Initiatives in the 2Upstream Domain 特集 アップストリーム分野への取り組み ー石油・ガス生産井とダウンストリーム設備を繋ぐ日揮 世界のエネルギー投資動向 2008 年後半から始まった急激な世界景気の低迷を受 けて世界の原油需要は減少傾向にあり、2009 年の原油 価格は2004∼2005 年と同等の水準まで低下していま による2009 年の石油需 す。国際エネルギー機関( IEA ) 要予測は2008 年 9 月以降下方修正が続き、本格的な原 油需要の回復は2010 年までは見込めないとの見方が広 がっています。 しかしながら、このような状況であっても石油メジャー や大手国営石油会社の対応は「短期的な景気や原油価格 の変動に左右されることなく、今後の経済回復および消 費の拡大を見据えて着実な原油生産量の増加を図る」と 原油回収プラント (アルジェリア) いう方針で一致しています。各社が将来への投資を減ら さない理由は、IEAによる「 2030 年における世界の一次 するという見方が多いためです。加えて現在生産してい エネルギー需要量は現在の1.45 倍に増加する」という予 る油田の中には、成熟期に達し生産量の減衰が始まって 測など、一次エネルギーの長期的な需要は、確実に増加 いる油田も確認されています。従って、各社は短期的な 経済状況に影響されることなく、原油生産量の維持およ び増加を着実に進める計画を打ち出しているのです。 世界の一次エネルギー需要予測 (単位:Mtoe(石油換算百万トン)) 17,014Mtoe 2006年合計量 6,000 また、石油メジャーや大手国営石油会社各社の今後の 2030年合計量 1 1 ,730Mtoe 開発投資額の内訳を見ると、投資額全体の半分以上を 「アップストリーム (上流)分野」に配分しています。これ 5,000 4,000 石油 3,000 天然ガス 石炭 は探鉱・生産事業への積極投資を通じて保有埋蔵量の確 実な増加を図るという考えに基づいています。 バイオマス 2,000 原子力 1,000 その他の 水力 再生可能な エネルギー 0 1980 1990 2000 (出典:IEA World Energy Outlook 2008) 14 日揮株式会社 アニュアルレポート 2009 2010 2020 2030 日揮が顧客に貢献可能な事業領域 日揮は、石油精製プラントやエチレンプラントなど「ダウ ンストリーム (下流)分野」を主体とするEPCコントラクター として現在に至っています。しかし最近10 年間の当社の ハイドロカーボン事業領域 上流事業 探査 試掘 中流事業 開発 生産 下流事業 石油精製 石油化学 原油処理 ガス処理 LNG 日揮の投資事業領域 • 米国ルイジアナ州などで実施中 • EPC 事業に技術知見をフィード バック 日揮の epC 事業領域 <事業比率(過去 10 年間平均) > 中流:50% 石油精製:25% 石油化学・化学:25% * 上流分野のうち「生産事業」はミッドストリーム(中流)とも呼ばれます。 事業分野別の売上高構成を見ると、ハイドロカーボン事業 のうちアップストリーム分野に分類される「生産事業」に関 の比率が、 連する設備(原油処理、ガス処理、LNGなど) ハイドロカーボン分野全体の約 50%を占めています。現 在もサウジアラビアにおいて大型原油処理設備やアルジェ リアで原油・ガス処理設備を建設中であり、2009 年度に 入りアルジェリア国営炭化水素公社(ソナトラック社)向け に大型ガス処理設備を受注したのに続き、UAE・アブダビ でアブダビガスインダストリーズ社からも大型ガス処理設 ソナトラック社向け大型ガス処理設備建設プロジェクト調印式 備を受注するなど、当社のアップストリーム事業は今後も さらに増加する勢いです。 当社のアップストリーム分野の実績が増加している主 な理由として、 ① 最近の原油・ガス生産設備は一層の大型化が進み、 クター」であることから、この信頼をベースとしてアップ ストリーム分野の設備についても、多くの顧客から任され ているのです。 このように、当社が長年ダウンストリーム分野で培った 高度なプロジェクトマネジメント力を持ったコントラク 高度な技術力とプロジェクトマネジメント力は、アップスト ターが必要となっていること リーム分野においても同様に発揮され、かつ顧客の幅広 ②従来よりも低品位な油田・ガス田の開発が増加して い信頼を得ています。 いるため、重質原油や酸性ガスといった取り扱い難 さらに当社は、事業分野拡大の一環として、米国やメ い物質のハンドリングや原油の回収率を向上するた キシコで石油・天然ガスの開発事業にも進出しています。 めの装置が必要となり、高度な統合技術力を持った これら事業で修得した技術、知識、ノウハウは当社の コントラクターが求められること EPCビジネスに効果的にフィードバックされ、アップスト などが挙げられます。 加えて、当社は「ダウンストリーム分野のベストコントラ リーム事業にも精通した幅広い総合力を持つコントラク ターとして、顧客に貢献できると考えています。 日揮株式会社 アニュアルレポート 2009 15
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