平成 26 年 3 月 26 日 「乳がんとリンパ浮腫について」 総合病院土浦協同病院 看護部 看護主任 乳がん看護認定看護師 リンパ浮腫療法士 関 知子 司会:乳がんはどのような人が罹りやすいのでしょうか? 関 :乳がんは乳腺にできる悪性腫瘍で、その発生や増殖要因のひとつには、女性ホル モンのエストロゲンが関与していることがわかっています。罹る人の特徴として は、初潮が早い、閉経が遅い、出産経験のないことや初産が高齢、授乳経験のな いことなど、女性ホルモンに関係したものがあります。長期間ホンルモンの補充 療法をした経験のある方もリスクが高くなると言われています。 その他、日常生活に関係したことで、日頃からお酒をよく飲む方は、乳がんのリ スクが高まります。逆に運動をする習慣のある方はリスクが下がることが判明し ています。身長の高い方や、閉経後に肥満になってしまった方、BMI の高い方 はリスクが高まりますので、運動をしっかり行いましょう。 家族に乳がんにかかった人がいる場合、乳がんになる確率も増えると言われてい ますが、がん家系でなくても乳がんになることが増えていますので、注意をして ください。 司会:乳がんは何歳くらいの人が罹るのでしょうか? 関 :乳がんは 20 歳代∼90 歳、100 歳でも罹ることがあります。特に多いのは 40 歳 代後半ですが、何歳でも乳がんになる可能性があります。ご自身でもよくチェッ クをしてください。近年、乳がんは 20 歳代の若い女性にも増えています。男性 でも乳がんに罹ることがありますので、ご自身でもチェックをしていただきたい です。 司会:検査はどのようなものがありますか? 関 :乳がん検診で行う検査としては、主にマンモグラフィーと超音波があります。茨 城県の乳がん検診では、 30 歳以上 39 歳までの方は、年に 1 回の視触診と超音波、 40 歳以上の方は 2 年に 1 回のマンモグラフィーと超音波を交互に行うことを推 奨しています。年に 1 度は検査を受けていただきたいと思います。 司会:マンモグラフィーとは、どのような検査なのでしょうか。 関 :マンモグラフィーとは、乳房を撮影するレントゲンのことです。乳房は軟らかい 組織ですので、しっかり固定をする必要があります。特別な装置で挟むようにな りますので「痛いから検査を受けたくない」とおっしゃる方もいますが、しっか り固定をすることで、乳房の様子がよくわかるようになりますし、放射線の被曝 量を減らすことができます。検査時間が、何十分もかかるようなものではありま せんので、ご自身のからだのためにも、是非検査を受けてください。まだ、しこ りになっていない早期乳がんを見つけることができる可能性があります。 司会:乳がんの治療はどのようなことをするのですか 関 :乳がんの治療には、手術療法や放射線療法のような部分的な治療と、内分泌療法 や化学療法、分子標的治療薬といった全身療法があります。同じ乳がんと言って も、その人によってタイプが様々ですので、そのタイプや大きさ、あるいは患者 さんの生活背景などによっても治療法がかわってきます。 20 年くらい前までは、乳房のどこにどんな大きさの癌ができても、手術が最優 先されてきました。しかし近年は、手術よりもお薬の治療が大切と言われていま す。「切る前に薬を試す!薬が効いている間は切らない」という考えで治療する ことも増えてきました。乳がんは部分的な病気ではなく、全身病と考えられてい ます。 司会:お薬の治療は、どのような治療なのでしょうか 関 :お薬の治療には、化学療法や内分泌療法、分子標的治療薬というものがあります。 病気のタイプや大きさ、年齢などによって治療法が違います。 一般的に乳がんに対して行う化学療法は、点滴で行います。3 ヶ月から半年行う 事が多いのですが、再発を予防するために大切な治療です。吐き気やしびれ、脱 毛、浮腫などの副作用が出ることもありますが、身体の中のがん細胞をゼロにす る目的でしっかり治療を行います。 内分泌療法とは、ホルモンが関与してしるタイプの乳がんだった場合に行われる 治療法です。女性ホルモンを抑えることで病気を抑制します。 もうひとつ分子標的治療薬という比較的新しい治療法があります。これはがん細 胞を調べて、Her2 タンパクというものが過剰に発現しているタイプの場合のみ に行われます。 再発や転移を起こしてしまった場合でも、効果的なホルモン剤や抗癌剤、分子標 的治療薬があります。 司会:色々な治療があるのですね。治療を理解するのが、とても大変に感じます。 関 :そうなのです。乳がんの治療は、本当に専門的になってきています。たとえ医療 者であっても、決して理解しているスタッフばかりではありません。治療を受け た経験のある患者さんであっても、人によって治療法が違いますし、10 年前に 治療をした方の経験は、その人にはあてはまらない可能性があります。乳がんに なっても社会生活をしながら療養できるようになり、患者さんは治療選択が増え て、悩みが複雑に変化しています。 そこで、私のような乳がん看護認定看護師が誕生しました。まだまだ充分な人数 がいる訳ではありませんが、少しずつでも皆さんのお役に立てればと考えていま す。 現在、茨城県内にいる乳がん看護認定看護師は 4 人です。各自活動の仕方は違い ますが、他の病院で治療をされている方からの相談もお受けしています。もし、 今ラジオをお聞きになっている方で、お困りの方がいらっしゃいましたら、ひと りで悩まずにご連絡ください。 他にも茨城県内のがん拠点病院には、誰でも相談出来る“がん相談支援センター” があります。がんの体験者に相談できる“ピアサポート”を設置している病院も あります。ひとりで悩まないでください。 司会:リンパ浮腫療法士でもあるということですが、どのようなことをするのでしょう か。 関 :リンパ浮腫療法士は、名前の通りリンパ浮腫をケアするスペシャリストです。が んで手術をしたときに、リンパ節を郭清といって切除した場合、放射線療法をし た場合などに、治療の影響で浮腫が出てくることがあります。浮腫があると日常 生活に支障をきたすこともあります。 リンパ浮腫療法士は、まずそのような症状が出ないように、スタッフと協力をし て、手術をした患者さんの生活指導をしたり、予防的なケア方法を提供したりし ています。リンパ浮腫になってしまった患者さんには、少しでも症状が軽減でき るように、患者さんと共にマッサージや圧迫療法などを行い、少しでも安心して、 少しでも症状なく生活できるように、日常生活行動の工夫をしていきます。 司会:患者さんのために色々なケアをされているのですね。乳がんやリンパ浮腫でお困 りの方がいらっしゃいましたら、ひとりで悩まずに相談をしていただきたいです ね。
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