医療安全管理 概論

医療安全管理(Medical Safety Management)
医療安全管理 概論
医療法人真鶴会 小倉第一病院
医療安全管理者 石川俊幸
Ver.1 ( 2006.7)
法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 01
医師と患者の法的関係 医療契約の成立
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 01
医師と患者の法的関係 医療契約の成立
一般に、「契約」が両当事者の意思の合致により成
立するように、医療契約においても、患者からの医療
の申し込みと医療機関の承諾という両当事者の意思
の合致によりその契約は成立する。ただ、医師法19
条1項により「診療に従事する医師は、診察治療の求
めがあった場合には、正当な事由がなければ、これ
を拒んではならない」ため、患者による診療の依頼が
あれば、医師はそれを拒むことはできない。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 02
医療契約の当事者(医療側当事者)について
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 02
医療契約の当事者(医療側当事者)について
個人開業医の場合の医療側契約当事者は、当
該医師個人であるが、多くの場合がそうであるよ
うな法人が開設する医療機関や公的医療機関に
おける診療においては、通説・判例は、当該医療
契約の医療側の当事者は、医療機関の開設者で
あるとする。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 03
医療契約の当事者(患者側当事者)について
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 03
医療契約の当事者(患者側当事者)について
患者が法律行為を単独でなし得る能力(行為能
力)を有している場合には、当然、患者本人が当
該医療契約の患者側当事者となる。契約当事者
が患者本人であることは、患者の明示的意思表
示の有無に関わらないと解される。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 04
これから実施する医療行為に対する同意の前提と
しての説明義務について
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 04
これから実施する医療行為に対する同意の前提と
しての説明義務について
これは、インフォームド・コンセントの法理に関し
てである。つまり、例えば診療中に医的侵襲を伴
う手術等が必要になった場合には、当該手術等
の実施は当初予定した範囲を超える行為であり、
この実施が当初の診療契約の内容を超えること
から、医師は、患者からインフォームド・コンセント
を得なければならない。つまり、医療行為に対す
る同意を得るための事前の説明である。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 05
手段責務について
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 05
手段責務について
医療契約締結後、医師は「善良ナル管理者ノ注
意」(民法644条)でもって委任事務の処理にあた
る責務、すなわち「ビルの完成」というように当初
から定められた結果を達成するのではなく、病状
の改善を目指し診療当時の医療水準に応じて適
切な医療を行う責務(手段責務)を負っていると
解されるため、医療契約の具体的内容は定まっ
ていない。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 06
医療行為を合法的に行うためには、次の3条件が必
要である。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 06
医療行為を合法的に行うためには、次の3条件が必
要である。
① 免許を有する資格者が治療を目的に行うこと。
② 患者がその医療行為を承諾していること。
③ 医療行為が現在の医療水準に達していること。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 06
医療行為を合法的に行うためには、次の3条件が必
要である。
① 免許を有する資格者が治療を目的に行うこと。
② 患者がその医療行為を承諾していること。
③ 医療行為が現在の医療水準に達していること。
この3条件に欠けるところがあると、業務上過失致
死傷罪などで罰せられる可能性がある。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 07
患者が医療機関において医療行為を受ける場合、
通常、患者と医療機関との間には、契約関係が生じ
る。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 07
患者が医療機関において医療行為を受ける場合、
通常、患者と医療機関との間には、契約関係が生じ
る。
両当事者間に契約関係が生じ、その法的性質
は準委任契約である。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 08
医事紛争が発生した場合、その紛争を解決する手段
として考えられるものを「裁判」以外あげると次の5つ
がある。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 08
医事紛争が発生した場合、その紛争を解決する手段
として考えられるものを「裁判」以外あげると次の5つ
がある。
① 話し合い
② 示談
③ 和解
④ 調停
⑤ 仲裁
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 09
医療者が問われる法的責任には次の3つがある。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 09
医療者が問われる法的責任には次の3つがある。
民事上の責任:被害者の救済を目的に、個人 の受けた損害を賠償する責任
行政上の責任:免許を持つ者の責任
刑事上の責任:社会の秩序維持や社会防衛に 反する責任
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 09
医療者が問われる法的責任には次の3つがある。
民事上の責任:被害者の救済を目的に、個人 の受けた損害を賠償する責任
行政上の責任:免許を持つ者の責任
刑事上の責任:社会の秩序維持や社会防衛に 反する責任
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 10
医療事故における「民事上の責任」とは。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 10
医療事故における「民事上の責任」とは。
謝罪
損害賠償金の支払い
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 10
医療事故における「民事上の責任」とは。
謝罪
損害賠償金の支払い
医療事故を民法第709条の不法行為として構成す
るものと、医療行為を契約であるとして民法第415
条の債務不履行として構成する考え方がある)
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(資料 1)
国立病院・診療所
医療事故賠償
10年で39億
全額国費負担
朝日新聞 2001.6.12
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(資料 2)
最近の高額賠償例 (平成12年3月以降)
• 神戸地裁 靭帯断裂→RSD併発 1億3700万円
• 仙台地裁 聴神経腫瘍摘出術→植物人間
1億1800万円
・ 浦和地裁 虫垂炎を誤診→死亡 1億600万円
・ 東京地裁 鬱病で大量の鎮静剤投与→植物人間
1億4000万円
・ 静岡地裁 帝王分娩遅延→脳性麻痺 1億900万円
・ 東京地裁 心室中隔欠損症→術中出血(脳障害後 遺) 1億4000万円
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(資料 3)
診療の補助行為における事故例(1)
1)予薬・注射に関するもの
①投薬ミスで寝たきり:賠償命令1億4700万円
②入浴剤の誤飲により死亡:賠償命令2700万円
2)輸血ミスに関するもの
①輸血ミスで死亡:賠償命令6600万円
3)機械器具
①人工呼吸器が外れ死亡:賠償命令2700万円
②ボンベ取り違え後遺症:賠償命令1億3000万円
4)感染
①生後まもなくMRSA感染し、足に後遺症:賠償命令1880万円
②病棟処置室にある廃棄した使用済みの注射器を、外来に来た人が
処置室に入り込み、持ち出し、他の人に刺した:病院側の保管義 務
違反:賠償命令30万円
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(資料 4)
診療の補助行為における事故例(2)
(5)食中毒
①入院 中の患者が食中毒で死亡:賠償 命令300万円
② 医 療 者 が 患 者 に か ま れ C型 肝 炎 に 感 染 、病 院 側 の 安 全 配 慮 義 務
違反:賠 償命令1億3000万円
③ 針 刺 し事故 を起こし、C型 肝炎に 感 染、先輩ナ ースの 指示で新 人ナー
ス が 起 こし た 事 故 、 病 院 側 の 安 全 配 慮 義 務 違 反 :賠 償 命 令 2700万
円
6)検査に関するもの
①採血 時のミスで麻痺:賠償命令 280万円
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 11
医療事故における「行政上の責任」とは。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 11
医療事故における「行政上の責任」とは。
免許の取り消し、業務の停止など
行政責任の有無(医師法、歯科医師法、保健師助
産師看護師法、など)
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(資料 5)
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 12
医療事故における「刑事上の責任」とは。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 12
医療事故における「刑事上の責任」とは。
刑法211条 業務上過失致死傷罪
「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた
者は5年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下
の罰金に処する」 31/47
(資料 6)
うつぶせ寝 乳児死亡で
「病院側にも遠因」
看護師に初の有罪
東京地裁判決
朝日 2003.4.19
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 13
当事者責任とは。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 13
当事者責任とは。
過失をおかした本人がその責任を負うこと 34/47
法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 14
医療事故が発生した場合には、次の3段階に分けて
考えてゆく。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 14
医療事故が発生した場合には、次の3段階に分けて
考えてゆく。
① 過失の有無
② 因果関係の有無
③ 損害発生の有無
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 15
使用者責任(民法第715条)
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 15
使用者責任(民法第715条)
病院勤務の医師・看護師の場合には、使用者責任
(民法第715条)が注目されている。
つまり、①開設者責任(県立病院で知事)、監督者
責任(病院長・科長・看護師長の責任)、求償権の行
使(損害賠償金の一部を弁償させられる)であり、医
師・看護師不足が解消されると、③求償権の行使が
注目されてくる。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 16
証拠隠滅等(第104条)
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 16
証拠隠滅等(第104条)
他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、
若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使
用した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金
に処する。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 17
公文書偽造等(第155条)
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 17
公文書偽造等(第155条)
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若し
くは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成す
べき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務
所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公
務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画
を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 18
虚偽診断書等作成(第160条)
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法律の知識 Vol. 18
虚偽診断書等作成(第160条)
医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は
死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の禁
錮又は30万円以下の罰金に処する。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 19
異状死体等の届出義務(医師法第21条)
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 19
異状死体等の届出義務(医師法第21条)
医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案し
て異状があると認めたときは、24時間以内に所轄
警察署に届け出なければならない。
異状死については、日本法医学会の異状死
ガイドライン(平成6年5月)を参考に。
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法律の知識 Vol.
法律の知識 Vol. 20
事故は「0」にできないが
訴訟は「0」にできる。
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引用・参考文献
(1)日本医師会医療安全推進者養成講座
通信教育テキスト 法律学概論
(2)朝日新聞
(3)日本看護協会紙
製作者 石川俊幸