医療安全管理(Medical Safety Management) 医療安全管理 概論 医療法人真鶴会 小倉第一病院 医療安全管理者 石川俊幸 Ver.1 ( 2006.7) 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 01 医師と患者の法的関係 医療契約の成立 1/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 01 医師と患者の法的関係 医療契約の成立 一般に、「契約」が両当事者の意思の合致により成 立するように、医療契約においても、患者からの医療 の申し込みと医療機関の承諾という両当事者の意思 の合致によりその契約は成立する。ただ、医師法19 条1項により「診療に従事する医師は、診察治療の求 めがあった場合には、正当な事由がなければ、これ を拒んではならない」ため、患者による診療の依頼が あれば、医師はそれを拒むことはできない。 2/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 02 医療契約の当事者(医療側当事者)について 3/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 02 医療契約の当事者(医療側当事者)について 個人開業医の場合の医療側契約当事者は、当 該医師個人であるが、多くの場合がそうであるよ うな法人が開設する医療機関や公的医療機関に おける診療においては、通説・判例は、当該医療 契約の医療側の当事者は、医療機関の開設者で あるとする。 4/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 03 医療契約の当事者(患者側当事者)について 5/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 03 医療契約の当事者(患者側当事者)について 患者が法律行為を単独でなし得る能力(行為能 力)を有している場合には、当然、患者本人が当 該医療契約の患者側当事者となる。契約当事者 が患者本人であることは、患者の明示的意思表 示の有無に関わらないと解される。 6/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 04 これから実施する医療行為に対する同意の前提と しての説明義務について 7/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 04 これから実施する医療行為に対する同意の前提と しての説明義務について これは、インフォームド・コンセントの法理に関し てである。つまり、例えば診療中に医的侵襲を伴 う手術等が必要になった場合には、当該手術等 の実施は当初予定した範囲を超える行為であり、 この実施が当初の診療契約の内容を超えること から、医師は、患者からインフォームド・コンセント を得なければならない。つまり、医療行為に対す る同意を得るための事前の説明である。 8/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 05 手段責務について 9/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 05 手段責務について 医療契約締結後、医師は「善良ナル管理者ノ注 意」(民法644条)でもって委任事務の処理にあた る責務、すなわち「ビルの完成」というように当初 から定められた結果を達成するのではなく、病状 の改善を目指し診療当時の医療水準に応じて適 切な医療を行う責務(手段責務)を負っていると 解されるため、医療契約の具体的内容は定まっ ていない。 10/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 06 医療行為を合法的に行うためには、次の3条件が必 要である。 11/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 06 医療行為を合法的に行うためには、次の3条件が必 要である。 ① 免許を有する資格者が治療を目的に行うこと。 ② 患者がその医療行為を承諾していること。 ③ 医療行為が現在の医療水準に達していること。 12/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 06 医療行為を合法的に行うためには、次の3条件が必 要である。 ① 免許を有する資格者が治療を目的に行うこと。 ② 患者がその医療行為を承諾していること。 ③ 医療行為が現在の医療水準に達していること。 この3条件に欠けるところがあると、業務上過失致 死傷罪などで罰せられる可能性がある。 13/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 07 患者が医療機関において医療行為を受ける場合、 通常、患者と医療機関との間には、契約関係が生じ る。 14/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 07 患者が医療機関において医療行為を受ける場合、 通常、患者と医療機関との間には、契約関係が生じ る。 両当事者間に契約関係が生じ、その法的性質 は準委任契約である。 15/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 08 医事紛争が発生した場合、その紛争を解決する手段 として考えられるものを「裁判」以外あげると次の5つ がある。 16/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 08 医事紛争が発生した場合、その紛争を解決する手段 として考えられるものを「裁判」以外あげると次の5つ がある。 ① 話し合い ② 示談 ③ 和解 ④ 調停 ⑤ 仲裁 17/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 09 医療者が問われる法的責任には次の3つがある。 18/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 09 医療者が問われる法的責任には次の3つがある。 民事上の責任:被害者の救済を目的に、個人 の受けた損害を賠償する責任 行政上の責任:免許を持つ者の責任 刑事上の責任:社会の秩序維持や社会防衛に 反する責任 19/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 09 医療者が問われる法的責任には次の3つがある。 民事上の責任:被害者の救済を目的に、個人 の受けた損害を賠償する責任 行政上の責任:免許を持つ者の責任 刑事上の責任:社会の秩序維持や社会防衛に 反する責任 19/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 10 医療事故における「民事上の責任」とは。 20/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 10 医療事故における「民事上の責任」とは。 謝罪 損害賠償金の支払い 21/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 10 医療事故における「民事上の責任」とは。 謝罪 損害賠償金の支払い 医療事故を民法第709条の不法行為として構成す るものと、医療行為を契約であるとして民法第415 条の債務不履行として構成する考え方がある) 22/47 (資料 1) 国立病院・診療所 医療事故賠償 10年で39億 全額国費負担 朝日新聞 2001.6.12 23/47 (資料 2) 最近の高額賠償例 (平成12年3月以降) • 神戸地裁 靭帯断裂→RSD併発 1億3700万円 • 仙台地裁 聴神経腫瘍摘出術→植物人間 1億1800万円 ・ 浦和地裁 虫垂炎を誤診→死亡 1億600万円 ・ 東京地裁 鬱病で大量の鎮静剤投与→植物人間 1億4000万円 ・ 静岡地裁 帝王分娩遅延→脳性麻痺 1億900万円 ・ 東京地裁 心室中隔欠損症→術中出血(脳障害後 遺) 1億4000万円 24/47 (資料 3) 診療の補助行為における事故例(1) 1)予薬・注射に関するもの ①投薬ミスで寝たきり:賠償命令1億4700万円 ②入浴剤の誤飲により死亡:賠償命令2700万円 2)輸血ミスに関するもの ①輸血ミスで死亡:賠償命令6600万円 3)機械器具 ①人工呼吸器が外れ死亡:賠償命令2700万円 ②ボンベ取り違え後遺症:賠償命令1億3000万円 4)感染 ①生後まもなくMRSA感染し、足に後遺症:賠償命令1880万円 ②病棟処置室にある廃棄した使用済みの注射器を、外来に来た人が 処置室に入り込み、持ち出し、他の人に刺した:病院側の保管義 務 違反:賠償命令30万円 25/47 (資料 4) 診療の補助行為における事故例(2) (5)食中毒 ①入院 中の患者が食中毒で死亡:賠償 命令300万円 ② 医 療 者 が 患 者 に か ま れ C型 肝 炎 に 感 染 、病 院 側 の 安 全 配 慮 義 務 違反:賠 償命令1億3000万円 ③ 針 刺 し事故 を起こし、C型 肝炎に 感 染、先輩ナ ースの 指示で新 人ナー ス が 起 こし た 事 故 、 病 院 側 の 安 全 配 慮 義 務 違 反 :賠 償 命 令 2700万 円 6)検査に関するもの ①採血 時のミスで麻痺:賠償命令 280万円 26/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 11 医療事故における「行政上の責任」とは。 27/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 11 医療事故における「行政上の責任」とは。 免許の取り消し、業務の停止など 行政責任の有無(医師法、歯科医師法、保健師助 産師看護師法、など) 28/47 (資料 5) 29/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 12 医療事故における「刑事上の責任」とは。 30/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 12 医療事故における「刑事上の責任」とは。 刑法211条 業務上過失致死傷罪 「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた 者は5年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下 の罰金に処する」 31/47 (資料 6) うつぶせ寝 乳児死亡で 「病院側にも遠因」 看護師に初の有罪 東京地裁判決 朝日 2003.4.19 32/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 13 当事者責任とは。 33/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 13 当事者責任とは。 過失をおかした本人がその責任を負うこと 34/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 14 医療事故が発生した場合には、次の3段階に分けて 考えてゆく。 35/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 14 医療事故が発生した場合には、次の3段階に分けて 考えてゆく。 ① 過失の有無 ② 因果関係の有無 ③ 損害発生の有無 36/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 15 使用者責任(民法第715条) 37/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 15 使用者責任(民法第715条) 病院勤務の医師・看護師の場合には、使用者責任 (民法第715条)が注目されている。 つまり、①開設者責任(県立病院で知事)、監督者 責任(病院長・科長・看護師長の責任)、求償権の行 使(損害賠償金の一部を弁償させられる)であり、医 師・看護師不足が解消されると、③求償権の行使が 注目されてくる。 38/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 16 証拠隠滅等(第104条) 39/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 16 証拠隠滅等(第104条) 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、 若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使 用した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金 に処する。 40/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 17 公文書偽造等(第155条) 41/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 17 公文書偽造等(第155条) 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若し くは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成す べき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務 所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公 務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画 を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。 42/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 18 虚偽診断書等作成(第160条) 43/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 18 虚偽診断書等作成(第160条) 医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は 死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の禁 錮又は30万円以下の罰金に処する。 44/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 19 異状死体等の届出義務(医師法第21条) 45/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 19 異状死体等の届出義務(医師法第21条) 医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案し て異状があると認めたときは、24時間以内に所轄 警察署に届け出なければならない。 異状死については、日本法医学会の異状死 ガイドライン(平成6年5月)を参考に。 46/47 法律の知識 Vol. 法律の知識 Vol. 20 事故は「0」にできないが 訴訟は「0」にできる。 47/47 引用・参考文献 (1)日本医師会医療安全推進者養成講座 通信教育テキスト 法律学概論 (2)朝日新聞 (3)日本看護協会紙 製作者 石川俊幸
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