husko, D. Eades, Y. Zhang, J. Li, T.F. Krauss, and
9)C. Monat, B. Corcoran, M.E. Heidari, C. Grillet, B.J. Eggleton, T.P.
White, L. OʼFaolain, and T.F. Krauss: Opt. Express 17, 2944 (2009).
10)M. Shinkawa, N. Ishikura, Y. Hama, K. Suzuki, and T. Baba: Opt. Express
B.J. Eggleton: Nat. Commun. 5, 3160 (2014).
33)P. Debye and F.W. Sears: Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 18, 409 (1932).
34)E.J. Reed, M. Soljacic, and J.D. Joannopoulos: Phys. Rev. Lett. 90, 203904
19, 22208 (2011).
11)L.H. Frandsen, A.V. Lavrinenko, J. Fage-Pedersen, and P.I. Borel: Opt.
Express 14, 9444 (2006).
12)S. Kubo, D. Mori, and T. Baba: Opt. Lett. 32, 2981 (2007).
13)J. Li, T.P. White, L. OʼFaolain, A. Gomez-Iglesias, and T.F. Krauss: Opt.
Express 16, 6227 (2008).
14)K. Kondo, M. Shinkawa, Y. Hamachi, Y. Saito, Y. Arita, and T. Baba: Phys.
Rev. Lett. 110, 053902 (2013).
15)K. Kondo and T. Baba: Phys. Rev. Lett. 112, 223904 (2014).
16)K. Kondo, N. Ishikura, T. Tamura, and T. Baba: Phys. Rev. A 91, 023831
(2003).
35)E.J. Reed, M. Soljacic, and J.D. Joannopoulos: Phys. Rev. Lett. 91, 133901
(2003).
36)E.A. Ulchenko, D. Jalas, A.Y. Petrov, M.C. Muñoz, S. Lang, and M. Eich:
Opt. Express 22, 13280 (2014).
(2016 年 3 月 1 日 受理)
Profile
近藤
圭 祐(こんどう
けいすけ)
(2015).
17)K. Kondo and T. Baba: Phys. Rev. A 93, 011802(R) (2016).
18)Y. Hamachi, S. Kubo, and T. Baba: Opt. Lett. 34, 1072 (2009).
2012 年横浜国立大学工学部電子情報工学科卒,13 年 9 月
19)E. Yablonovitch: Phys. Rev. Lett. 58, 2059 (1987).
20)S. John: Phys. Rev. Lett. 58, 2486 (1987).
21)M.F. Yanik and S. Fan: Phys. Rev. Lett. 92, 083901 (2004).
22)M. Notomi and S. Mitsugi: Phys. Rev. A 73, 051803(R) (2006).
学術振興会特別研究員.応用物理学会,IEEE/Photonics,
同大学大学院工学府物理情報工学専攻修士課程修了.同年
10 月より同博士課程在籍中.スローライトの研究に従事.日本
SPIE 会員.
23)S.F. Preble, Q. Xu, and M. Lipson: Nat. Photonics 1, 293 (2007).
24)Y. Tanaka, J. Upham, T. Nagashima, T. Sugiya, T. Asano, and S. Noda:
Nat. Mater. 6, 862 (2007).
25)T. Kampfrath, D.M. Beggs, T.P. White, A. Melloni, T.F. Krauss, and L.
Kuipers: Phys. Rev. A 81, 043837 (2010).
26)D.M. Beggs, T.F. Krauss, L. Kuipers, and T. Kampfrath: Phys. Rev. Lett.
馬場
俊 彦(ばば
としひこ)
1990 年横浜国立大学大学院博士課程修了.94 年同大学助
教授,05 年同大学教授,現在に至る.フォトニック結晶,シリ
コンフォトニクスなどを研究.06 年日本学術振興会賞,12 年
108, 033902 (2012).
27)M.C. Muñoz, A.Y. Petrov, and M. Eich: Appl. Phys. Lett. 101, 141119
(2012).
28)H. Nakatsuka, D. Grischkowsky, and A.C. Balant: Phys. Rev. Lett. 47, 910
市村学術賞.16 年文部科学大臣表彰科学技術賞.15〜16
年応用物理学会講演会企画・運営委員会委員長.
共伝搬・逆伝搬スローライト系(近藤・馬場)/ 研究紹介
OY167004(研究紹介_近藤先生・馬場先生)_下版_三校_再校_初校_0校.mcd
599
Page 5
16/06/23 13:52
v6.20