平衡と自由エネルギー 基礎物理化学 14 Nov. 2007 陶 慧 エンタルピー: 反応に伴うエネルギー変化を知る上で重要な関数 エントロピー: 反応の可逆性を知るのに重要な関数 自由エネルギー: エンタルピーとエントロピーを実際の反応に適用するための関数 1.ギブスの自由エネルギー;G 定圧下 大部分の化学反応,生物学的過程は定圧下で進行する. 低温定圧下では,系の自由エネルギーG は常に減少する. 系の変化は自由エネルギーG の減少する方向に起こり, 自由エネルギーG の極小が系の平衡状態を示す条件となる. G = H + TS 等温,定圧過程では次式が導かれる. ∆G = −T ∆S < 0 2.ヘルムホルツの自由エネルギー:A 定積下 A = U + TS 等温,定積過程では次式が導かれる. ∆A = −T ∆S < 0 3.標準自由エネルギー変化 等温等圧下で起こるエネルギー変換によって生じる仕事を考えると,エンタルピーと同様に自由エネルギ ー変化を求めることができる.標準状態(1気圧,298.15K)において安定に存在する単体の標準自由エネ ルギーをゼロと定める.この場合の自由エネルギー変化は以下の式で求めることができる. (T0 は標準状態を示す) ∆GT 0 = ∆H T 0 − T ∆ST 0 -1- 4.自由エネルギーと自発性 化学的および生物学的過程に対して,定温定圧条件下では, ΔS=+, ΔG=− ΔS=−, ΔG=+ ΔS=0, ΔG=0 : 過程は順方向に自発的に進行 : 過程は逆方向に自発的に進行 : 平衡状態 である. 5.熱力学量の相互関係 可逆過程では,以下の式が成り立つ ∆U = T ∆ S − P ∆V ∆H = T ∆ S + V ∆P ∆A = − S ∆T − P ∆V ∆G = − S ∆T + V ∆P ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 例題1 25 [℃] にある 1 [mol] の理想気体が,10 [ℓ] から 20 [ℓ] へ等温可逆的に変化した.この過程に対する自由エ ネルギー変化(ΔA とΔG)を求めよ. 例題2 25 [℃] にある 1 [mol] の理想気体が,1 [atm] の一定外圧にたいして,10 [ℓ] から 20 [ℓ] へ等温不可逆的に 変化した.この過程に対する仕事 w,自由エネルギー変化(ΔA とΔG)を求めよ. 例題3 27 [℃],1 [atm] で 5 [mol] の水素と 2 [mol] のヘリウムを混合するときのギブスエネルギー変化ΔG を求めよ. ただし,気体はすべて理想気体とする. -2-
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