報 告 書 - 高校生のための日本の次世代リーダー養成塾

第9回
日本の次世代リーダー養成塾
報
告
書
【開催日程】
2012年7月27日~8月9日
2012年12月
0
目
次
ページ
1.第9回日本の次世代リーダー養成塾を開催して・・
1
2.開催概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
3.カリキュラム表・・・・・・・・・・・・・・・・
3
4 . 講 師 ・ 講 義 内 容 一 覧 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4
5.講義概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
6 . 塾 期 間 に お け る 成 果 ・ 課 題 や 卒 塾 後 の 様 子 ・ ・ ・ ・ 20
7 . ハ イ ス ク ー ル 国 会 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 42
【資料】
1 . 塾 期 間 中 の 塾 生 ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 63
2 . 卒 塾 後 の 塾 生 ・ 保 護 者 ・ 学 校 ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 ・ 70
3 . 塾 生 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 76
4 . 塾 生 高 校 一 覧 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 77
5 . ク ラ ス 担 任 ・ 学 生 リ ー ダ ー 及 び ス タ ッ フ 名 簿 ・ ・ ・ 78
6 . ご 協 賛 い た だ い た 皆 様 と ご 協 力 い た だ い た 皆 様 ・ ・ 81
1
1.第9
1.第9回日本の次世代リーダー養成塾を開催して
回日本の次世代リーダー養成塾を開催して
第9回の「日本の次世代リーダー養成塾」は、東日本大震災から1年以上が過ぎたにもかかわらず、
復興が思うように進まない現状の中で行われました。開催地である福岡県宗像市の谷井博美市長から、
昨年から始まった被災地特別枠は「少なくても3年は継続すべき」との温かい参加費支援の申し出を
頂きました。そのおかげで、岩手県8名に加え、今年はどうしても福島県から参加してもらいたいと
の願いから福島県教育委員会のご協力で2名の高校生が参加することができました。いまだに避難区
域に指定され、いわき市で避難生活を余儀なくされている参加者は、リーダー塾で学んだことが後押
しとなって、今は、生徒会長に選出され、地元で活躍しています。本当にうれしい限りです。
今年のリーダー塾では、昨年に引き続き、従来の講師に加え、地方自治体や国で具体的に支援に携
わっていらっしゃる方々に講師をお願いし、震災復興の難しさも忌憚なく話していただきました。そ
の上で、当面、最も重要な課題である日本のエネルギー問題を高校生としてどう考え、自分の生活を
いかに変えていくのかを考える機会として、今年で4回目となる「ハイスクール国会」で「エネルギ
ーの未来を考える復興会議」と題して、深く掘り下げて議論させました。2030年に彼らは30代
となり、仕事や家庭で重要な役割を果たしています。その時代を想像して、様々な角度から政策を立
案しました。2週間の議論の結果、2030年に日本が進むべき道は原子力発電所をゼロにするとい
う選択でした。確かに達成するためには、一人一人が大変な努力をしないといけません。その覚悟が
いかに必要なことかをことあるごとに塾期間中に塾生に語りかけたつもりです。
今、日本は、エネルギー問題だけではなく、財政・経済、外交、憲法の問題など日本が今後100
年生きていくための選択を迫られています。国のかたちをどう創造していくのか、これまでになく、
一人一人の選択が求められています。そんなことを考えさせられる今年のリーダー塾でした。
夢に向かってどんな困難なことにもチャレンジして、きちんと自分の道を切り開く人となってほし
い。そのような思いで始まったリーダー塾は、来年で10周年を迎えます。今年で卒塾生は1485
名となりました。ここまで来られたのは、他ならぬ各地方自治体、協賛企業、講師の皆様、各関係施
設や個人として応援していただいたすべての皆様のおかげです。
混沌の中からの旅立ち。この時代に、何を高校生に教えていくべきなのか。知識が多いに越したこ
とはないですが、私は、やはり、日本人がDNAとして持っている「気が利く」
「痒いところに手が届
く」「思慮深い」「利他の精神」などの美徳を自然に備えた人をいかに育てるかが最も大事ではないか
と痛感します。
今回、塾終了後の保護者のアンケートで「塾から帰ってきてすぐに『行かせてくれて本当にありが
とう』と感謝されました」というご返答をいただき、胸が熱くなりました。2週間の塾が終了して、
素直に感謝することができる塾生の姿は、どんなことより大事だと思います。
本来、平和を愛する国民が、隣国と刺々しく争う道を選ばないためにも、歴史から学び、知識を蓄
えてほしい。そして、人の話をきちんと聞いて、自分の意見を言い、相手に納得してもらう。そのた
めにも思慮深い人に育ってほしい。日本人はけっして尊大であってはなりません。
来年の10周年では、明日の日本をどうしていくのか。徹底的に「ニッポン」をキーワードに知識
を集積して、議論を重ねていきたいと思います。明日を担う次世代の育成に、さらなる皆様のお力を
お貸しいただきたいと存じます。今年も本当にありがとうございました。
日本の次世代リーダー養成塾事務局長・加藤暁子
1
2.第
2.第 9 回 日 本 の 次 世 代 リ ー ダ ー 養 成 塾 開 催 概 要
1.
主催者
日本の次世代リーダー養成塾
塾長:米倉弘昌/社団法人日本経済団体連合会会長
2.
開催日程
2012年7月27日(金)~8月9日(木)
3.
開催・宿泊施設
グローバルアリーナ(福岡県宗像市吉留46-1)
波戸岬少年自然の家=8月5日、6日宿泊
(佐賀県唐津市鎮西町名護屋5581-1)
4.
塾生
対象:高校生(1年生~3年生)
25都道府県、及び海外3ヶ国(アメリカ・カナダ・タイ)
人数:165名
参画県(北海道・青森県・静岡県・岐阜県・和歌山県・福岡県・佐賀県)による推薦
枠90名、
全国からの一般公募枠65名
東日本大震災における被災地特別枠10名(岩手県8名、福島県2名)
5.
カリキュラム概要
① 各界を代表する講師陣による講義
教養系 (哲学、近現代経済・文明史、医学、科学、芸術など)
日本を代表する講師が高校生に知的好奇心を湧かせる講義をします。
ビジネス系 (日本企業の強みと弱み、ビジネスのしくみなど)
世界を相手に日夜活躍するビジネスの最先端の方々から、日本の企業の強みや弱み、ひいて
は日本の国のあり方を伝えます。
国際系 (国際問題や外交、国連やNGO活動への理解)
世界に目を向け、日本人としてのアイデンティティを持ち、国際舞台で活躍できる力をつけ
ます。
人間学 (将来の夢をどう具現化するか、リーダーとしての生き方など)
人生の先達が21世紀の日本を背負って立つ人材に必要なことは何かを語ります。
②講義後のディスカッション
講義終了後にクラス担任の指導のもと、1クラス約20名によるグループディスカッション
を行います。クラス担任は、日本を代表する企業の中堅社員が務めます。
③プロジェクト型企画「ハイスクール国会」
③プロジェクト型企画「ハイスクール国会」
日本の将来を担う若き高校生たちが、2週間を通して日本の将来の姿を真剣に議論し、政策
を提言する「ハイスクール国会」を開催します。テーマは、
「エネルギーの未来を考える復興会
議」です。
④フィールドトリップ
佐賀県立名護屋城博物館
当時の貴重な資料や遺産を見学し、日本と朝鮮半島間の交流の歴史を学びます。
九州電力エネルギー館
2
3
任
8/2
(木) 交
8:00
朝食・掃除
朝食・掃除
掃除
確認
8/6
(月)
8/7
(火)
8/8
(水)
8/9
(木)
11
12
13
14
6:00
朝食・掃除
8/5
佐
(日) 賀
10
7:00
8:00
朝食
朝食・掃除
(30分
交代)
朝
の
つ
ど
い
8/4
佐
(土) 賀
9
掃除
朝食・掃除
(30分
交代)
朝
の
つ
ど
い
8/3
佐
(金) 賀
8
移動・朝食
朝食・掃除
8/1
(水)
6
荷
物
移
動
朝食・掃除
7/31
(火)
5
掃除
片付け
朝食・掃除
7/30
(月)
4
代
朝食・掃除
7/29
(日)
3
担
朝食・掃除
7/28
(土)
2
7
朝食・掃除
7/27
(金)
7:00
1
6:00
日程
日目
嶋田 賢和
中村 俊郎
9:00
李 鳳宇
10:00
11:00
記念
撮影
ハイスクール国会
卒塾式
弁当
昼食
12:00
13:00
13:00
昼食
昼食
昼食
片づけ
昼食
昼食
昼食
昼食
昼食
昼食
歓談 帰路へ
映画プロデューサー・
株式会社SUMOMO
代表取締役
ハイスクール国会
グループ・
ディスカッション
名護屋城博物館見学
学芸員さんのお話
昼食
移動
グループ・
ディスカッション
グループ・
ディスカッション
マレーシア元首相
マハティール・
モハマド
グループ・
ディスカッション
経済産業省
資源エネルギー庁
省エネルギー・新エネル
ギー部長
カッター・野外炊飯活動
九州電力
エネルギー館
日本画家・
京都造形芸術大学学長
千住 博
水戸岡 鋭治
デザイナー
株式会社ドーンデザ
イン研究所代表
日本の次世代
リーダー養成塾
事務局長
加藤 暁子
中村ブレイス株式会社
代表取締役社長
12:00
委
員
会
新原 浩朗
ディス
カッション・
ワーク
ショップ
11:00
オリエンテーション
10:00
釜石市副市長
退
所 移動
式
片づけ
確認
書禅
書禅
書禅
荷
物
移
動
書禅
書禅
書禅
書禅
書禅
HR
9:00
15:00
入
所
式
安田 喜憲
14:00
16:00
目標宣言
榊原 英資
青山学院大学教授
ハイスクール国会
麻生 渡
HR
HR
17:00
HR
夕食
夕食
夕食
夕食
HR
夕食
夕食
(30分
交代)
18:00
フンドーキン
醤油株式会社
代表取締役
社長
小手川強二
東北大学大学院
環境科学研究科教授
全体
ディスカッション
荷
物
移
動
夕食
夕食
夕食
前防衛省統合幕僚長
折木良一
HR
HR
18:00
前全国知事会会長・
福岡空港ビルディング
株式会社社長
佐賀県知事
古川 康
グループ・
ディスカッション
グループ・
ディスカッション
静岡県知事
15:00
グループ・
ディスカッション
グループ・
ディスカッション
HR
小川 洋
福岡県知事
金澤 一郎
17:00
国際医療福祉大学大学院長
東京大学名誉教授
グループ・
ディスカッション
会
場
設
営
入塾式
16:00
川勝 平太
宗教学者
山折 哲雄
グローバルアリーナへ移動
国際日本文化研究
センター教授
笠谷 和比古
動
弁当 物
昼食 移
荷
薩摩焼十五代
沈 壽官
独立行政法人宇宙航空研究開
発機構シニアフェロー
宇宙科学研究所
宇宙飛翔工学研究系教授
川口 淳一郎
元国連事務次長
国際文化会館理事長
明石 康
お茶の水女子大学
理学部・大学院教授
室伏 きみ子
慶應義塾大学大学院
メディアデザイン
研究科教授
石倉 洋子
チームビルディング
受 付
14:00
3.第9回 日本の次世代リーダー養成塾 カリキュラム表 (2012年7月27日~8月9日)
ハイスクール国会
ハイスクール
国会
ハイスクール
国会
ハイスクール国会
ハイスクール国会
ハイスクール国会
ハイスクール国会
19:00
20:00
ハイスクール国会
みそ汁コンテスト
夕食
HR
21:00
21:00
HR
スタッフ・施設紹介
20:00
ハイスクール国会
夕食
夕食
夕食
19:00
HR
HR
22:00
就
寝
準
備
就
寝
準
備
入浴
22:00
就寝
就寝
就寝
就
寝
準
備
就
寝
準
備
23:00
就寝
就寝
就
寝
準
備
就
寝
準
備
就寝
就
寝
準
備
就寝
就寝
就
寝
準
備
就寝
就寝
就
寝
準
備
就
寝
準
備
就寝
就寝
就
寝
準
備
就
寝
準
備
就
寝
準
備
23:00
4.第9回日本の次世代リーダー養成塾 講師・講義内容一覧
講師24名
(五十音順・肩書は塾開催当時)
あ か し
1.
明石
やすし
康 / 元国連事務次長・公益財団法人国際文化会館理事長
「グローバルな舞台に必要な力」
あ そ う
2.
麻生
わたる
渡 / 前全国知事会会長・福岡空港ビルディング株式会社社長
「日本とアジア」
い しく ら よ う こ
3.
石 倉 洋 子 / 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
「新しい時代、貴方はどこで、何を目指すのか」
お が わ
4.
小川
ひろし
洋 / 福岡県知事
「ふるさと福岡県に帰って」
お り き りょういち
5.
折 木 良 一 / 前防衛省統合幕僚長
「危機対応とリーダーシップ ―リーダーは如何に育成され、危機に立ち向かうか―」
か さや か ず ひ こ
6.
笠谷和比古 / 国際日本文化研究センター教授
「武士道の歴史的意義-日本の近代化との関連において―」
か な ざ わいちろう
7.
金 澤 一 郎 / 国際医療福祉大学大学院長・東京大学名誉教授
「脳の不思議な世界」
か わか つへ い た
8.
川 勝 平 太 / 静岡県知事
「日本に今、必要な新しい学問」
かわぐちじゅんいちろう
9.
川口 淳 一 郎 / 独立行政法人宇宙航空研究開発機構シニアフェロー
宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系教授
「『はやぶさ』が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行、その7年間の歩み」
こてがわきょうじ
10.
小手川強二 / フンドーキン醤油株式会社代表取締役社長
「発酵食品の魅力」
さかきばら え い す け
11.
榊 原 英 資 / 青山学院大学教授
「君たちは何のために学ぶのか」
し ま だ よしかず
12.
嶋 田 賢 和 / 釜石市副市長
「岩手県釜石市の復興について」
4
13.
せんじゅ
ひろし
千住
博 / 日本画家・京都造形芸術大学学長
「芸術とは何か?」
14.
ち ん
じゅかん
沈
壽 官 / 薩摩焼十五代
「陶房雑話~作る心~」
なかむらとしろう
15.
中 村 俊 郎 / 中村ブレイス株式会社代表取締役社長
「義肢装具作りの47年間、かたつむりの歩みのように」
に い は ら ひ ろ あき
16.
新 原 浩 朗 / 経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長
「日本のエネルギーの将来をどうするかー自然エネルギーを考える」
17.
ふるかわ
やすし
古川
康 / 佐賀県知事
「リーダー志望の君たちに聞かせたい3つの経験」
18.
マハティール・モハマド / マレーシア元首相
「3.11以降、次世代リーダーはいかに社会に貢献すべきか」
み
19.
と おか えい じ
水戸岡鋭治 / デザイナー、株式会社ドーンデザイン研究所代表
「デザインは公共のために」
むろふし
20.
こ
室伏きみ子 / お茶の水女子大学理学部・大学院教授
「自分自身を知るための命の科学―40億歳の生物たち」
や す だ よしのり
21.
安 田 喜 憲 / 東北大学大学院環境科学研究科教授
「エネルギー分散型社会」
や まお り て つ お
22.
山 折 哲 雄 / 宗教学者
「災害の世紀を生きる~安全・リスク・犠牲~」
り
23.
李
ぼ ん う
鳳 宇 / 映画プロデューサー・株式会社SUMOMO代表取締役
「映画の出来る役割―『フラガール』を通じて―」
か と う あ き こ
24.
加 藤 暁 子 / 日本の次世代リーダー養成塾事務局長
「アジアを視る目、アジアと共に生きる力」
【プロジェクト型企画】ハイスクール国会「エネルギーの未来を考える復興会議」
【見学】佐賀県立名護屋城博物館、九州電力エネルギー館
【体験学習】野外活動(カッター活動、カレーライス調理)
、みそ汁コンテスト
5
第9回日本の次世代リーダー養成塾講師陣(敬称略
小川
洋
金澤
一郎
洋子
中村
俊郎
室伏
明石
康
折木
良一
水戸岡
麻生
渡
石倉
千住
博
嶋田
十五代
6
総勢24名
賢和
きみ子
鋭治
沈
壽官
講義順)
新原
浩朗
マハティール・モハマド
川口
古川
淳一郎
康
笠谷
小手川
和比古
安田
喜憲
李
強二
川勝
平太
榊原
7
鳳宇
英資
山折
哲雄
加藤
暁子
5.第9
5.第9回日本の次世代リーダー養成塾 講義概要
日本のみならず世界で活躍する24名の講師にご講義いただいた。今年は、塾生たちにとって、困難に
立ち向かうリーダーのあるべき姿を学ぶ場となった。
各講義の要点と、塾生の感想(代表的な意見を抜粋)
小川洋先生
小川洋先生「ふるさと福岡県に
先生 「ふるさと福岡県に帰って」
「ふるさと福岡県に帰って」
(講義要点)
幼少期は自然も時間も豊富で、社会のルールについて家庭・学校だけではなく地域社会全体から教育を受け
た。教育とは家庭・学校・地域社会の三者によって成り立つものではないかと考えている。国家公務員として
数十年勤務したが達成感を感じる仕事をさせてもらった。大事なのは、自分のやっている仕事が好きかどうか
である。知事に就任して自分で県内各市町村を見て回った。それは現場で何が起こっているかを自分で見聞き
し、政策に反映していくことが大切だと思ったからである。
皆さんが様々なことにチャレンジする時は、いろいろな形で情報を集め、そして自分自身に納得して取り組
んでほしい。また学生の時に何を学んだかが重要である。違いと多様性を認め合う、尊重し選択肢の多い社会
を作り、積極的に外に目を向けるため日本の文化と諸外国の文化を学んで欲しい。流暢に言葉が喋れることよ
りも自分の考えがしっかりとある方が想いは伝わる。社会に出れば、新しい課題や難題にぶつかることもある。
知識と経験をフル稼働すれば様々な問題に立ち向かっていくことも可能なはずだ。考え抜いて、悩み抜いて出
した結論は簡単には崩れない。また、自分だけで分からないところは誰かに聞けばいい。人のつながりや人的
ネットワークが大事になる。物事を様々な視点から見極めて、やりたいことを見つけたらそれを長く続けてほ
しい。日本は人材が資源だ。自分だけではなく、他の人も幸せになることを考える人間になってほしい。
(講義の感想)
○これまでトップの方や内閣の方があまり現地に足を運ぶイメージがありませんでしたが、小川知事のような
「現場主義」の方がいると思うと、とても心強く感じました。自分の仕事に対する思い、日本に対する思いが
ひしひしと伝わってきました。
○「今の若者に足りないのは冒険心」という言葉が心に残った。私自身、今何をしたいのかということを改め
て考え直すことができた。
○福岡県に住んでおり、自分自身の故郷の政治を考える良いきっかけになった。
○「相手の考えを取り入れることを考えながら、相手の話を聞く」という言葉が特に心に残っています。
金澤一郎先生
金澤一郎先生「脳の不思議な世界」
先生 「脳の不思議な世界」
(講義要点)
脳は贅沢である。脳は多くのエネルギーを消費するが、エネルギーの供給源は血液のみである。脳の構成要
素はタンパク質である。左脳は言語に関する機能、右脳は空間にある物を認知し構成する機能と言われている。
人間の意識の連続性は大切なものである。絵画の全体を見ていると思っても、本当は見ていない部分が多く、
ピンポイントでしか見ていない。神経細胞は斜めの線に反応しているとされ、様々な物質に反応する神経が用
意されている。性別によって脳の形態、構造が少し違う。また、目的のある運動と目的のない運動とでは使う
脳の部位が違う。
記憶には、「覚える」「覚えておく」「思い出す」の3つのプロセスがあり、鍛えれば記憶の強化ができる。
勉強の予習復習はこれに該当する。また、前頭葉は人格形成と行動の順番の決定を左右している部位なのでは
ないかと言われている。頭を使えば、記憶に直接関係する脳の海馬という場所で、神経細胞が新しく生まれて
くることが期待できるといわれている。
昔の記憶が薄れてくるように、脳も使わなければダメになる。環境や教育の仕方も脳の発達に大きな影響を
与える。人は問題を出された時に答えがあると思ってしまうが、そう簡単に答えがあるわけではない。それを
一人一人が考え、自分が納得できるまで追求し、答えらしいものにたどり着くことが大事である。
(講義の感想)
○「答えはない」というお言葉が印象に残りました。答えを知らないと安心できない人が増えていると言われ
ていますが、私は答えがないものを今からもっと大事にしていきたいです。
○私たち人間は贅沢な脳を持っていて、それに助けられていることがわかりました。「常識にとらわれるな」
というお言葉は心に響きました。
○自分の脳がどのように働いていて、どのようなつくりになっているのかを知ることができました。これから
は、このことを意識して、自分の脳をうまく使っていきたいです。
○これからの日本は、経済や原発問題など明白な答えがないことがたくさんあると思うので、皆が「答えは必
ずしも身近にあるわけではない」ということを理解していくことが重要だと思った。
8
嶋田賢和先生
嶋田賢和先生「岩手県釜石市の復興
先生 「岩手県釜石市の復興について
「岩手県釜石市の復興について」
について」
(講義要点)
震災後に財務省から自ら希望し、釜石市役所に出向した。当時は仮設住宅ごとの課題、市全体での課題が整
理されていない印象があった。財務省にいた時は気づかなかったが、市役所の職員も被災した方が多く、疲れ
きっていた。それでも現場をくまなく回り、国と地方をつなぎ合わせることに努めてきた。震災で発生したご
みの量は、釜石市の普段の生活から出る40年分の82万トン。今は分別して他市町村にも受入れをしてもら
えたので18万トンに圧縮できた。被災地支援は、ボランティア以外でも特産品を購入するなどみんなができ
ることがある。そうした関心を持ってもらうことが地元を勇気づけるのだと感じた。
現在、復興計画では安全を重視し、なおかつ地元で仕事ができるまちづくりを目指している。また、「心の
ケア」にも取り組んでいる。市として被災者を見捨てることは出来ない。復興の手助けをしている中で大変な
ことは、様々な意見をまとめることだ。市内21地区ごとに復興計画を立てるため、それぞれの地域をまわり
地元の方と話す機会を設けているが、意見をまとめるのはやはり難しい。また、市役所の復興進捗状況が住民
にうまく伝わらないもどかしさが今もある。考えが違う人に物事を伝えることがいかに難しいことか分かっ
た。以上の経験から、塾生のみんなには、どんなことも人のせいにしないで、全ての責任は自分にあると考え
て物事を判断して欲しい。逃げたくなることも多々あるが、これからの試練に立ち向かって欲しい。
未来は僕らのもの。文句を言う前にやりたいことや楽しいことを見つけて、日本を変えていければ良いので
はないか。
(講義の感想)
○地方と国では重きをおくポイントやコミュニケーションがとれないという問題があるので、私も橋渡しので
きるような存在になりたいと思いました。
○私は6年間釜石に住んでいて、実際に震災を体験しました。状況のわからない中で、効率よく限られた物資
を使い、必要なものを揃えていく経験をしました。この経験をこれからの試練でも活かし、皆を引っ張ってい
きたいです。
○市は全力でがれき処理や復興に取り組んでいるけれど、実際は家がまだ建っておらず、なかなか目に見える
形になっていない。理想と現実の差を埋めることの難しさを感じました。
○メディアを通じて報道される被災地の現状とは違い、本当の「生」の声を聞けて、気づくことがたくさんあ
りました。例えば、今までは復興は遅れているのではないかと考えていましたが、それは目に見えていないと
ころで進んでいるのだと知りました。
石倉洋子先生
石倉洋子先生「新しい時代、貴方はどこで、何を目指すのか」
先生 「新しい時代、貴方はどこで、何を目指すのか」
(講義要点)
子どもの頃に大人になったら何になろうと思っていたか。そして、その夢は変わったか。変わった人は何故
変わったのか。子どもの頃の自分の夢と現在の自分の夢の比較から始めよう。
今、情報通信技術の発達により世界は狭くなった。今までの仕事のやり方も変わってきている。これまでの
慣習に捉われる必要は既に無くなっているのである。仕事とは生計を立てる手段ではあるが、それだけではな
い。仕事を通じいろいろな人と出会うことも出来、任されることで自覚を持ち責任を持つ経験を得ることが出
来るのである。仕事というのは、会社だけではなくボランティアもそうだ。新しい時代には何が必要かを考え
た時、常に学び続けることが重要だ。世の中の状況は日々変化しているので、知識はどんどん古くなるからで
ある。今はどこで働いても良い時代であり、物理的に日本にいても世界と仕事ができる世の中だ。学ぶことで
世界に目を向けよう。
今の時代には限りない可能性がある。塾生のみんなは、過渡期にある世界の真ん中にいる。この状況で何が
できるか、何がしたいかを考えれば、本当にできることが限りなくあると思う。今までの時代とは違うので、
みんなも分からないことだらけで一時は混乱があるかも知れないが、それで悲観的になることはない。
今までの時代と違うということは、逆に言えば、今は何でもできる時代だ。未来は予想することではなく自
分でつくるものである。誰かに聞くだけではなく、自分なりに考え、自分で試す。ダメならダメでやり直せば
よい。失敗しても自分の責任を取るなら何をしてもよいではないか。
今、この世界では皆さんが主役だ。この素晴らしい世界の可能性を自分で掴み、よりよい世界をつくっても
らいたい。
(講義の感想)
○とてもパワフルで力強く、未来への希望に満ちてくるようなご講義でした。
○先生の講義を聞いて、とても勇気が湧いてきました。将来の夢は警察官ですが、絶対になるという強い意志
を持つことができました。
○「スピード感」というキーワードが心に残りました。いろいろなことが複雑に絡み合っている時代では、い
かにそれをスマートに整理し、スピード感を持って次世代を見越して行動できるかがキーワードになると感じ
ました。
○夢が叶わなくても努力したということは残るので、努力だけはやめないようにしたいです。
9
中村俊郎先生
中村俊郎先生「義肢装具作りの47年間、かたつむりの歩みのように」
先生 「義肢装具作りの47年間、かたつむりの歩みのように」
(講義要点)
私は幼少期から人に助けられることが多く、夢のような出会いや絆があった。「生まれ育ったこの町に恩返
しをしたい」「この町でやってみたい」という気持ちが強く、石見銀山にて中村ブレイスを一人で創業した。
今では従業員も抱え「人に喜ばれるモノをつくりたい」という想いが集まって今に至っている。少年時代から
義肢装具を装着しながら生活している従業員は、「自分と同じ境遇の人を助けたい」との想いで入社した。
社名の「ブレイス」とは「支える」ということ。義肢装具とは人の体を支えるものであると同時に、心を支
えたいという思いでつけた。しかし、マレーシアである少年との出会いがあったが、体の形状によりどうして
も義肢をつくってあげることが出来なかった。私はとても落ち込んだが、その少年の家族は「その気持ちがう
れしい」と微笑んでくれた。
数年前に、フィリピンで既存の義足が合わなくなって歩けなくなっていた少年に出会った。子供は成長に合
わせて何度も義足をつくり替える必要が出てくる。現地で容易に手に入る竹で義足をつくることを思いつき、
現地でめぐりあった竹細工職人に協力を依頼し、最先端と伝統が融合した新しい竹の義足を彼に届けることが
できた。これによって、限られた人しか手にすることができなかった義足に、新たな希望の道が開けた。
今の私があるのは、リーダー塾で皆さんのような若い人たちとふれあえたからである。皆さんとの出会いが
私自身の勇気につながり、新たな解決法を発見することが出来た。みんなが持っている優しさは、人に希望を
与えられる。だからどうか希望を捨てずに前進しよう。今、何ができるか、どこにいるかは関係なく、自分が
持っているものを活かしていけば良い。そして、苦しい時も笑顔でいよう。
(講義の感想)
○「育ててくれた地域に感謝の気持ちを表したい」という言葉に共感しました。私も大好きな故郷にどんな形
であれ、恩返しをしていきたいと思います。
○先生の義足づくりに対する愛情、人を助けようとする優しさにとても感動した。
○私は高校を卒業したら、青年海外協力隊に入って、紛争地域の人々を救いたいと思っています。爆弾などに
よって手足を失った人のために、「義肢」を一緒に作りたいと思いました。
○登壇されたときから、講義の間、ずっと涙が止まりませんでした。言葉では言い表せませんが、何か本当に
大切なものをいただけたと思います。
室伏きみ子先生
室伏きみ子先生「自分自身を知るための命の科学―40億歳の生物たち」
先生 「自分自身を知るための命の科学―40億歳の生物たち」
(講義要点)
生物とは何か? 生物とは、栄養を取りこんでそれを材料にエネルギーを生産する独立した存在だ。独立栄
養、従属栄養仲間(種)を絶やすことなく生命をつなぐ。これまで生物は地球環境の変化により5回絶滅をし
ている。地球上に存在する生物で名前のある生物は175万種ある。未開拓の場所に多種多様の生物が存在す
る可能性もある。しかし、林檎に例えると、生物が存在する世界は皮1枚の部分にしか過ぎない。「ヒト」は
1/175万の存在にしか過ぎないのである。
「ヒト」は600万年前に直立二足歩行になった。180万年前には長時間歩くことができるようになった。
四足歩行に比べると、二足歩行は頭だけしか日に当たらないため体温調節しやすくなり、サバンナでの暮らし
に最適であった。咽頭が下がり多様な音声が出る事により言葉が発達しコミュニケーション能力も向上した。
前足を移動に使わなくなり手指を使うことで脳も活性化し道具をつくった。脳が発達したことにより優れた知
性を取得し、文明が発達・文化の創出に結びついた。私たち一人一人の生命が種々のストレス状態に対応しな
がら40億年もの歴史を紡いできたことは「奇跡」ともいえる。私たちヒトを含め、地球上の全ての生物は「か
けがえのないたった一つの存在」である。
小さな挫折を何度か経験した人は、挫折を知らずに育ってきた人よりも大きな挫折に強く立ち向かうことが
できる。大変さや失敗を経験することで、人は耐える力、想像する力、周囲を思いやる力、工夫する力といっ
た生きる力を身につけることができる。
軽いストレスは心のトレーニングである。失敗を受け止めそれに耐え、工夫して生きる。これらを繰り返す
ことで、人は心を成長させ、「良い社会人として幸せに生きる」力をつけていく。
(講義の感想)
○自分の命を大切にしなければならないと強く思いました。それと同時に、地球を壊しているのは人間だと思
い、危機感を感じました。
○一人ひとりは小さくても、スイミーのように結集すれば大きな力になる。リーダーとしてまとめるための力
についても考えさせられました。
○今まで自分が人間であることを当たり前に思っていましたが、人間が存在することは奇跡であり、素晴らし
いことだと思いました。
○日頃、ストレスから逃げてばかりでしたが、軽いストレスは成長を促すとのことなので今後はもっといろい
ろなことに挑戦していきたいです。
10
加藤暁子「アジアを視る目、アジアと共に生きる力」
加藤暁子 「アジアを視る目、アジアと共に生きる力」
(講義要点)
日本の中からの視点、情報では客観的な日本の姿は見えない。どうすれば見えるようになるのかを考え、
「何
を信用するか」を大事にしてほしい。
幼少期に過ごしたアメリカでの差別問題への疑問、決して安心して暮らせるわけではない日本の現状を知っ
た帰国後の経験、そして留学中に強盗にあった経験。貧困、モラルの問題などから、「根底にある社会問題を
変えていかないと世の中は変わらない!」と感じたことがジャーナリズムの道に進むきっかけとなった。
世界、特にアジアで「日本人としての立ち位置」を考えることが大事だ。どうやって日本は戦後に復興した
かを、身近なところではみんなの祖父母から大きなヒントを得られるのではないか。日本からみた歴史、諸外
国からみた歴史を学ぶことで、最終的には日本を客観的に捉えることができるだろう。日本人として優れた調
和の心を活かし、国際社会のルールを決めるような舞台で活躍してほしい。そのためには世界で起こっている
様々な状況を短絡的に見るのではなく、全世界的な流れをつかむ目を持つことが大事だ。
(講義の感想)
○国際的に視野を広げることが大事だと思いました。CNN や BBC を見たりすることで、英語を学習できるこ
とはもちろん、日本以外の視点からみた日本を見ることができると思うので実践しようと思います。
○国際平和について東南アジアの現状や日本が世界からどう見られているのかを学び、私たちはもっと世界か
ら見た日本のあり方を真剣に考える必要があるのではないかと思いました。地上戦や原爆を経験した過去があ
るからこそ、世界平和のために日本がどうあるべきかをもっと考え、それを世界中に発信すべきだと思います。
講義の中から私は国のトップが言うことだけではなく、一番貧しい暮らしをしている人々に耳を傾け、根底か
ら平和にすることを考えたいと思います。
○アジアについてもっと知りたい、知るべきだと感じました。アジアの一部である日本に住んでいるにも関わ
らず、私はニュースしか見ておらず見識が足りないということを痛感しました。
マハティール・モハマド先生
マハティール・モハマド先生「3.11以降、次世代リーダーはいかに社会に貢献す
先生 「3.11以降、次世代リーダーはいかに社会に貢献すべきか」
「3.11以降、次世代リーダーはいかに社会に貢献すべきか」
(講義要点)
3.11は日本人にとって重要な日となった。日本には地震・津波に対する防災技術はあったが、過去に類
を見ない規模の災害に見舞われ世界中から支援を受けた。次世代のリーダーになる人間に必要な要素は二つあ
る。一つの要素は「他者を理解する姿勢」だ。交通手段の発達から、将来、中国以外の国々が多民族国家にな
るであろう。いまからその準備が必要である。多民族国家になるということで膨らむリスクは対立と紛争、差
別などがある。平和に暮らすためにはこのリスクを避けなければならない。その為には、他者を理解すること
が重要だ。違う文化、宗教、生活様式を理解し受け入れる覚悟。これからの人類のあり方として、どこの国の
紛争や戦争、災害などもすべて自分事として、ともに苦しみ、ともに立ち上がる気持ちを持つことが大切だ。
また他者を理解することは、これから海外で仕事をする機会が増える時にも必要になる。次世代のリーダーに
なる人間は、将来どんな日本になるかを今から具体的にイメージしておくべきだ。きっと他民族が日本の政治
に加わり、要職にも必ず入ってくる。それが多民族国家の常識であり、必ず起こる未来である。
そしてもう一つの要素は、「日本のアイデンティティを守ること」だ。近年、日本人の勤勉性、会社に対す
る忠誠心、終身雇用、倫理観などが薄れてきているのではないか。日本は高度経済成長後、悪い意味での西洋
の文化の影響を受けてしまい、日本人としての強みが薄れ、西洋の先進国の過ちを繰り返そうとしているので
はないだろうか。
一方、マレーシアは当時の日本を見習い、ルックイースト政策により、隣国を豊かにしながら経済成長を遂
げた。西洋の仕事観、個人主義的な影響を受けすぎていること、労働組合の問題、デモの問題などから、今一
度、個人主義から脱却し、目先のことばかりにとらわれることなく、会社や社会全体を考えるうえで一人一人
が正しい判断をし、他国を豊かにすることで自国を豊かにしていく方向へいくべきだと考える。
日本は戦争経験から今後の世界平和には欠かせない存在であり、積極的に行動すべきだと思う。
(講義の感想)
○日本が多民族国家に変化していくことに戸惑っていては、時代に置いていかれてしまいます。改めて自国の
文化の良さを理解した上で、異民族を受け入れていくことが大切なのだと思いました。
○日本が多民族国家になり、世界中の人が入ってくることからは逃れられない。その中で、世界の中の日本が
どうあるべきか、日本が何を吸収して何を取り入れるのかということを私たちは考えなければならない。日本
のあり方を多視点に立ってよく考えなければ、日本は良い方向に進まないと思った。今日この瞬間から日本の
ことを真剣に考え、人を尊重して生きようと思った。特に近隣諸国とは他国より関わりが深くなると思うので、
しっかり歴史も勉強して将来どんな関係を作るか考えたい。
○自分の理想の日本を視野を広げて考えることができました。日本は自国のみを発展させようとしないで、他
国と互いの問題を理解し、豊かさを共有するということが実現してほしいです。
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明石康先生
明石康先生「グローバルな舞台に必要な力」
先生 「グローバルな舞台に必要な力」
(講義要点)
日本はすでにグローバルな舞台に立っている。情報化社会、交通手段の発達により今はすぐに外国に行ける
時代。お金や物、資源、人、情報の流れも世界的なものになった。それにも関わらず、日本人はそれらに関し
て鈍感すぎるのではないか。世界では民族紛争や核の問題などが起こっている。しかし、今の日本は恵まれす
ぎている。そのせいで世界に対して鈍感になり、また世界はつながっているという認識と海外進出への意識が
薄くなっている。
国連に勤務していた当時は、ありあまる知的好奇心で仕事を続けていたので、日の丸を背負っているという
気負いはなかった。国連に入ってから理想と違い失望する人もいるようだが、前もって国際政治などを勉強し
て現実を知っていたのでそういったことはなかった。白か黒かではなくグレーの中でいかに最善策を探すかと
いう現実を見据えたうえで取り組む姿勢が大切だ。
多民族多文化の中でお互いに団結を守ってこそ仕事は前に進む。つまりはリーダーシップよりチームワーク
が大切だ。そのためには自分のしたいことを口にすることが重要だ。
本当の意味でグローバルに活躍できるか一人一人が考え、悩み、苦しみ、失敗しながら発見していく。簡単
な近道はない。努力、試行錯誤を続けるしかない。常にすぐ行動できるように準備をしておかなければならな
い。国際人は外国人と違和感なく仕事ができる人である。若いうちに仕事の仲間になれる人、国籍や所属にと
らわれず友人になれる人を探してほしい。グローバル人材に必要な要素は①積極性、行動力、チャレンジ精神
②語学力、コミュニケーション力③異文化に対する理解を持つこと。そして、④限りない知的な好奇心を持ち
続けることだ。
(講義の感想)
○「近道はない。試行錯誤を繰り返せ」という言葉を心にとめて生活していきたい。
○「地味な努力が国際社会で活躍するために必要だ」という言葉を聞いて、国際社会でも基本的なことが大事
だということに気づき、自分に少し自信が持てました。
○先生のご講義を聴いて、国連の仕事にも興味が出てきて、また一つ将来の選択肢が広がったと感じています。
○国際関係の仕事をしたいと思っていて、一番重要なのは語学力だと思っていましたが、先生のお話のなかで、
相手の意見を尊重したり自分の意見を声に出して言うことの重要さを学ぶことができ、感動しました。
折木良一先生
折木良一先生「危機対応とリーダーシップ
先生 「危機対応とリーダーシップ―リーダーは如何に育成され、危機に立ち向かうか―
リーダーは如何に育成され、危機に立ち向かうか―」
(講義要点)
自衛隊では、3年程で20~30名の小部隊のリーダーになれるような教育をしている。5年で100名規
模、10年で1000名以上の規模のリーダーになる。リーダーになってから2年間くらいは逆に部下に育て
てもらうことになる。その代わり、1日も早く成長して恩返ししていく気持ちは持つべきだ。
リーダーになるために必要な事として「目標を掲げる」「人の気持ちを理解する」の2つがある。リーダー
になる方法としては、まずはリーダーの役割を知り観察すること。リーダーと自分との違いを分析すること。
人は困った時に周りの誰かを見るが、その人こそが自分が思い描いているリーダー像なのだ。周りから認めら
れなければリーダーにはなれない。集団生活で人の癖や性格などを見ること。そして信頼関係を築くこと。人
を動かすには人を理解する必要がある。人を真剣に理解しようとすると、ものすごく悩む。それを乗り越えて
こそ他人の立場から自分が見えるようになるのだ。
また、リーダーのあり方として、包容力と厳しさを持つような人間力を持つこと。リーダーが対するものは
「人」である。人が好きであるということがリーダーの前提となるのだ。
リーダーとしての厳しさ、苦しみもある。それらの悩みやストレスを自分でコントロールできる人でなけれ
ばならない。自衛隊の場合は時に任務遂行の為に誰かが犠牲になるような事もあるが、実行する決断や覚悟が
必要だ。またリーダーとして必要な能力は異常事態、想定外のことが起こった時の対応力だ。その時にまずは
自助。自分のことは自分で守ることも必要。そしてこれからは災害時に役立つ NGO やボランティアなどのリ
ーダーも必要だ。
(講義の感想)
○人が好きでなければ、リーダーになれない。リーダーになる勉強はなく、人間の勉強をするべきという言葉
が心に残りました。
○リーダーに限らず、人が助け合って生きていくうえで大切なことを考えさせられるような内容でした。
○自衛隊が折木先生のような素晴らしい方によって維持されてきたのかと思うと、とても感動しました。
○自衛隊の方々には震災後、たくさんお世話になりました。震災直後に電気もつかず、テレビも見られなかっ
たとき、家の前を何十台、何百台の自衛隊の車が通り過ぎるのを毎日のように見ました。これからも東北のた
めに活動してください。本当にありがとうございます。
○優しさと見逃すことは違うというお話を聞いて、優しさと厳しさは紙一重だなと思いました。
12
水戸岡鋭治先生
水戸岡鋭治先生「デザインは公共のために」
先生 「デザインは公共のために」
(講義要点)
デザインは日常行われていることだ。また、いかに生きるかということもデザインすることと同じだ。最も
身近なデザイナーは、母親だ。母親は子どもをデザインする。最も遠いデザイナーは内閣。総理大臣は国をデ
ザインする。良い国をデザインするには、各個人が意識レベルを上げていくことが前提として必要だ。つまり、
一人一人がいかに生きるかをしっかり考えることが重要である。人との出会いによっても自分自身が良くデザ
インされるので、出会いを大切に、そしてその出会いを良いものにしていくために豊かなコミュニケーション
が重要だ。コミュニケーションがなければ人を理解できない。また、コミュニケーションの中からデザインも
生まれる。
デザインは自分がやりたいようにしていくのではなく、使う人の使いやすさや、驚き、楽しみをとことん考
えていくことで、支持されて成功しやすくなる。「デザインは公共」というゆえんである。しかしデザインに
はとても深い考えと発想、そして多大なる努力が必要。気力、体力、知力と、出来なくてもやっていこうとす
る努力が一番大事。最高のものを生みだす為に、一から自分たちで作る、絶対に質は落とさない。損得のそろ
ばんではなく心のそろばんをはじき、本当に楽しませる、感動させるということに注力する。自らも楽しむこ
とが大切だ。そして、自分にとって不都合な意見を言ってくれる人の話を聞くことも大切だ。他人を理解しな
いと自分を理解してもらえない。最高のものにこだわれば、安全面などのリスクは当然生じるが、それも知恵
によって解決していく。また、考える時間を作るためには5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)が大切だ。
(講義の感想)
○改めてデザインや創造とは何か考えさせられました。デザインというのは、もちろん自分も納得していなけ
ればならないけど、同時に周りの人の心を動かし、気を引くのが本物のデザインだと思いました。また、人を
感動させるデザインをするには、かなり手間をかける必要があるため、一朝一夕で人を感動させるといっても
不可能だと思いました。デザインはできませんが、また違う形で人の心を動かせるようになりたいです。
○インスピレーションをもらいました。美しく、正しく、綺麗に、そして楽しくパワーと情熱を。それから人
の話を聴く力を身につけたいです。また、デザインという言葉の幅がものすごく広がりました。人の心に残る、
そういうものを自分も創造していきたいと思います。
○オリジナルというものは既成のものを真似することなしにできない、という言葉になるほどなと思いまし
た。やはり何事にも数を重ねること、経験することが大切であるといろいろな講義を受けた今、感じています。
川口淳一郎先生
川口淳一郎先生「
先生 「『はやぶさ』
はやぶさ』が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行
が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行、その7年間の歩み」
飛行、その7年間の歩み」
(講義要点)
小惑星探査機はやぶさは、イトカワから石を持って帰ることが目的ではなく、「サンプルリターンの技術の
証明」がミッションだった。小惑星のサンプル採取で地球の内部の状況を知ることができる。また地球は炭素
を含むC型小惑星からもできており、C型小惑星を調べることで、生命の起源も知ることができるかもしれな
い。サンプル物質の酸素の同位体の組成を比較することで、地球由来の物質かそうでないものかが判別できる。
イトカワからのサンプルは地球外物質のものだった。
プロジェクトでは様々な試練があった。しかし「プロジェクトのゴールは、はやぶさが地球に帰還すること
だ」とチーム全体で共有できていたから、はやぶさの消息が途絶えた時もチームに迷いはなかった。世界で一
番ではなく、オンリーワンで世界初というこだわりがある。世界初だから、根拠も前例もないのが当たり前だ。
調べてもわからないことを調べ、挑戦し続けることが大事である。そして自分の手足を動かすことも皆に学ん
で欲しい。ルールにとらわれてはならない。一人一人の独創性を育ててほしい。ジェネラリストよりもスペシ
ャリストになろう。学校ではHOWしか教えてもらえないのだから。
はやぶさは往復の宇宙旅行が可能であることを証明した。やれない理由を考えるより、やれる理由を見つけ
て挑戦しない限り、成果は得られないのである。
宇宙開発はすべて「想定外」かもしれない。想定外をいかに客観的に対応できるか。それが、エンジニアリ
ングであり、科学技術だと思う。
(講義の感想)
○私は大きい星ばかりに注目しがちでしたが、小さい星にこそ調べる価値があると知り、外見に捉われた考え
方をしていたことに気が付きました。
○新しいことに取り組む大事さに気づけた気がします。宇宙の研究のように無限の未知の可能性が広がる現代
社会で、既存のものにしばられず、新しいものを見つけていきたいです。
○世界一ではなく、世界初じゃないと意味が無いという言葉を聞き、確かに世界初ということは今まで誰もや
ったことのないものなので、非常に意味のあるものだと思いました。何事にもすぐに答えを求めてはいけない
ことに共感しました。答えを聞いてしまうと自分の持っている秘められた力を外に出すことができないため、
なるべくすぐに人に聞かず、自分で考える時間を多く持ちたいと思いました。
○人がやっていること、考えていることをやっていては面白くない、楽しくないという感覚で常に新しいもの
を求めている姿が印象的でした。今まで考えてもみなかった考えをしてみたり、触れたりするような機会を増
やすことで自分の思考の幅を増やしていきたいです。
13
麻生渡先生
麻生渡先生「日本とアジア」
先生 「日本とアジア」
(講義要点)
これまでの日本の教育は伸びる能力がある人を伸ばすことよりも、落ちこぼれそうな人を引き上げることに
注力してきた。その影響かリーダーが生まれにくい環境にある。みんなには世の中にあるたくさんの各分野で
先頭を走る世界的なリーダーになってもらいたい。そのためには時間を大切にして、毎日を大事にして常に自
らを高める努力をしてもらいたい。
1900年以前の世界はヨーロッパの力が強く植民地として他国を支配していた。ところが日露戦争で日本
が勝利したことがきっかけで、これまでの縮図が崩れ、次々に植民地支配されていた国々が独立していった。
しかしその後、日本もヨーロッパ諸国と同様、他国を植民地支配し始め、それがきっかけで太平洋戦争になり
敗戦した。その反省を活かし、大国との関係、アジアとの関係を重視しながら、経済発展を遂げていった。
今の日本をみると少子高齢化、円高、原発の問題等、日本全体が自信を失いかけているように見える。しか
し、高齢化が進んでいるということは日本の医療が高度であることの証ではないか。その分野では世界で先端
をいっているということなので、これから介護などの新しい分野でリードしていく役割を担っているというこ
とになる。また今の日本では女性の社会進出に関してもシステムが構築されていないのではない。資源の問題
に関しても、日本は世界第6位の海洋大国。これからは海と宇宙の分野で活躍できるのである。まだ日本には
色々な可能性があり発展できるのではないか。とにかく、若いみんなには今の日本の現状を悲観することなく
挑戦し続けて、変化を恐れず頑張って欲しい。そして世界で活躍するために英語を身につけて欲しい。
(講義の感想)
○日本の歴史なのに、知らないことがたくさんあって、少し自分の無知に落ち込みました。近代史から学ぶこ
とがとても大事だということを学びました。
○先生のお話を聞いて、日本はやはり誇れる国であると感じました。しかし、少子高齢化などの問題もあるの
で、これから少しでも改善してほしいと思います。
○日本が周りの国のお手本となって行動しなければならないと思いました。私も次期生徒会長になるので、積
極的にひっぱっていきたいです。
○日本の歴史なのに、知らないことがたくさんあって、自分の無知に少し落ち込みました。
○日本は外国と違い自分の意見を言えない消極的な国だと思っていたけど、日本の助け合い、驚異的な復興力
は確かに他国と比べるとすごいことだなと思った。
千住博先生
千住博先生「芸術とは何か
先生 「芸術とは何か?
「芸術とは何か?」
(講義要点)
震災の後、被災者の方が行列を作って待っている光景に、海外の人は驚いた。プライドを持った行動、日本
の美、と称賛されたが、これは日本人にとってごく当たり前のことだった。とにかくみんなで乗り越えようと
いう意識が当然のようにあったからこそである。また、和とは芸術的発想である。日本は様々な文化が融合し
た中に存在している。これが和なのだ。知らない間に日本は芸術的発想が根付いているのである。
コミュニケーションはまさに芸術だ。芸術とは異なる他者が何とか分かり合おうとするコミュニケーション
であり、「仲良くなる知恵」である。異質な他者を認めることで自分も認めてもらえる。また、芸術とは共通
項を語ることだ。自己表現ではなく、世界表現。私たちはこういう世界で生きていると認識してもらうことが
大事だ。どんな分野でも、こういった芸術的発想を忘れてはいけない。芸術的発想は人間的発想だ。実はあり
とあらゆるものが芸術なのだ。
震災以降、豊かさの間違いに気が付いた。豊かさとは「美」について考えることと同じ。美という字は羊が
大きいと書く。4400年前、人間の文明が始まったころ。すでに人間は羊と一緒にいた。遊牧民にとって羊
とは食や衣服に用いたもの。羊が大きいと美しい。これが豊かさなのだ。美とは「生きていく理想。生きてい
てよかった、これからも生きていたい」と思うことだ。つまり美とは生きていく本能。夏の暑い時期、汗をか
き、水を美味しく飲むこと。これが美。生きていてよかったと感じること。「きれい」と「美しい」は全く違
う。「きれい」は頭で考えること、美とは生きる本能だ。これを使い分けよう。
(講義の感想)
○「合わない色の組み合わせはない」というお話が、人間関係の形成にも重なるものがあると思った。
○私は自分のことを芸術的センスが皆無だと思いこんでいましたが、先生のお話を聴いて、実は私を含め全て
の人が芸術活動をしているのだなと思いました。
○千住先生のお話は、私が疑問に思っていたこと、悩んでいたことをすべて解決してくれました。芸術とは自
己主張や自己表現ではなく、世界表現をするものであるということを学び、また一つ前進できました。
○先生は芸術から日本そして世界を変えていこうとしているように感じられ感動しました。
○千住先生のお話は、私が疑問に思っていたこと、悩んでいたことをすべて解決してくれました。芸術とは自
己主張や自己表現ではなく、世界表現をするものであるということを学び、また一つ前進できました。
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十五代 沈壽官先生
沈壽官先生「陶房雑話~作る心~」
先生 「陶房雑話~作る心~」
(講義要点)
私の祖先は韓国から日本に連れてこられ、鹿児島県で焼き物を始めた。それから410年間焼き物をつくっ
てきた。私自身、名前によっていわれなき差別も経験した。日本国籍なのに朝鮮人と言われる。○○人とは何
か。その曖昧さに苦しんだ。家を継ぐかどうか、とても迷った。将来を制約されたくなかったからだ。しかし、
代々継ぎ続けた人たちのことを考えるとどうしても家を捨てられなかった。自分がこの仕事に向いているか迷
ってばかりだった。生きて行く中で未知のものと出会った時、自分の信念が必要である。右に進むか左に進む
か迷う時、信念が軸になって選択ができる。それがないと、自分にとってもついてくる人にとっても危険だ。
ついてくる人を守るためにも、信念を持ってほしい。
デザインは誰かの感覚を形にしたもの。誰かの感覚が入ってしまうとパクリになってしまう。だから、自分
自身で感じたものを作り上げなければならない。これが「表現」だ。「現」は自分の意志、
「表」はその意志に
輪郭をつけること。仕事とは職業という道具を使って自分の意志を形づけること。それに気付いた時、自然に
自分がこの仕事に向いているかどうかは考えなくなった。大切なのは意志を持つこと。自分はこの家に生まれ、
この仕事で自分の意志を表現していくと決めた。
現場では窯の火の色、音、など、計数化できないものや目に見えないものを大切にする。とにかく手作りで
やりたい。そして今日の自分の意志を職業でとことん表現したい。
(講義の感想)
◯職業を選びその後を決めるのではなく、自分の意志によってその後を決め、それを実現するために仕事を選
びたいと思った。
◯経験された多くのことを体中から溢れるパワーで伝えてくださった先生を見て、ブレない何かを心に抱き、
その信念を「人対人」「1つの人類」として伝え分かり合っていこうと思いました。
◯「民族は文化の共有個体であり種族ではない」という言葉を聞いて、私個人という考えで生きていきたいし、
人を見るときも一人の人間として付き合おうと心に誓った。
◯表現とは意志に輪郭をつけることで、仕事は自分の意志を表現する道具だとおっしゃった。その生き方に感
動し、将来に向け「仕事」に対する考えをもう一度深めたいと思う。
○先生のご講義を聴いて、日本の技術に誇りが持てるようになった。東京に帰ったら、美術館に行ってみたい。
薩摩焼をどうしたら普及させ人気を上げるか。僕になにかできることがあるだろうか。そんなことを今ずっと
考えている。
古川康
古川康先生 「リーダー志望の君たちに聞かせたい3つの経験」
(講義要点)
賛成意見は勝手に広まっていくが、反対意見を唱える人間は大声を出す必要がある。塾生のみなさんには、
入ってくる情報をいろいろな角度から見てほしい。情報を発信するメディアによっては編集を経ることによっ
て、取材された側が真に伝えたいことが正しく世に伝わっていないことがある。自分が得た情報の真理を自分
で確認する癖をつけて、複数のメディアの情報を見比べることが大切だ。今はインターネットなどの普及によ
って情報の素材にたどりつくことも可能だ。
学生時代にボート部に所属していて大きな大会に出ることになった。部では会計を担当していたので活動資
金援助のお願いで複数の企業を訪問した。その経験は今でも活きている。社会に出れば、自分で多くのことを
知っていることよりも、誰に聞いたら解決できるか、他の力をうまく借りる能力の方が大切である。
リーダーは、時として様々な困難に直面するが、考えがブレてはいけない。自分は何をやりたいのか、何を
正しいと思っているのか、こうすべきではないか、と思い続けて実行することがリーダーには必要だ。今すぐ
実行ができなくても、少なくとも想いだけは持っていなくてはいけない。
とにかくひたすら努力をし続けること。このままでいいと思ってはいけない。もっともっと努力すること。
自分のやりたいこと、自信のあることに対してはとことん努力し、挑戦することが必要だ。努力した結果の失
敗は仕方ない。失敗したことを良い経験として次回につなげること。無駄なことをしている人は強い。必要な
ことだけしかしていない人は弱い。失敗することではなく、失敗から学ばないことを恐れて欲しい。
(講義の感想)
◯正しいと思うことを実行する、問題から逃げない、ひたすら努力する姿勢に感動した。目の前から逃げずに
全力でぶつかろうと思った。
○佐賀県に住んでいて、知事が古川知事であることをとても誇りに思います。私も先生のようなリーダーにな
りたいです。
◯「必要なものしかやっていない人は弱い」という言葉が印象的でした。高く積み上げるためには土台を幅広
くどっしりさせねばいけません。チャンスに向かって積極的にチャレンジしようと思います。
◯10年、100年後に自分のやっていることがどう評価されるかを考えればいいという言葉に、私も失敗を
恐れず、失敗したらそれを次に活かすよう頑張りたいと思った。
◯自分の失敗を人に伝えるということは、相当の覚悟がなければいけない。失敗を認めることはすごいと心か
ら感じました。
15
笠谷和比古
笠谷和比古先生
和比古先生 「武士道の歴史的意義-日本の近代化との関連において―」
武士道の歴史的意義-日本の近代化との関連において―」
(講義要点)
食や古典文学、舞台芸術、スポーツなど多岐にわたる日本文化が世界で広く知られている。日本はそうした
伝統文化・芸能の宝庫だが、それらを過去のものとしてしか捉えておらず、現代の資源として活かしていない。
自然との共生という日本文化のコンセプトは町づくりに活かせるはずだ。例えば竹製の電気自動車を作るな
ど、伝統文化をモノづくりの資源として使うことができるのではないか。能と西洋文化の融合による新しい舞
台芸術を生み出すなど、芸能舞台芸術を最先端の文化として生まれ変わらせる。こうした新しいものを生み出
したときに、ポジティブな側面に力を置いて評価しなければ日本の将来はないだろう。
神道・武士道は今日の精神世界を支えるものである。武士道におけるサムライの自立した人格像とは、自己
に誇りを持って生き、志を高く掲げて正々堂々と行動し、理非善悪をわきまえ、恥を知ってけじめと責任に背
を向けず、たとえ一人になっても困難な状況に敢然として立ち向かっていくサムライの精神と行動である。こ
れは現在にも通ずる。目覚ましい活動をした人が出世するのではなく、波風を立てない無難な人物を求めるの
が現代の日本社会である。自分の意思が含まれていない意見は世界で評価されない。自分のオリジナリティの
ある意見が認められる社会になるべきだ。そして、武士道では重要な「意地」を失わないことが大切である。
主君の命令に盲目的に従うというのではなく、自分の思うところを歩めば自ずと主君に報いるような行動が
できる。塾生には武士道が到達した視点を考えていってほしい。
(講義の感想)
◯「昔を大切にする」というと過去ばかりとらえているようで抵抗があったが、日本の伝統である能や歌舞伎、
文楽などを「資源」として考えるなど過去と今を結びつける発想が新鮮だった。
○たとえ一人となっても、困難な状況に毅然として立ち向かっていくこと。その心意気があれば、何でもでき
ると思うし、世界がきっと変わると思いました。
◯何事も新しいものを善と見るか悪と見るかは評価の違いだと改めて感じました。ポジティブに評価していき
たいです。
◯リーダーにおいて必要なのは部下の諌言に耳を傾ける寛容の精神を持つことというのが一番印象に残った。
精神的に素晴らしいリーダーを目指していきたい。
◯武士道というのは武力に訴えるものだと思っていたが、そうではなく精神的に訴えかけるものだと思いまし
た。先頭に立つ人が何を大切にしなければいけないか分かった気がする。
安田喜憲
安田喜憲先生
喜憲先生 「エネルギー分散型社会」
(講義要点)
東北大学大学院の講義「日本文化風土論」の中で大学院生が「21世紀の技術と科学」というテーマで行っ
た発表で提案がなされた。現在、人間の活動が肥大化してより良い暮らしをしたいという新たな価値を求める
欲望が増加するなかで、科学技術を利用している。しかし、そうした高次元の欲求を持っているにもかかわら
ず、生活の満足度が高くないという現状がある。幸福を実現できるテクノロジーとは何か。学生からは、限ら
れた資源を循環させて生活していた江戸時代の暮らしを元に、分化した今ある価値をまとめる「集約型テクノ
ロジー」が提案された。また、「エネルギーの地産地消」として、地域の特色を活かした再生可能エネルギー
を生み出すこと、そして、職住隣接など「スマートシティ」の提案がされた。
50~60代の人は右肩上がりの豊かさの中で育った世代のため、「生きるとは何か」ということを考えた
ことがない。エネルギーと金を投入すれば豊かになれると思っていた。どうやったら自分が豊かになるかとい
うことばかりを意識してのし上がってきた。でも君たち若い世代はそうではない。「生きること」とは他人の
幸せを意識して生きることだと言う。さらに、「死を意識して生きていくことだ」とも言っている。3.11
以降出てきた考えなのかもしれないが、こういうことも古い世代は考えていなかった。
人間は生きてきた時代に考えが左右される。同じ若い世代とスクラムを組んで、君たちは社会を創って行く
責任を負っている。20年後の未来は君たちが創っていくのだ。
(講義の感想)
○世代間のギャップというものがこれほど深いものかということを感じました。私たちが生まれた時代は、豊
かさ=幸福という単純なものではなく、人との繋がりや生きることの意味に重きを置くべき時代なのだと思い
ました。先生が「次の未来を創っていくのは君たちの世代だ」と何度もおっしゃってくださって、私たちがこ
れから担っていくべき役割や持っている力について考えさせられました。
○若い世代の立場に立って話をされ、自分達は期待されているんだなと改めて思うことができました。今、起
こっている日本の現状を変えることができるのは、今の若い世代だけなんだということを心に受け止めること
ができ、自分たちが何とかしていかなければならないと思いました。年代ギャップを無くしていきたいです。
○これから若い世代が世界を担っていくと強く認識しました。今第一線で働いている人だけでなく、私たちも
リーダーという意識をもって、人と人のつながりに価値が置かれる世界にしたいと思います。
○「今の社会を変えねばならない」という思いが「今の社会を変えていこう」という希望に変わりました。
16
李鳳宇先生
鳳宇先生 「映画の出来る役割-『フラガール』を通じて-」
(講義要点)
映画『フラガール』で描きたかったものは、石炭から石油にエネルギーが変革する時期である昭和40年代
の炭鉱の町の姿である。常磐ハワイアンセンターで出会ったフラダンスの先生の話が興味深く、この方を中心
に町の風景を伝えようと決心した。映画の大半はフィクションだが、100人以上から話を聞いてエピソード
を拾った。
この映画はリアリティの追求にこだわった。役者も早い段階でオーディションを行い、常磐ハワイアンセン
ターに住んでもらって特訓した。シーンを前後せず、最初から撮影していく「順撮り」もその一つ。ラストシ
ーンに向けて、気持ちが盛り上がる効果がある。その他に、「貧しさ」「炭鉱の厳しさ」の表現にこだわった。
これがなければ炭鉱の人たちの本当の姿を表現できない。次に、「セリフがない」ところだ。フラで感情を伝
えるシーンが最も表現として成功した。そして、
「炭鉱夫の意地」。タイトルから女の子の映画と思われること
があるが、これは町の映画。男の意地や自分たちが支えてきたというプライドも表現したかった。
今後、映画を作るうえで「嬉し泣き」という表現を追求したい。悲しい涙ではなく、嬉しくて泣いてしまう
という涙の表現は難しい。しかし、実は日本人が最も得意としている表現が嬉し泣き。日本映画にもあるが、
古典落語の中にも多い。昔の人たちが何を考えて作品を作ってきたのかを考えてほしい。
どの時代を描いてもどういう表現をしても、軸がぶれないことが大事。時代や場所によって常識は変わるが、
変わらないものもある。自分自身の立場や視点から考えてほしい。映画の中で伝えたかった「変わってほしく
ないもの」は、絆、意地、プライド、家族の思いやりなど。人が生きる上で必要なものを描きたかった。私た
ちはどこへ向かうべきなのか。映画を通じて考えてほしい。
(講義の感想)
◯一本の映画の中に監督やそれぞれの人の思いやこだわりがあると知って、これから映画を観る時は作り手の
気持ちを考えながら観ようと思った。
◯今は従来のエネルギーと新エネルギーの転換期にあり、フラガールと同じような時代背景を生きている。変
わるものと変わらないものを自分で真剣に考えて行きたい。
◯良い仲間と出会うことの大切さとやればできるという前向きな精神を学びました。良い仲間に出会うため、
自分から積極的に働きかけたいし、やる前から諦めないようポジティブでありたいと思いました。
◯今まで悩みを共有してこなかったけれど、みんなで協力すれば壁に立ち向かえると思いました。自分にその
大きな壁が向かってきたらみんなで乗り越えたいと思いました。
山折哲雄
山折哲雄先生
哲雄先生 「災害の世紀を生きる~安全・リスク・犠牲~」
「災害の世紀を生きる~安全・リスク・犠牲~」
(講義要点)
根本的に大事な自然エネルギーは、人間の命を支えている「欲望」というエネルギーである。小説『蝿の王』
や精神科医の実験から、「子どもたちはある隔離された空間に放置されると、時を経て争い始め、殺し合う可
能性がある」ことが説明された。子どもは放置すると限りなく野生化し、動物に近づく。人間の野生化を抑え
るための社会的装置として最も重要なものに「学校」があるが、現在の学校はその役割を果たせていない。
東日本大震災の際、アメリカメディアが命をかけて原発対処に当たっている50人こそ英雄であるとして、
「フクシマ・フィフティーズ」と報じた。これは犠牲になってでも食い止めてほしいというアメリカからのメ
ッセージでもあったが、日本メディアのほとんどはこの犠牲という観念と表裏一体の「ヒーロー」という言葉
をいっせいに使わなくなり、政府も撤退の議論に終始した。
ここで40名を撤退させて、10名を犠牲にしてしまうのかという決断をするのがリーダーである。西洋で
は文明の発展のためには犠牲は仕方ないという考えが先行する。日本はそうした議論が希薄だ。自分の欲望に
対してどう立ち向かうのかが大切である。
国を救うために、ある程度の犠牲は引き受けなければならない。多くの者を救うために、一部が犠牲になら
なければならない。この思想を日本は受け入れられるのか。今日のエネルギー問題を考えるうえで、必ずどこ
かで犠牲と献身が要求される。これを考えない政策論議は不毛だ。こうした問題は、若い世代が考えていかな
ければならない。自分自身の内心にもとづいて考える。リーダーとして絶対的に必要な要素である。
(講義の感想)
◯平和な世界を実現するには犠牲が必要だと学んだ。今までの自分だったら犠牲には絶対になりたくないと思
っていた。しかし誰かのため、平和な世界のためを思うと、犠牲になることに対しての恐怖心というものがな
くなった。
◯ずっとリスクから逃げてきたが「犠牲による成功」という講義を聞き、リスクを受け止めて成功を導くこと
を目指したいと思った。
◯欲望を抑えるためにはスポーツ・軍隊・学校・宗教という人々が当たり前にやっていることが重要という話
を聞き、自分の知らない間に欲望に支配されない生活を送っていることに気づかされた。
◯人間にとって理性を保つとか、優れた倫理観を持っておくといったことが社会を形成する上でいかに重要か
分かった。
◯「人間は放置すると野性的になる」という言葉を聞いて人は完全ではないから、肉体を支えるそれ以上の精
神が必要なのだと思った。精神を鍛えるためにも当たり前のことを当たり前にできるようになりたい。
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小手川強二先生
小手川強二先生 「発酵食品の魅力」
(講義要点)
おいしい味噌をつくるには、温度と湿度に十分気を使って、上手に保ち発酵させる。温度が高まり過ぎると、
菌が死んでしまうので、うまく冷やしながらおこなう。しかし菌が元気になり過ぎてもおいしい味噌はできな
い。湿気と温度を微妙に調整しながら、菌がギリギリ生きられるような環境におかなければならない。その中
で菌はどうにかして生きようともがきながら生きる。そうすると香りのよい味噌ができる。
人間も同じだ。環境が良すぎると、すくすく育つがたくましくは育たない。負荷をかけていくことが重要で
ある。個人の人間の力はそんなに差はない。ある社長の話では、社員の能力の差は2倍もないが、やる気の差
は100倍あるという。いろいろな試練をいかに乗り越えていくかで、どんどんたくましくなっていくのだ。
人生いろいろなことがあるが、チャレンジして楽しんでやって欲しい。そしてたくさんの試練を経験すればそ
の後もきっと力強く乗り越えられる。
今は価値が多様化している。一つの価値だけで決められない。人は幸せになりたくて生きている。昔は頑張
れば幸せになれたが、今は幸せの尺度がたくさんある。自分で自分の幸せを考えなくてはならない。そして頑
張っても必ずしも達成できるとはかぎらない。挫折した際に、自分の人生は何だったのかと考える。その時に
大事なことは目標の為に自分がどれだけ努力したかが大切で、その努力はその後にどこかで必ず報われる。そ
して挫折をした時に大きな支えとなってくれるのは家族と友達だ。海外の人ともコミュニケーションをとっ
て、たくさんの価値観に触れ、人生を豊かにして欲しい。
(講義の感想)
◯本当の意味で自分を大きくしようと思うなら困難に向かわなければならない。
◯①若い時の苦労は裏切らない②若い時の努力は裏切らない③人生はやり直しがきく、この言葉を胸に留めな
がら日々邁進していきたい。
◯「環境が良すぎるとたくましく育たない」という言葉を聞いて、自分の良すぎた環境に気づかされました。
◯やる気の差で能力の差が決まるという先生の言葉から、高校生には無限の可能性が広がっていることを感じ
た。何事もやる気を持って取り組んで行こう、それが自分の将来の財産になるのではないだろうか。
◯挫折してもまた努力をすればいいという言葉に救われました。進路や夢で悩んでいますが、とりあえずやっ
てみようと思えました。
◯辛いことに出会っても、今の辛さが自分を育てると信じて前進していきたいと思いました。
川勝平太先生
川勝平太先生 「日本に今、必要な新しい学問」
(講義要点)
国づくりをするにあたって常にどこかにモデルの国があればいいが、すぐに浮かばない時代に今私達は生き
ている。福澤諭吉がなぜ1万円札になり、有名な日本の顔になったのか。これは『学問のすゝめ』を書いたか
らだ。この本には「一国の独立の基礎は一身の独立にあり」と書かれている。国の独立の基礎には、一人一人
の独立が必要で、その基礎は学問にある。戦前期にヨーロッパに学び、戦後アメリカに学んだように、今何を
学ぶべきなのか考えてほしい。国をつくろうと思ったら、必ず学問がいる。
日本は近隣諸国だけでなく、東西両方の地域のものが血や肉となっている。日本を語るときには、世界を語
らざるを得ない。だから、勉強をしない人はリーダーになれない。自分のことは自分の家族を抜きにしては語
れないのと同じように、日本の未来を語るときには日本の歴史を知らなければならない。
日本の山の象徴は富士山だ。富士と名の付く山がどの都道府県にもある。そういうシンボルを利用した国づ
くりが必要ではないかと思っている。富士山から出てくる価値は、「美しい国を作る」ということ。どこから
見た富士山がきれいか。どこから見ても最高で、その全てを許す。ここに違いを認める「和」の文化が出てく
る。富士山の「富」は物が豊かであるということ。「士」は心が豊かであるということ。物と心の調和が出て
くる。
東京だけが中心と思ってはいけない。それぞれの地域が中心である。一人一人がみんな違い、どの人を見て
も同じ人はいないのと同じことだ。本当に広い視野を持たなければ深いところまで見えない。地理的にも歴史
的にも、我々は誇りを持って、それぞれの地域が国全体を表していると思って見なければならない。
(講義の感想)
◯「歴史を知らずして未来は創れない」という言葉が胸に刺さった。自国の歴史を知るには他国の歴史も学ぶ
必要があることに気づかされて、歴史を学ぶ意欲が向上した。
◯世界に行くハードルが低くなった今だからこそ、日本の歴史や自然といった日本独自のものに目を向けたい
と思いました。
◯それぞれが中心で多中心だというお言葉がとても好きになりました。それぞれに大切な存在がいてそれぞれ
が大切な存在なのだと思います。自分のための人生を送るために、他人と比較したくないと思いました。
◯学習とは自分を考え、国を考え、世界を考えるためにあるという意識を忘れないようにしたい。
◯「最高の人とは少人数に手を差し伸べられる人」という言葉が心に響いた。自分が直接的に貢献できなくて
も、間接的・示唆的に良い影響を与えていければと思った。
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榊原英資先生
榊原英資先生 「君たちは何のために学ぶのか」
(講義要点)
今は第三の開国の時だ。グローバリゼーションはいろいろな国が交流して地球が一つの国になるということ
である。いろいろな国から学ぶことは重要だが、グローバリゼーションの弊害も考えなくてはならない。中国
は発展途上であるため賃金が低い。日本は物価が下がっているが、賃金も下がっている。これは賃金の安い中
国で物を作っているからだ。賃金が安くなるだけでなく、日本の人たちの働き方も変わっている。昔はみんな
それなりの賃金をもらえる平等な社会だったが、今はそれが終わりつつある。ルーティンの仕事が中国企業な
どに取って代わられると、賃金が下がっていくことになる。平等な社会から格差のある社会になる。これがグ
ローバリゼーションなのだ。では君たちは何をしなければならないのか。自分にしかできない仕事をしなけれ
ばならない。つまり、プロフェッショナルになるということだ。何のプロになるかは次第に決めていけばいい
が、プロになるという意識で働くことが重要である。
そして、「学び続ける」姿勢が非常に重要だ。学習をして何度も復習をすることで記憶される。想像力は知
識の組み合わせを変えること。知識の量が増えれば、組み合わせも増える。だから知識を持つことが大事。一
つのことを深く堀っていけば、横につながっている。
自分と異質なものに興味を持つように心がけてほしい。そして、自分の位置を理解してほしい。縦と横でど
この位置にいるか考えることだ。縦は歴史、横は外国。できるだけ若いうちに外国に行ってほしい。外から日
本を見ると、初めて日本が分かる。国際的な知識を身につけることが将来にとって大事なことだ。
(講義の感想)
◯いつまでも学ぶ気持ちを忘れないでいることが大切だと思った。自分とは違うもの、未体験のものに対して
先入観や偏見を持たず立ち向かっていきたい。
◯日本にずっといると、日本がどれだけ特殊な国か分からない。その点で世界から客観的に日本を見るために
歴史を学びたいと思った。
◯プロフェッショナルになることで、自分にしかできない仕事ができ、自分自身に誇りを持つ事もできる。世
界の中での自分のポジションを明確にできると思った。自分にしかできない、自分のやりたいことを見つけて
努力したい。
◯英語を学び、世界に飛び立つ準備をし、これからの社会に順応すること。歴史を学び、世界中の人とお互い
を話すこと。知識を増やすことで想像力を生み出すこと。この3つを心がけていきたいと思います。
◯自分にしかできないことって何だろうと考えさせられました。きっとそれを探すために生きているのだと思
います。たくさん学んで見つけ出したいです。
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6.塾期間における成果・課題
.塾期間における成果・課題や卒塾後の様子
課題や卒塾後の様子
第9回日本の次世代リーダー養成塾を終えて、塾生・保護者・学校の担任教員、クラス担任、学生リー
ダーへのアンケートを参考に塾の様子や感じたこと、成果や今後の課題をまとめた。
塾生について
(1) 概要
塾生は、負担金をいただいている7の参画県(北海道、青森県、静岡県、岐阜県、和歌山県、福岡県、
佐賀県)推薦枠90名と、全国から選抜する一般公募枠65名、被災地特別枠10名の合計165名から
なる。塾生は25都道府県及び海外3カ国から参加し、高校数としては121校に及ぶ。昨年同様、今年
も「被災地特別枠」の応募枠を設け、福岡県宗像市から補助金をいただき、株式会社スターフライヤーか
ら被災地特別枠全員分の航空券をご協賛いただいた。そのおかげで、岩手県から8名、福島県から2名の
被災地からの塾生が無償で参加することができた。
(2)成果・課題
1.塾生の募集及び選考
塾生として参加するためには、参画県推薦枠、一般公募枠、被災地特別枠の3種類の応募枠があり、い
ずれも審査に合格する必要がある。参画県推薦枠は、各自治体に募集及び選考をしていただいている。
一般公募枠の募集については、全国の高校の学校長宛てにポスターとパンフレットを送付するとともに、
塾生募集パンフレットを卒塾生に送っている。塾の知名度も上がってきたようだが、応募者の多くは卒塾
生の話によって塾に関心を持ったと言っている。卒塾生の口コミの力は塾生募集において大変重要であり、
卒塾生の中には後輩に参加してほしいという思いから、募集用ポスターを直接教室に貼りたいと申し出る
者もいた。
一般公募枠は一次選考(応募書類及び作文)、二次選考(個人面接)による審査を通過した者が塾に参
加できる。東京、名古屋、大阪、広島、福岡の全5ヶ所の会場で面接を行った。
今年は審査には含まないが、個人面接後にグループディスカッションを実施した。少しでも塾の雰囲気
を感じてもらうためだ。テーマは、「節電」「日本の電力需給問題」「原子力発電所及び放射能の問題」な
ど今年のハイスクール国会のテーマを意識したものであった。「初めてディスカッションをした」と答え
る応募者が多かったものの、自分の意見を持ち積極的に発言している応募者が多い印象だった。日頃から
ニュースなどで報じられていたためか、エネルギー問題に対する関心の高さが伺えた。こうしたグループ
ディスカッションによって、他の学校に同年代の意欲の高い生徒がいることを知り、また塾で行われるデ
ィスカッションの予行演習ができることで、応募者の塾への参加意欲が高まったようであった。
2.塾生の期間中の様子
【塾期間全体を通して】
今年のリーダー塾は、電力不足から計画停電が実施されるかもしれないというなか行われ、塾生はハイ
スクール国会でエネルギー問題について一生懸命議論するというように、エネルギーというテーマが身近
になる2週間であった。ハイスクール国会の総理大臣候補23名中、男子の立候補者は18名というよう
に、今年も男子の積極性が目立った。塾生の男女比は女子の方が高いが、塾生全体を引っ張るリーダーシ
ップを発揮する場面になると男子が活躍していた。
20
また、今年は講師のマハティール先生が高熱を出したにもかかわら
ず、病を押して来日し、講義をしてくださった。塾生たちは先生のそ
うした熱心な姿に感動し、講義後先生へ向けて感謝の気持ちを歌に込
めて、みんなで練習した「ふるさと」を合唱した。
今年の塾生はクラスを中心として団結し、みんなでまとまろうとい
う協調性のある者が多かった。素直で強い思いを内面に抱えこむ塾生
たちであったためか、ディスカッションで相手の意見と同調しすぎて、
マハティール先生を前に歌う塾生たち
反対意見を持っていても述べることができなかったり、あるいは表面
的に同調しているように見えても実際は意見を聞いておらず、議論になっていなかったりする。また、講
師の先生の意見を全て正しいと受け取り、批判的に考えたりすることもできないようであった。他人との
協調は大事であるし、塾生全員で団結したことはとても良い点であったが、時には自分の殻を破って他人
と意見をぶつかり合わせ、時には物事を疑って深く考えていくような批判的思考も必要だろう。普段の学
校生活のなかで、同調して他者との摩擦を減らすという処世術を身につけているのかもしれないが、対立
を恐れずに現状を打破できる、ある種の「起爆剤」となるリーダーになってほしい。
塾後のアンケートでは、塾生が「町の広報紙に塾の体験談を掲載した」
「被災地へボランティアに行っ
た」など、積極的に活動をしている様子が目立つ。特に今年は、塾後のアンケートで塾生及び保護者に加
えて、新たに学校の担任教員にも回答していただいた。詳細は後述するが、
「積極的に人前に出るように
なった」「学習により高い目標を持つようになった」など総じて塾生が良い方向に変化したという回答が
多かった。
では、以下に塾期間中の特徴的な塾生の様子を述べていく。
【被災地への思い】
今年のリーダー塾は、昨年同様「被災地特別枠」を設け、岩手県から8名、福島県から2名の塾生が参
加した。入塾式では、岩手県・福島県・福岡県の塾生計3名が決意表明を行った。
まず、岩手県の塾生が、被災当時に父の会社が津波の被害にあって機材や重機が流されてしまい、会社
自体も鉄筋だけが残るような状態になってしまったという辛い経験を語った。少しずつ復興している岩手
県の現状を全国から集まった塾生に伝えるとともに、塾で得た発見を持ち帰って被災地のために役立てた
いと力強い決意を表明した。
次に、福島県の塾生が、原発事故による被災状況を語った。入学試験を受けたきり学校の校舎に一度も
入れず、同級生が県内外へ転校していったこと。実家にも防護服を着てしか一時帰宅できないこと。亡く
なった親戚がいたことなどを語った。そして、塾に参加して、震災により失ってしまった自信を取り戻し
たいと述べた。以下、福島県の塾生の決意表明から一部抜
粋する。
「震災後1年間はショックから立ち直れず、毎日生きるの
が辛かったです。しかし、震災で大変な中、ご自分も被災
されているというのに、熱心に授業をして下さる沢山の先
生方に出会い、教員になりたいという夢を持つことができ
ました。授業を行うため、学びの場所を提供して下さった
入塾式で抱負を語る3名の塾生
他高校のみなさんにもとても感謝をしています。
私はリーダー塾に参加することで、将来、教員になった時に必要な、生徒を指導していくためのリーダ
21
ー性を学びたいと思っています。また、今後の日本のエネルギー政策のあり方をみなさんと議論し、そし
て、震災を経験して失ってしまった自分への自信を取り戻せるよう、精一杯取り組んでいきたいと思いま
す。共に、切磋琢磨し、頑張りましょう。」
被災地の2名の塾生が決意を述べた後、開催地である福岡県の塾生が被災地から来る塾生と共に学び、
被災地の方の思いを共有していくことや、エネルギー問題という日本が抱える問題について高校生の立場
から切り込んでいきたいと塾への抱負を述べた。
このように、被災地特別枠の塾生を全国の塾生が熱意とやる気を持って迎え入れるという決意表明をし
て始まったリーダー塾。塾期間中には、塾生がそれぞれ被災地への思いを強くする機会が訪れた。
ハイスクール国会も後半になったときである。塾生が議論していた「エネルギー問題」は震災によって
起こった原発事故が大きく関わっていたが、いつの間にか被災地の思いをほったらかしたままの政策論議
に終始していた。被災地特別枠の塾生はみな、
「被災地のことを伝えたい」という思いを強くしており、
みんなの前で発表したいと夜の空き時間や早朝に集まって話し合いを始めた。「写真などを持ってくれば
よかった」と後悔をのぞかせた塾生もいたが、話し合いを重ねて「地震」
「津波」
「原発事故」の3点から
3名の塾生が話をすることに決まった。
被災地から参加した10名の塾生
被災地特別枠を代表して発表する3名
発表のなかで、岩手県の塾生が「津波で犠牲になった遺体が多く、火葬できない遺体をドライアイスで
冷やす作業をする方々がいた。腐る遺体と毎日暮らすその方々のおかげで、津波で流されて亡くなった親
戚を引き取ることができた」という体験を語った。また、「瓦礫の下に遺体がある場合、重機は入れない
ので手作業で遺体のある場所に赤い旗を立てる。一日で旗がいっぱいになり多くの方が亡くなったことを
思うと、とにかく生きなければならないと感じた」という話もあった。福島県の塾生は、
「警戒区域とな
っている家に一時帰宅をした際に、自殺する人もいる。自殺現場の壁に『原発のせいで』など心の叫びが
書いてある場合もあると聞き、ショックを受けた」と語った。被災地特別枠の塾生たちが、辛い体験を涙
を流すことなくしっかりと語る様子は、全国の高校生にこの思いを伝えたいという使命感にあふれていた。
この発表は非常に生々しくリアリティがあり、塾生にとって強く心に迫るものがあったようだ。
この発表と同時期に、被災地以外の塾生も被災地への思いを強くしていた。被災地の塾生の「風化させ
たくない」という思いが他の塾生にも伝わり、有志で被災地応援企画が立ち上げられたのだ。企画では被
災地の観光 PR ビデオを制作することになった。被災地から来た塾生の思いに触れ、他の塾生が被災地の
ために自発的に動き始めていた。
2週間の塾を終えて、震災で自信をなくしたと語った福島県の塾生は、被災地のことを塾生全員に伝え
たことで、自分のなかにあった「被災地のことを伝えたい」という思いが強くなり、今後も伝えていく活
22
動をしたいと述べた。人に思いを伝えるということ、そして相手に変化が出てくること。それをディスカ
ッションや被災地の状況の発表など、あらゆる角度から2週間通して経験したことは、その塾生にとって
失われていた「自信」を取り戻すことにつながった。
【自主的に団結していく力】
塾が始まり、生活のリズムがつかめてくると、気になる点を事務局に要望してくる塾生が出てきた。あ
る塾生が事務局にやって来て、「居眠りしている人がいる」
「講師への質疑応答で同じ人ばかりが当たる」
「講義の前後に行う礼や塾生の質問の際の言葉遣いが気になる」など講義に関する要望をしてきた。しか
し、「一度当たった塾生は当たった回数を指で表現すればいい」など解決案を用意しており、例年よくい
る単に要望を言いっ放しにする塾生とは違い、興味深かった。塾生は少しずつ違和感を持ったところを改
善していこうという姿勢を見せていたのである。そして、塾生が自ら始めたことは、講義の前後に行う礼
を「よろしくお願いします」「ありがとうございました」という発声と同時に行うのではなく、大きな声
で言葉を発した後に、丁寧に礼をするということであった。
「講師の方に誠意の気持ちを示したい」とい
うことで、塾生が自ら発案し、何度か練習をして取り組んでいた様子が印象的であった。
こうして、塾生全員で考えながら塾を盛り上げていく様子が見られていたが、塾が始まって一週間経っ
た頃、塾生に気の緩みが出てきた。ちょうど塾生活にも慣れた頃で緊張感がなくなり、就寝時間が守れな
いことで怒られたり、夜に眠れていないせいで講義中に居眠りが多くなり注意を受けたりしていた。する
と、前半のクラス担任の最終日、ある塾生が前に出てきて全員に向かって提案した。
「クラス担任の先生
に今日はかっこいいところを見せられるように頑張ろう。」この発言に塾生はみな心を揺り動かされたよ
うで、クラス担任の先生を気持ち良く送り出そうという意識を塾生全員が持ち、自分の態度を反省して意
識的に改めようと努力していた。
塾生は自主的に団結する力を発揮していった。これは誰かに強制されたものではなく、塾生によって生
まれたものだ。塾生はこれから大学生になったり、社会人になったりして一人で生活していく。誰かに怒
られて自分を正すのではなく、自ら気づいて行動する力を身につけ、また他人に配慮して生活できる人間
になってほしい。
【意見を言う、聞く、書く能力】
あるクラスで、いじめについて議論になった際、
「いじめられる方にも問題がある」という視点に固執
し、なかなかいじめを受ける方の気持ちから考えることができないということがあった。別のクラスでも、
議論がかみ合わず大筋と違う方向へ向かって意見を言い合う様子が見られ、クラス担任の先生が論点を整
理して考えさせる場面があった。選考の面接でも感じたことであるが、今年の塾生は自分の意見をうまく
口にできる者が多い。しかしその一方で相手の意見を聞いておらず、言葉のキャッチボールができなかっ
たり、あるいは自分の意見を言いっ放しにしたりする傾向もある。自分の意見を伝えることに一生懸命に
なりすぎて、相手の立場になって物事を見ることを忘れていないだろうか。常に顧みながら議論をしなけ
ればならない。
また、他者の視点を意識することは、文章を書くときも同じである。塾期間中、塾生は「講義レポート」
や「書禅」
、
「作文」など何度も文章を書く機会がある。ただ、塾生の書く文字は乱雑で、高校生レベルで
習得すべき漢字を書かず平仮名ばかりを使用する者もいる。誤字や脱字も多い。読み手を意識しながら文
章を書いているだろうか。
また、塾生のなかに「学校でも作文は書くから塾でしかできないことがしたい」という意見を言う者が
いたが、塾でなぜ作文を書いているか考えてほしい。もちろん、リーダー塾は普段学校生活ではあまり行
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われないディスカッションを多く行う場であるが、口から意見をどれだけ言えても、相手の言葉に耳を傾
けなければディスカッションにはならない。これと同じことが文章を書くことにも言える。自分なりの文
章を書くためには、他者の意見を自分の中に一度取込んでよく考え、物事を深く理解しなければならない。
塾生には、意見を言うことだけでなく、聞くこと、そして書くことといった全ての能力をおろそかにせず
鍛えていってほしい。
【生活面】
今年の塾生は、塾初日から宿泊施設内の人たち全員に積極的に挨拶を行っており、礼儀正しい者が多か
った。なかには、すれ違う際にきちんと立ち止まって挨拶をする者もおり、そうした態度は非常に気持ち
の良いものであった。また、佐賀の施設へ行く前や卒塾式の朝には宿泊室を元の状態に整頓して出るのだ
が、ベッドメイキングを全員がきちんと行っており、呼び出しを受けるようなこともなかった。今年の塾
生の良かった点である。
塾では委員会を設けており、塾生は全員いずれかの委員に
ならなければならない。クラスの責任者である「学級委員」、
宿泊棟の鍵の管理や緊急時の避難誘導などをする「防災委員」
、
講義場所の設営を行う「会場委員」、他に「掃除委員」「食事
委員」「洗濯委員」「入浴委員」に所属する。塾生には、他人
から強制されて生活のきまりを守るのではなく、お互いが声
を掛け合いながら自ら律して生活していくことを指導してい
る。そのため、委員が責任を持って行動し、塾生を指導する
委員長・副委員長を決める塾生たち
ように呼びかけている。
塾期間中は特に食事委員の頑張りが目立っていた。食事の際、食事委員が時間を見ながら他の塾生に声
をかけたり机を拭いたり、積極的に活動していた。その結果、食事時間をオーバーして施設や他団体へ迷
惑をかける塾生もなく、グローバルアリーナの食堂の方からも「態度が良い」と褒められた。
問題点としては、塾期間中の宿泊室の整理整頓ができていなかったことである。2週間の共同生活であ
り、宿泊室も約20名が収容できる2段ベッドが置かれているため、なかなかスペースがないことは事実
であるが、それにしても宿泊室は物が散乱していた。同じ宿泊室に連泊するとしても、塾生には、荷物の
整頓を毎日行って気持ち良く生活する意識を持ってもらいたい。宿泊室の掃除はそれぞれの部屋で行うよ
うにしていたため、目が行き届かなかった部分もあり、部屋ごとに徹底して指導すべきであった。
宿泊室の整理整頓とも関係するが、集団生活の基本である他人への配慮の欠けた行動が見られたことは
残念である。特に、時間の管理ができていない塾生がいた。スケジュールが過密なのはどの塾生も同じで
ある。しかし、講義時間の直前に慌てて走って向かっている塾生がいたり、なかにはシャワーが混雑して
入浴時間がなくなったという塾生がいたりした。特に入浴時間については、お互いに気遣いながら全員が
短い時間で入浴できるよう声を掛け合うべきだったのではないか。塾生はタイトなスケジュールをこなす
精神力はついたかもしれないが、ぜひ他人と協力しながら全員が時間の管理ができるようにする能力を身
につけてほしい。もちろん、スケジュールが詰まりすぎていることも省みる必要があるため、事務局の方
で再度カリキュラムの検討をしていきたい。
また、冷房のせいでのどを痛めた塾生が多かった。塾生は口をそろえて「就寝の際に冷房を切っても誰
かがまた入れる」と話しており、就寝時間中に冷房の入切をめぐる攻防戦が頻繁に行われたようだ。のど
を痛めた塾生に冷房の当たりにくいベッドに交代することやマスクを装着して就寝することなど対処法
を伝えたが、就寝時の冷房をめぐる状況はなかなか改善されなかった。宿泊室ごとに塾生同士で話し合う
24
などして解決してほしかったが、部屋ごとに冷房の管理者を決めるなど、統一的な対応が必要であったか
もしれない。
集団生活には、自分自身を律して生活することはもちろんのこと、人と互いに協力してより良い生活が
できるように工夫していくことが必要である。塾生は、将来的には日本国内のみならずグローバルに活躍
し、異なる文化や背景の人と関わりながら生活を送っていくことだろう。塾で学んだ集団生活の基本を思
い出し、様々な環境で生活する糧にしてほしい。
【ある塾生の成長】
塾生に書かせた作文で、排他的な考え方を擁護する記述があり、
多様な価値観に触れる塾に参加したにも関わらず、そのままの考え
方では良くないと事務局内で話し合った。
スタッフがその塾生を見かけると必ず声をかけた。ある時、その
塾生が書いた作文を一緒に読んでいると、塾生が読んだ本に影響を
受けたと言い始めた。そこで、どうしてその考え方を取り入れたの
か尋ねるうちに、塾生は「例えば戦争について聞かれたら、みんな
は『反対』と答えるだろうけど、自分は反対とは言えずに考え込ん
青空の下でも熱心に質問をする塾生たち
でしまう。本当はみんなみたいに、何も考えなくても同じ意見が言
えるようになりたい」と話した。この塾生はみんなが当たり前だとして疑わない事柄を深く考え、別の視
点がないか探すタイプなのだ。だからこそ、一般的には排他的と思われる本について、新しい角度で論を
展開していると捉え、影響を受けたのだ。みんなが同じ意見を言えばよいのであれば簡単で、単純で分か
りやすい意見に流され、それを自分の意見だと思い込んで思考停止してしまえばいい。そうではなく、こ
の塾生は常に裏側から考える力を持っていると分かった。
しかし、それは一つ間違うと極端で過激な考えを持ってしまう危険もある。そこで、
「みんなと同じ意
見を持つ必要はないし、そうやって異なる角度から見ようとする姿勢はとても良い」と伝え、「ただ、一
つのデータから物事を捉えるのではなく、自分で調べることが必要」と指導した。本の考え方をそのまま
鵜呑みにするのではなく自分で調べることの重要性を伝えると納得してくれた。
その後、塾生は卒塾式の塾生代表挨拶に自ら手を挙げ、立派に大役をこなすほど変化した。そして、卒
塾後のアンケートでは「視野が広くなり、安定した考えを持てるようになった」と答えた。保護者のアン
ケートでは「生徒会長に立候補したいと言った」という積極性が見られるコメントがあった。学校の担任
教員からも、「大いに刺激を受けたようであり、考え方もしっかりしてきた」というコメントが寄せられ
た。成果があったと大変嬉しく思っている。
他の塾生の例もある。その塾生は二日目の夜に体調不良を訴えてきた。クラス担任の先生や学生リーダ
ーが塾生に話を聞くと、精神面の理由により塾生活になじめていない様子が浮かび上がってきた。その塾
生は1年間のアメリカ留学を経験し、自分の意見を自由に発言できる教育が合っていると感じていた。帰
国すると、日本の学校生活は受験勉強に縛りつけられたもので、そのギャップが負担になっていた。そう
したストレスは根深く、塾でも腹痛などの症状を訴えていた。
しかし、クラス担任や学生リーダーの支えもあり、ハイスクール国会が始まってからというもの、その
塾生はめきめきと変化を見せた。「一人で黙って考えるよりも、誰かとコミュニケーションをとりながら
問題を考えていく方が、自分にとっては合っているようだ。
」そう言って、塾生はハイスクール国会のビ
ジョンを総理大臣に説明したり、省のなかで塾生をまとめながら大臣と意見をぶつかり合わせたりと、
様々な塾生とディスカッションをしながら奔走している姿が目立った。そして、体調の不安を訴えること
25
もなくなった。最後に書いた作文では、
「リーダー塾でいろいろな人に支えられて卒塾できた。自分が体
験した痛みを持ち続け、それを他の人に役立てたい」と語っていた。
卒塾後、学校の担任教員から「留学から戻って来た後、自分の方向性を見失いかけていたが、今回の経
験で自信を取り戻したようで、行動に積極性が出てきた」というコメントを頂いた。塾に参加したことで
自信がつき、学校の先生も目に見えて変化を実感できたようであった。
このように、リーダー塾をきっかけにやる気や積極性などの部分で大きな変化が見られた。ここで取り
上げた塾生はほんの一例である。クラス担任の先生からも個別の塾生ごとに評価をしてもらったが、塾に
参加したことで気づきや発見を得て成長した塾生が何人もいた。個別のフォローアップによって本人の意
識が変わる。多感な高校生だからこそ、丁寧に話を聞き、こちらも真摯に向き合わなければならない。
3.塾後の卒塾生の様子
【卒塾後のアンケート】
塾後に、塾生とその保護者、学校の担任教員へアンケートを行った。
(詳細は70ページ参照。
)
アンケートに回答した塾生の90%が、リーダー塾で「ものの考え方や視点が変わった」と答えた。そ
の中でも、「視野が広がった」と答えた者が30%、
「自信がつき、積極的になった」が20%であった。
興味を持つようになった分野に関しては、一番多い「政治・国際情勢、社会・エネルギー問題」が40%、
その次に「学問全般および大学、職業、生き方」が16%であった。
保護者のアンケートで見られた塾生の変化として、塾後「ニュースや新聞をじっくり読んでいる」「海
外のニュース(BBC、CNN)をチェックしている」というものがあった。塾生が、卒塾後は政治や国際
情勢に関心を持つようになり、家庭で熱心にニュース番組を見たり新聞を読んだりしている様子がよく分
かる。また、「自分のことを自分でするようになった」「親への感謝の気持ちを表すようになった」など、
生活面で大きく変わった塾生も多かったようだ。2週間、自律して生活したことで親のありがたみが分か
ったようである。そして、
「生徒会長になった」など、学校のリーダーとしての役割を積極的に担ってい
るという報告も多かった。塾で受けた刺激を今度は母校にフィードバックするといった傾向が見られる。
学校の担任教員からのアンケートでは、70%が塾参加後に変化があったと回答した。「学習により高
い目標を持ち、計画的に日々の勉強をすすめるようになった」や「自分の進路について、より明確な方向
が見えてきたようだ」など学習面での変化があったというコメントが寄せられた。また、
「自分の意見を
口にしたり積極的に人前に出る姿が見られるようになった」
「今まで以上にあいさつ、礼儀が良くなった
り、身の周りのことをきちんと行い、良くないところは自分で改善していく姿勢が見られるようになった」
という生活面の変化もあげられた。なかには、
「生徒が放課後やクラス活動の時間などにディスカッショ
ンを始めていた」「塾に参加した生徒がやってみたいと提案したので、ホームルームにディスカッション
を取り入れた」という回答があったように、塾生が塾の経験を積極的に学校生活に取り入れようとしてお
り、それを先生が受け入れた事例もあった。このように、塾参加後に塾生が良い方向に変化し、それがま
た学校にも還元されて他の生徒に影響を与えるきざしになっている。
【沖縄県の塾生】
沖縄県から参加した3名の塾生は、塾の体験を沖縄県全体へ発信していく必要があると活動を始め、塾
後にまず株式会社琉球新報社を訪問して新聞記事に取り上げられた。
3名は塾期間中、沖縄県のことを知ってもらおうと積極的に活動していた。沖縄県の基地問題について、
全国から来ている塾生がどう考えているのかを知りたいとアンケート調査をしていた。そして、基地問題
をクラスのディスカッションのテーマで取り上げ、メディアで取り上げられていない生の声を届けようと
26
必死だった。また、
「さとうきび畑」の歌詞を全員に配り、みんなで合唱して平和を考える場面もあった。
戦争問題を風化させないという意識で自ら発案して取り組んでいたようだ。
沖縄県に戻った後、沖縄の中高生を集めてディスカッションを行う団体を設立した。リーダー塾に参加
したことで沖縄県外の塾生が自主的に活動していることを知り、沖縄の若者も基地問題などを議論し発信
していかなければならないとやる気になったのだ。塾で学んだディスカッションの力を活かして、意欲的
に活動を進めている。
【卒塾後の交流】
全国各地にいる卒塾生と交流を持つため、フェイスブックなどを利用して、インターネットを通じたコ
ミュニケーションをさかんに行っているようだ。「塾で知り合った友達とフェイスブック等で関係が継続
していて、受験などの情報を互いに話し合っている」とアンケートで回答する保護者もおり、同じ大学を
目指す塾生や受験する大学のある地域に住む塾生と連絡を密に取り合って、情報を集めている者もいるよ
うだ。他にも、
「フェイスブックやメールで海外の友達に英語を教えてもらったり、リーダー塾の先輩に
勉強の分からないところを聞いたりしている」という回答もあり、塾でできた人脈を学習面で生かそうと
している者もいるようである。ただ、保護者の中には「パソコンの前にいる時間が長くなった」
「スマー
トフォンを覗き込む時間が増えた」
「勉強時間が減っているのではないか」という声もあった。
塾生が全国各地にいるため、連絡方法がこうしたインターネットなどのツールに限定されてしまう。保
護者にとっては気がかりかもしれないが、パソコンを使用する時間を決める、何をやりとりしているのか
確認する、など家庭内の情報教育も必要になるかもしれない。塾直後は学校がまだ夏休みであったため、
こうしたインターネットを介したやり取りが頻繁にあったようだが、学校が始まってからは落ち着いてき
たとも聞いている。塾生は自分の夢や目標、そして塾期間中の規則正しい生活を再度思い出して、日々の
生活を送ってほしい。
(3) 参加しての感想
自分がまだまだ未熟で、故に可能性があることを学べた。
毎日当たり前のように生活していたが、塾に来て頑張ろうと思える目標を持ち、考え方の違う人と共
に情報交換をしてすごく刺激を受け成長した。
自分の短所である「人の意見を受け入れない」という姿勢を変えることができ、より良い考えを生み
出せるようになった。
人の役に立つ人になりたいと思えた。自分の可能性を見つけた。
日本人として、誇りを持った大人になりたいと思うようになった。
多くの優秀な方の話が聞け、また多くの仲間が全国にできた。人と人とのつながりの大切さを感じる
ことができた。
世界は広く、沢山の人がいる。自分からアクションを起こせば世界は広がるということが分かった。
もっと自分の能力を高めたいと思うようになった。
夢を持ち、それに向かって本気で努力しようと思えた。
多くの人の前で発言すること。また、自分自身の考えを持つこと。これらができるようになったこと
が一番の成長だと思う。
感情が豊かになった。仲間の大切さを改めて知った。夢の力を感じた。
新しい環境でも、物怖じせずに入り込むことができるようになり、適応力が身についた。
いろいろな人生があってよいと思えた。
27
親にどれだけお世話になっているか分かった。
全国各地に友達ができた。これから励ましあいながら競いたい。
自分の夢に自信がもてるようになった。今までは、友達に話したことがなかったけれど、塾に来て、
初めて夢を語ることができ、同じ志をもつ仲間と出会え、これからの人生の道しるべとなった。
(4) 卒塾後の活動
全校集会で、塾に参加して良かった点や自分が成長できた点などの報告をした。また、塾で何を学び、
今後どう活かしたいのかを書き、学年通信に掲載してもらった。
学校の夏期研修報告会に参加し、スライドを使ったプレゼンテーションで塾の面白さを語った。わず
か7分間の持ち時間だったので、14日間の活動をまとめることに苦労した。
学校で報告会がなかったので、自分から先生に交渉して20分程度の報告を行った。
生徒会で、被災地から地震や津波の映像を送ってもらって、校内や全国の生徒に見てもらう企画を進
行している。
学園祭で、被災地特別枠で参加した塾生の伝えたいメッセージや写真などを展示する企画を実施。
塾で立ち上げられた被災地応援企画の観光 PR 映像を学校で上映できるようにお願いした。
被災地へボランティアに行った。
マハティール先生の講義を聞いて「多文化共生」に関心を持ち、「多文化共生センター」を訪れて、
日本語教室に参加したりそこで働いている方に話を聞いたりした。
仲良くなった塾生に誘われて模擬国連に応募した。学校で行われている英語セミナーで、英語で塾を
プレゼンテーションした。
町長に会いに行き、塾で体験したことを報告した。町の広報紙に塾の体験談を掲載してもらうことに
なった。地域のラジオ番組に出演して、塾に参加できたことをテーマに1時間の話をした。
地元になかった United Children を9期生メンバーで設立した。
※United Children:全国各地で中高生が自主的に設立し、地域を中心に活動している団体。
企画、準備、実行を全て中高生が行っている。
生徒会長になった。塾の体験をもとに活動したい。
28
29
クラス担任
クラス担任
(1)概要
今年は7クラスを協賛・協力企業・団体からの14名の社会人
にお願いした。1クラスの塾生の人数は、23名もしくは24名
である。前半、後半のどちらか1週間を担当していただいた。事
前に1泊2日の研修を行った。
リーダー塾では、クラス担任の役割は非常に大きく、なくては
ならない存在になっている。塾生一人一人の長所を伸ばしていく
ために、社会人の目から見たアドバイスは非常に効果がある。ま
た、社会人の日々の仕事ぶりを見て学び、意見交換することはキャリア教育にもなる。塾後も多数の卒塾
生が、大学受験や就職などの人生の節目で相談に乗っていただいているようだ。
ディスカッション指導においては、論点を明確にすること、相手の意見を聴くこと、様々な立場の人の
視点に立って考えること、計画を立てることなどを、仕事での経験談も交えながら、実践の中で教えてく
ださった。
塾中は、ホームルームの時間をなるだけ毎日設け、その運営はクラス担任の先生方にお任せし、どのク
ラス担任もとても個性あふれる指導をしてくださった。当塾がクラス担任を民間の社会人にお願いする意
義を、期待以上に果たしてくださったご指導だったと思う。ある担任は接客のプロで、クラスの塾生が、
「自分の言動がどう思われているのか不安」という悩みを打ち明けたため、自分の思う笑顔と他人から見
た自分の笑顔を比較しながらコミュニケーションを学ぶ研修を行った。また別の担任は、幼児教育のプロ
で自分の欠点をプラスにとらえるというワークを行った。また、一人一人の講義レポートに感想を記載す
るとともに、塾生のどんな小さな成長もとりあげ、日々励ましてくれた担任もいた。
クラス担任のアシスタントである学生リーダーの指導にも熱心に
あたっていただいた。学生リーダーは、塾生より少し先輩ではある
が社会経験が少ないので、社会人の指導力を間近で見て学ぶとても
よい機会となった。
クラス担任から見た塾生の印象は、「意欲が高い」「非常に素直」
「吸収力が高い」
「行動力がある」
「知識が豊富」
「プレゼン能力に長
けている」という評価が多かった。しかし、その一方、
「人の話を聞
移動中も熱心に打ち合わせる
クラス担任と学生リーダー
かない」「書く力が弱い」「想像力が足りない」「規律に甘い」「マイナ
ス思考」
「精神的に弱い」
「体力がない」
「正解を求める傾向が強い」と
いう基本的な力が弱いことが指摘された。学力も大事だが、人間力を鍛えるようなカリキュラムも充実さ
せるべきではないかというご意見も多かった。
【クラス担任派遣企業】
(五十音順)
株式会社麻生
株式会社ふくや
学校法人麻生塾 麻生医療福祉専門学校福岡校
株式会社ミズ
特定非営利活動法人 九州・アジア経営塾
三井住友海上火災保険株式会社
九州電力株式会社
三井物産株式会社
株式会社資生堂
三菱商事株式会社
株式会社筑水キャニコム
株式会社リクルート
福岡県
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(2)参加しての感想
高校生の熱い思いに触れ、自分自身も情熱を再度感じた。高校生たちのように失敗を恐れず様々なこ
とにチャンレジしていきたいと思った。
成長の度合いの異なる学生を見守ることの大変さを実感した。
高校生たちの成長が目に見えてわかること。吸収力がすばらしい。そのことで少し先輩である私たち
の言動がいかに責任あるかということを深く感じさせられた。
時々で様々な変化が見られたが、すぐに自分たちで立ち直り、反省することもでき、回復力の速さも
若さだなと感じた。
生きる力を私たち大人が伝えていかなければと感じた。
自分の至らない部分や弱みの再発見ができた。
今後仕事を含め生きていく上で、大きな学びと気づきがあった。
とにかくすべて吸収してやろう、という塾生の真摯な態度には驚かされるとともに、その姿勢から自
分自身が学んだ。
思い切って任せることでアイデアや考えが、こちらの想定を超えて形になる面白さを経験した。
講師の方々の考え方や壁にぶつかったときの乗り越え方、人生観、生き様に触れることができ、とて
もいい経験ができた。
他の担任の先生や学生リーダー、事務局などのスタッフと一つの目標に向かって真剣に議論しあった
ことも貴重な経験となった。
(3)成果・課題
<事前研修>
昨年に引き続き、事前研修をリーダー塾開催会場である福岡県宗像
市のグローバルアリーナにて、塾概要、カリキュラム概要、塾生指導、
ハイスクール国会などの説明を行った。また、クラス担任の仕事のイ
メージがよりわかりやすいよう、昨年クラス担任として活躍いただい
た方をゲストに招き、体験談を語ってもらった。ハイスクール国会に
関連する講義も講師を招いて行った。また、前半、後半に分かれてそ
れぞれ塾中に行う担任企画イベントの打ち合わせを行ってもらった。
塾の概要や役割をある程度理解していだだき、クラス担任同士のチー
ムワークを高めるのに非常に有意義な研修となった。
しかし、研修の時点で、ハイスクール国会の詳細が決まっていなか
ったため、クラス担任への説明がほぼ塾本番に入ってからとなってし
まった。また、事務局の事前準備が十分ではなかったために、塾中の
打ち合わせや説明に時間がかかってしまい、負担をかけた。来年は早期にハイスクール国会のテーマや方
針を固めて、研修にて十分な説明ができるようにし、クラス担任にも参加前にテーマに関する知識をつけ
てもらって、より効果的な指導をしてもらえるようにしたい。
また、業務内容のイメージをよりつかめるような研修をしてほしいというご意見があった。しかし、実
際にクラス担任をやってみて、塾本番にならないとわからないところも多いので、事前研修は現在の内容
で十分であるというご意見もある。よって、来年は両方を強化すべく、写真を多く用いた説明を心がける
とともに、細かい指導方針をガイドラインとして提示し、塾中に発生したガイドラインにない部分は事務
局と個々に相談しながら対応できるようにサポート体制も整えていきたい。
ホームルームは、それぞれの得意分野を活かして、個性的な指導をしていただきたい時間である。時々
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の状況により内容を変える臨機応変さは求められるが、ホームルームでさらに有意義な指導を行っていだ
だくため、担任独自の研修プログラムなどを事前に考えていただき、参加前にスタッフ内で情報共有する
ことも検討したい。
<塾期間中>
クラス担任が民間の社会人である最大の特徴は、塾生が今後の人
生設計について語り合えるようなキャリア教育ができる点である。
今年は、全く違う業界で働くクラス担任の皆さんがそれぞれの得意
分野を活かして、状況に応じて内容を考え、指導してくださった。
リーダー塾では、均一的な指導を主眼に置いておらず、塾生それ
ぞれの強み弱みを把握し、それに沿った指導を心掛けている。事務
局からの対165名への全体指導には限界があるので、担任や学生リーダーがそれぞれのクラスの塾生の
変化に細かく目を配ってくださることが重要になってくる。しかし、通常の学校のように長期間かけて指
導するのと違い、2週間という短期間で塾生が成長を感じられるような指導をする必要がある。よって、
鋭い観察力と柔軟性、問題解決のスピードが求められる。これは、事前研修で教えられるものではなく、
それぞれの担任が既に持っている力に頼らざるを得ないところである。また、その効果も、一人一人をき
め細かく指導出来るときに、最大限に発揮できる。そういった指導をしていただくために、来年度はでき
るだけ個人面談などをして、個々の成長に合わせた効果的な指導
ができるようにしたい。具体的には、夕食後のハイスクール国会
の時間を2時間から1時間に減らし、塾生の個別指導ができる時
間を確保したい。
前半については、クラスの塾生と過ごす時間が多くあり、クラ
ス内の交流を円滑にし、モチベーションを高めるために、塾生の
要望や相談事の対応に日々奔走していただいた。塾生はクラス担
食事時間も塾生の相談に乗るクラス担任
任が見てくれているという嬉しさと心地よい緊張感をもって、
様々なことに取り組めたと思う。しかし、前半は塾生就寝後のス
タッフミーティングやハイスクール国会の打ち合わせが長くなってしまい、業務が深夜に及んで体力的に
負担をかけてしまった。ミーティングでの状況報告を簡潔にできるよう工夫するとともに、全体に共有す
る内容と事務局との打ち合わせで済む内容を明確に分け、共有すべきはするというような効率的な方法を
検討したい。
ハイスクール国会が導入されたことと、佐賀フィールドトリッ
プが後半になったことで、ここ数年はカリキュラムの構成により、
担当期間によって担任の役割が大きく変わってきている。後半に
ついては、ハイスクール国会の指導が中心になってきている。講
義後のグループディスカッションも1度しかなかったこともあ
り、クラスの塾生と接する時間が前半と比較して極めて少なかっ
た。よって、クラスの塾生の個性を把握することが非常に難しか
ったと思う。特に強調してそのことを事前研修で説明していな
かったために、後半はクラスの塾生への指導時間があまり取れ
ハイスクール国会では、塾生に気づきを与え
る戦略を、毎日知恵を出し合って考えた
ずに、残念に思われたクラス担任が多かった。時間のない中でも、様々な工夫をして、空き時間を惜しん
で塾生指導に関わってくださり、本当に感謝している。この点については、研修の時点でそれぞれの特徴
的な役割を説明するとともに、後半もしっかりとクラス指導ができるカリキュラム構成にしたい。
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学生リーダーとの連携については、塾中に役割分担のコミュニケーションが上手くいかなかったことが
多々あったようである。反省点として、事務局から事前にクラスの運営方針や役割分担の確認などをメー
ルや電話ででも密に打ち合わせてもらいたいという指示を出していなかったため、事前には挨拶程度のメ
ール交換で終わってしまったことが挙げられる。改善策としてクラス担任の多くが、学生リーダーと合同
研修にして、事前に顔合わせできれば早期に信頼関係がつくられるのではと提案があった。学生リーダー
からは、事前に顔合わせできるに越したことはないが、仕事内容も研修でしっかり把握したいので、時間
を考えると一長一短あるとのことであった。事前のコミュニケーション、仕事分担の確認という点では合
同研修の効果も期待できるが、基本的な研修内容が大きく異なるので、その点をどう解決していくかが検
討課題となる。
(4)クラス担任の経験より
良いところをみつけたら、とにかく褒めた。本人はもちろん、それを見ていた他の塾生も刺激を受け
て、どんどん取り入れていく良いサイクルを生むことができた。
リーダー塾は予備校ではないので、解決策を教えるのではなく、自分で考えてもらうことに主眼を置
いた。社会に出れば解決策が用意されていない問題が山ほどあって、その上正解はないこと、そのな
かで何が最良か、自分で判断し決定していくことが大切であることを伝えたいと思い指導にあたった。
自発性、自主性を尊重する反面、社会人の視点からこの時点で必要と感じた指導をどこまで行うべき
か、判断に迷う面も少なからずあった。
講義レポートについては、できる限り、読んだ感想をレポートに記入して、塾生に返却した。一対一
で話す機会は少なかったが、この感想文を通じて塾生との距離が縮まったように感じる。
後半はクラスでのディスカッションの機会がほとんどなく、ホームルームの時間も少ないことから、
個々の塾生を個別に把握した上での計画を構築するのは不可能だと考えた。その前提に立ち、学生リ
ーダーと密に連絡をとりつつ、クラス全体にとって特に喫緊な問題をホームルームで取り上げ、その
後個別にフォローするという方針を選択した。たとえば、自己評価の低い塾生が多かったことから、
「自己肯定のみの1分間の自己 PR」の練習をさせ、自分を見つめなおす契機とした。その後メンタ
ル面で問題が生じた塾生に対し、個別に時間を作って話を聴くという指導を行った。
クラスの目標を作って、それを中心に指導することを心掛けた。常々、このクラス目標を塾生に言わ
せて意識させた。
自分の考えをただ披露するだけでなく、人の意見を聴く・相手を理解できるようになることを意識し
て指導した。具体的には、聴く態度(無表情・目を見るだけ・相槌を打つ・適当な相槌)とパターン
を変えて実践・また笑顔の重要性(自分で笑っていると思う顔と人が見て笑顔だと思う顔は違うこと)
もペアになって実践させた。
子供たちの認められたいという心をとても感じた。家庭での期待されている度合いを痛いほど感じた。
「うまく生きるではなく、よく生きる。」リーダー塾では、そのような生き方の根本、本質を伝えて
いければと思う。
元気のない塾生には食事の際、隣に座り話を聴くなど極力目立たない塾生の近くにいるように心掛け
た。塾生は頭のよい子が多いので、その自分の行動を見て、元気のない塾生を積極的にクラスの輪の
中心に入れようとする姿勢が見受けられたことが嬉しかった。
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学生リーダー
学生リーダー
(1) 概要
学生リーダーはクラス担任とともにクラス運営を行い、塾生の生
活指導をする「クラス生活担当」7人と事務局の補佐的役割を担う
「事務局担当」3人を大学生ボランティアとして採用した。塾本番
の約1ヶ月前に東京の事務局で学生リーダーの事前研修を行い、研
修後、学生リーダーとクラス担任とが自主的に連絡を取り合い、事
前に塾に対する意見交換に努めた。
「クラス生活担当」は、塾生の生活面での指導を主な業務としな
事前研修の様子
がらも、塾生と年齢が近い特徴を活かし高校生ならではの悩みや進
学等の相談役となる。
「事務局担当」は、講義の撮影や事務局での資料の配布準備など塾中の円滑な運営
を支える存在である。
学生リーダーは春に全卒塾生を対象に送付したニュースレターで募集した。卒塾生の数も増えたためか
「塾生の時にときめきを与えてくれた塾に恩返しがしたい」という志望理由での応募数が多かった。また、
学生リーダーを経験した知人から刺激を受け「塾がどのようなものか体験して自分を成長させたい」と卒
塾生以外の大学生からも応募があった。
今年は、研修も兼ねて塾前から事務局内での書類作成業務などを
手伝ってもらい学生リーダーとしての責任感を醸成した。また、前
日からグローバルアリーナにおいて、入塾式や配布物の準備に学生
リーダーの協力を得られたため、スムーズに塾初日が迎えられた。
塾後も学業の合間に事務局に来て、卒塾生からの提出物の集計業務
を行うなど、最後まで運営側の意識をもって仕事に取り組んだ。
学生リーダーたちは、全体的にとても意識が高く、塾期間中は連
携して、自分たちで出来る仕事がないか、改善できるところがない
かを常に模索していた。毎夜、全体のスタッフミーティングを行っ
ホームルームで後ろから見守る
学生リーダー
た後、事務局と学生リーダーのミーティングを行い、その日の担当業務内容について反省点を挙げて、各
課題について意見を交わし情報共有に努めていた。主に塾生指導についての課題が多く、運営側と塾生と
の狭間で指導方法について悩んでいたようである。塾期間中は突発的な問題も発生したが、その都度、学
生リーダー全員が集まり解決に向けた方策を練り、協力して解決していた。担当の垣根を越えた学生リー
ダーのチームワークは非常に良かった。
今年は業務内容について役割分担表を作成し主担当・副担当を輪番制で決め、役割を明確にし、事務局
担当学生リーダーと協力し講義運営に努めていた。しかし、塾生指導等で時間に余裕がなくなった時に、
確認が不十分で役割を果たせなかったことがあった。彼らには先を見越した準備をすることの大切さを学
んでほしい。
2週間もの長期間にわたり、塾後半では連日の深夜までのスタッフ会議や就寝指導等で疲労が蓄積して
いたが、頑張って業務に取り組んでいた。しかし、体調を崩して業務が行えなかったり、時間に遅れたり
することもあったので、塾運営に支障をきたすこともあった。よって、学生リーダーは常に塾生から見ら
れていることを意識し、自分を律することが大切である。彼らにはきちんと反省して今後に活かしてほし
い。学生リーダーの様子については、成果・課題の部分で触れたい。
また、学生リーダーではないが、卒塾生がアマチュアカメラマンとして、塾に自分が持っている技術で
恩返しがしたいということで、ほぼ全行程リーダー塾に張り付いて写真を撮影してくれた。そのおかげで、
事務局員はその他の業務に集中することができて、非常に助かった。
34
学生リーダーの所属大学は以下のとおり。 (五十音順)
お茶の水女子大学
筑波大学
関西大学
福岡教育大学
九州大学
立命館アジア太平洋大学
久留米工業高等専門学校
早稲田大学
中央大学
(2) 成果・課題
<クラス生活担当>
クラス生活担当の学生リーダーにとって、2週間の塾生
たちとの生活と、社会人であるクラス担任との関わりによ
って、自身も成長する貴重な経験となったようだ。
彼らは、社会人のクラス担任とともにクラス運営に携わ
るとともに、塾生の就寝時間や施設利用の際のルールなど
生活面での指導を担当した。自分の経験を活かしつつも、
【委員会での塾生指導】
あくまでも教える立場で試行錯誤しながら指導を行ってい
たようだ。クラス担任から見た学生リーダーの姿について
委員会での塾生指導
は、
「自己管理が甘いところがあったが、与えられた業務に
ついては真摯に取り組み塾生と担任のパイプ役を担ってくれ、クラス運営を円滑に行うことができた」と
いうものであった。学生リーダーは塾前からクラス担任と連絡を取っていたが、細かい部分での意思疎通
が充分ではなく、塾本番の各カリキュラムで役割分担が曖昧になり、クラス担任が学生リーダーに求めて
いた役割を果たせていなかったことがあった。また、クラス担任との塾生指導方針の考え方の違いで、ク
ラスでの立ち位置に悩む学生リーダーもいた。塾前にクラス運営方針や指導方法についてもきちんと意思
疎通を図っておくことが大切だったのではないだろうか。
今年は、研修時から運営側としての役割をしっかり果たすよう伝え、塾生指導について学生リーダー全
員で考えさせ共通の指導方針を定めて塾に臨んだ。そのため、塾生と同化してしまうようなことはなかっ
た。しかし、実際に指導する場面では方針には沿いながらも各学生リーダーの性格によって「叱りかた」
に差があったようだ。具体的には、男女の宿泊棟で指導に大きな差があったり、塾生に対して要所で「叱
る」ことができなかったクラス担当の学生リーダーを見かねて、事務局担当の学生リーダーが指導したこ
とがあった。ただ叱るだけではなく、なぜ叱るのか、どう叱るのかなど、指導することの意味や、具体的
な叱り方を考えさせる時間を研修にもっと取り入れることが必要であった。
総合的にみると、学生リーダーが生活指導を頑張ってくれたことで、塾生の自己管理に対する意識も高
まったようである。施設では多くの他団体も合宿生活を行っており、食堂の利用時間は限られた時間しか
利用できない。それにも関わらず、塾前半では、食堂で塾生同士がおしゃべりに夢中になり、退室時間ぎ
りぎりまで片付けが終わっていないことがあった。それに気づいたクラス生活担当の学生リーダーたちは、
食事委員と一緒に食堂全体の進捗状況を見ながら効率的な食器の片付け方などを適宜指導した。塾後半で
は、塾生同士が「声かけ」を行い、食事時間内にテーブル拭きなど全ての行程が完了していた。これは学
生リーダーが塾生に自主性を促すような指導をしていた成果であると考える。
今回の反省として、学生リーダーが他のスタッフに対しての報告・連絡・相談を若干おろそかにしてい
たため、塾の方針が塾生にブレて映ることがあった。彼らには組織の一員として動くチームワークの大切
さを学んでほしい。
35
その他の改善点としては、クラス生活担当の学生リーダーは女性が二人しかいなかったため、女子宿泊
棟での就寝指導は一人にかかる負担が大きく、事務局担当の女性の学生リーダーにも指導をしてもらった。
来年は、なるだけ男女のバランスも考慮して、学生リーダーの採用を検討したい。
<事務局担当>
事務局担当学生リーダーは定型的な業務に加え、刻々と進行す
るスケジュールに対応し資料作成や物品の準備、講義中の撮影や
録音など様々な仕事がある。各業務の責任者を定め、責任感を育
成する場とした結果、彼らは個々が与えられた業務をしっかりと
果たしてくれた。塾生が講義で宿泊棟に不在の合間には、自主的
に各宿泊棟の戸締りなどの確認と併せて、各棟に設置している手
洗い用洗剤等の消耗品について使用状況を確認するなど、衛生面
での気遣いもしてくれた。また事務局内では整理整頓に努めていた。
講義録をとる学生リーダー
事務局担当の学生リーダーは、塾生とかかわる時間があまりない。よって、業務といえども、楽しそう
にしている塾生とクラス生活担当学生リーダーを横目で見ながら孤独に仕事をするのは、精神的に辛いこ
ともあると思う。実際、過去には事務局担当学生リーダーが自分の業務を置き去りにして、塾生と仲良く
なることばかりに気をとられていたこともあった。今年の事務局担当リーダーは、一貫して裏方に徹して
いた点が非常に印象的であった。その背景には、「自分が塾生として参加したときに事務局に生活態度な
どを注意されて、それが情けなく悔しかった。今回は、そのとき至らなかった分を恩返しで穴埋めしたい」
という強い決心もあったようである。また、ある程度業務に慣れてくると、こちらが聞かずとも状況を細
かく観察し、提案型の質問をしてくるようになった。運営の極意を身を以て学んでいる様子がうかがえた。
社会に出たら、このような裏方の仕事ができる能力は非常に重要なので、今後もさらに磨いてもらいたい。
講義記録を保存媒体に取り込む作業については不備があったため、塾後に事務局で作業のやり直しを行
うことになった。どんなに多忙な時でも一つ一つの業務を丁寧に遂行する力を培ってもらいたい。
(3)参加しての感想
人を指導することが苦手だったので、指導する立場としてもう少し勉強が必要だと感じた。
指導は思っているよりも精神的に辛かったが、塾生を無事に卒塾させることができよかった。
人をサポートすることは、先まで把握し常に周りを見ていないと出来ないと感じ、その難しさや、や
りがいを感じることができた。自分の成長よりも周りへの感謝の気持ちやありがたさを実感できた。
教育実習とは違い、寝食を共にすることで高校生の考え方や想いがわかって良かった。またクラス担
任である社会人の方々から学ぶことが多く自分自身の成長となった。
自分が人を指導できるほどのものなのかを、塾期間中の自分だけではなく、日ごろの自分まで顧みて
いた。塾後も卒塾生の名に恥じないよう気を引き締めている。
プロジェクトを動かすためには、自分の立ち位置をしっかりと把握しておくことが、どれだけ大切か
分かった。
チームワークの大切さ、自分が出来ない部分は仲間を頼りつつ仕事をこなすというバランス感覚、常
に視野を広く持ち臨機応変に対応することを学ばせてもらった。
塾生の成長を近くで見ながら、毎日感動していた。塾生をサポートするつもりで参加したが、いつの
間にか塾生にサポートされていた。色々なものを気づかせてくれた塾生に感謝したい。
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カリキュラムについて
(1)全般
(1)全般
今年は、新規講師として九州新幹線などを設計したデザイナーの水戸岡鋭治氏、昨年の震災で被災者救
助・捜索の指揮をとった防衛省の折木良一前統合幕僚長、財務省から自ら志願して釜石市に派遣され、今
年副市長になられた嶋田賢和氏にお話しいただいた。また、経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・
新エネルギー部長の新原浩朗氏には、エネルギー全般について講義をしていただき、ハイスクール国会の
礎となる知識を習得できた。
20時間以上かけて取り組んだハイスクール国会では、
「エネルギーの未来を考える復興会議」と題し、
エネルギー問題を様々な視点から考え、体力・精神力とも限界に近づくまで議論した。ハイスクール国会
については、42ページに別途記載する。
(2)今年の特徴
(2)今年の特徴的なカリキュラムについて
今年の特徴的なカリキュラムについて
【九州電力エネルギー館見学ならびに社員の方のお話】
ハイスクール国会のテーマが「エネルギーの未来を考える復興会議」であったため、発電技術などを自
分なりに調べて知識をつけておくように入塾前に課題を出していた。その知識を深める目的で、各種発電
技術を見て、体験しながら学べる九州電力エネルギー館を訪問した。展示には、水力発電の大型模型があ
り、実際に大量の水が流れて発電する様子を本物さながらに学ぶことができた。また、石油製品の体積を
表す単位「バレル」が、実際どのくらいの容量なのかも実物大の容器(石油用の樽)で確認できた。
見学後は、九州電力の社員の方にエネルギー全般についてお話
を伺い、塾生の質問に答えていただいた。ある塾生が「今後発送
電分離で新規の電力会社が参入してくると、九州電力も儲けが少
なくなるのでは?」と質問した。その回答は次の通りであった。
「電力会社が立ち上がってから60年あまり、需給のバランスを
見ながら、コストと手間をかけて電力供給をやってきた。問題は誰が責任を持ってやるか。儲けのために
やっているのではなく、もちろん赤字になって会社経営が成り立たなければ大変だが、電気を供給するこ
とで皆様の生活や経済活動が円滑に進み、そこで出た利益で電力会
社の私たち社員とその家族が生活できればそれでいい。災害などで
停電になったときも、身の安全が確保されるかぎり、一秒でも早く
電気をお届けしたい。それは、当社だけでなく日本全国の電力会社
の社員がそのような思いで頑張っていると思う。
」それを聞いた塾生
からは大きな拍手が起こっていた。
ハイスクール国会でエネルギー政策を考える上では、国民だけでなく、企業の立場、電力会社の立場、
日本の立場、他国の立場など様々な視点に立って考えてみる必要がある。そのような意味でも、電力会社
の方のお話を聞き、率直な質問を投げかけることができたことは、とても貴重な経験となった。
【佐賀フィールドトリップ】
塾中2泊3日は佐賀県波戸岬少年自然の家に宿泊し
た。佐賀では、古川康・佐賀県知事、国際日本文化研究
センター教授の笠谷和比古氏、東北大学大学院教授の安
田喜憲氏の講義を受講した。古川知事からは、リーダー
としての心構えをご自身の知事としての失敗体験など
を交えて話してくださった。あえて、自身の失敗を教材にされた潔さに塾生も驚いていた。笠谷先生は、
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ご自身が関わられた竹製自動車や武士道精神について話してくださった。エネルギーを考える上で、日本
古来の資源や技術を使うという発想や立場が上の人に対しても、正しいと思ったことを伝える意地を持つ
ことの重要性を学んだ。安田先生は、大学院生が「21世紀の技術と科学」というテーマで発表した様子
をビデオで上映し、高校生に意見を求めた。同世代の若者が古くからの知恵と現代の知恵を融合させたテ
クノロジーの提案を発表する様子に、塾生もとても刺激を受けたようである。
野外活動では、1艇20名程度のボートで海に漕ぎでるカッター活動やカレーライスを作る野外調理活
動を行い、チームワークを高めた。
名護屋城博物館では、学芸員の方から古代からの日韓の交流史について
学び、博物館の展示を観てその知識を深めた。また、豊臣秀吉が朝鮮出兵
の拠点とした名護屋城の本丸跡地などをガイドの方の説明を受けながら見
学した。
【福島へ応援メッセージを届ける「ガレキに花を咲かせましょう(ガレ花)
」プロジェクト】
塾2日目にチームビルディングも兼ねて東日本大震災で被災した福島県で行われている「ガレ花プロジ
ェクト」を応援するプログラムを実施した。この「ガレ花」プロジェクトは、津波によって瓦礫ばかりに
なってしまった福島県いわき市久之浜地区で地元民によって始まった。解体することになった家屋やその
基礎部分のうち、地権者の同意を得た箇所に、型紙を使って「花」の絵を描くという活動である。花が描
かれても最終的には解体されてしまうのであるが、避難した住民も戻らず、メディアなどにもあまり取り
上げられなかった寂しい土地に、「復興への決意」を象徴する花が咲いている。昨今はこの「花」を見に
来ようとする人が増えているそうである。塾ではこのプロジェクトを取り上げ、クラスごとに花の型紙を
被災地に届けることにした。また、その型紙を使ってTシャツにプリントし、被災地を忘れないというメ
ッセージを込めた。塾後、福島県から参加していた塾生が、皆を代表してその型紙を久之浜地区の代表の
方に贈呈した。
T シャツを制作している様子と福島への思いを込めて T シャツを着用した集合写真
塾後、福島県いわき市久之浜地区の方に塾生が作った花の型紙とその型紙でプリントした T シャツを贈呈した
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【みそ汁コンテスト】
8月6日に塾生たちがみそ汁を作る「みそ汁コンテスト」を
開催した。みそ汁コンテストに使用する味噌はフンドーキン醤
油株式会社からご提供いただいた。宗像市にある「道の駅むな
かた」で販売されている食材の中から5品目を選び、オリジナ
ルのみそ汁を考え、各クラスがその味を競うものとした。
まず、フンドーキン醤油株式会社の小手川強二社長による「発
塾生の質問に答える小手川先生
酵食品の魅力」という講義を受講した。「麹菌は少し酸素の足り
ないような厳しい環境の方が良い働きをする。みなさんも少し厳しい環境で頑張ってほしい」と激励をい
ただいた。
講義後、バーベキュー広場に会場を移動し、みそ汁の調理が始まった。普段から料理をしている塾生が
先頭にたち、みそ汁をつくっていた。各クラスが、食材を切る、洗いものをする、かまどの火を調整する
など、役割分担をしながら、時間通りにイメージしたみそ汁を完成することができたようだった。
調理終了後は食堂に場所を移し、自分たちの作ったみそ汁に舌鼓。クラスのみんなと協力してつくった
みそ汁の味は格別だったようだ。
また、審査員としてフンドーキン醤油株式会社社長の小手川強二
氏、宗像市長の谷井博美氏、西日本新聞社論説委員長の藤井通彦氏、
株式会社スターフライヤー営業本部営業部課長の丸龍昇氏、弊塾事
務局長の加藤暁子が7クラス分のみそ汁を「見た目」「味」各10
点の合計20点満点で審査した。各クラス代表者一人がみそ汁のテ
ーマと調理方法を審査員に説明した。
食後にバーベキュー広場前へ移動し審査結果と総括を行った。
「最優秀賞」は鶏モモ肉と複数の調味料を使った創作的なもの、
「フ
ンドーキンさわやか金賞」はミニトマトを具材としたもの、
「宗像
めでたい賞」は開催地である宗像で採れた鯛をメインの具材にした
ものと、それぞれ高校生らしい自由な発想で工夫されており、審査
員の評価も高かった。
総括では審査員長である小手川社長から「みそ汁は魚や肉と相性がいい。また野菜の味がみそ汁に出る
よう工夫すればもっと美味しくなる。コンテスト用は普段より少し濃い味の方が印象に残る」などみそ汁
づくりの極意を教えていただいた。
塾生には、食に関わる全てのものに感謝した「いただきます」の気持ちを大事にしてもらいたい。
各クラスのみそ汁と審査の様子
審査発表
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【書禅】
塾生の一日は書禅で始まる。書禅とは心静かに座って精神統一をす
る「坐禅」からヒントを得て、リーダー塾独自で考案した「書く坐禅」
のことである。朝、講義が始まる前の約40分間、塾での日々を振り
返りながら、心を落ち着けて自分が何を学んだのかA4の紙にまとめ
ていく。昨日の講義やディスカッションなどの内容を自分自身に問い
かけしっかり整理し、今日の授業に備える。今年出した書禅のテーマ
は、
「理想のリーダーと将来の私」
「2030年の私」
「ふるさとにどう
貢献したいか」
「アジア諸国とどう向き合っていくか」などで、前日の講義をふまえて自分自身を顧みら
れるようなものに設定した。
「理想のリーダーと将来の私」というテーマで多く見られた塾生の意見は、塾に参加するまではリーダ
ーといえばみんなを先導する強固な像を思い描いていたが、講義を聞いてそれが変化したというものだ。
「講師の方々の話を聞いて、人々を引っ張っていくだけがリーダーではなく、正しい道を歩めるように見
守り、助言を与える存在もリーダーなのだと分かった」「小川先生のように現場主義のリーダーになりた
い」など、前日受けた講義の先生に影響を受け、リーダー像を考え直している様子が分かる。塾生活で受
けた刺激を振り返り、練り直して自分のものとして取り込もうとしているようだ。
また、書禅は毎朝行うため、塾生の毎日の意識変化のプロセスが分
かる。「2030年の私」で「商社に入りたいと考えている」と書い
ていた塾生が、次の日に課した「ふるさとにどう貢献したいか」とい
うテーマで「昨日まで商社に入りたいと考えていたが、中村社長の話
を聞いて、ふるさとで起業して東北の復興に寄与したいと思うように
なった」と書いてきた。毎日提出される作文から、塾生が日々考え、
日々変化している様子を実感した。
書禅は一人で自分自身を振り返る作業だが、塾生同士で内容を交換できる時間があれば良かったかもし
れない。例えば、「ふるさとにどう貢献したいか」というテーマでは、塾生の背景が異なるゆえに各人が
考える「ふるさと」という定義がバラエティに富んでいたことが印象的であった。もちろん、「日本」や
出身の「都道府県」、住んでいる「市町村」といった単位で書いている塾生が大半であったが、なかには
「母校」や「教室」というようにより小さなコミュニティをふるさととして定義付け、母校やクラスを変
えるための活動を考える塾生もいた。また反対に、頻繁に転校を経験した塾生や海外生活の長い塾生は「ふ
るさとは一つでなくていいのではないか」と疑問を投げかけ、「自分の人生に変化や影響を及ぼしてくれ
た場所全て」と答える者もいた。地域を転々としてきた塾生のなかには、「自分にはふるさとがない」と
答える塾生もいる。しかし、そう感じた塾生の文章に印象的な結論があった。「私たちにとって、反対に
ふるさとは地球全体であるとも言える。また、帰る場所のない人たちが集まってコミュニティを作ること
もできる。
」このように、視点を狭くしたり広げたり、あるいは角度を変えたりして、塾生一人ずつが異
なる考えを生み出している。そのことを書禅の時間でもまた塾生全員でシェアすることができれば、塾生
も新たな考え方を取込むことができ、文章を書く意味が理解できただろう。今後の検討課題にしたい。
塾生の文章で気になることがあった。
「2030年の私」というテーマのときである。前日のハイスク
ール国会で、暗闇で沈黙して2030年の未来を考えるということを行ったため、そこで考えた内容を自
分で振り返ってまとめるよう課したテーマであった。しかし、塾生の文章は日記のようなものが多かった。
だらだらと思いつくままに書きなぐり、一人称を「俺」と書く者もいた。脈絡のない個人的な話ばかりで、
重要なまとめの文章が途中で切れているものも多かった。想像が広がっていくようなテーマであったかも
しれないが、前日で構想ができている分、書くことは比較的容易であったはずだ。だからこそ、思ったこ
40
とを書きたいままに書く日記ではなく、一つの完成された作品であることを意識してほしかった。塾生は
日頃インターネットのブログなどで日記を書くことに慣れているかもしれない。しかし、書禅のように決
められた時間内で文章を書きあげる場合には、自由に想像力を働かせた後に必ず、文章の展開や結論を見
据えて書き始めなければならない。塾生にはぜひ文章をまとめる力を養ってほしい。
(3)
(3)全般的な反省と課題
今年は、昨年に比べ例年通りの講師の数に戻ったため、前半は多くの講義の後にディスカッションの時
間が確保できた。やはり、聴くだけでなく、その後議論によって講義の内容を自分の言葉にして深めるこ
とは、非常に効果的である。しかし、残念だったのは、その講義の内容を自分自身の人生に活かそうとい
う傾向はあったが、ハイスクール国会で国や社会などの大きな集団においての課題を議論するときに、あ
まり活かされなかった点である。本来であれば、点と点を結ぶ、また何かを組み合わせて新しいことを創
造することに自分達で着目してほしいが、2週間という短期間では、塾生にそのような気づきを与えるよ
うな指導も取り入れる必要があると考える。
夕食後は、ほぼ毎日ハイスクール国会の時間が2時間程度あり、2週間で合計24時間あった。心身の
限界ぎりぎりのところまで頑張ってしまうプログラムのため、疲れが出て、通常の講義に支障をきたして
いたことも否めない。また、夕食後の自由時間はほとんどないため、クラス担任が個別指導をする時間の
余裕もなかった。全体としては、ハイスクール国会に時間をとりすぎると、現在の塾生の体力を考慮する
と、カリキュラム全体の効果を落としかねないと感じた。来年は、夕食後のハイスクール国会の時間を今
年の半分にし、塾生と担任が時間を自由に使えるようなカリキュラムにしたいと思う。
また、講義の時間配分であるが、開塾当初から講義60分、質疑応答30分の合計90分となっている。
特に疲れが出てくる塾中盤から終盤の集中力を見ていると、90分集中力を継続させるのは非常に難しく、
せっかくの講義を最大限に活かせていないと考える。よって、休憩をはさむ、講義とディスカッションの
組み方を変えるなど工夫の必要性を感じる。来年度に向けて、より効果的なカリキュラムを検討していき
たい。
また、例年指摘されている書く力が弱い点である。字が雑で、誤字脱字が多いことはもちろんのこと、
日記のような文章が目立つ。今年はクラス担任に講義レポートにすべて目を通してもらい、誤字脱字が多
かったり、自分の考えが書かれていないような場合には、突き返して再提出させた。その結果、多数の塾
生に大きな改善が見られた。特に添削時に内容についてのコメントを書いて返したクラス担任によると、
フィードバックすることで塾生のやる気が非常に出たようである。書く力をつけるには、添削指導に大き
な効果があることから、来年度はさらに書く力を伸ばすカリキュラムを強化したい。
41
7.
「ハイスクール国会」について
(1)
「ハイスクール国会」概要
今年のハイスクール国会は、「エネルギーの未来を考える復興会議」という
題で、2週間の塾期間中、自分達が30代半ばにさしかかる2030年の世界
を想像し、その時代にあるべき社会を実現させるために、今必要な政策を考え
た。2030年にしたのは、実際の内閣の国家戦略室が、昨年起こった東日本
大震災による福島第一原発の事故を受けて、エネルギー戦略の決定に関して、
2030年を見据えて議論していたからである。塾開始前の時期に、全国各地
で意見聴取会やパブリックコメントの募集などを通じて国民的な議論を進め
ていた背景があった。今の高校生たちが家庭を持ち、働き盛りとなる時代に大きく影響する政策であるこ
とから、議論を傍観者的に見て批評するのではなく、当
事者として考えてもらいたいと思った。
事前課題でも電気をなるべく使わない生活を考える問
いを投げかけた。これまで電気を何不自由なく使える生
活を送ってきた高校生にとって、電気の使用量を抑える
生活は想像しにくいようであった。節電生活を実現する
には、高い意識を持ち続けることが欠かせないことは理
解できるが、実行は厳しいという感想が多かった。また、
家族一人一人のライフスタイルが異なるため、節電のた
めに行動時間帯を極力揃えることも難しいようであった。自分が居住する自治体への聞き取りも課題とし、
塾生は自治体が政策としてエネルギーに関してどのような取り組みを行っているかも調査した。
昨年は日本で深刻な原発事故が起こり、それにより今年は国内の全原発が停止するなどした。塾期間中
の塾生の議論を見ていて、将来への危機感は若い世代が一番抱いているのではと感じた。塾生が出した議
論の結果は、2030年までに「原発ゼロ」を実現することであった。もちろん、テレビやニュースで見
聞きする情報にもかなり影響を受けていると考えるが、高校生なりに議論して、自分たちが今我慢してで
も、さらに先の世代が安全に暮らせる社会を実現したいという強い思いがあった。
ハイスクール国会は、今回で4回目を迎えた。今までと違う点
は、党を結成せず、初期の段階から総理大臣を選出したことだ。
総理大臣には過去最多の23名が立候補し、決選投票では 1 票差
で総理大臣が選出された。そして、全議員が最初から一丸となっ
て政策を練り上げていった。省には分かれたが、全議員で毎日会
議する時間を設け、少しずつ調整しながら進んで行った。この点
は、後述するが、全員でつくりあげたという意識が強く、最後に
は大いに達成感を感じたようであった。
ハイスクール国会での最大の学びは、
「多種多様な意見があることを知ったこと」と、
「多くの意見をま
とめる大変さ」であったようだ。また、議論の過程で塾生の弱点も見えてきた。それは、論点や方向性が
ずれているときに、柔軟に軌道修正できないことである。それは、何のための議論か明確な軸を設定しな
いまま話を進めることと、少数意見に目が行き届かないことに起因していると感じた。
また、点と点を結ぶ思考力や構想力が弱いと感じた。講師の方々が様々な議論のヒントをくださったに
も関わらず、実際の議論の中で活用することがあまりなかった。また、事前課題で集めた情報を自ら見直
し、そこから政策につながる課題を見つけて解決策を練るというプロセスを経ることもできなかった。
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総じて、日本の大人社会で問題とされていることが、そっくりそのまま高校生にも見られた。子は親を
映す鏡というが、高校生の弱点を見て、今後大人たちが率先して解決しなければならない、多数の問題点
が透けて見えた。
国会では、思考力を鍛えるため、大人はアドバイス程度の関与
にとどめ、決定などはすべて議員に任せるようにした。また、指
示を注意深く聞くことや情報を正確に伝えることが毎年あまり
できていないので、書類を最小限にし、指示は代表して総理大臣
に伝え、総理大臣から他の議員に伝えてもらうことにした。
塾生の議論を見守るクラス担任
(2)ハイスクール国会
(2)ハイスクール国会の
)ハイスクール国会の狙い
ハイスクール国会は、それまでの講義中心のカリキュラムに加え、持っている知識を応用し、考える力
やコミュニケーション力を鍛えることを主体にしたプログラムである。2009年から始まり、今年で4
回目となる。国会としたのは、全国から高校生が集まるという特徴を、最大限に活かした議論ができると
考えたからである。
塾生は、国民を代表する「国会議員」という仮想の立場で、日本の将来を決めていく疑似体験をする。
その過程で、今までは自分自身の目線でしか考えていなかったことを、様々な立場で考えることや、異な
る意見を持つ人たちと、どう対話していくかを探っていく。そして、その中で自分の存在感をいかに出し
ていくか、実践を通して自らも教材の一部となり、人に影響を与えたり与えられたりしながら、小さな体
験を積み重ねて学んでいくプログラムである。
誰がどのようにリーダーシップをとっていくかも大切であるが、一部の塾生がリーダーシップを実践す
ることは、大きな目的ではない。その他多くのリーダーについて行く立場の人間が、どのように深くコミ
ュニケーションをとっていくかの方が学ぶところが多いのである。そのような意味において、成果物とし
て塾生全員でまとめた政策案を提出させている。もちろん限られた時間では、出てきた政策を文章として
まとめる時間はとても足りない。しかし、そのような時間的制限によって追い込まれた状態で、いかに目
的を共有し、目標と計画を立て叡智を結集してアイデアを形にしていくか。そして、筋書のない世界でよ
り良い答えを求めていくか。それは、国会に限らず、どのような組織においても必要なプロセスである。
現在の学校教育では、正解を求める教育が主流のため、多くの塾生は議論に慣れていない。ついては、
塾生国会議員の苦悩はとても深いが、それだけ衝撃的な経験となるようだ。しかし、当塾では「チャレン
ジして失敗しても許される」という雰囲気を非常に大切にしているので、初対面でも腹を割って話せるし、
総理大臣候補を募っても、失敗を恐れずとても多くの塾生が積極的に手を挙げる。
今回は、現在日本の課題で最も重要かつ非常に難しい「エネルギー」というテーマをあえて選んだ。今
年は日本国内すべての原発が停止し、現在一部再稼働しているものの、電力不足や電気代の値上げは避け
られないものとなっている。またその状態が日本経済や人々の暮らしに与える影響も計り知れないものが
ある。しかし、ここが新たなスタートラインとすれば、今後社会の中心となっていく若者が、どのような
世界を創っていきたいか、積極的に議論をするべきであると考えた。
塾生のハイスクール国会にかける情熱には並々ならぬものがある。事前課題からとてもやる気に満ちて
いるのが見てとれた。また、議論の過程で様々な人間ドラマがあり、汗と涙と笑いに満ちた議論が2週間
にわたり繰り広げられた。特に今年は、思ったことを率直に述べる塾生がとても多かったので、初期の段
階から非常に白熱した議論が繰り広げられた。クラスで発言が少ない子も、ハイスクール国会になると積
極的になるという姿も多く見られた。その根本にあるものは、彼らの将来への危機感であると感じた。塾
後もエネルギー問題への興味を失うことなく、それぞれの故郷で積極的に活動する原動力になっている。
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(3)ハイスクール国会の内容、成果、課題
(3)ハイスクール国会の内容、成果、課題
【事前課題】
事前課題は、様々な発電技術について知識を得ることに加え、電気をなるべく使わない暮らしについて
考えてみること、自宅の年間の電気使用量や電気代の調査をした。また、年齢や性別が違う3名に節電や
日本のエネルギー政策についての意見を聞き取りし、また居住する自治体へもエネルギー政策の取り組み
の聞き取り調査を行った。その後、地域が異なる塾生を組み合わせた「5人1組のプレチーム」をつくり、
調査結果を分析すると共に、他地域のエネルギーに関する事例について調査した。
事前課題は学校の試験と重なった塾生も多く大変だったと思うが、ほとんどの塾生が課題の用紙にびっ
しりと書いて提出した。特に自治体への聞き取りは、エネルギー問題に関する地元の努力を知ることにも
なり、ニュースなどでは知り得なかった生の情報を得ることができ、とても勉強になったという感想が多
かった。
プレチームでの事前ディスカッションに関しては、例年とは違ってあまり意義を感じないという感想が
多かった。事前に意識を高められるという利点はあるが、学校生活が忙しく、連絡を事前に取り合うこと
を負担と感じた塾生が多かったようである。来年実施するかどうかは検討したい。
【塾期間中】
塾期間中に行われた内容とそれぞれの課題を、時系列で述べる。
●キックオフ
ハイスクール国会初日は、懐中電灯を使った暗闇でのワークショップ
を行った。暗闇の中で、どれだけ五感を使ってまわりとコミュニケーシ
ョンがとれるかを体感した。また、2030年の姿をじっくり考えるた
めに、暗闇で30分、一人一人が想像力を働かせて考えた。そして、ろ
うそく一本で灯りをとりながら、考えたことなどを共有した。
アンケート結果を見ると、光も音もない30分は、多くの塾生にとっ
て非常に長く感じたようである。皆で活動することは楽しんでやる傾向
があるが、一人で何もせず、じっくり考えることはとても苦手のようで
暗闇でのワークショップ
ある。また、静寂の中での他人の行動がとても気になったというコメントが多かった。人生において、特
にリーダーを志していくのであれば、過酷な状況下で時間も限られた中、一人で孤独な決断を迫られるこ
とも多い。そのようなときに、どのような環境でも集中して自分と静かに向き合えるような訓練もぜひ積
んでもらいたいと思う。
●グループディスカッション
キックオフの後は、3日間かけて、約20人ずつのグループに分かれて、政策を考えるための基礎とな
る情報や考えを共有するディスカッションを行った。2030年の自分自身の姿、日本の姿、世界の姿と
いう段階を追って、2030年のあるべき姿を探った。このディスカッションで、大いに将来のビジョン
を語りあってもらいたいと考えた。その上で、自分たちのライフスタイルはどのように変化するのか、ま
た世界の情勢はどのように変わっているのか、主なエネルギー源は何になっているかを具体的に想像した。
グループによっては、2030年の姿がなかなか想像できず、調べてきた知識の披露に偏ってしまった。
ここで出たビジョンの原型を後半での具体的な政策策定の基礎にしてほしいと思っていたが、結果的にこ
の3日間の議論は、後半の議論であまり活かされなかった。
44
●総理大臣選挙・総理大臣任命
ハイスクール国会4日目には、総理大臣を選出した。
ハイスクール国会始まって以来、最多の23名が立候補
した。女子はそのうち5名。まずは、23名を3名と4
名のグループに分けて、1分間の個人スピーチと、1グ
ループにつき5分程度の質疑応答の時間を設けた。そし
て、投票にて23名から4名に絞った。4名は20分間
の公開討論を行い、それぞれの政策の特徴などを他の議
23名の総理大臣候補の演説
員にアピールした。そして4名から2名の候補者に絞って、3分間ずつのスピーチ
を行い、決選投票を行った。その結果、欠席や無効票などを除いた161票を81
票対80票に分けた接戦で、1票差で内閣総理大臣が誕生した。1票の重みを大き
く感じる選挙になった。投票箱や記載台は例年同様、宗像市からお借りし、臨場感
あふれる選挙となった。
反省点としては、候補者が多すぎて、候補者の掲げ
る政策の違いがよくわからなかったことである。次回
は、立候補にある程度の条件を付けて人数を限定する、候補者は明確な政策
目標を掲げる、候補者の具体的な政策の違いが比較できる表などを事前に配
布するなど工夫をしたい。
宗像市長から任命書を
受け取る総理大臣
●組閣(総理が就任して初めての国会)
この日は総理大臣のもとで組閣をすることになっていた。事務局からは、省を設置すること、大臣は5
名まで選出できるというルールは設けていた。総理大臣はこの日の国会が始まる前に、自身が掲げるビ
ジョンから、必要と考える省をすでに決定し、自分が大臣になってもらいたいと考えた候補者にも話を
つけていた。そして、国会の冒頭で、省と大臣、ならびに補佐やアドバイザーなどの人選を発表した。
他の議員からは、自分たちに事前の相談もなく決められたことに少々戸惑いの様子が見られたが、総理
大臣の大臣指名は現実の内閣では当然なので、受け入れる様
子も見られた。しかし、その後、ハイスクール国会中、一番
激しい議論となる。
総理が大臣を発表した後に「他の人にも大臣になれるチャン
スがある」というようなニュアンスを含ませた問いかけをして
おきながら、「いろいろと意見はあると思うが、先ほど発表し
た大臣たちに頑張ってもらいたい」と締めくくり、誤解を生ん
政策のビジョンを説明する総理大臣
で、議場が混乱した。
その後、省や大臣が他の議員に予告もなく突然決められたこと
や、総理が環境エネルギー省の大臣も兼任することへの疑問、そ
れから派生してハイスクール国会の意義などについて、激しい討
論が繰り返された。その中には、少々論点の外れた発言もあり、
さらに議論が迷走した。最後は、何人かによる「相手の意見もし
っかり聞き、とりあえず総理の方針に従ってやってみよう」とい
う趣旨の発言でその回がまとまった。
熱心に総理大臣の説明を聴く議員たち
45
議論の論点があちらこちらに飛んでいたものの、塾生たちが「ハイスクール国会で日本の課題に挑戦す
ること」にここまで熱意を持っていたことに非常に驚いた。まだ出会って1週間程度の仲間と不満や疑問
点を真っ向からぶつけあう激しく熱い議論は、大人ではなかなかできないと思った。それと同時に、話
の軸がぶれることが多く、最後は何について話し合っているかわからなくなるという現象が何度も見ら
れた。その軸が大きくぶれるのではなく、少しずつぶれるので、ぶれたことに気づかず進行する。随分
時間が経ってから自分たちの議論に疑問を持つが、その頃にはいろいろなことが曖昧な軸のもとに決ま
っていて、やり直すには時間がない状況に陥っている。このような繰り返しで議論が進んでいった。
とてもよかった点は、大臣・アドバイザー・補佐というような役職に、総理大臣選挙で惜しくも敗退し
た候補者が、多く起用されたことである。総理大臣になれずとも、引き続き積極的に総理大臣を支えてハ
イスクール国会を盛り上げていた。
設置された省は、環境エネルギー省、防衛外交省、総務省、教育省である。総務省は、財源確保、農
業政策などの分野を担当するということで設けられた。
●組閣後2日目
総理大臣が掲げたビジョンの説明が足りなかったので、他の国会議員が理解しているようには見えな
かったが、皆が理解しているものとして議論を進めようとしていた。このままでは雲をつかむような議
論になることが目に見えていたので、最初に軌道修正した方がいいと考え、教育的指導を検討した。そ
して、クラス担任と事務局による仮想の「新聞社」を結成し、新聞記者という立場から、掲げたビジョン
の言葉の定義などを、総理大臣や他の大臣に質問した。
最後に全議員に向けて「総理が掲げるビジョンを説明できる方は挙手を」という質問すると、5名くら
いしか手が挙らなかった。それに対する総理の説明は、「国会議員が皆ビジョンを理解していなくてもよ
い」というものであった。残念ながら、記者の投げかけによって、「このままではいけない」と気づいた
議員もいたようだが、議論の方向が修正されることはなかった。
その後省に分かれるも、その省の意味や議論する内容が説明されないまま進んだため、ブレインスト
ーミング的に、方法だけが乱立して終了した。
ハイスクール国会終了後のアンケートで、総理大臣が出し
たビジョンがどの程度理解できていたかを問うた。そうする
と、「よく理解できた」が2割で、「理解できた」が5割、「よ
く理解できなかった」と「まったく理解できなかった」は併せ
て3割に上った。今ハイスクール国会の一番の迷走の原因は
ここにあったと考える。総理が出したビジョンが伝わりにく
かったこともあるが、より大きな問題は、残りの大多数が聞
こえのよい抽象的な言葉に疑問を持つことなく、目指す方向が
165名中162名回答
わからないまま議論を進めてしまったことである。雰囲気に流されやすく、批判的思考ができない点が
浮き彫りになった。
●組閣後3日、4日目
●組閣後3日、4日目
前日の反省を踏まえ、総理がビジョンを少し具体化したもの
を発表する。
しかし、引き続きエネルギー問題とのつながりがわかりにくい
政策ばかりが乱立する。また、出てきた政策案を、総理大臣が掲
46
げたビジョンに無理やりつなげようとしていた。何のための議論をしているのか、どこに向かっている
のか、多くの議員が悶々とするも、最初に立ち返るという提案は
あまりなかった。議論が上手く進まない苛立ちも、あちらこちら
で見られる。時間がないという焦りが、さらに原点に戻るという
発想を妨げていた。エネルギー問題を他の分野からも総合的に解
決しようという発想はとてもよかった。しかし、具体的にエネル
ギーとつながりがわかりにくい政策が多数考え出されたため、迷
走した。そのような中、クラス単位でそれに異を唱えようとする
動きもあったが、途中で感情的な議論になり、残念ながら建設的な議論にならず、伝わらなかった。
一番議論が難航していた省では、ある議員が大臣に、「ビジョンが明確ではないので、議論がなかなか
進まない。まずは省としての方向を決めてから、具体的な方法を議論したらどうか」と提案した。しかし、
大臣は激しく反発し、話し合いは平行線をたどった。
「大人がしているような議論ではなく、高校生らしい発想の議論がしたい」との訴えが多く出始める。
しかし、その声を内閣にしっかりと伝えることができず、そのような議論ができていたチームはごくわ
ずかであった。
この頃、総理大臣と各大臣の個々によるミーティングは行われていたようであるが、総理大臣とすべ
ての大臣による閣議は、ほとんど行われていなかった。
●組閣後5日目
議論が迷走を極めてきたので、クラス担任と事務局により、
各省への疑問点を投げかける新聞を発行した。内閣のコミュニ
ケーションがとれていないこと、高校生らしい議論が出来てい
ないことを指摘し、加えて、各省の現状の姿、今後議員に期待
されることなどを記載した。この新聞に、各省での悶々とする
議論の突破口を作りたいという願いを込めた。
各省が少しずつエネ
ルギー政策を中心にし
クラス担任による塾生を
叱咤激励する新聞創刊号
た議論に戻る傾向が見られ始めた。ある大臣が、事務局に相談し
てきた。大臣就任後から今まで、何を議論しているか実は疑問に
思っていたが、大臣の自分がそれを言うと国会がさらに混乱する、
と悩んでいた。「軌道修正するなら今しかない」というアドバイ
スをし、勇気を出してそれに近い内容を皆の前で訴えるが、気を遣
って内容が曖昧だったため、全体にその意図はあまり伝わらなかっ
た。しかし、その後、省のメンバーに再度説明したところ、考えて
いた政策をいったん白紙に戻し、そもそもの目的に立ち返って、一
から考えた。その結果、よい政策が沢山出てきたようである。
総理大臣が、各省の政策を最終的な政策のフォームに落とし込む
ため、大臣らと調整を図っており、この時点で政策の骨格がある程
度まとまっていた。
47
各省の議論メモが毎日沢山作成された
●組閣後6日目(政策発表当日)
政策発表が午後にせまった朝、総理大臣が各省の政策を①脱
原発 ②省エネ ③その他の三つに分類するように指示を出し
た。説明が不足していたため、皆が動揺した雰囲気があったが、
誰もその意味を確認せず、戸惑いながらも各省でなんとかこの
カテゴリーに振り分けていった。作業の意味がわからない、と総
理に訴えるものが出てくるが、総理大臣の理解は得られなかっ
た。
すると、3名の議員がマイクをとり、この分類に何の意味があるのかと皆に訴えた。昨夜までにほぼ
出来ていた政策を、なぜ、この三つに振り分け直す必要があるのかと。総理大臣の考えでは、さらにエ
ネルギーに直結している政策に見せるため、このような振り分けにしたが、皆がこれでやりにくいので
あれば元に戻す、ということになった。
また、事務局より政策に盛り込むことと条件を出していた「高校生ができる行動計画」についても一切
話し合われていなかったことから、政策を振り分けることに時間を費やすよりも、これらの話し合いに
時間を使わなければ、時間が足りないのではという意見があった。多数決もあり、政策は前日まとめて
いた方向に戻り、クラスに分かれて「高校生ができること」のアイディアを話し合う。
総理や内閣は、政策をまとめるのに集中してほしいからと、こ
の3名の議員が、その後の議論の司会進行役を務めた。彼らは、目
的や言葉の曖昧な定義なども最初に明確にし、上手く議論を進め
ていた。最後は、クラスから出た案をまとめて、政策をなんとか
完成させた。
政策発表は、総理を中心に大臣たちが行った。本物の記者なら
政策について質問するクラス担任
びにクラス担任からなる記者団から質疑応答を受けた。
【ふりかえり・反省会】
政策発表後、ハイスクール国会の反省会を全体で行った。下記が意見の主な内容である。
・論点がずれていた
・説明が不足していた
・定義が曖昧だった
・内容が多すぎて、絞れなかった
・高校生らしい議論ができなかった
・話し合いの順番が前後していた
・最終的に目指す方向がわからなかった
・人の話を聞く態度が、全体的に悪かった
悩む総理を支える大臣や補佐たち
など。運営側が気づいてほしかった反省点は、ほぼ出ていた。
また、総理大臣をはじめ内閣の大臣らは、上記のような反省点がありながらも、議員からはその奮闘
ぶりに一目置かれており、尊敬の眼差しで見られていた。反省会の後に良かった点も挙げさせたが、総
理大臣や省の大臣の頑張りを称えるコメントも多くあり、厚い人望を得ていたようであった。アンケー
トには、「165名の塾生をまとめるという大仕事に全力で取り組んでいた大臣らから、リーダーシップ
のあり方を学んだ」という声も多かった。
ある議員が、反省会の際に「時間が経った後に、議論が逆戻りするような意見を言うべきではない」と
48
やや感情的に発表した。それに対して、別の議員から「時間がなくても、重要なことを指摘している可能
性もあるので、言い方に配慮したり、聞く耳を持つことも大事である」と意見した。最後に、また別の議
員が「反対意見を言ってきた人ばかりを責めるのではなく、まずは自分に間違っていることがないか、自
問自答することから始めよう」と付け加えていた。議論の進め方などに課題はまだたくさんあるものの、
人の意見にも耳を傾けることの大切さを随所で感じ、当初と比べ、非常に冷静に建設的な議論ができる
ようになっていた成長ぶりは、目を見張るものがあった。
【政策について】
塾中は前述のように最後まで目指す議論の目的が曖昧で、右往左往したため、内容を深める議論をす
る時間が不足した。よって、提出された政策案は各省の箇条書きの政策案を足し合わせただけで、この
政策の目的や議論の背景などがあまり書かれていなかった。よって、卒塾後、ハイスクール国会の総理
大臣が中心となり、政策を数か月かけて精査した。政策提言という形で最終的にまとめたものは、この
報告書の54ページに記載する。
政策提言の概要は、以下の通りである。
・2030年までに原発全廃を目標にする
・省エネを進めるとともに、再生可能エネルギーの普及推進を行う
・他国にも脱原発を促せるように、再生可能エネルギーの技術開発を世界に先駆けて行う。また、採掘権
を取得するが採掘は最小限にし、世界に脱原発の覚悟とメッセージを伝える
・廃炉や使用済み核燃料の処理、他国の核技術保有に伴う危険性にも備え、原子力技術は保持するとと
もに、さらなる開発にも力を入れる
・今後に万が一原発事故が起きてしまった場合に備え、防災訓練を強化する
・被災地産の商品に課税しない
・お金を持っているシニア層に積極的にお金を使ってもらう仕組みを作り、経済を活性化させる
・エネルギーに限らず、日本が国際協調の舞台で活躍するため、問題解決力やリーダーシップ力、英語
力を強化するカリキュラムを導入する
また、
「高校生にできること、またその覚悟など」と、
「日本政府へお願いしたいこと」では、高校生な
りの決意を表明しているので、抜粋して紹介したい。
○「高校生にできること、またその覚悟など」
義務化など、確かに国民への負担は出てくるが、今の問題を先延ばしにしていても、その未来に希
望はない。私たちは、国民一丸となって、無理のない範囲で、しかし少しずつ苦しみに耐え、劇的な
エネルギーシフトを達成しなければいけない。そうして、ゆくゆくは日本の未来をより良くしたいと
いう考えから話し合いを行った。
○「日本政府にお願いしたいこと(抜粋)」
私たち若者は、自分たちの将来のために努力を惜しまない覚悟ができています。私たちの持ってい
るエネルギーを、積極的に活用してください。
みんなが一致団結して良い国を作っていければ、この国の将来は希望に満ちていると思います。議員
のみなさんも、選んだ総理大臣の下で、お互い助け合っていただきたいと思います。与野党対立による
党のための政治ではなく、将来の国民・国家のためを考えた政治をしてください。まずは政治家のみな
さんが一致団結してほしいと思います。困難にぶち当たってもくじけず、私たち国民も、全員で頑張っ
て乗り越え、自信を持てる国づくりをしたいと思います。
49
(3)ハイスクール国会を通して見えた社会の
(3)ハイスクール国会を通して見えた社会の課題
社会の課題
「ハイスクール国会の経験を今後どう活かしたいか」という問いに、多
くが「自分の高校や地域でハイスクール国会のような議論の場を作りたい」
と答えた。前述した塾生の学校の担任教員へのアンケートでは、総合学習
などでディスカッションを行っているという学校は3割である。ハイスク
ール国会の「よかったと思うこと」という問いで一番多く挙げられたのは、
「多種多様な意見が聞けたこと」であり、それによって考え方の幅が広がることである。
現在インターネットや携帯電話の普及により、バーチャルな世界の議論の場はたくさんある。しかし、
そのようなインターネットの世界に慣れた高校生たちも、実際に顔をつき合わせて行う議論で、世の中
いろんな考え方があるということを、日々ぶつかり合いながら初めて身を以て学ぶ。そして、それをバ
ーチャルの世界ではなく、顔が見える世界で普及していきたいという意気込みを語る。やはり、このよ
うな現実世界での日々の議論の場が今、学校教育に求められているのではないかと思う。顔が見えるこ
とで、安心感を得て反対意見も言えるのではと思う。しかし、ここでは議論の結果を私生活には持ち込
まないというルールも併せて教えることは忘れてはいけない。このルールがなければ、議論の結果が仲
間外れの口実になってしまう。
また、インターネット上の議論に関して付け加えるとすれば、卒塾後に総理大臣が中心となって政策
を磨き上げていったが、その過程で9期生の多くが登録しているフェイスブックのコミュニティでも意
見を募集した。最初は投稿が多かったが、一方的な意見の書き込みが多く、質問を重ねるごとに書き込
みの数自体も目に見えて減っていった。やはり、いくら塾中寝食を共にして絆が深まった仲間でも、1
00名もの人がネット上で議論をするのは限界があると感じた。
多くの卒塾生が学校に戻ってから、リーダー塾で知り合った友人と学校の友人の間での意識の差にシ
ョックを受けている、という話をよく耳にする。学校でリーダー塾参加の経験を発表して他の生徒に還元
したり、生徒会長などになって議論の場を設けたりすることに挑戦している塾生もいる。しかし、多くが
そのギャップを埋めるには至らないようである。一度議論する楽しさを経験すると、議論ができない環
境をとても苦しく感じるようだ。議論できる環境を、ぜひ日々の学校生活でも提供することができればと
願ってやまない。
前述した議論の軸がブレる、という点に関しては、大人が明確なビジョンなく議論している姿を見て学
んでいるのではと考える。塾生たちは、溢れる情報の中で、聞きなれた言葉やフレーズを、その言葉の
持つ意味やイメージを深く考えず、皆わかっているものとして安易に使っていた。また、それは言葉の
定義が曖昧なだけでなく、何かを達成するための説得力あるストーリー展開をする構想力が弱いことに
もつながっていく。なんとなく良さそうではなく、具体的にどのような効果があって、何が達成される
のかを深く、ダイナミックに考える想像力や計画力も弱い。これは、非常に深刻な現象だと考える。ま
ずは、大人が正しい議論の仕方やビジョンを示していくことが、次世代への義務なのではと思う。
(4)ハイスクール国会の課題
•
テーマ設定
テーマ設定の時期については、これまでのハイスクール国会は、なるだけその時期に話題になってい
るテーマから選ぶようにした。しかし、設定を旬なものにしようとすると、運営側の準備の時間が十分
にとれない。よって、来年度は募集前にテーマ設定を行い、参加候補者が早くからそのテーマに関心を
持てるようにしたいと考える。
テーマの内容については、議論のポイントが複数にまたがっていたり、範囲が広すぎると議論が分散
してしまい、一人一人の考えが浅くなってしまう。今回のテーマでいうと「エネルギー」と「復興」が二
50
つ盛り込まれており、混乱を招いたことも否めない。また、「エネルギー」というテーマでも、ある程度
の「論点」を設定しておけば、限られた時間の中でもさらに深い議論ができたと考えられる。壮大なテー
マで、情報が溢れているだけに、どこから手を付けてよいか、焦点を絞れなかった。
テーマの難易度であるが、身近な高校生の日常でも考えやすいテーマであれば、高校生らしい議論が
もう少しできるかもしれないが、思考力を磨く、難しいことにチャレンジするという点では、物足りな
いかもしれない。経済や外交など少々専門的な難しいテーマである場合は、知識や情報がある者の議論
に引っ張られてしまう傾向がある。また、その知識が明確な根拠に基づいているものかどうか不透明な
ところも多々あった。この点は、事前課題や講義の内容、配布物を工夫するなど検討が必要である。ど
のようなテーマを設定するかによって、議論の質に大きく影響するので、来年以降、何を学ばせたいか
を明確にしてから選択したい。
•
議論の方法
今回は、曖昧なビジョンのもと、目的が不明確な方法の議論がばかりが中心になったため、軌道修正
に多くの時間を割いて、内容の議論が浅くなってしまった。そもそも、ビジョンを明確に設定するとい
うことが、高校生のみの発想では難しいという印象も受けた。議論の進め方は議員に任せているが、あ
る程度運営側が論理的に考えさせる仕組みを設定しておく必要があるかもしれないと感じた。教えるの
ではなく、「なぜ、それをするのか」という問いかけはしつこいくらいにした方がよいのではと感じた。
•
当事者意識の醸成
今回のハイスクール国会は、エネルギーという身近で旬なテーマであるにも関わらず、当事者意識が
乏しい議論になってしまった。政策に補助金をたくさん拠出するものや、企業や国民に安易に負担を強
いる政策が目立っていた。政策を作ることに注力して、その政策が採用されると社会にどのような影響
を与え、国民にどのような負担となるのか、という落とし込みが非常に弱かった。この点は、運営側と
して強く認識させる必要があった。
•
成果物の出し方
現在、政策を書面で出させるという形式にしているが、文書の精度も上げて練り上げるには、圧倒的
に時間が足りない。それが足かせになって、形だけ整ったように見える成果物を出すことになってしま
った。それが、方法の案だけが乱立する一因になったと考えられる。今回は、塾終了後に総理大臣が中
心となって、政策を大幅に書き直した。内容は塾中の議論に基づいているが、なぜそのような結論に導
かれたのかという過程や考えを多く加筆した。来年は、限られた時間内でも議論が十分にできるような
成果物の内容やレベルを検討したい。
•
クラス担任の関わり方
期間中はアドバイザーとして徹していただいたが、論点がずれた時には今回は「記者団」という立場で
疑問点を投げかけた。しかし、その後軌道修正されなかった。論点の方向を現場ではかなり指導したが、
力づくで変えさせるということまではしなかった。結果的に方法論に偏った議論ばかりになってしまっ
たため、振り返ると、議論の進め方が間違っている場合は、早期に介入してもよかったかとも考える。
介入しすぎると塾生は大人の意見に非常に流されやすいという傾向もあるため、来年は、これまでの 4
年間のハイスクール国会の傾向から、ある程度の関わり方の基準を作って、クラス担任の先生の指導に
備えたいと思う。
51
(5)ハイスクール国会の感想
気づいたこと
•
リーダーでいることのむずかしさ
•
総理大臣がどれだけ大変かということ
•
もっと政治に関心を持たないといけない
•
165人という大人数をまとめることの大変さ
•
自分は本当に日本を変えることができる一国民であるということに気付いた
•
日本の国会はだめだというが、高校生がやっても結局同じような状況になるのだなと思った。総理
に丸投げして、国民の気持ちを考えれなかった
•
リーダーは周りに認められて、初めてリーダーになれる
•
みんなで謙虚になることが大切だということ
•
人により価値観は大きく異なるということ
•
協力することの大切さ、むずかしさ
•
政治家も一生懸命考えているんだろうなということに気付いた
•
意見を述べ合うことで世界は広がること
•
みんな自分勝手だと思っていたが、それぞれ話に筋が通っていて、議論は正解がないと思った
•
多種多様な性格があり、喧嘩にもなるけど、そこが面白かった
•
自分は世間を何も知らなかった
•
物の視点はとても沢山あり、全ての視点から議論しあうことで、改善案が見つかると思った
•
知識に頼らず、ゼロから発想することの大変さ
•
高校生である私たちには夢とパワーがある
良かったこと
•
高校生ならではの創造性や面白い考えが出てきてよかった
•
人の話を聴く力が大いに付いた
•
政治への関心が増した
•
高校時代に一生できないような経験ができて良かった
•
多くの価値観に触れられたこと
•
国の現状に気づき、向かいあうことが出来た
•
本当に自分の無知を思い知ったこと
•
頭を使ってたくさん考え、仲間との熱い議論を交わすことができたこと
•
皆で一つのことを成し遂げたこと
•
普段の学校生活ではできない、力関係や学年にとらわれずに話し合いができたこと
•
終わった時に達成感があったこと
•
失敗した時こそ、多くを学べたこと
今後ハイスクール国会での経験を
今後ハイスクール国会での経験をどのように活かしていきたいか
ハイスクール国会での経験をどのように活かしていきたいか
•
学校の議論の場などで自分の意見を発表し、進めたい
•
エネルギーに関する情報をしっかりと学んでいきたい
•
周りに怖気づくことなく、自分の意見を言う。絶対にこういう場面がくる
•
実際に学校でもディスカッションしてみたい
•
人と意見がぶつかったとき、相手を理解し受け止めるという面で活かしたい
52
•
冷静に状況を分析して、道を外したら軌道修正するような立ち位置にいたい
•
将来の夢を叶える時の土台にしたい
•
リーダーシップの本質を学べていたのでリーダーとして頑張りたい
•
今後はしっかり新聞を読んで、幅広い知識をつけていきたい
•
学校でもこの情熱を燃やし、世界の人に届けたい
•
和歌山を今よりもっとすてきな街にするために活かしたい
•
まず生徒会長でこの2週間のことを話し、学んだことを広めてディスカッションしたい
•
もっと社会問題に関心を向け、実際に行動しようと思った
•
飢餓や環境問題で苦しんでいる人のために役立てたい
•
政治に関心を持つようになったので、これからもっと知識をつけたい
•
学校にリーダー塾のようなやり方でのディベートやハイスクール国会を行えるように先生方に働き
かけてみたい
•
感情的にならず話が人に上手く伝わるようにしたい
•
まず学校で生徒会に入る。次に学生団体を立ち上げる
•
学校にハイスクール国会とまではいかなくても、ディスカッション、ディベートの場を設けたい。
•
軽はずみな発言はせず、考えて物事を言うこと。しかし、自分の意見には自信を持つこと。
•
学校でのディスカッションやディベートをする場を地元でつくる
•
こんなに大変で楽しい経験はなかなかできないと思うので、度胸がついた
•
まずは日本の政策を見直したい
•
ハイスクール国会で得たユニークな思考をいかし、生活の中でいろいろな提案をしたい
165名中140名回答
165名中137名回答
53
第9回 日本の次世代リーダー養成塾
「ハイスクール国会 2012」
2012」
~エネルギーの未来を考える復興会議~
2012 年 7 月 27 日~8 月 9 日に行われた、
「日本の次世代リーダー養成塾」
(塾長:米倉弘昌・経
団連会長)において、日本全国および 3 カ国(タイ・カナダ・アメリカ)に居住する高校生 165 名
がその地域を代表する“国会議員”となり、2030 年の日本におけるエネルギー問題について議論
しました。
現在日本は、東日本大震災における東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、2030 年のエネ
ルギー政策について歴史的選択を迫られています。この選択によって、また、その成功・失敗に
よっては、今後の世界のエネルギー事情を大きく変えるきっかけになるかもしれません。
2030 年は、2012 年現在高校生の私達が 30 代半ばにさしかかり、社会の中でも中心を担っていく
世代になる頃です。さらに家庭を持ち、次の世代を育てる世代でもあります。日本が今、大きな
選択をする上で、ぜひそのような時代を生きる私達高校生の意見も参考にしていただきたいと考
えましたので、政策提言として提出いたします。
≪今ハイスクール国会の目的≫
2030 年の日本を思い描き、高校生として様々な視点からエネルギーのあり方を考える。
≪高校生のエネルギー問題に対する思い≫
自分達の将来をかけた議論に込められた高校生の思いは、以下の 5 点に集約される。
●万一の事故や処理しきれない核廃棄物等の懸念を抱え、長期に渡って国民の身体や産業に悪影
響をもたらす原発に強い危機感を抱いている。
●将来的に自然エネルギーへの移行を目指したいという日本再興への希望と、それを達成するた
めの強い覚悟を持っている。
●グローバルな国際協調社会の中、環境先進国を目指す日本が世界をリードしてエネルギー問題
に貢献したい。
●持続可能な社会を実現し、後の世代も元気で明るく生活できる日本にしたい。
●平和で、国民の命を守れる日本でありたい。
古くから日本人に染みついた倫理観、繊細で器用な指先と頭脳。それは世界に誇るべきものであ
る。それをよりどころに、しっかりと日本人としてのアイデンティティを守りながら、かつ、来
るべき多民族社会・国際協調の波の中で 2030 年、日本人だけでなく世界の人々からも「大好き!」
と思ってもらえるような国を目指したいと考えた。
54
≪高校生が考える 2030 年の⽇本のあるべき姿≫
笑顔にあふれる、みんなが「大好き!」と思える国
~無理なく省エネできて子供たちの将来がある平和な日本~
≪「⾼校⽣が考える2030年の⽇本のあるべき姿」実現のための⽅針≫
世界にマネされるような、超効率的で、身の丈に合った、将来のある、品格ある強さを持った国
にする。
“世界にマネされるような”=世界から尊敬され、見本とされるような国を目指す。
“超効率的で”=適材適所・適量の意識のもと、過剰な部分の無駄をカットし、エネルギー
分野や経済分野等の様々な分野で効率性の高い国を目指す。
“身の丈に合った”=大量消費時代からの脱却を図り、日本に合った日本ならでは(技術・
倫理観・多様性)の方法で環境エネルギー政策と経済活動を両立させる。
“将来のある”=子供達がわくわく、将来に夢と希望を持てるような国づくりを行い、世界
レベルのプロフェッショナルを育成するための教育を充実させる。
“品格ある強さを持った”=どのような危機にも対応できる備えを持ち、内面(内政)から、
自信と誇りに満ちた国にする。
≪議論を進める上で考慮した各分野について≫
私たちはエネルギー政策を考える上で、資源確保・国際協調・防災といった観点からも議論する
必要があると考えた。また、エネルギー政策を実行する上で基盤となる社会に活力を与えるため
の経済分野、人材育成のための教育分野についても併せて考えた。
55
≪議論の結果≫
原子力発電への
原子力発電への強
への強い危機感
「福島の方々の故郷を奪い、生活をずたずたにした原発。福島だけでなく、東北地方ないしは日
本全体の社会・経済をも沈ませた原発。それを今後もこの日本で稼動させてもいいのか、頼って
もいいのか。答えは NO だと思う」
。
高校生の議論の中では、上記のような思いがたくさん寄せられた。
◎日本が脱原発を目指すべきである主な理由は、以下の通りである。
・日本に原発を置くことそれ自体が危険である。
IAEA にも指摘されている通りではあるが、
他の原発保有国と比べて数百倍もの地震が発生する、
世界でも有数の地震多発帯である日本に原発は置いてはいけない。原発リスクに関して「自動車
に乗るリスクや飛行機を利用するリスクと同列ではないか」という指摘があるが、事故時の問題
や廃棄物の問題など多くのリスクは国家規模・地球規模でのリスクであり、決してそれらと同列
とは言えない。
・もはや原発は世界のトレンドではない。
EU をはじめとして、世界的な脱原発の流れはすでに始まっている。風力発電への投資額が原発
への投資額を上回っているなどの事例からも明らかな通り、原発へ投資をするより、いち早く再
生可能エネルギーへの投資に舵を切るべきである。
さらに、トレンドでない原発には投資が見込めない、となれば、大きな技術的な進歩も見込めな
くなり、危険性が維持されてしまう恐れがある。
・「低コストで安定した電源として大きな費用対効果がある」という声はあてにならない。
コストに関しては、多くの専門家が試算を出しているが、どんな要素を含めるかによって意見は
さまざまである。原発の核廃棄物問題に関して言及すれば、処理しきれる見込みが立っていない
以上、管理費用は無限大であり、「低コストで安定した電源」とは言いがたい。
・「電気が止まったら何もできなくなる社会」をつくりあげてしまう危険性がある。
世界規模で省エネ社会や持続可能社会をつくりあげていくうえで、原発と言う巨大な電力源に頼
り切ってしまうことは、環境に配慮する意識を低下させてしまう恐れがある。
当初は、総理大臣をはじめとして日本の原子力技術の衰えを懸念する声もあったが、一方で日本
における原発への強い危機感を訴える声が非常に大きかった。結果、安全でみんなが笑って暮ら
せるような社会をつくるため、2030 年までに国内の原子力発電所全廃を目標とする結論に至った。
それと同時に既存の核燃料処理や廃炉に必要な原子力技術向上、またより高度な原発の開発には
力を入れるということで議論した。
56
―原子力発電は
原子力発電は、段階的に
段階的に減らしていき、
らしていき、2030 年にはゼロにする―
にはゼロにする―
上記を達成するために、①省エネの徹底、②再生可能エネルギーの導入という方法で努力する。
2030 年までに、再生可能エネルギー60%、火力 40%による電力供給を目指す。
また日本に、質の高い環境配慮型企業が集まってくるような社会体制を構築し、脱原発による産
業や雇用の空洞化を起こさないようにする。
①省エネの徹底
・省エネを義務化するなど厳しい法規制を行う。
・一方、省エネ商品・技術研究等や企業の省エネ行動に対し、補助金や大量発注等、国が積極的
に公共投資を行う。
・教育現場で「電力を『見える化』する遊具の設置(幼稚園)」
「省エネ委員会の設置(小学校以
上)」を行うなどして、子供たちを含めた国民全体に対し省エネ教育を推進する。
・農業において地産地消を実践し、流通部門での燃料消費量を減らす。
・熱や光をそのまま利用する方法に今一度注目し、推進する。たとえば、家庭への太陽熱システ
ム導入推進や、火力発電所の排熱を周辺地域での暖房・給湯熱源に利用するなど。
・核家族化防止、二世帯住宅化・集合住宅化推進により、冷蔵庫や空調などの電気機器を共同利
用することでエネルギー消費量を削減する。
・全国民が身近なところから積極的に省エネ参加できるよう、自転車専用道路を整備する。
②再⽣可能エネルギーの技術導⼊・技術⾰新(脱化⽯燃料)
・日本の最先端技術が詰まった商品や、製造機械・プラント(省エネ商品・再エネ発電機・再エ
ネ発電プラント等)を、
“資源”として積極的に世界に輸出し、外貨を獲得する。またそれを通し、
率先して世界をリードする。
なるべく電気を使わない製品や、クリーンな電気を作る製品を輸出することは、すなわち、エネ
ルギーを輸出するのと同等の価値がある。日本の技術を世界に提供して使ってもらうことで、世
界のエネルギー問題をも解決し、共に成長していくことができる。
・電力は発送電分離の上、自由化するとともに、電話のユニバーサルサービス制度のように地域
の格差に配慮した仕組みにするべきである。
・地方自治体への財政支援を積極的に行い、地方自治体がそれぞれの地域に合った自然エネルギ
ーによる発電方式を採用する。その上で、エネルギー効率の相乗効果を高めるために、HEMS(ホ
ームエネルギーマネジメントシステム)や CEMS(コミュニティーエネルギーマネジメントシステ
ム)による効率的利用を推進する。やがては、さらに大きな単位でのスマートグリッド化を達成
し、自然エネルギー推進下においても電力需給を安定させる。
57
・全国民が身近なところからエネルギーの生産者として参加できるよう、国として積極的に補助
金を出す。
→住宅用太陽光発電・小型風力発電・燃料電池発電等への補助金を、従来よりも充実させる。
また、小水力発電を応用した「トイレ・風呂発電」や、コンサート会場での「床振動発電」
、他に
もサングラスの表面やアクセサリーに太陽光発電塗料を塗るなど、人間の日々の行動の中から今
まであまり注目されてこなかったエネルギーを取り出すような研究開発促進のためにも、補助金
等の支援を検討する。
・学校の近隣にバイオマス発電所を建設するなどし、子供たちに見学をしてもらい、エネルギー
に関する意識を高める。
・宇宙太陽光発電など、夢のある研究開発を支援する。
・
「部活動として“発電部”を作り、大会で発電量を競う」
「かわいい形のソーラーパネルを作る」
「有名人・アイドルによるコマーシャル活動を行う」など、工夫をこらした再生可能エネルギー
の全国民への普及推進を行う。
省エネ・再エネ導⼊における主な課題とその解決案:
・「建設立地が限られる」「稼働時の天候に左右されやすい」といった課題を抱えている再生可能
エネルギーであるが、送電網の整備や大容量蓄電池の開発により、安定した電力供給は可能であ
ると考える。
・上記のような送電網・インフラ整備や蓄電池開発、企業・家庭への補助金などで、国家として
も初期投資がかさみその財源確保などの課題があるが、普及を目指す最初のうちは、高所得者に
対し、率先して再生可能エネルギーを導入するよう協力を要請する。また、国家として「省エネ・
再エネ」の方向に進むことを明確に示すため、補助金を従来以上に充実させる一方で、あえて電
気代を大幅アップする・炭素税を取るなどの経済政策を行う。
・これまで原発関連事業が生んでいた雇用が失われてしまう恐れがあるが、エネルギー関連優遇
施策の魅力を活かして世界中の環境配慮型企業を誘致し、雇用創出を見込む。それでもカバーし
きれない失業者に関しては、新規事業者を含めた電力会社がその規模に応じて雇用を確保する。
官は、電力会社によって雇用が確保されるよう、監視する。また、再生可能エネルギーの研究開
発に人材が集まり、雇用が生まれるよう、補助金等の支援を充実させる。原発事故収束のために
も、原子力技術の研究施設を充実させ、雇用を確保する。
・厳しい規制等により、逆進的に低所得者への負担が重くなってしまう恐れがあるが、国の厚い
補助金によるサポートを借りて省エネ・再エネ導入に一歩踏み出すことで、低所得者の負担は緩
和される。
・技術革新がもし期待通り進まなかった場合への懸念があるが、再生可能エネルギーによる発電
の潜在能力は高く、現行技術を積極的に導入するのみでも可能であると考えられる。
(環境省によ
ると、現行技術の風力だけで原発 40 基分の発電が可能とのことである。)
58
③原発ゼロと原⼦⼒技術保持の両⽴
脱原発が脱原子力技術であってはならない。原発をゼロにするためには、現存する使用済み核燃
料の処理技術や原子炉の廃炉技術を開発していくことが不可欠である。
事故後も、日本製の原発はトップクラスと言われており需要が高い。したがって、当面の日本経
済への影響を少なくするためにも、原発の輸出政策は止めるべきではない。
また、事故の経験を活かすために、核技術をむしろ、より研究することで、世界の安全・平和に
貢献したい。世界の国々に対して技術チームを派遣できるような「世界トップレベル」の原子力対
策技術を持つことが必要である。
上記のような対策が、防衛や安全保障上も効果を発揮するのではないかと考える。
(1)使用済み核燃料の処理技術開発、廃炉技術開発
原発で生み出された核廃棄物の処理や廃炉の技術を世界に先駆けて日本が開発していくことで、
日本がこの震災で受けた教訓を世界・未来にも共有することができる。
(2)原子力の新技術の開発
既に原子力発電は日本以外の多くの国で多く採用されている。原子力技術をより安全なものにし
て、福島やチェルノブイリのような悲劇を繰り返さないためにも、日本が積み上げてきた技術力
をより高め世界に貢献すべきである。そのため、海外の研究者と原子力技術開発のための国際チ
ームをつくり、より安全性が高く、高効率で発電できる第四世代原子炉の技術を共同開発してい
く。
(3)防衛・外交・安全保障
他国と対等で平和的な関係を保つため、一定の核技術を保持しておくことは必要だと考える。ま
た、自国のエネルギー資源は、自国で責任を持って管理しなければならないとの考えから、領土
問題についても議論した。前述したように、日本は今後原発ゼロに向けて、自然エネルギーを利
用した電源開発に力を入れ、その技術を他国にも導入し、世界全体でクリーンかつ安全なエネル
ギーを生み出すことができるようにするべきである。また、化石燃料に頼らない流れを他国をも
巻き込んで作るために、限られた天然資源をなるべく使い果たさずに保護したい。そのために、
中国との東シナ海のガス田開発問題を早期に決着する必要がある。その際、日本は採掘権を取得
するべきだが、一方で採掘は最小限に抑えるべきである。
④その他(防災・経済・社会保障・教育の分野)
■防災分野
・自然災害への対応を徹底させる。また、原発を減らしていく過程で再び事故が起きてしまった場
合に備え、公共事業として避難用シェルターを地下に建設する。
・自衛隊、警察、消防署の災害時の連携を強化するために、年に何回か合同訓練を行う。
・避難経路の確認のため、5 キロ間隔の避難誘導看板設置や波の高さを表す看板設置を行う。
・東日本大震災の発生日である 3 月 11 日を「全国防災・原発を考える日」にすることで、国民の原
発、防災に関する意識の向上を図る。
59
■経済・社会保障分野
・被災地産(東北三県)商品に課税しない。
・被災地に新しくできる企業や再エネ関連企業の法人税引き下げを行う。
・デフレと円高から脱却した、新規エネルギー事業が生まれ育つ社会のため、紙幣を刷る。
・東日本大震災による被災地で雇用を確保する企業、エネルギー技術をはじめとした技術開発・
運用に力を入れる企業に対しては、法人税を大幅に減税する。
・有望産業として、持続可能な日本の農林水産業を育成強化し、世界に売り込める産業にすると
同時に地産地消化を進める。
・定年年齢を引き上げ、お年寄りでも働ける社会を作る。
・働く意欲のある人の為に、エネルギー技術関連分野での雇用を創出する。
・孫と一緒に旅行に行ってもらうなど、お金を持っているシニア層に積極的にお金を使ってもら
うような仕組みをつくる。
■教育分野
・教育現場において、問題発見・解決力やリーダーシップ力を養うため「絶対的な授業時間数を
増やす」「社会実習や自由研究などをカリキュラム化する」などの改革を行う。
・国際協調の舞台で日本がリーダーシップを発揮するために、英語力強化を主な目的とした留学
を推進する。
60
≪高校生にできること、またその覚悟など≫
義務化など、確かに国民への負担は出てくるが、今の問題を先延ばしにしていても、その未来に
希望はない。私たちは、国民一丸となって、無理のない範囲で、しかし少しずつ苦しみに耐え、
劇的なエネルギーシフトを達成しなければいけない。そうして、ゆくゆくは日本の未来をより良
くしたいという考えから話し合いを行った。
≪省エネルギー≫
・早寝早起きにより、太陽の出ていない暗い時間帯の活動を避け、電気使用量を抑える。
・自転車の積極利用。
・公共交通機関を利用し、一人あたりのエネルギー使用量を抑える。
・クールシェア(公共の場所を使う、家の中ではリビングなどなるべく一箇所に集まる)
。
・緑のカーテンの使用。
・空調機器や電気に頼らず、自分で対策できる気温調整をする。
(冷感マットの使用など。
)
・LED ライトなど省エネ機器を導入。
・契約アンペア数を下げる。
≪学習・啓発・国民の側からの意識改革≫
・若者の声を国に届け、政治家が若者のための政治をしやすくするため、選挙に行く。
・高校生だから政治なんてどうでもいいという発想ではなく、将来を担う高校生だからこそ政治
について考えたり話したり、時には友達と意見を戦わせたりするぐらいの生活を送る。受け身で
はなく、様々な事柄を“自分ごと”としてとらえるようにする。
・情報を様々なところから集め、先入観や偏見を持たず、客観的かつ冷静に判断する。
・新聞等を読んでエネルギー情報や復興情報等を知り、SNS 等を使い積極的にシェアする。
・メディアの情報は正しいと決めつけず、自分でも調べて自分の頭を使って物事を考える。
(一次情報をもとに判断する。
)
・批判するのならより良い案を考えてからにする。
・小、中学生との交流を活発に行い、その中でエネルギーについて教える。
・室内でゲームをするのではなく、外に出て遊ぶ(友達でも親子でも)。
・地域コミュニティ活動(清掃活動等)に積極的に参加し、お年寄りとも仲良くする。その中で
近所とのつながりを形成し、助け合いながら生活する。
・ごみを分別する・水筒を持ち歩く・自転車を使うなど、ささいなところからの ECO 活動。
≪購買選択≫
・“国産”“いいもの”にお金を使う。
“いいもの”を選ぶために、幼いころから本物に触れる。国民意識を「国産第一」志向、味・安
全性・ヘルシー志向に誘導し、たとえば、TPP に参加して安い外国産が入ってきても日本人とし
て日本産を買う、というようにする。
・東北旅行に行き、お金を落とす。
61
≪日本政府にお願いしたいこと≫
私たち若者は、自分たちの将来のために努力を惜しまない覚悟ができています。私たちの持って
いるエネルギーを、積極的に活用してください。
――“投資”は、
“投資”は、
“コスト”ではありません――
“コスト”ではありません
今、省エネルギーや再生可能エネルギーに積極的に投資することで、長い目で見れば日本にとっ
ても世界にとっても、とても明るい将来を選択することができます。2030 年は、私たちの時代で
す。私たち若者が将来に希望が持てる日本をつくるために、積極的な投資をお願いします。
電気代アップをはじめとする、様々な負担に対し、国民はおそらく政府を批判します。しかし、
自信を持ってエネルギー政策を作成されたのなら、負けずにやり抜いていただきたいと思います。
人気取りのための場当たり的な政治ではなく、長いスパンで政治をしてください。一方で、マニ
フェストに固執し続けて批判の声を受け入れないのではなく、臨機応変さも忘れないでいただき
たいと思います。若者をはじめとする国民が、正しく、惑わされることなく判断して声を挙げる
ためにも、積極的な情報提供をお願いいたします。
資源を“持たざる国:日本”は、安全を二の次にして過度に贅沢な暮らしを求めた挙句、唯一の被
爆国であるにもかかわらず、
「災害多発帯に原発を置いてはいけない」という当たり前のリスクか
ら目をそむけ、失敗しました。身の丈に合わない無理をしようとし、また冷静な判断のための情
報シェアを怠ったためです。
しかし、良い暮らしを求めることはなんら悪い事ではなく、方法を間違えただけだと考えます。
日本として、日本の強みを生かした、日本らしい成長の仕方があるはずです。唯一、三度の被爆
を経験した国として、四度目の被爆は許されないと思います。
「命」
「未来」
「平和」その言葉の大
切さを、日本のアクションから世界中に広げていきましょう。
今は“平成の戦後”です。私たちを支配する大きなしがらみをまっさらにして出直し、政治家を
含めた国民全員が身を削る覚悟を持って努力し、一致団結してこの転換期を乗り越えなければい
けません。戦後日本がそうであったように、みんなが一致団結して良い国を作っていければ、こ
の国の将来は希望に満ちていると思います。議員のみなさんも、選んだ総理大臣の下で、お互い
助け合っていただきたいと思います。与野党対立による党のための政治ではなく、将来の国民・
国家のためを考えた政治をしてください。まずは政治家のみなさんが一致団結してほしいと思い
ます。困難にぶち当たってもくじけず、私たち国民も、全員で頑張って乗り越え、自信を持てる
国づくりをしたいと思います。それでこそ、世界に幸せをもたらすことのできる、みんなから「大
好き!」と思ってもらえる日本になるのではないでしょうか。
2012 年 11 月
「ハイスクール国会 2012」議員一同
62
資 料
1.塾期間中の塾生アンケート調査結果
塾全体のアンケート調査を塾生に対して行い、165名中159名が回答した。報告書では、主な設問
について掲載することとする。なお、回答していない者がいた設問については未回答人数を明記し、その
数を除いてパーセンテージを算出している。
問1 感銘を受けた講義・自分でものを考える上で役に立った講義(3つ選択)
※アンケート集計上位5つを記載
①中村 俊郎氏
23%
②石倉 洋子氏
13%
③千住 博氏
9%
④水戸岡 鋭治氏
8%
④榊原 英資氏
8%
(※未回答1名を除いて集計)
問2 興味深かった施設やイベント(複数回答可)
※アンケート集計上位5つを記載
①ディスカッション・ワークショップ
13%
②HR(ホームルーム)
12%
③ハイスクール国会
11%
④みそ汁コンテスト
10%
④講義後のディスカッション
10%
問3 下記のカリキュラムについて感想を聞かせてください。
(1)書禅
①とても良かった
27%
②良かった
45%
③普通
20%
④あまり良くなかった
4%
⑤良くなかった
3%
(主な感想)
・日に日に文章を書くのが上手になったように感じた
・集中して一人で考えることができた
・自分のことを相手に伝わるように表現することが難しかった
・自分と向き合えたが時間が足りなかった
63
(2)ホームルーム
①とても良かった
77%
②良かった
21%
③普通
2%
④あまり良くなかった
0%
⑤良くなかった
0%
(主な感想)
・クラスのメンバー、先生と真剣にぶつかり合って、自分が素直になれた場だった
・クラス担任の先生の経験談は、将来の自分にとって役立つものだった
・ある程度自由にディスカッションのテーマや活動などを企画できた
・仲間との絆が回を重ねるごとに深まっていった
(3)ディスカッション・ワークショップ
①とても良かった
60%
②良かった
26%
③普通
13%
④あまり良くなかった
1%
⑤良くなかった
0%
(主な感想)
・ディスカッションの仕方を学び、様々な意見を交換できた
・話し合いの練習をこんなに本気でやったことはなかった
・初めてだったので、今までの学校生活で体験したことのない楽しさを感じた
(4)
「ガレキに花を咲かせましょう」応援企画(T シャツ制作)
①とても良かった
57%
②良かった
28%
③普通
12%
④あまり良くなかった
3%
⑤良くなかった
0%
(主な感想)
・被災地への支援と共に、クラスの絆も深まった
・復興の力になれた気がした
・被災地のために自分に何ができるか分からなかったところ、みんなで楽しく応援することができた
・クラスみんなで作った思い出のものができた
64
(5)ハイスクール国会
①とても良かった
37%
②良かった
32%
③普通
21%
④あまり良くなかった
9%
⑤良くなかった
1%
(主な感想)
・いろんな人と関われ、意見を言ったり聞いたりすることで本当に視野が広がった
・自分たちで最後まであきらめずに解決することを学んだ
・今まであまり真剣に考えたことのなかったエネルギー問題について、深く考えることができた
・本当の国会のようで驚いた。途中皆がぶつかることもあったが、大臣たちが頑張ってまとめてくれて
良かった
(6)講義後のディスカッション
①とても良かった
56%
②良かった
36%
③普通
7%
④あまり良くなかった
1%
⑤良くなかった
0%
(主な感想)
・講義を振り返ることができ、講義の内容が頭に残りやすい
・自発的に発言する姿勢が身に付いた
・同じ講義を受けても、クラスみんなが違う意見を持っており、毎回楽しみだった
(7)保護者への手紙
①とても良かった
41%
②良かった
31%
③普通
20%
④あまり良くなかった
4%
⑤良くなかった
4%
(主な感想)
・日々の生活の中で、どれほど親が助けてくれているのかを再確認できた
・親に会えない分、自分の気持ちを素直に書けた
・少し恥ずかしい気持ちもあったが、書いているうちに楽しくなって、自分の気持ちを素直に書けた
65
(8)みそ汁コンテスト
①とても良かった
64%
②良かった
20%
③普通
12%
④あまり良くなかった
3%
⑤良くなかった
1%
(主な感想)
・みそ汁のだしや具、分量までみんなで協力して考え、団結して楽しめた
・料理の大変さを知って、親の大切さを感じることができた
・家に帰って家族へのお礼としてみそ汁を作ってあげようと思った
・片付けになるとクラスの人が協力していなかったのが残念だった
(9)九州電力エネルギー館見学・九州電力社員のお話
①とても良かった
25%
②良かった
34%
③普通
34%
④あまり良くなかった
5%
⑤良くなかった
2%
(※未回答2名を除いて集計)
(主な感想)
・エネルギーについて考える上で、とても役に立った
・電力会社社員の立場からの話が聞けてよかった
・実際に、発電の装置や仕組みを見て、興味が出てきた
・エネルギーの仕組みを知れたのは良かったが、もう少し専門的なことを教えてほしかった
(10)名護屋城博物館見学
①とても良かった
25%
②良かった
34%
③普通
32%
④あまり良くなかった
6%
⑤良くなかった
3%
(主な感想)
・朝鮮出兵に関する貴重な資料をたくさん見られた
・日韓の関係を学ぶことができた
・野外の見学もあり、城跡などを見て歴史を肌で感じた
66
(11)野外活動(カッター活動、カレーライス調理)
①とても良かった
53%
②良かった
35%
③普通
8%
④あまり良くなかった
3%
⑤良くなかった
1%
(※未回答1名を除いて集計)
(主な感想)
・思っていたよりきつくて大変だったけれど、1人が上手くやろうとするより、2人で息を合わせる
方が上手くいくということから、協力することは大切だと思った
・チームワークの大切さを講義ではない方法で学べた
・予想とは異なり、肉体的にかなり疲れたが、海で活動をしたのはこれが生まれて初めてで、新鮮
だった
(12)目標宣言(卒塾式前日に、全塾生の前で一人ずつ今後の目標を発表)
①とても良かった
63%
②良かった
26%
③普通
8%
④あまり良くなかった
2%
⑤良くなかった
1%
(主な感想)
・全員の前で宣言したから、絶対達成しなければならないと思った
・二週間を振り返ることができ、目標を明確にできた
・お互いに夢を持つ人と出会え、皆が夢に向かって頑張っていることを知って自分も頑張ろうと思えた
(13)作文
①とても良かった
36%
②良かった
41%
③普通
16%
④あまり良くなかった
5%
⑤良くなかった
2%
(※未回答1名を除いて集計)
(主な感想)
・自分の将来について改めて考えることにつながった
・自分の頭の整理ができた。最初の頃との自分の違いが見えた
・うまく書けずに時間切れになってしまったけど、自分を再度見つめ直すことができた
67
問4 リーダー塾に参加して一番よかったこと
記述式のため、キーワードをピックアップして集計した
①仲間・友人ができたこと
59%
②目標を持てるようになり、成長できた
17%
③講義やディスカッションから新しい知識を得た
16%
④自分を見つめ直し、自分が分かった
4%
⑤その他
4%
(※未回答2名を除いて集計)
半数以上の塾生が、志の高い仲間・友人ができたと答えている。全国から集まった目的意識の高い塾生
と2週間寝食を共にしながら学んだことで、互いに刺激を受け、今後も高め合える関係を築くことができ
たようだ。単なる友達作りではなく、「リーダー塾に来て、初めて夢を語った。同じ志をもつ仲間と出会
え、これからの人生の道しるべとなった」というように、初めて夢を語り合えるような同志に出会えたと
いう実感があるようである。
次に、
「自分の意見を持てるようになった」「自分の夢に自信を持てるようになった」「感情が豊かにな
った」など自分自身の成長を感じている塾生が多い。
また、一流の講師陣の講義やクラスでのディスカッションを通して、新しい知識や自分と異なった意見
に触れ「今の日本や世界がどうなっているのかを知ることができた」「いろいろな人の話を聞いて、自分
の視野が広くなった」など物事を深く考えることができたようだ。
いつもと異なる環境の中で「知らない自分、足りない自分を見つけた。もっと多くの経験をしたいと感
じた」
「自分の可能性の大きさに気づけた」など、自分を真摯に見つめ直す機会にもなったようだ。
問5 塾期間中の体調管理は適切に行えたか。また、規則を守って自己管理できたか。
(体調管理について)
①適切に行えた
68%
②適切に行えなかった
32%
(※未回答5名を除いて集計)
68%の塾生が、規則正しい生活を送って体調管理は適切に行えたと感じているようだ。一方で、体調
管理ができなかったという塾生の最も多かった意見は、「冷房が効きすぎて、のどを痛めた」ということ
であった。塾期間中も事務局にあるのど飴を取りに来る塾生が大変多く、就寝時間中の冷房管理やマスク
を装着して寝ることなど対処を呼びかけたが、
「冷房を消しても、部屋の誰かがまた付ける」と話す塾生
がいたように、就寝時間中に冷房の入切が繰り返されたようだった。部屋で冷房管理について話し合うな
ど、体調管理について自己管理だけでなくお互いに協力し合う必要があっただろう。2週間の共同生活で
重要な、他人を思いやる気持ちや他人への配慮が欠けた行動が見られたことは残念である。
また、規則を守って自己管理できたかという問いに対して、できなかったと答えた塾生は全員が「時間
の管理ができなかった」ということを挙げている。
「就寝時間が守れなかった」
「集合時間に間に合わなか
った」などの意見があった。理由として、「スケジュールが詰まっていたから」ということを挙げる塾生
もいたが、一方で「スケジュールがハードだったから就寝時間より前に眠くなり、体調管理できた」と言
う塾生もいた。数多くの講義を受けるため、長い休み時間があるようなスケジュールではない。そのため、
68
塾生は決められた時間の中でどのように行動すればいいかを常に考えなくてはいけない。今後も自分を律
して生活するためには、時間の管理が重要である。塾生には日頃から時間を意識して生活してもらいたい。
問6 リーダー塾に対して提言したいこと
記述式のため、キーワードをピックアップして集計した
①カリキュラムやスケジュールに関すること
58%
②塾を継続してほしい・塾期間を延長してほしい
18%
③塾生の募集及び応募方法、参加費に関すること
5%
④生活指導に関すること
3%
⑤施設に関すること
2%
⑥持参物に関すること
1%
⑦その他(後輩への助言や決意など)
15%
(※未回答21名を除いて集計)
半数以上の塾生が、カリキュラムやスケジュールに関することを述べていた。割合としては、「スケジ
ュールや休憩時間に関すること」が40%、
「講師の選定や企画内容に関すること」が9%、
「ハイスクー
ル国会のやり方に関すること」が7%、
「ディスカッションのやり方に関すること」が2%の計58%で
あった。特に、
「自由時間が欲しい」
「就寝時間が早い」という意見が多く、スケジュールが少しでもずれ
ると入浴の時間がうまくとれなくなる塾生もいたようだ。塾生は周りと協力しながら時間を短縮して入浴
するなどの工夫が必要だっただろう。
次に、塾の継続や2週間という期間を3週間に延ばしてほしいなどの意見があった。あわせて、もっと
チラシを配布した方が良いというように塾生の募集に関してリーダー塾の広報を積極的に行うことを望
む声もあった。
また、数は少ないが生活指導に関することに、「集団行動の指導をもっと厳しくしてもよい」という意
見があった。塾では、基本的に自分で考えて行動することを念頭に置いて指導をしているため、学校の生
活指導に比べると厳しくないと感じる部分があったようだ。ただ一方で、時間的な余裕のないなかで就寝
時間を守ることなどを指導していたため、「事務局や学生リーダーがたまに無理を言うことがある」とい
う意見もあった。
今回、特徴的だったことは、「人間関係に関すること」を述べる塾生が全くいなかったことである。例
年アンケートの中で数は少ないが、一から人間関係を構築していくことに不安を感じたり、集団生活に馴
染めず苦労したりすることを訴える塾生がいる。今年の塾生は、新しい環境でのコミュニケーションにあ
る程度耐性があったようだ。
【主な意見】
○時間的な余裕(特に就寝時間)をもう少し配慮してほしいと思う。
○ハイスクール国会で、大臣間で話し合うためにもう少し休憩時間を長くしてほしい。
○名刺を持ってくることを義務づけてほしい。
○これからも次世代リーダーのために、この塾をずっと続けてください。夢を叶えて講師として帰ってき
ます。
○これからもずっと続けてほしい。近いうちに学生リーダーとして戻ってきたい。
69
2.卒塾後の塾生・保護者・学校アンケート調査結果
卒塾してから約1ヶ月後に9期生および保護者、学校の担任教員を対象に、卒塾後の塾生の変化につい
てのアンケートを行った。卒塾生は、165名中108名の回答があった。保護者は109名から回答が
あり、学校の担任教員については106名から回答があった。主な項目をアンケートから抜粋して掲載す
る。なお、回答のなかった設問については未回答人数を明記し、その数を除いてパーセンテージを算出し
ている。
(1)卒塾生アンケート
【問1】塾参加後、ものの考え方や視点が変わりましたか(下記左グラフ)
【問2】どのような点が変わりましたか(下記右グラフ)
「参加後の考え方や視点の変化」については、回答のあった塾生のほとんどが何らかの形で変化があっ
たと回答している。具体的にどのような点が変わったかの質問を記述式で答えてもらったところ、上記の
ような結果となった。最も多かった回答は、
「様々な観点で物事を見ることができるようになった」
「深く
考えるようになった」などの意見を含めた「視野の広がり」を表す回答であった。次に、
「自分から発言
しようという意識が出た」
「物事を考えるだけではなく行動に移せるようになった」など自信がついたこ
とや積極性が出たことを示す回答が多かった。
具体的な回答は以下のとおり。
【主な意見】
○常に目標を置くようになった。
○自信がついて、たくさんの人からやる気をもらった。
○世界についてもっと目を向けるようになった。
○将来、仕事を通して他の人へ大きな影響を与えたいと考えるようになった。
○改めて、勉強の大切さを実感した。
○塾前は他人が自分と同じ考えでないと不思議だったが、塾後は他人と違うことが当たり前になった。
○多面的にものを見たり考えたりできるようになった。
○人と積極的に関われるようになった。
○小さなことでくよくよしない粘り強さが身に付いた。
○様々な人の意見を聞くことで、皆の不満やすれ違いをなくすことができるようになった。
70
【問3】参加後、視野が広がり、いろいろなことに興味を持つようになりましたか(下記左グラフ)
【問4】どのようなことに興味を持つようになりましたか(下記右グラフ、未回答7名を除いて集計)
上記のアンケート結果の通り、98%の塾生がいろいろなことに興味を持つようになっている。特に、
興味を持った内容としては、「政治・国際情勢」など、いわゆる新聞やニュースなどで報じられる事柄に
多く興味がわいたようだ。次に多かった回答としては、具体的な学問分野をあげるといった回答を含んだ
「学問全般および大学、職業、将来」である。塾で著名な講師の講義を受け、学びたい学問分野や進学し
たい大学、職業などに興味を持っている様子が伺える。そして、留学や外国語、日本や海外の歴史・文化
に興味が出たという回答が続く。塾で受けた講義を自分の将来に活かしたいという姿勢が見える。
具体的な回答は以下のとおり。
○地域、日本、世界の歴史について興味を持つようになった。
○日本の今を見つめること。日本にとどまらず、世界に目を向けること。
○世界の国がどうなっているのか疑問を持ち始めて、調べるようになった。
○新聞を読んだり、ニュースを見たりすることが苦ではなくなった。海外のニュースも見るようになった。
○本当のリーダーとは何か。なりたい自分、生き方とは何かを考えるようになった。
○被災地の現状。震災について伝えること。
○自治体の取組。特に、シニア世代の経済活動。
○高校生が行っているイベントに興味がわき、自分も参加したいと思うようになった。
○大学で学ぶこと、将来の職業選び。
○今までは目標の教師になるまでの最短ルートしか考えていなかったが、現代社会の動きを知る上で経済
を勉強することが不可欠であると気付いた。
○世界で活躍されている講師の方々の講義を受け、遠くに感じていた人を身近に感じることができたので、
その人柄、仕事、講師にまつわる本を何冊か読んだ。
71
(2)保護者アンケート
【問1】リーダー塾参加前と参加後でお子様の様子に変化がありましたか(下記左グラフ)
【問2】どのようなところに変化がありましたか(下記右グラフ)
リーダー塾終了後、塾生の様子について「とても変わった」40%、「少し変化があった」55%とい
うように、95%の保護者の方が塾生に何らかの変化があったと回答している。また、変化の内容は生活
面が最も多く、
「自分の考えをはっきり言えるようになった」
「お手伝いを嫌がらずやるようになった」な
ど、積極性や自主性がついたという回答が目立った。
【主な内容】
○積極的に行動するようになった。
○何事も自主的に行っている。
○すごい人達が沢山いることに気づき、もっと頑張りたいという意欲が出てきた。
○ニュースや新聞記事に対しての興味が変わり、時事問題等の話をするようになった。
○将来の夢に対してさらに具体的に考えるようになり、将来について真剣に語ることが多くなった。
○「留学したい」と言い出した。自分の視野をもっと広げたいという意欲が出てきた。
○親への感謝の気持ちが生まれた。家族内の会話が今まで以上に増えてきた。
○ボランティア活動へ積極的に参加するようになった。
○レベルの高い大学を志望するようになった。
○生徒会に立候補してみようかと言っている。
○人前で目立つことは好まない性格だったが、自分の意見を伝える事の大切さ、伝わった時の喜び、充実
感などを味わえ、今後いろんな事にチャレンジしたいと前向き・意欲的になっている。
○将来、世の中の為や日本の為になれるようにと少し勉強の意識が変わってきた。
72
【参加しての感想】
○帰って来てすぐに「行かせてくれて本当にありがとう」と両親に向かって言いました。貴重な経験を親
子共々させていただきました。
○初めての経験ということもあり、本人も非常に緊張していたようでした。どちらかと言うと、個性が強
い方なのでうまく協調していけるか心配でしたが、周りのサポートのおかげで参加後も塾のことばかりを
楽しそうに話しています。
○帰宅したとたんに将来やりたいことを意欲的に話し始めました。
○ただの傍観者で終わらないようにどんどん発言するようにしたと言っていました。総理の選挙に立候補
したという話をしてくれたとき、自分なりに積極的に参加していたんだなぁと嬉しく思いました。
○終わってからの子供同士の交流も含めて、学校だけでは視野の偏りもあるし、意欲的になるだけではな
く壁にぶつかった時に相談する人が増えるのも良いと思った。
○帰宅後も数日はリーダー塾の世界から離れられない様子で、大きな刺激を受けたことが分かりました。
もやもやとした自分の進路への不安から抜け出て、自分の目標、方向性を見出してきました。大きな収穫
になったと思います。
○様々な価値観に触れることで、自己理解が深まるとともに、他者を受容する力を得たと思います。自分
が心を開いたら、周りの目が変わったという言葉が印象的でした。
○いろいろなタイプの人達が集っていたと思いますが、話下手な自分の子が「皆と話をした。楽しかった」
と話していました。皆、他者を思いやり、グループでの活動を重んじて行動していたのではと思います。
あたたかい集団生活を経験させていただきました。
○著名な講師の方々に直にお話を聴けたという現実に興奮しておりました。学習、生活面共に今まで以上
に積極的になっていました。
○講師の方にいろいろな体験談を聞き、生々しい体験や興味を持ったことなど帰って来るなりたくさん話
してくれました。また、全国から集まった友達と仲良くなり、見聞が広がったということは本人にとって
貴重な体験だったことがよく伝わってきました。
○勉強も大事ですが勉強ができても社会性がなければダメだと思っています。高校生の時から社会に大事
な事、必要な事を教えてくれるリーダー塾は素晴らしいと思います。
○帰宅の途についたとたん泣き出し、理由を聞くと「帰ってきたくなかった」とのこと。何より2週間の
生活が充実していたことの涙なのでしょう。親としても前向きに人生を送るよう力をもらいました。
73
(3)学校の担任教員アンケート
【問1】リーダー塾参加前と参加後で生徒の様子に変化がありましたか(下記左グラフ)
【問2】どのようなところに変化がありましたか(下記右グラフ)
(※上記左グラフ:未回答2名を除いて集計)
上記の通り、すべての枠に共通しておよそ70%以上の学校の先生が、生徒に何らかの変化があったと
回答している。最も多かった回答は「生活面」の変化であり、参画県枠では48%、一般枠では58%と
なっている。詳しい変化の内容としては、
「進路について明確な方向性が出てきた」
「学校の10分休みな
どの少しの時間も惜しんで行動するようになった」
「自分の意見を口にし、積極的に人前に出る姿が見ら
れるようになった」などがあり、塾生が目標に向かって学校生活を有意義に過ごしている様子が伺えた。
【問3】学校でディスカッションを行っているか。
(下記左グラフ)
【問4】ディスカッションを行っている場合、いつ行っているか。(下記右グラフ)
学校でディスカッションを行っているかという質問について、
「行っている」33%、「行っていない」
67%という結果になった。また、行っているという学校についていつ行っているか回答してもらったと
ころ、
「特別活動の時間(ホームルームや生徒会活動)
」は45%、
「授業の中で取り入れている」は34%
という結果になった。回答の中では、
「参加した生徒が提案したので、取り入れてみる」
「生徒が自主的に
行い始めた」など、ディスカッションの行われていない学校が多いためか、塾生が学校生活でも塾で学ん
だことを取り入れようとしているコメントも見られた。
74
【問5】他の先生または生徒に塾への参加を勧めたいと思うか。
(未回答1名を除いて集計)
上記のアンケート結果の通り、
「勧めたい」と回答した先生は71%、
「どちらともいえない」が28%、
「勧めたくない」は1%となった。「勧めたい」という回答の理由としては、
「生徒の成長が伺えたので」
「学校が田舎にあり、同じ友人で囲まれるため、他を知ってほしい」「世の中のことへの興味関心が深ま
り、高校での学習の意義が大きな視点から確認できるように感じられる」といった意見があった。また、
「どちらともいえない」という回答の理由として、
「本人の意志や希望があってこその企画だから」とい
う意見が多かった。
「勧めたくない」という回答の理由としては、
「高校の補習期間と重なるため」という
意見があった。
【主な意見・感想】
○学習により高い目標を持ち、計画的に日々の勉強を進めるようになった。
○難関大学への進学を考えるようになり、学習に意欲的に取り組むようになった。
○まず、顔つきが変わった。自信に満ちているような、いきいきとした表情になったと思う。
○生徒会役員として、さらに積極的に活動するようになった。
○二学期の始業式の際、全校生徒の前でリーダー塾の内容を報告したのだが、決められた時間内に手際よ
くまとめ、明瞭な語り口でスピーチすることができていた。
○思慮深い生徒なので、以前は少し行動力が乏しいように感じていた。塾参加後は、自分の意見を口にし
たり積極的に人前に出たりする姿が見られるようになった。
○ハイスクール国会で記録係を務め、みんなに大変認められ、感謝されたということを話していた。大き
な自信につながったようだ。
○自分の方向性を見失いかけていたが、塾の経験で自信を取り戻したようで行動に積極性が出てきた。
○人物・成績ともに本校においては優秀である彼女が、他の意識レベルの高い同年代の生徒と過ごしたこ
とで、挫折感を持ったり、様々な分野に対する意欲をかきたてられたりしたようだった。
○以前は集団を動かす際、厳しい指示を出していた。現在は一人ひとりに考えさせて、自ら動くように仕
向けることができるようになった。問題が起こった際や目標に向けて伸び悩んだ際に、クラスでディスカ
ッションをして解決策を見出してくれた。
○青少年を飛躍的に変化させる刺激にあふれた素晴らしい企画だと思う。
○他にも参加させたい生徒がいたが、部活動の関係で難しかった。塾に参加した生徒は、帰校後、意識が
大きく変化し有意義だったと話しているので、機会があればまた参加させたい。
75
3.塾生概要
○第9回塾生総数
第9回塾生総数 165名 (男子76名・女子89名) 25都道府県及び3ヶ国
25都道府県及び3ヶ国
○参画県枠 90名 (男子45名・女子45名)
(男子45名・女子45名)
1
北海道
2
青森県
3
静岡県
静岡県
4
岐阜県
岐阜県
5
和歌山県
6
福岡県
7
佐賀県
7
11
11
12
7
28
14
名
(男子
1 名)
(女子
6 名)
名
(男子
5 名)
(女子
6 名)
名
(男子
9 名)
(女子
2 名)
名
(男子
6 名)
(女子
6 名)
名
(男子
4 名)
(女子
3 名)
名
(男子
12 名)
(女子
16 名)
名
(男子
8 名)
(女子
6 名)
計
90 名
(男子
45 名)
(女子
45 名)
8 名
2 名
(男子
3 名)
(女子
5 名)
(男子
1 名)
(女子
1 名)
10 名
(男子
4 名)
(女子
6 名)
名
(男子
1 名)
(女子
0 名)
名
(男子
0 名)
(女子
2 名)
名
(男子
1 名)
(女子
0 名)
名
(男子
0 名)
(女子
1 名)
名
(男子
10 名)
(女子
9 名)
名
(男子
4 名)
(女子
7 名)
名
(男子
0 名)
(女子
1 名)
名
(男子
0 名)
(女子
1 名)
名
(男子
0 名)
(女子
1 名)
名
(男子
2 名)
(女子
2 名)
名
(男子
0 名)
(女子
1 名)
名
(男子
3 名)
(女子
1 名)
名
(男子
0 名)
(女子
1 名)
名
(男子
2 名)
(女子
2 名)
名
(男子
0 名)
(女子
1 名)
名
(男子
1 名)
(女子
0 名)
名
(男子
0 名)
(女子
1 名)
名
(男子
0 名)
(女子
3 名)
名
(男子
2 名)
(女子
3 名)
名
(男子
0 名)
(女子
1 名)
名
(男子
1 名)
(女子
0 名)
65 名
(男子
27 名)
(女子
38 名)
○被災地特別枠 10名 (男子4名・女子6名)
(男子4名・女子6名)
1
岩手県
2
福島県
計
○一般公募枠 65名 (男子27名・女子38名)
(男子27名・女子38名)
1
茨城県
2
群馬県
3
埼玉県
4
千葉県
5
東京都
6
神奈川県
7
愛知県
8
三重県
9
滋賀県
10
大阪府
11
兵庫県
12
広島県
13
香川県
14
福岡県
15
佐賀県
16
大分県
17
宮崎県
18
沖縄県
19
アメリカ
20
カナダ
21
タイ
計
1
2
1
1
19
11
1
1
1
4
1
4
1
4
1
1
1
3
5
1
1
76
4.塾生高校一覧
第9回日本の次世代リーダー養成塾 塾生高校一覧(計121校)
学校所在地
北海道
青森県
岩手県
福島県
茨城県
群馬県
埼玉県
東京都
神奈川県
千葉県
岐阜県
静岡県
学校名
北海道札幌国際情報高等学校
北海道登別明日中等教育学校
私立遺愛女子高等学校
青森県立青森高校
青森県立青森西高校
青森県立青森南高校
青森県立三本木農業高校
青森県立八戸北高校
青森県立八戸工業高校
青森県立弘前高校
青森県立弘前南高校
私立青森明の星高校
岩手県立一関第一高等学校
岩手県立岩泉高等学校
岩手県立大船渡高等学校
岩手県立水沢高等学校
私立盛岡スコーレ高等学校
福島県立小高工業高等学校
福島県立双葉高等学校
私立茗渓学園高等学校
私立共愛学園高等学校
私立城西大学付属川越高等学校
東京都立小石川中等教育学校
東京都立国際高等学校
東京都立両国高等学校
私立開成高等学校
私立学習院高等科
私立学習院女子高等科
私立淑徳高等学校
私立昭和女子大学附属昭和高等学校
私立成城学園高等学校
私立多摩大学目黒高等学校
私立東洋英和女学院高等部
私立富士見高等学校
私立文教大学付属高等学校
私立立教池袋高等学校
神奈川県立上鶴間高等学校
私立カリタス女子中学高等学校
私立慶應義塾湘南藤沢高等部
私立聖光学院高等学校
私立洗足学園高等学校
私立桐蔭学園高等学校
私立横浜商科大学高等学校
千葉県立薬園台高等学校
岐阜県立大垣南高等学校
岐阜県立大垣養老高等学校
岐阜県立加茂高等学校
岐阜県立岐阜農林高等学校
岐阜県立関高等学校
岐阜県立土岐商業高等学校
私立城南高等学校
私立聖マリア女学院高等学校
私立多治見西高等学校
静岡県立科学技術高等学校
静岡県立静岡農業高等学校
静岡県立清水東高等学校
静岡県立沼津東高等学校
静岡県立浜松工業高等学校
静岡県立浜松西高等学校
静岡県立富士高等学校
静岡県立富士東高等学校
静岡県立三島北高等学校
私立静岡学園高等学校
学校所在地
学校名
愛知県
私立南山国際高等学校
三重県
私立メリノール女子学院高等学校
滋賀県
私立立命館守山高等学校
大阪府立桃谷高等学校
大阪府
私立関西学院千里国際高等部
和歌山県立田辺高等学校
和歌山県立那賀高等学校
和歌山県
私立開智高等学校
私立智辯学園和歌山高等学校
兵庫県
私立啓明学院高等学校
福山市立福山高等学校
広島県
私立広島学院高等学校
香川県
私立香川誠陵高等学校
福岡県立糸島高等学校
福岡県立輝翔館中等教育学校
福岡県立小倉工業高等学校
福岡県立小倉商業高等学校
福岡県立修猷館高等学校
福岡県立城南高等学校
福岡県立太宰府高等学校
福岡県立筑紫丘高等学校
福岡県立筑前高等学校
福岡県立戸畑高等学校
福岡県立福岡高等学校
福岡県立宗像高等学校
福岡県立山門高等学校
福岡県
福岡県立八女高等学校
福岡県公立古賀竟成館高等学校
私立久留米信愛女学院高等学校
私立久留米大学附設高等学校
私立西南学院高等学校
私立上智福岡高等学校
私立筑紫女学園高等学校
私立筑陽学園高等学校
私立東海大学付属第五高等学校
私立福岡大学附属大濠高等学校
私立福岡工業大学附属城東高等学校
私立福岡雙葉高等学校
私立明光学園高等学校
佐賀県立伊万里高等学校
佐賀県立鹿島高等学校
佐賀県立唐津西高等学校
佐賀県立唐津東高等学校
佐賀県立唐津南高等学校
佐賀県
佐賀県立武雄高等学校
佐賀県立太良高等学校
佐賀県立致遠館高等学校
私立東明館高等学校
私立早稲田佐賀高等学校
大分県
大分県立中津南高等学校
宮崎県
宮崎県立宮崎南高等学校
沖縄県立開邦高等学校
沖縄県
沖縄県立普天間高等学校
私立慶應義塾ニューヨーク学院
Northfield Mount Hermon School
アメリカ
Tabor Academy
Lester B. Pearson United World
カナダ
College of the Pacific
タイ
Ruamrudee International School
77
5.クラス担任・学生リーダー及びスタッフ名簿
(敬称略 所属肩書は塾開催当時)
クラス担任(前半:7月27日~8月2日
後半:8月2日~8月9日)
クラス担任
クラス
期間
氏
勤
名
務
先
前半
吉村 直記
株式会社ミズ
後半
長尾 崇史
株式会社麻生
前半
前田 浩明
学校法人麻生塾 麻生医療福祉専門学校福岡校
後半
巻木 孝太
三井物産株式会社
前半
松原 佐由美
株式会社ふくや
後半
道免 大介
九州電力株式会社
前半
松本 絵莉佳
三菱商事株式会社
後半
菊水 秀一
九州電力株式会社
前半
西山 寛治
福岡県
後半
伊藤 淳一
株式会社リクルート
前半
細田 愛加里
株式会社資生堂
後半
久保 雅彦
株式会社筑水キャニコム
前半
佐野 有希
三井住友海上火災保険株式会社
後半
宮本 伸治
特定非営利活動法人 九州・アジア経営塾
1組
2組
3組
4組
5組
6組
7組
学生リーダー(クラス生活担当)
クラス
氏
名
大
学 名
1組
藤井 郁乃
筑波大学
2組
藤野 荘子
立命館アジア太平洋大学(7期卒塾生)
3組
小原 真也
早稲田大学(8期卒塾生)
4組
湯村 将貴
早稲田大学(5期卒塾生)
5組
渡辺 将仁
中央大学(3期卒塾生)
6組
見良津 黎
国立久留米工業高等専門学校(4期卒塾生)
7組
小池 研太朗
九州大学(4期卒塾生)
78
【開催県・市】
古園井 広記/福岡県 新社会推進部青少年課青少年アンビシャス運動推進室長
上野 夏雄/福岡県 新社会推進部青少年課青少年アンビシャス運動推進室企画監
野中 恵子/福岡県 新社会推進部青少年課青少年アンビシャス運動推進室事務主査
緒方 良行/佐賀県 くらし環境本部こども未来課長
川浪
貢/佐賀県 くらし環境本部こども未来課副課長
中野 修二/佐賀県 くらし環境本部こども未来課青少年健全育成担当係長
木原 康治/佐賀県 くらし環境本部こども未来課青少年健全育成担当主査
福崎 常喜/宗像市 市民協働・環境部長
中村 慈宏/宗像市 市民協働・環境部市民活動交流室長
吉丸 耕一/宗像市 市民協働・環境部市民活動交流室主任主事
【参画県】
中元
綾/北海道 環境生活部くらし安全局道民生活課青少年グループ主任
成田 英司/青森県 企画政策部人づくり戦略チーム主査
久保田 豊和/静岡県 教育委員会学校教育課高校教育室指導主事
高原 万梨江/岐阜県 環境生活部人づくり文化課大学連携・生涯学習係主事
上出
恵/和歌山県 教育庁学校教育局学校指導課児童生徒支援班指導主事
中野 利昭/古賀市 教育委員会青少年育成課業務主査
【グローバルアリーナ】
近藤
勇/株式会社グローバルアリーナ代表取締役
百﨑 順二/株式会社グローバルアリーナ
島﨑 匠幸/株式会社グローバルアリーナ
森田
智/株式会社グローバルアリーナ
【企画委員】
石坂 広孝/Intercity Senior Vice President
大嶽 一省/IN・COM 株式会社 代表取締役
エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター
小林
浩/株式会社リクルート IMCカンパニー
リクルート「カレッジマネジメント」編集長
小谷野 由紀/三菱商事株式会社 環境・CSR推進部 社会貢献チームリーダー
浜岡
孝/日本アイ・ビー・エム株式会社 社長室担当部長
山根 正司/クウェート三井物産株式会社 取締役社長
松浦 克己/財務省 理財局計画官
79
【事務局学生リーダー】
森
義央/福岡教育大学(学生リーダー事務局担当)
山元 彩夏/関西大学(学生リーダー事務局担当・5期卒塾生)
鈴木 実穂/お茶の水女子大学(学生リーダー事務局担当・7期卒塾生)
【事務局サポート】
伏見 浩幸/株式会社ミズ教育研修部
上野 志保/春日市 健康福祉部福祉計画課保護担当統括係長
立花 裕二/宗像市 経営企画部経営企画課企画係企画主査
田中 美保/宗像市 総務部秘書課主事
森田 大翔/TaishoStudio.
代表(4期卒塾生)
上田 洲裕/和歌山県立医科大学(5期卒塾生)
石井 佑佳/立命館アジア太平洋大学(8期卒塾生)
古池 梨紗/私立福岡雙葉高等学校(8期卒塾生)
丸山 聖華/福岡県立宗像高校(8期卒塾生)
【事務局】
加藤 暁子/日本の次世代リーダー養成塾 事務局長
相戸 和歌子/日本の次世代リーダー養成塾 企画部長
舩越 健樹/日本の次世代リーダー養成塾 総務・経理部長
藤井 智子/日本の次世代リーダー養成塾 塾生指導部長
80
6.ご協賛いただいた皆様とご協力いただいた皆様
今回の日本の次世代リーダー養成塾は、次に掲げる皆様のご協賛とご協力により開催することができま
した。ここに、深く感謝申し上げます。
五十音順
ご協賛いただいた皆様
芦川 英通様
株式会社アステム
株式会社麻生
学校法人麻生塾
株式会社アトル
アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)
RKB毎日放送株式会社
大竹 美喜様
公益財団法人オリックス財団
九州通信ネットワーク株式会社
九州電力株式会社
株式会社九電工
九州旅客鉄道株式会社
国際ロータリー第2700地区
西部ガス株式会社
株式会社サニックス
株式会社資生堂
株式会社翔薬
株式会社伸良商事
株式会社スターフライヤー
住友化学株式会社
株式会社正興電機製作所
株式会社玉屋
株式会社筑水キャニコム
株式会社戸上電機製作所
株式会社トクスイコーポレーション
株式会社豊川設計事務所
株式会社西日本シティ銀行
西日本鉄道株式会社
株式会社バイオン
81
久光製薬株式会社
株式会社福岡銀行
福岡地所株式会社
株式会社福住
株式会社ふくや
富士ゼロックス株式会社
フンドーキン醤油株式会社
株式会社ミズ
株式会社三井住友銀行
三井松島産業株式会社
三菱商事株式会社
株式会社三菱東京UFJ銀行
株式会社安川電機
YASKAWA未来クラブ
吉本 平史様
財団法人福岡県市町村振興協会
ご協力いただいた皆様
IN・COM株式会社
特定非営利活動法人九州・アジア経営塾
株式会社グローバルアリーナ
佐賀県波戸岬少年自然の家
佐賀県立名護屋城博物館
株式会社ホテル日航福岡
三井住友海上火災保険株式会社
三井物産株式会社
株式会社リクルート
82
日本の次世代リーダー養成塾 事務局
〒107-0062 東京都港区南青山5-12
東京都港区南青山5 12-28
12 28
メゾン南青山403号
TEL:03
:03-5466
:03 5466-0804
5466 0804
FAX:03
:03-5466
:03 5466-0842
5466 0842
ホームページ
http://leaderjuku.jp/
メールアドレス [email protected]
83