日本酒は日本人に一番合うお酒です ~東京農業大学

(2) 2007年(平成19年) 1 2 月 1 9 日(水曜日)
みのりくらぶ
(第三種郵便物承認)
日本酒は、日本人に一番合うお酒です
東京農業大学、小泉武夫教授が語る日本酒の魅力
昔から親しまれてきた日本独自の酒なのに、意外に知らない日本酒の世界。
東京農業大学教授で、醸造学・発酵学・食文化論の専門家である小泉武夫さ
んに日本酒の魅力、そして群馬の地酒がなぜおいしいかを聞いた。
海外で日本酒ブームの兆し
米を食べている日本人に一番合うわけ
です。日本の気候風土にはぐくまれた
食生活の洋風化で、この45年間に油
料理の食材とともに日本酒は育ってき
の消費量が非常に多くなりました。だい
た。味も日本人好みの風格を持ってい
たい3.4倍ぐらい。油の量が増えると辛
ます。
い酒が合う。嗜好が甘口から淡麗辛口
へと変わってきています。焼酎の台頭
もあり、日本酒の消費量は落ち込む一
群馬の地酒がいい理由
群馬のお酒は、全国新酒鑑評会でも
方でした。ですがこの冬から鍋ブーム、 関東信越国税局酒類鑑評会でもこのと
和食ブームが来ています。また、アメリ ころ非常に成績がいいですね。それに
カやヨーロッパの人たちは和食は素晴
は、
3つの理由があると思います。1つ
らしい、ヘルシーで栄養バランスがとれ
目は水がいい。伏流水がある。酒はな
ていると、非常に興味を持っています。 んといっても水がよくないとだめです。
和食のお酒は日本酒ということで、海外 2つ目は米がいい。山岳地帯の清涼地
で育った米が一番酒米として適してい
で人気が出てきています。
日本人好みの酒の風格
る。3つ目は、酒蔵が非常に底冷えする
んじゃないかと思うんですね。そういう
日本酒の魅力はなんといっても日本
酒蔵は非常にいい酒ができる。その3
料理に一番合うということ。それに、い
つが群馬にはそろっている。また歴史あ
ろんな世界があるでしょう。淡麗辛口も
る蔵が多く、いい酒造りにがんばってい
あれば、濃厚な酒もある。馥郁たる麹の
ます。だから、おいしい酒ができる。私
匂いもあれば、果物の匂いもある。極端
もいろいろ飲みましたが、風格があると
にいうと、日本酒のメーカーはおよそ
いうのでしょうか、群馬の酒のタイプは
1700社ありますが、全部味が違うわけで
非常に個性があり、それでいて軽々しい
す。奥が深いですよ。日本酒は、中国
酒じゃないんですね。
ふくいく
や韓国の影響をまったく受けずにでき
た日本独自の民族酒。米の酒ですから、
地酒は旅の楽しみ
地のものというのは、そこの気候風土
酒を飲みたいですね。一度、水沢うどん
かで、地酒をキュッと飲むなんていいも
や食文化に一番合っています。
「旅に酒
を肴に酒を飲んだら、うまかったね。そ
んですよ。これぞ、旅の楽しみです。
あり、肴あり」で、その土地の食文化と触
れから、館林の蔵元でウナギとナマズの
それと、地酒を飲むときは、土地の人
れ合い、旅の情緒を楽しむのがいいで
かば焼きを出してくれたけど、これもうま
と一緒に笑いながら飲むのが最高!
「群
すね。群馬の温泉でゆっくりと地酒を味
かったなあ。上州牛や下仁田ネギ、こん
馬の酒は待っています。群馬のお湯は待
わうんです。旅館で地元の酒を出すこと
にゃく、それに最後にうどんを入れて、 っています。群馬の肴は待っています」
は、お客さんに対する鉄則であり、サー
全部地元の食材で作ったすき焼きなん
さかな
ですね!
ビスですよ。やっぱり群馬に行ったら群
馬の酒です。私は群馬に行ったら、熱々
のみそ田楽なんかを食べながら群馬の
小泉教授インタビューの全文は、インターネットでご覧いただけます。
http://www.raijin.com/ad/minori/index.htm
日本酒のうまさを実感。群馬の地酒を応援します!
地酒は「造り手の顔が見える酒」
県立群馬産業技術センター
独立研究員 増渕 隆さん
このところ、評価が高まっている群馬の地
酒。全国新酒鑑評会や関東信越国税局酒
類鑑評会でも、群馬の地酒が多数入賞する
快挙が続いている。
「群馬の地酒のレベルが
上がってきた要因は、良質な水という自然条
件の良さに加えて、米や酵母など素材の影
響もありますが、酒造りに携わる若手の熱意
によるところが大きいですね」
と県立群馬産
業技術センター独立研究員の増渕隆さんは
話す。若手経営者や技術者が中心の「清酒
研究会」
では、お互いの技術力を共有化。同
センターが研究開発と技術力向上のために
実施している酒造研修会には、毎年若手有
志が参加し、熱心に勉強していくという。
同センターでは既に優秀な酵母(群馬
KAZE酵母)
を実用化しており、さらにオリジ
ナルの酒造好適米の開発も進行中。数年
後には実用化の見込みだ。酵母も米もオー
ル県内ブランドの地酒の誕生も遠くはない。
また、新世代の酵母の開発も計画中とか。
そんな思いをめぐらせながら飲む地酒は楽し
い。
「地酒の良さは、造り手の顔が見えてく
るところ」
と増渕さん。
年末年始、酒を口にすることの多いこの時
期、群馬の地酒を試してみるのもいい。そこか
ら地酒の面白みがきっと広がっていくはずだ。
信頼できる酒屋さんをパートナーに
そろって日本酒ファン
大沢 亘さん、淳子さん(前橋市)
県酒造組合主催の全国きき酒選手権県
大会で、そろって好成績をあげるなど、日本
酒好きな大沢亘さん、淳子さんご夫妻。
「10
年ほど前に妻と東北旅行に行った時、ビッ
クリするほどおいしい日本酒に出会いまし
た。今まで日本酒と思って飲んでいたもの
は、別物じゃないかと思うくらいに
(笑)
。それから、おいしい日本酒探
しが始まりました」
と、楽しそうに話
す。日本酒に興味を持ち、飲んで
みようという入門者は、フルーティ
ーな香りで口当たりが良い吟醸酒
系がお薦め。熱心で信頼のおける
酒屋さんを見つけ、気軽に何でも
聞いてみて、さらに世界を広げてほ
しいという。
日本酒は、お米から作る日本独
自のお酒。その風土で生まれた酒
が一番おいしいはずと2人で口をそろえる。
地酒の味わいのゆえんだ。和食との相性も
抜群で、適度の晩酌は健康にもいい。
「私の
の
楽しみ方は、好みのぐい呑みと、おいしい酒
で酔うこと。桃山時代に生まれた唐津や織
部の焼きものが好きで、この時代に生きた
信長や秀吉、千利休に思いをはせながら一
杯やる。至福の時です。みなさんも、まずは
日本酒で乾杯しましょう」
。