Brexit(ブレクジット):欧州における特許保護の影響

Brexit(ブレクジット):欧州における特許保護の影響
イギリスの欧州連合(EU)からの離脱決定は、グローバルマーケットに衝撃を与
え、不安を招いた。この決定は、欧州統一特許裁判所(Unified Patent Court;
UPC)の運営開始日に影響を与える可能性は高いが、欧州における特許保護の獲得た
め、出願人に利用可能な現在のルートには変更がない。
欧州における多国間の特許保護は、依然として、欧州特許出願、及びEuro-P
CT出願、すなわち、欧州広域段階に移行したPCT出願を出願することによって
得ることができる。確かに、イギリスは長く複雑な離脱手続きの後に欧州連合(E
U)を去るはずだが、イギリスは、依然として欧州特許出願及びEuro-PCT
出願の付与手続きを支配する欧州特許条約(European Patent Convention; EPC)の
加盟国であるし、加盟国であり続けるだろう。欧州特許機構(European Patent
Organization)は、国際的な非EU組織であり、38の加盟国のうち、スイス、ノ
ルウェー及びトルコを含む10の加盟国はEU加盟国ではない。
EPCはEUに縛られていないため、出願人は依然として、EPCの一部である他
のEU加盟国の場合と同様に、EPOへの直接出願、又はEuro-PCT出願に
よる欧州特許を経て、イギリスにおける保護を求めることが可能となる。
単一の効果を持つ欧州特許に対する将来の影響について、単一の効果を持つ欧州特
許の領域範囲には、イギリスが含まれないことになるだろう。単一の効果を持つ欧
州特許を確立する2つのEU規則は、UPC協定が施行されると有効となるが、E
U以外の加盟国には適用することができないためである。イギリスがEUを離脱す
る前にUPC協定の批准を進めることは不可能ではないが、実際にはほとんどあり
得ないだろう。
欧州特許が将来の単一の保護制度の下で許可されると、出願人にはEU加盟国につ
いての単一の特許保護を要求するオプションが与えられ、これによって多くの場合、
コストが節約させる。トップ4の料金体系の導入後に作られたシミュレーションに
よって、少なくとも4~5カ国で保護が求められる場合、国によっては、特に20
年の期間の前半において、節約できる可能性があることが示されている。新しい単
一の保護制度の開始時には、単一の効果を持つ欧州特許は、少なくとも13カ国を
カバーするが、これは新しい単一の保護制度に必要な国の最小数である。長期的に
は、単一の効果を持つ欧州特許は、(スペインとクロアチアを除き)EUの残りの
加盟国をカバーし、最大で合計25カ国になるだろう。結果として、将来的には、
欧州特許の出願人は、EPCに参加していないEU加盟国と同様に、単一の保護制
度の外側にいるEPC加盟国として、年金料金をイギリスの国内レベルでも支払う
必要があるかどうかを検討する必要があるだろう。
Brexitを受けて、UPCの運命は、特に、UPCを開始させるために法律の
変更が必要かどうかという点において、明確ではない。現在イギリスは、すでにU
PC協定を批准したフランス、及びその過程にあるドイツに加えて、批准が必須な
3カ国の1つである。UPC協定の Article 89(1) は、必須の批准国の数を2つに
減らすため、改正する必要があるか?UPC協定は、イギリスをイタリアなどの他
の必須の批准国と置き換えるように改正する必要があるか?または、変更せずに、
さらに遅延させることなく、他の加盟国がイギリスなしに進めるようにするのか?
これらの質問、及び中央局(central division)ロンドン支部の運命や、最も重要
なこととして、イギリスを含めない単一の執行制度による価値などの他の質問に対
する答えは、今後数ヶ月の間、イギリス並びにEU機関及びそれらの加盟国が取る
政治姿勢に依存するだろう。