学籍番号 TK 氏名 平成 年 月 日 第3回のクイズ 工業物理化学 II 講義の

学籍番号
TK
氏名
平成
年
月
日
工業物理化学 II
第3回のクイズ
講義の開始にあたり、マイ(またはネットワーク)コンピュータ(fsv0、
Work_Win)を用いて、配布ファイルを自分のコンピュータのデスクトップ
へコピーして下さい。さらに、各自の 3.5inch のフロッピーディスクへもコ
ピーして下さい。コピー後、fsv0、Work_ Win のウィンドウ画面は閉じてお
いて下さい 。
以下のクイズ1∼7は全員解答して、「出席票」に氏名、学生番号とともに記入して下
さい。また、第1回レポート(提出期限5月 17 日 17 時までに、場所 638A 室前のレポ
ート提出箱へ提出)を講義中に作成してもかまいません。
本日の主題
高分子の物性計算
分子量・物性の測定と予測方法
逆浸透法による海水の
淡水化、浸透圧、粘度(極限粘度係数)、光散乱、GPCによる高分子の分子量測定
復習;混合物の分子量(数平均分子量、重量平均分子量)
クイズ
1
高分子の重量平均分子量を求めるためにまず計算しなければならないものは?
A) 浸透圧
B) 質量分率
C) 溶液粘度
D) 蒸気圧
クイズ2
ポリエチレン、ポリスチレン、PET、ポリ乳酸などに共通するリサイクルを可能とする
性質は?
A) 生分解性
B) 結晶性
C) 熱可塑性
D) 熱硬化性
クイズ3
Calculate the mass average RMM of a mixture of equal amounts ( n ) of two polymers,
one having M r = 62,000 and the other M r = 78,000.
A) 70,000
B) 71,000
C) 62,000
D) 78,000
クイズ4
重量平均分子量 M w =30,000 で直径5mm程度のポリエチレンペレットを原料として、
ポリエチレンの袋を製造しようとしている。使用する装置は?
A) 射出成形機
B) 圧延装置
C) 粉砕装置
D) インフレーション成形機
クイズ5
地球を 1.5mの直径の球程度の大きさに縮小して考えた場合、地球にある全海水の量は
およそどれほどですか。
A) 1000 リットル
B) 200 リットル C) 20 リットル
クイズ6
1
D) 2 リットル
地球を 1.5mの直径の球程度の大きさに縮小して考えた場合、地球にある全淡水(北極
やヒマラヤの氷も含む)の量はおよそどれほどですか。
A) 100 リットル
B) 200cm 3
C) 100cm 3
D) 60cm 3
クイズ7
福岡市も水不足による渇水対策として、海水を1日5万トン淡水にかえる海水淡水化を
行っている。エンジニアの観点(技術の実用性、ランニングコスト;運転経費やキャピタ
ルコスト;設備経費なども考慮)から最も適当な方法を選び、その理由も記述して下さい。
A) 逆浸透装置
B) 太陽光蒸発装置
C) 蒸発装置
D) イオン交換装置
地球の資源量について考えるために、直径約 13,000km(福岡ー大阪間
約 600km)の地
球を約 1000 万分の1、すなわち 1.5mの直径の球程度の大きさに縮小して考え(約 867
万分の1)てみましょう。
この大きさでは、農作物を作ることのできる耕作面積は、およそハンカチ1枚程度の大
きさになります。
地球を 1.5mの直径の球程度の大きさに縮小して考えた場合、地球にある全海水の量は
およそ2リットルです。水の大半は海水として存在し、そして淡水は、60cm 3 ほどに対応
します。しかも、そのほとんどが北極、南極、ヒマラヤ山脈にある雪、氷です。すぐに利
用できる川、湖の淡水は、スプーン1杯程度です。淡水がきわめて貴重な資源であること
がわかります。
科学技術を用いると、海水を真水(淡水)に変える淡水化も可能です。イオン交換樹脂
を用いると高濃度の海水を作り、海水から塩を作ることができます。ところが、イオン交
換樹脂法は、淡水化には、経済的に不向きである。また、海水を蒸発・凝縮により純水と
高濃度海水にする蒸発法は、水の蒸発潜熱がきわめて大きいためランニングコストが大き
く経済的に不向きである。電力供給のある環境で、低塩濃度の海水から淡水を製造するに
は、現時点では逆浸透法がもっとも適当と考えられます。
浸透圧を工業的に利用するには、溶媒の分子は通すが溶液中の溶質分子を通さない性質
を持った膜、すなわち半透膜を用いなければならない。半透膜としては、現在は有機化学
反応で合成された優れたものが数多く提案されている。インターネットを利用して主な製
2
造企業と価格について調べてみると、化学企業のことがよくわかっておもしろいです。さ
れに、装置を設計・操作するには、浸透圧について物理化学的に理解する必要があります。
i )浸透現象
水分子が半透膜を透過して
海水側に流入する.
海から陸へ移動する水
4万km3
雲
水
水
海水
海水
半透膜
11万km3
( iii )逆浸透現象
ii )浸透圧
陸への雨・雪
陸からの蒸発
7万km3
雨・雪
圧力
蒸発
38万km3
42万km3
浸透圧
水
海水
水
浸透現象により生じた水面差に相
当する圧力を浸透圧という.
海水側に浸透圧以上の圧力を加えると,
水分子が海水側から半透膜を通じて水
側に流入する.
逆浸透の原理図
海水13億5000km3
逆浸透膜を利用した海水の淡水化(福岡市建設)
処理量
5万トン/日
各種分子量測定方法
3
海水
○浸透圧
浸透圧πは、溶液の体積 v[l]、温度 T[K]、溶質の物質量 n[mol]により
次式のように表されされる。
πv =nRT
・・・・・・・・・( R は気体定数)(1)
この式を、浸透圧に関するファンホッフの法則という。次の理想気体の状態方程式と比較
するとこの式の意味がわかりやすい。
p V=nRT
(2)
溶質の質量を w [g]、1mol の質量を M [g/mol]とすると、次式が得られる。
w
M
w wRT ρRT
M =
=
=
πV
π
M
n=
(3)
(4)
補助資料 P.77 を参考にすると、
ΠV = n B RT
Π = C B RT
Π = RT (
(A-2-33)
( C B =n B /V
(A-2-34)
)
wB
)
MB
Π = ( RT )(
(A-2-35)
1
)C + BC 2 + DC 3 + ・・・
MB
(A-2-36)
この(A-2-36)式を利用すると高分子溶液の浸透圧から高分子の分子量を求めることができ
る。(A-2-36)式の両辺と濃度 C で割って、Π/ C を縦軸に C を横軸にとって最小二乗法により
切片と傾きを求めると、切片から高分子の分子量 、傾きからビリアル係数 B が求められま
す。
例題
1
The concentration dependence of the osmotic pressure of solutions of a macromolecule
at 20 ℃ was found to be as follows:
c/g dm -3
1.21
2.72
5.08
6.60
Π Pa
134
321
655
898
Find the molar mass of the macromolecule and the osmotic virial coefficient.
20 ℃におけるある高分子溶液の浸透圧の濃度依存性は、以下のようである.
その高分子のモル質量と第二ビリアル係数を決定せよ.
4
[解]
Therefore, to determine M and B we need to plot Π /c against c.
We draw up the
following table:
c [g dm -3 ]
1.21
Π /c
111
2.72
5.08
6.60
118
129
136
この関係を最小二乗法で求める。n 組のデータ( x i ,y i )( i =1,2,…,n )に対して、直線 y = a 0
+ a 1 x を最小二乗法で求めて a 0 , a 1 を求めるには、次式(暗記不要)を利用する。
n
n
(
a0 =
∑
x i 2 )(
i =1
∑
yi ) − (
i =1
n
n
∑x
2
i
∑
−(
i =1
n
n
y i x i )(
i =1
n
∑
n
xi )
n(
i =1
∑x )
(1),
2
a1 =
∑
i =1
n
n
∑
x i )(
i =1
n
n
i
i =1
y i xi ) − (
∑x
2
i
i =1
−(
∑y )
i
i =1
n
∑x )
(2)
2
i
i =1
ExcelやExcelのビジュアルベーシック(VB)を利用すれば容易に切片と傾き( a 0 , a 1 )を
求めることができる。また、電卓を用いても次のように各Σを計算して切片と傾き( a 0 , a 1 )
を求めることができる。
この問題では、 x i = c, y i = Π /c であるから、各Σを計算すると、
Σ x = 15.6
Σ x 2 = 78.2
Σ y=
494
Σ yx = 2008
これらの数値を式(1),(2)に代入すると
a 0 = 105
a 1 = 4.69
,
The points are plotted in Fig.1.
and a slope of 4.69,
A least-squares analysis gives an intercept of 105
It follows that
RT
= 105 Pa g -1 L = 105 Pakg -1 m 3
M
and hence that
8.314 JK −1 mol −1 × 293K
M =
105Pakgm 3
= 23.2 kg mol -1
The slope of the graph is equal to RTB/M 2 , so
RTB
= 4.69 Pa g -2 L 2 = 4.69 Pakg -2 m 6
M2
Therefore,
B= 1.04 m 3 mol -1
5
20℃におけるある水溶液の浸透圧は、0.15MPa であった。この溶液のモル濃度を求
問1
めよ。
36℃におけるある生物の浸透圧は 0.8MPa であった。この生物に点滴で栄養を与え
問2
るために、この生物の浸透圧と等しいブドウ糖水溶液を作りたい。溶液1リットル中にど
の程度の量[g]のブドウ糖を溶解すればよいか。ただし、ブドウ糖の分子量を 180 とする。
4MPa で操作している逆浸透圧装置のサンクションポンプのシリンダ直径が8inch
問3
である場合、シリンダにかかる力は何Nか。ただし、1inch は 2.54cm とする。
粘度から計算する分子量
溶液の粘度測定から決定される極限粘度係数[η]より高分子の分子量 M を求める方法
極限粘度係数[η]は溶質分子に固有な性質をあらわす量であって、線状高分子の溶液では、
その分子量 M と次の関係がある。
[η]= KM α
(1)
ここで、K 、αは溶媒を指定すれば高分子物質に固有な定数である。したがって、[η]を測
定し、これから分子量を求める事が出来る。
[η]を求めるには濃度の違った種類の溶液について粘度を測定し、それぞれの溶液の
(η−η w )/(η w c )
を求めればよい。
またはln(η/η w )/ c
と c の関係をプロットしてc→0 の切片
c が十分小さい範囲では直線関係になる。
[η]:極限粘度係数
(2)
(3)
例題2
以下の粘度データより、ポリビニルアルコール(PVA)の粘度平均分子量 M を決定せよ。
PVA 水溶液
濃度
c [g/100cc]
相対粘度
η/η w [wt.%]
絶対粘度
η[g/cm・S]
0.1
0.1666
0.25
1.031
1.065
1.075
0.008255
0.008527
0.008608
1.125
1.182
0.009008
0.009464
0.3333
0.5
η:PVAの粘性係数、
η w :水の粘性係数(ここでは、η w =0.008007 g/cm・S)
c :溶液の濃度(通常は溶液 100cc 中の溶質のグラム数で表す)
6
ただし、ポリビニールアルコールの場合、 K =0.000666、
α=0.64 である。
[解]
極限粘度係数を求めるために、データより下記のように整理した。
PVA 水溶液
濃度
c[g/100cc]
相対粘度
η/η w [wt.%]
絶対粘度
η[g/cm・S]
0.1
0.1666
1.031
1.065
0.008255
0.008527
0.3100
0.3902
0.3053
0.3780
0.25
0.3333
0.5
1.075
1.125
1.182
0.008608
0.009008
0.009464
0.3000
0.3750
0.3640
0.2893
0.3534
0.3344
(η-η w )/(η w c)
(ln(η/η w ))/c
(η-η w )/(η w c)を縦軸にcを横軸にとって、データをプロットすると、最小二乗法によ
り切片 0.3243、傾き 0.0872
となる。
極限粘度と分子量の関係式;(1)式より、
[η]= KM α
この式を変形して、
M=([η]/ K ) 1/ α
1
⎛ 0.3243 ⎞ 0.64
=⎜
⎟
⎝ 0.000666 ⎠
=15800
* **********************************
さらに進んだ学習
* **********************************
高分子の物理化学的取り扱いについて学んできました。さらに進んだ学習を希望される
方は、補助資料 P.55∼68 に Flory(フローリー)の高分子溶液の理論の説明とその工業的
使用方法について解説しておきましたので、見てみて下さい。高分子溶液の組成や高分子
中に残存する溶媒や蒸気の量を理論的に計算できることがわかります。理論は、①分子の
配列の確率Wを計算し、②ボルツマンの式(エントロピーS=klnW)からエントロピーを
計算する。さらに、③過剰自由エネルギーをSから計算し、それから活量を計算して組成
を求めることができます。
* **********************************
第1回レポート
* **********************************
第1回レポート(提出期限5月 17 日 17 時までに、場所 638A室前のレポート提出箱へ提
出して下さい。用紙はA4 の大きさとし、表紙に学籍番号と氏名を記入して下さい。
1)
本日の例題1∼2を配布ファイル「浸透圧 PhyChem01 最小 VBA」、「粘度課題
(VBA)」を利用して解き、最小二乗のグラフとそれを用いて求めた傾き、切片の値お
よび分子量の求め方を記述して提出して下さい。
7
2)
前回(第2回)の例題 1 および前回(第2回)の問7(補助資料 P.45∼50 を参照)
を配布ファイル「Polylactic_acid_04」、「Polymerl_RMM_01」を利用して解き、使用
したVBコード(プログラム・ステートメント)と計算結果の Excel
sheet を出力し、
その計算方法を簡単に(自由記述)説明し提出して下さい。
3)
文章作成ソフト(ワープロソフト;例えば Ms-Word)を用いて、トヨタが
実施しているポリ乳酸の利用技術とリモネンにより発泡スチロールをリサイクルする
ソニーの技術の意義について説明して下さい。(5行以上)
4)
補助資料 P.51の分子量分布曲線の問題を本日配布ファイル「分子質量分布演習」
を用いて解き、その分子質量分布のグラフを印刷し提出して下さい。
5)
本日の問1∼3
6)
配布ファイル「Oil_S_SO2_04」、
「Show_AutoShape02_Ribbon」を利用して,sono
使用方法を簡単に(自由記述)説明し提出して下さい。
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予告
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次回の講義で使う溶液(溶液組成と非理想性)について、今回利用した分子量に関わる
性質として、溶液の束一性がある。補助資料P.71、P.75∼77、およびP.86∼92 に関して目
を通しておいて下さい。また、 リモネン、リナロールと発泡スチロールのリサイクル技術
ならびに、水蒸気蒸留などの水蒸気の工業的利用法 についても調べてみて下さい。今回の
取り上げた 浸透圧、粘度(極限粘度係数)、光散乱、GP Cなどの分子量測定法は、 高分子
の分子量測定に 適しています。次回の主題である「溶液」(補助資料P.71∼79)
成と非理想性
溶液組
溶液の束一性と分子量( 沸点上昇、凝固点降下、蒸気圧 )で取り扱う計算
では、比較的分子量の小さい分子 に対して有効な方法を示します。および水蒸気蒸留(補
助資料P.75)の利用です。
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