技術紹介

技術紹介
>> GROWTH UNDERPINNED BY OUR
TECHNOLOGICAL CAPABILITIES
成長を支える技術力
プラントの安全性を高める
エンジニアリングHSE 技術
近年、HSE( Health, Safety & Environment )に対する顧客の関心は高く、エンジニアリングコ
ントラクターに対し、設計段階や建設段階におけるHSE 要求が厳しくなっています。中でも設計段階
におけるプラントのリスク低減対策の一環として、ガス漏洩・爆発に対する安全性の評価はますます
重要となっています。日揮は、社会および顧客の安全に対する要求に応えるため、また適正な投資に
よる合理的なプラント設計のために、ガス爆発シミュレーション・システムを開発しました。
このガス爆発シミュレーション・システムは、3D-CAD( Computer Aided Design )、CFD
( Computational Fluid Dynamics, 数値流体力学)とFEM( Finite Element Method, 構造力
学)を利用した高度な統合シミュレーション技術によって構成されています。
このシステムでは、
■ プラント機器、配管、構造物とレイアウトを伴う3 次元情報
■ 風向、風速、気温、大気圧などの気象条件
■ 漏洩ガスの種類、流量などのガス条件
など、多様な条件をもとにコンピュータ上で仮想実験を行い、ガス漏洩・拡散、火災、爆発、爆風圧の
伝播、構造物の強度や変形を予測します。そこで得られたデータを反映し、プラント機器や制御室へ
の影響を考慮した耐爆設計を行い、さらに信頼性の高いリスク評価を行うことによって、プラント全体
の安全性を確保することができます。
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日揮株式会社 アニュアルレポート 2008
このようなシミュレーション技術は、日揮のコア事業であるガス処理プラント、LNGプラント、石油精
製・石油化学プラント、さらには洋上液化プラント
( LPG FPSO )などの幅広い分野に利用できます。
日揮は、高度なHSE 技術を幅広く活用することによって顧客のニーズに応え、受注競争力を上げる
とともに、プラントの安全性を高めて地球環境保全に貢献していきます。
ガス爆発シミュレーションの手順
ガス爆発後の爆風圧(シミュレーション結果)
ガス漏洩・拡散
着火、火災、爆発
爆風圧の伝播
構造物の強度・変形
耐爆設計
リスク評価
超臨界水を利用した
重質原油の改質技術の開発
アジア地域の旺盛な経済発展に伴い、2030 年までの世界の石油需要は白油製品を中心に現在の
約 1.3 倍に増加し、重油の需要は減退すると予測されています。このような状況の中で、原油価格は
高騰し、重質油と軽質油の価格差は拡大しています。
一方、軽質原油の生産量の限界や供給源の多様化によるエネルギーセキュリティの向上などの観点
から、重質原油や超重質原油の開発が進められ、その生産量は着実に増えてきています。特に、サウ
ジアラビアの原油埋蔵量に次ぐ規模を有し、超重質原油の代表格であるオイルサンドビチュメンは世
界から注目されています。しかしながら粘度や比重が高く、そのままではパイプライン輸送ができない
ため、井戸元でナフサによる希釈や熱分解装置(コーカー)
などで改質することによりパイプライン輸
送が可能となっています。
日揮株式会社 アニュアルレポート 2008
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しかし近年超重質原油の生産量の増大に伴い、希釈剤の不足や設備投資額の増加が制約となって
きていることから、オペレーションが容易で、かつ安価に改質できる技術が求められています。
現在日揮は、
(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構の委託研究事業として、超臨界水を利用した重
質原油の水熱分解技術を東北大学、中部電力(株)
、石油資源開発(株)
、新日本石油(株)
と産学連携
により開発を進めています。超臨界水分解技術は、触媒を使わない比較的シンプルな装置構成である
こと、パイプライン輸送ができる粘度まで容易に分解が進むこと、過度な分解によるコークや軽質ガス
の生成が抑制されること、また、スチームを使って流動性を上げて超重質原油を生産しているSAGD 法
( Steam Assisted Gravity Drainage )ではスチームを井戸元で共有できることなどの特徴がありま
す。カナダのアルバータ州においてSAGD 法により生産されたビチュメンを原料として、超臨界水の条
件下で改質試験を行った結果、パイプライン輸送の条件を満足する改質油が得られました。
今後も日揮は、東北大学における基礎研究と関係企業における工業化開発を連携して、スケール
アップのためのエンジニアリングデータを採取し、コーカーなどと比べてさらにコスト競争力を上げる
ことによって、日本発の重質原油改質技術の商業化を目指します。
オイルサンドビチュメン製造と超臨界水を用いた改質装置を組み合わせた例
SAGD( * )
改質装置
残渣油
ボイラー設備
水
高圧
蒸気
ビチュメン
ビチュメン
( API°
8.5)
回収設備
オイルサンド
排水
油層(地下)
( * )SAGD 法:Steam Assisted Gravity Drainage の略。
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日揮株式会社 アニュアルレポート 2008
超臨界水
改質装置
改質油
( API°
19〜25)