運動性貧血と無月経

20.運 動 性 無 月 経 と 骨 代 謝
女子運動選手の月経異常には主に初経発来遅延と続発性無月経がある。重症度によってエストロゲン値が30-50pg/ml に維持さ
れる黄体期不全の第Ⅰ度無月経とエストロゲン値が20pg/ml 以下で卵胞期の傷害を伴う第Ⅱ度無月経に分類される。第Ⅱ度無月
経はプロゲステロン投与のみでは月経は発来せず長期に及ぶと回復しにくい。
運動性無月経は女子マラソン選手の40-50%と一般若年女性より高頻度にみられるがその原因はホルモン環境の変化である。
過度の運動ストレスとか、体脂肪率が低い事によりホルモン生合成の場で原料不足という支障をきたし、卵巣ではエストロゲン合成
が低下する結果無排卵になると考えられる。また運動負荷は内分泌に影響を及ぼしてプロラクチン、β エンドルフィン等を増加させ
て卵巣機能を抑制させる。
短期的な問題はないが長期に及ぶと無月経は難治化し、骨代謝にも影響して骨吸収に傾き閉経時の骨量低下と同様に疲労骨折の
危険が高まる。放置されると症状として現れるのに5~10年の期間がかかるが生涯に渡って悪影響を背負う事になる。特に初経後
の2年間は骨量の獲得が最大になるのでこの期間の過激な運動、ダイエットによる過度の体重減少は避けるべきである。
初潮期では体脂肪率がおよそ17%以上でないと月経は発来しないし、正常月経には22%以上が必要である。標準体重と比較す
ると85%まで回復すれば月経も回復する。逆に30%以上の肥満になると初経の発来も遅くなる。また急激な減量によって1年に5
kg又は元の体重の10%以上の体重減少でも無月経を起こす。排卵が抑制されるという事は身体の防衛反応と考えられ緊急事態
を意味し、妊娠、出産も出来ないほどの体力低下があるという意味であり過度の減量は体調の維持も不可能で故障の原因でもある。
人の寿命は延長したが閉経期は延長していない。高齢出産リスクの自然の回避とも言える。
急激、過度のダイエットは栄養バランスを崩しやすく筋肉、骨に危険性が高い。体重の管理よりも栄養に配慮しながら脂肪と筋肉の
バランスを保つ事が基本であるが競技の為減量の必要な場合は脂肪の減少を、増量には除脂肪体重(LBM)の増加を指標に計画
すべきである。実際は持久型種目の場合体脂肪率が低い程競技成績自体には有利となるので健康上の問題としては大きい。
無月経の治療には不規則な生活習慣の改善、ストレス回避、体脂肪率22-25%の保持、薬物療法としては卵巣機能の刺激かカ
ウフマン療法(エストロゲン剤とエストロゲン剤+プロゲスト-ゲン剤の順次投与)またはピル療法を2カ月に1回併用して女性ホル
モンを補充して投与後に性器出血を起こさせる。初経発来前からハ-ドな運動を行って18歳に達して月経未発来の場合は積極的
なホルモン補充療法が必要であり3ヶ月以上無月経が続く場合にも運動量を軽減させて性周期を改善させるべきである。
性器出血が試合前に終了するように投与時期を調節する。また正常月経の場合でもレ-スの当日は卵胞期(月経終了後10日位
迄)で臨むほうが一般に良いコンディションが維持できる。従って出来れば2~3カ月前に月経を移動しておくほうが良い。月経前7
~10日の間に起こる周期的な精神身体症状で月経発来と共に消失する症状を月経前緊張症(PMSpremenstrual tension)といい生
殖年齢女性の30%程度にみられるが運動はPMS症状を軽減させる。月経障害治療剤、排卵誘発剤にはド-ピングコントロ-ルさ
れた薬物が含まれており競技大会では注意を要する。
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五日町鍼灸院
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